Re Take of Evangelion   作:Air1204

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第2話 見知った、天井

「先の戦闘はなんだ碇よ!まさか我々に隠し通せると思ってはいないだろうな?よもやあの神の下僕たる初号機があの様な姿になっているなど我々は説明されておらんぞ。」

 

ゲンドウはいつもの様にSEELE、人類補完委員会によって呼び出されている。血相を変えて先の初号機の件を尋問しているようだ。

 

「…現在調査中です。あの改造は我々NERVが施したものでは無いとだけ伝えておきましょう。」

 

「それで納得すると?」

 

真ん中に座すキール・ローレンツが重い口を開いた。

 

「まぁ良い。先の使徒との戦い被害は軽微であったと聞いている。その点はよくやった。貴様の息子シンジと言ったか?ソレをアレに乗せたようだな。」

 

「はい。元々我妻である碇ユイが設計し建造したものです。息子が一番の適任かと。」

 

「それもそうか…。では次回の報告会までに詳細の調査と事の経緯を纏めて貰おうか。」

 

「はっ仰せの通りに…。」

 

並んでいたモノリスからの通信は途絶え粛々とした真っ暗な空間だけが拡がっている。

碇ゲンドウと冬月コウゾウは頭を搔く。

如何せん彼らも何も知らない、ゲンドウはシンジと同じく何か秘密があるようだが…。

 

「何故だ…ユイ…。何がしたい…?しかもあの知ったような口ぶりのシンジ…。何があった…。」

 

「碇、お前の考えだけでは回らぬ世もあるようだな…。」

 

「くっ…。先の戦闘の際、初号機は自らのATフィールドで形成したディラックの海に沈みそしてあそこに姿を現したという。」

 

「子ある故に親あり、か…。よもや我々の計画は一筋縄ではいかなくなったな。」

 

「あぁ…。」

 

「あぁ、碇よ、そういえばお前の息子がエヴァに乗る際に説明してやるから時間を作れと言っていたが…大丈夫なのか?」

 

「…忘れていた…。冬月、あとは任せる。」

 

そう言い残して碇ゲンドウはその真っ暗な部屋を後にした。1人残された冬月は1人思う。

 

「よもやお前のもうひとつの願いも…叶うやもしれんな…。」

 

1人暗闇で呟いたそれは誰かの耳に届くことも無く静かに闇へと消える。

 

「はっ…いつもの…病院か…。」

 

回収班が遅く、エヴァの中で眠りこけてしまった僕は精神汚染の可能性ありと見出されて入院措置を取らされていたようだ。兎に角一刻も早くシャワーを浴びたかった。タンカーに載せられそのまま検査、検査と至る所をガラガラとベッドで回され気がついた時にはもう作戦終了から4時間は経過していた。

最後に連れていかれたのはリツコさんの研究室。いつも通りのカンファレンスと言うなの事情聴取。当たり障りのないことを言って切り抜けるのが吉か…。

 

「すまないわね。碇シンジ君。お手数お掛けするわね。」

 

「はい。態々すみません…。えぇと…。」

 

ネームプレートに視線を移し名前を伺う振りをする。嫌という程知っているのにこういった演技をしなければならないのは本当に億劫だ。

 

「あぁ、すまないわね。私は赤木リツコ。技術局第一課E計画担当の赤木リツコよよろしく。」

 

「ええっと…その…。はい。リツコ…さん?」

 

「あら、最初から名前呼びとは手馴れてるのね?貴方。」

 

「あっ…いや…。」

 

いかんいかん。疑り深いリツコさんを最初から名前で呼ぶなんて自分の素性を明かすようなもの、ただでさえ科学者として勘が鋭いのにヒントを与えてしまうのは元も子もない。

 

「冗談よ。リツコ…でいいわ。そっちの方が気楽で良いもの。それで貴方はさっきの初号機について何か知っている事があるの?」

 

「いえ…僕には…。先程からあの紫色のアレの名前がエヴァンゲリオン初号機って名前ぐらいしか…僕には…。」

 

「あら、それにしてはさっきの戦いやけに見事だったと思うわ?特にあの太刀筋は…。人の体で再現するのは叶ってもエヴァサイズの巨躯であれをやるとなると感覚のブレが生じて出来なくなるものよ?」

 

うっ…。痛いところを…。さすがはリツコさんと言うべきか…。本当に少ない情報から真実を見つけ出しかねないリツコさん、ここで母さんの話をして適当なことを言うのが一番適切なのではないか?

 

「えっと…。あれを見て…思い出したんです…。昔父さんと母さんに連れられてここに来た記憶を…。そしてあれの起動実験の時の…。母さんを…。」

 

ぎょっとした表情を浮かべるリツコさんと何が起きたか理解をしていないミサトさん。しめしめ…。これで少しは話が楽になりそうだ…。

 

「あの…起動実験を覚えていると…?」

 

「はい。その、リツコさんによく似た黒髪の女性とその娘さん。そして父、水色の髪の少女が居ました。」

 

あながち嘘は伝えていない。地下で沢山の綾波を見た時に思い出した記憶と初号機に残ってる記憶を結びあわせた結果の産物だ。

 

「シンジくん…それ以上は最高機密に触れることとなる。NERVの関係者としてこれ以上言及は黙認できないわ…。」

 

「母の…話ででもですか?」

 

暗い表情を浮かべながらそう呟く。もちろん悲しくもなければ悔しかったりもしない。リツコさんを黙らせるためのフェイクだ。

 

「分かったわ。要するに貴方はあの中で母親の残滓を見つけた、そしてあの戦いはその母が導いてくれた…と?」

 

「そう…なりますね…。説明できなくてごめんなさい…。」

 

涙目で謝る。これもまた演技だ。我慢ならずミサトさんが先に声を上げる。

 

「リツコ!それ以上はもう聞くのは止めなさい!この子も疲れてるそれに…これ以上過去のトラウマを掘り返すのは大人として子供にやっていい事ではないわ。」

 

顔を赤くしたミサトさんがリツコさんを止めに入る。でもだってを繰り返すリツコさん相手に引けを取らずに詰め寄る。

 

「リツコ!?アンタだって掘り返されたくない過去の一つや二つ有るでしょうよ!」

 

「ミサトに言ってもわかることでは無いわ!これはNERVにとってこれからのチルドレンたちにとって大事なことなのよ!?」

 

「だからといってこれ以上は黙認できないわ!」

 

やいのやいのと繰り広げられる論争にいてもたってもいられなかった僕はトドメを刺すことにする。

 

「思い出したくもなかった…。あの日から…父さんも変わってしまった…。必要ないって言ったのに…。僕にしか出来ないからって呼び出されて…うぅ…。」

 

泣き落とし。鉄面皮のリツコさんに効くかどうかは分からないがミサトさんには効果覿面だろう。見事なまでに顔を赤くしこれ以上続けるなら絞め落としてでもこの尋問じみたカウセリングを終わらせると釘を指してくれたのだ。

出会って数刻とは言えど僕の心配をしてくれるのはやはり葛城ミサトであると実感したのであった。

 

「はぁ…。わかったわ。これ以上は止めておくでもね?貴方も報告書を纏めねばならないのよ。それに今日乗った男の子が苦戦しないで勝ちました。しかも初号機が変形して。なんて書ける?ましてやそれは模擬戦では無い、正真正銘、第4の使徒よ。」

 

「っ!でもねぇ!」

 

違和感の正体がここに明らかにされる。第4の使徒?僕が知っているアイツは第3の使徒であり水の天使サキエルの名を冠している。なのにも関わらずアレには名前はおろか番号さえも違うのだ。よってこの世界は僕の知る補完計画が遂行され僕の手によって頓挫される世界線ではない、そういうことだろう。

一応疑問としてリツコさんに投げかけてみる。

 

「ち、ちょっ!あれ…4番目なんですか!?」

 

「えぇそうよ?」

 

「シンジくん?どうしたの?」

 

心配そうに覗き込むミサトさん。その谷間からはこぼれんばかりのムニムニが…とダメダメ、そういうときでは無い。

取り繕うように言葉を絞り出す。

 

「え、あぁ。あれが初めてではないんだなぁと思って…。」

 

「えぇ、そうよ世界で4番目の使徒。第3の使徒はベタニアベースに。第2の使徒リリスは本部の地下にそして第1の使徒は存在は確認されているけどその実態が掴めていないの。」

 

特秘事項としてその存在を偽られていた第2使徒リリス。こちらの世界では偽ることも無くリリスと公言されている。

リリス、我々リリンの祖でありエヴァ初号機のオリジナル、それではアダムは何処へ?なんだかややこしくなってきた…。しかもアダムが第一の使徒ではない?それは無い…。だとするならば…。

 

「わかり…ました。」

神妙な面持ちで顎に手を当て答える。なにか引っかかるようでリツコさんが言葉を連ねようと口を開く。

 

「シンジくん…貴方は…。」

 

だが僕はそれを許さない。今憶測でものを語られ僕が使徒として処理されてしまうのは本意では無い。それにいつもと違う世界になんだかワクワクしてしまっている…というのが本心だ。

 

「リツコさん。それは言及するべきでは無い。確たる証が無い上で断定できる証拠がない以上言及すべきじゃない…。」

 

先程までと打って変わってひ弱な少年の表情では無いそれを見てたじろぐリツコさん。

 

「何よりもこの施設、この街を守りたいという気持ちはさして貴方たちとは変わりない、だとするなら余計な事を言う必要は無いのではないでしょうか?」

 

「…。あなたは一体…。」

 

「僕が碇シンジということに変わりはありません。今はそれではダメでしょうか?いずれ理由がわかるはずです。それまでご勘弁を…。」

 

ひらりと後ろを向き立ち上がる。

 

「それに、父との約束もありますし、シャワーを浴びたいんでそろそろ…。葛城さん!道案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」

 

「え、えぇ。ということで今日はもうお開きね。リツコも無理強いしてこの子のトラウマ掘り起こさないでよ?」

 

リツコさんに最後に釘を刺すミサトさん。当面これで質問攻めにあうことは無いだろう。しかし、科学者の感というものは鋭い。あれ以上の発言を聞いてしまえば引くに引けずに仮説を立てまくってそのうち正解へと辿り着いてしまう。

未来の装備を携えた初号機のその機構を調べでもされれば余計に僕の正体。というかこの僕という存在がどういうものかというのがバレてしまいかねない。

本当に困ったものだ…。

 

「…タイム…リープ…ねぇ…?」

 

ボソッと独り言が聞こえた気がした。この短時間でそこまでの答えを導くあたりやはり侮れないと辟易とした。

 

ミサトさんに案内されシャワー室へと足を急がせる。

乾いてしまったLCLはとても厄介だ。

ズッキーニを切った後の断面を触ったことはあるだろうか。

あの無色透明の液体は乾くと嫌に肌を突っ張り気持ち悪くしかも洗っても中々落ちない。それとよく似た現象がLCLでも起こるのだ。

それとなんとも言えぬベタつき、極めつけはその血なまぐささこれは何度ループしようが改善することも改良することも叶わなかった。だから入念に身体を何度も洗うしかないのだ。

 

「あー気持ち悪い…。何とかならないもんかな…。」

 

「そうねぇ…。LCL、エヴァのパイロットでしか触れることの無いものだもの、他の人に改善を願っても難しいとは思うのよね?」

 

「葛城さんも1回浸かれば分かりますよ…。この気持ち悪さ…。ん…?葛…城さ…うわぁぁぁ!?シャワー室ですよ!?ここ!」

 

簡易的な仕切りしかないシャワー室、その向こうには扉にもたれだらしなく立っているミサトさんの姿。あまりに自然に話しかけてくるから気付かなかった。

 

「仕方ないじゃないの。洋服も何も持たないでシャワー室に入っていっちゃうんだもの。」

 

あー…。確かに着替えるものが何も無いのを忘れていた。態々持ってきてくれたのだろう。なんと気の利く…だけど覗く必要はあるのかな…?慣れてはいるけどさ…。

 

「案外逞しい身体してんのね。」

 

「ん?まぁ鍛えてますから。」

 

過去の世界の事象は次の世界には反映されない。それは過去に何度も試みたので間違いは無い。

だが、多少性質が異なるのか、僕の意識が移る前の彼がそうしていたのか、この身体はひ弱だった頃の自分よりも多少は筋肉がついているのだ。

 

「というか後ろ姿とは言えどそこまで見られると恥ずかしいんですけど…。」

 

「あら?それは失敬。代わりに私のでも見とく?」

 

「いや、大丈夫です。」

 

「そこまでキッパリ断られると私も傷つくわよ?」

 

「いえ、態々ここで見せてもらうものでもないですし、葛城さんは魅力的ですよ。十二分にね?」

 

「言ってくれちゃって…。妙に大人びてるのね貴方。」

 

「あれだけ嫌味な父親であれば子はしっかり育つものですよ。葛城さん。」

 

「ミサト。でいいわよシンジくん。」

 

おおよそシャワールームですべき会話ではないとは思うが…。

何となく声色で少し照れているのは分かった。

 

「あの…そろそろ出たいんですけど…。」

 

「あぁ、ごめんなさい。」

 

「流石におしりのほくろの数まで数えられてしまうのはまだちょっと恥ずかしいですからね。」

 

ケラケラと笑いながらそう告げる。

そこまでしないわよとそっぽを向いたようだ。

 

「椅子に着替えおいておくわね。私のだけど、シンジくんなら多分入るはずだから。」

 

「わざわざすみません。洗って返しますね。」

 

体を拭き洋服を手に取る。パンツまでとはいかなかったのは仕方ない。だがキッチリと畳まれているそれを見てミサトさんらしからぬなとも思った。それはシワがなく綺麗にアイロンがけされた真っ白なワイシャツにジーパン、それが汚れもなく綺麗に洗濯されているからだ。着替えを済ましミサトさんに声をかける。

 

「ミサトさんって几帳面なんですね。」

 

別のミサトさんに聞かせたら嫌味かっ!って言われそうだけどね。

 

「そうでも無いわよ。それで昔嫌な思いしたってだけの事よ。」

 

苦虫を噛み潰したような表情をうかべながら頬を掻く。苦い…思い出ねぇ…。まぁそんな思いをこの世界のミサトさんにもさせる訳にはいかないからね。どうにかしてでもあの人の暗殺とミサトさんが心を許すのは防がなければならない。

 

「さ、お父さんが待ってるわよ。行きましょ。」

 

差し出された手を握りシャワールームを後にした。

 

「いい?ーーがーーで…。」

 

「ち、ちょっ!ミサトさん!」

 

「ん?なーに?」

 

「手!手が!」

 

「あらあらごめんなさいね。お姉さんと手を繋ぐの恥ずかしかったかしら?」

 

イタズラに笑うミサトさんを見て以前の生活を思い出す。どんなにだらしなくても僕やアスカを尊重して助けてくれたミサトさんを。でもやっぱり恋人繋ぎは恥ずかしくないか!?

 

「あ、いや…そういう訳じゃ…」

 

「ならいいじゃないの!はぐれたら大変だし…ね?」

 

強引に手を繋がれたまま案内を続けられる。やっぱりちょっと恥ずかしい…。

 

以前と違うのはやはりミサトさんがとてもしっかりしている位だろうか?道に迷うことも無く本部内を軽く案内し剰司令室までそう時間はかかることも無く辿り着いた。

 

「さ、着いたわここが司令室よ。お父さんとちゃーんと話してくるのよん?」

 

「ん、えぇはい…。」

 

ぱんっと肩に手を置かれくるりと扉の正面を向かされる。煮え切らない僕の返事を聞いたミサトさんなりの激励か

 

「いい?うじうじしてても仕方ないのよ!逃げないでお父さんと向き合うそう決めたんだからどーんと自分の胸の内吐いてくれば良いのよ!お姉さんはここで待っててあげるからさ!」

 

ドンッと背中を押されて前につんのめる。相も変わらず豪快な人だ。でもその心意気が嬉しくてつい頬が綻ぶ。何度話そうとしてもダメだった父が面会を取り付けたのだ、この機会無駄にするわけにはいかない。そう決心し扉を数回ノックする。

これがこの世界の父との初めての邂逅、となるのであった。

 

コンコンっとノックをすると父さんの入れの声。「失礼します!」と声を張上げて入室する。やっぱり緊張するもんだ。

 

「碇シンジただいま到着しました!遅れてすみません!」

 

全力で頭を下げる。その姿に一瞬キョトンとした様子だった。

 

「そ、そんなに畏まらんでも良い。父と子の話だろう。」

 

「ははは。それもそうか…。久しぶりだね父さん。」

 

「あぁ…。久し…ぶりだな。」

 

ん?なんか変な感じ…。その違和感の正体はすぐに分かることとなる。

 

「まぁもう僕が母さんの墓から逃げ出して3年だもんね、長いような短いような…ね?」

 

「あぁ…。シンジ…。悪かった。度重なるお前への行為、私は今更ながら申し訳ないと思っている。」

 

サングラスを外し真っ直ぐに僕を見据える父さん。んん?度重なる…行為…?申し訳ない…?

 

「はい?」

 

素っ頓狂な声が僕の口から漏れる。何せ何巡もしているのは僕だけのはず、なのにこの父から漏れ出たこの言葉は明らかにこの世界だけの話ではない。どういうことだ?

 

「…。」

 

「えっと…?」

 

「私もお前と同じように何度もこの世界をやり直し、そして何度も私の計画はお前によって崩れてきた。」

 

「ええぇ!?!?」

 

「その中で気づいたのだ、もっとお前に優しくしれやれば、もっと父親らしくしてやれればと…な…。」

 

困ったことにこの父さんも世界を何巡もしている様だ。

話を聞けば何度も世界をやり直し母さんに会おうとしたが尽く失敗してきたようだ。下手に僕に優しくすればキモがられ、周囲に優しくすれば離反され、とんでもない人生だったと語る。

まぁなんというか不器用な父さんらしい…。

かく言う僕も綾波の好感度を極限まで高めてみたり。アスカと付き合ってみたり…はたまたミサトさんとも…なんて色々とやっては来たがもうほぼこの辺は娯楽だ。普通に過ごすだけでは飽きてしまった僕なりの娯楽。

 

「それで謝ってきた…と?」

 

「あぁ。」

 

「まったく…。でも多分父さんは僕の世界にいた父さんじゃ無いよ。僕は何度も未来を見たと言って過去を須らく変えてきた。それでも父さんの態度は変わることもなかったしね。第一にこの世界は僕の知る世界では無い。使徒に名前が無いもの。」

 

「確かに。そう言われれば私の通ってきた世界もシンジお前は未来を知っている様子は無かったな。」

 

「だろうね…。でもまぁこの世界の父さんとは上手くやっていけそうだね。謝ってくれてよかったよ。」

 

父さんが準備してくれたであろうジュースを早々と飲み干しからになったグラスをカラカラと回す。

 

「まぁ父さんも色々とあったみたいだね…。」

 

「あぁ…。」

 

「それで?この世界でリツコさんに手出してんの?」

 

「!?何故それを!」

 

図星を突かれたのか動揺する父。冷たい視線を送りながら話を続ける。

 

「当たり前だろう!?何巡してると思ってるんだよ…。」

 

「うぐぐ…。0だ。」

 

「ホントに?」

 

「ホントだ。」

 

「嘘ついてない?」

 

「…。」

 

「嘘ついてんじゃん!」

 

「ち、違う!私とてユイが消えてからのリスタートでは無いのだ!お前がここに来る直前から始まるんだぞ!?」

 

「要は過去は消えないと…。困ったなぁ…。!そういえばある世界の時、リツコさんと綾波が仲良くしてて…父さん置いてけぼりにされてた時も…。」

 

「私に興味が無くなった世界があったのか!?」

 

「うん…。まぁ父さんは無理やり手篭めにしてたけどね…。」

 

「すまん…。」

 

「まぁ今の父さんじゃないからいいよ。」

 

ううむと頭を抱える父に微笑みかけ状況の整理を促す。

 

 

「うぅん…。17番目まで居たのが13とは…。しかも1番目の使徒はカヲルくん、オマケに13番目と言う有り得るはずのない番号まで堕とされると…。」

 

僕の出した使徒にマルとサンカクを付け情報を整理していく。覚醒するタイミングは大して変わりないようだが、

 

「それは私のせいだ。だから本来の使徒の数は12という事になる。例外を除いてな。」

 

「まぁ、でもね…。厄介なのがいくらか居ないのはいい事だよ…。僕の知っている情報と父さんの情報を合わせればこの世界に順応出来るはずだよ。」

 

「あぁ…。」

 

「まーでも…。11番目の使徒が僕かぁ…病むなぁこれ…。」

 

「レイを助けるために起こしたサードのせいだ。」

 

「んならまぁこれも回避できるとして…。きっと一筋縄じゃいかないよこの世界。」

 

「あぁ…。」

 

とりあえず初回の打ち合わせとしては上場だろう。父さんが母さんと会いたいのは相変わらずのようだが、それでも僕を大切にしたいという気持ちが芽生えたのは大変いいことだとは思う。だからこそ僕はこの世界の父さんを信じてみたい。そう思った。

 

「行くのか?」

 

「うん。流石に長居し過ぎると部屋の前で待ってるミサトさんがね?」

 

「葛城君ずっと待っているのか?」

 

「まぁね?だから悪いし今日は帰るよ。それに僕も今日は少し疲れたからね…。」

 

「あぁ。シンジなんだ…体には気をつけろよ。」

 

「父さんもね?」

 

なんとも親子らしい会話をようやくできたのでは無いだろうか。この長い輪廻の中で初めてな気さえしてくる。

 

「じゃあね?」

 

「あぁ、また…な。」

 

そう言って司令室を後にする。壁にもたれているミサトさんがこちらに気づき声をかけてくる。

 

「大丈夫だった?」

 

「まぁ、なんだか悩んでいた期間がアホらしく感じるほどに親子の会話出来たかなって気がします。」

 

「そっか。じゃあお父さんと暮らすんだ?」

 

「まさか。流石に3年の蟠りがこの一瞬で打ち解ける訳は無いですよ。当面はNERVの宿舎暮らしですかね?」

 

「そう…。ならちょっちまってて‎?」

 

そう言うとカツカツとヒールの音を鳴らし司令室をノック、そして部屋に消えていった。

5分、いや10分ほどだろうか、経った頃に出てきたミサトさんは

 

「なら当面はうちで暮らしましょ?」

 

と優しい笑顔でそう言ってくれた。

 

初号機が爆風から守ったおかげで大した損傷もなく無事に動くルノーに2人で乗りミサトさんのマンションへ向かう。

 

「しっかしまぁ、初戦であの大勝利とはね。恐れ入るわ!」

 

「それは…マグレですよ。第一あんな化け物と戦うのが怖くないやつなんて居ませんよ。」

 

大嘘。何百回も繰り返しアレを倒していれば嫌でも慣れてくる。レリエルとバルディエルは苦手だがそれ以外は特に問題は無い。

 

「それでも普通の人には出来ないことなのよ?だから胸を張っていいの。この街を人々を護ったそれだけなんだから。」

 

やっぱり変わらないなミサトさん。どれだけ嫌われるように仕向けようとも最終戦では必ず僕の身を案じずっと僕を支えてきてくれた母であり姉であり、ある時は大切な女性であったミサトさん。だからこそ、なぜだか涙腺が緩くなる。それを悟られないように僕は車窓から外を眺める。木々の間から合間見える第三新東京市は今日も変わらずさんさんと夕日を浴びて煌めいている。僕の護った街。必ずや今度こそ…とその決意をもう一度確認した。

 

「シンジくん。もし逃げたくなったら、逃げたいことがあったら逃げ出してもいいのよ。でもずっと逃げるのはダメ。逃げて考えて立ち向かってそうしたらまた逃げていい。人はそういう生き物だから。ずっと立ち向かいなさいなんて立派なことは言わないわ。」

 

窓の外を眺める僕の右手を握りしめ呟く。優しい声色で。

 

「はい。」

 

「私の父はね?NERVの職員で人類補完計画の提唱者だったの。それを実験すべく南極に向かった。そこで眠っていた二本の槍と使徒を用いて卵に戻す実験をしたの、だけどそれは失敗。戻る過程でリリン、私たちヒトの遺伝子とその使徒の遺伝子が無理に混ざりあって大爆発を起こしたの。ソレがセカンドインパクト。だから私の父は大罪人なのよ。」

 

「…。」

 

何度聴いても悲惨な話だ。父が目の前で自分を助けるためにLCLに戻り自分だけが生き残った。葛城博士が提唱した人類補完計画はどうしようもなく無惨にも散っていった。その人諸共…。

忘れ形見を残して…。

 

「だから私は父を恨んだの世界を変えてしまった父を。そして生き残った自分をね。」

 

「はい…。」

 

「だから私怨だけど私は使徒が憎い。父を殺した使徒がね。だからNERVで作戦課長をしてるのよ。ナイショよ?」

 

「はい…。でもなんで僕に…?」

 

「それは貴方が私に似ているからよ。」

 

「そう…ですか?」

 

「えぇ。でも大人の女性に対してデートしませんか?なんて誘い文句で日用品買いに行かせるのは貴方くらいじゃないかしら?」

 

「すみません…。運転させてしまって…。」

 

「いいのよ。買い出しはしなくちゃならないもの。何せ同居人が増えるいい機会だもの。ね?」

 

サイドミラー越しに見える優しい笑顔。ミサトさん、もしやこれで僕が泣いているのが見えていたのか…。だからあんな話を…?

 

「さ、今日はパーッとやりましょ?中学生1人養うくらいどうってことないくらいの蓄えは有るんだから。」

 

「はい…。」

 

「あなたがデートって言ったのにそんなに切羽詰まった表情でどうするのよ全く…。レディを悲しませるのはノンノンって教わらなかったのかしら?」

 

「あ、いや…すみません…。」

 

やはり僕はミサトさんに敵わないみたいだ。

 

 

「良かったんでしょうか?こんなに買ってしまって…。」

 

「いいのいいの!子供が気にすることじゃないもの。」

 

そう言って運ばれるカートには沢山の食品に衣料品、シャンプーに日用品などが入っている。それに加え嗜好品の数々。

さらに面白いのがインスタントや出来合いの惣菜ではなく、ちゃんとした野菜、そして肉類、今や貴重品となった魚など多岐にわたる食材をカゴに入れているのだ。

 

「ミサトさんって自炊するんですね。忙しくて出来てないのかと思いました。」

 

僕のこの発言にハニカミながら「少し…ね?」という様は何故か照れているようであった。

その新鮮な反応が僕の悪戯心を擽る。

 

「たまに。の量じゃないですよね?これ。」

 

「うー…。シンジくんの為を思ってなのよ…。育ち盛りなのには変なもの食べさせるのは良くないなって思ったから…。」

 

その恥ずかしげな表情にたいそう満足した僕は満面の笑みで「ありがとうございます。」と答えた。ブーと唇を尖らせ恥ずかしがるミサトさんがさらに唆るというものだ。

 

「さ、着いたわよ。」

 

ショッピングモールから大体15分程だろうか。車を走らせた先にいつもの見知ったマンションへの辿り着いた。

いつものアレを聞きたく僕はわざとらしく

 

「お、お邪魔します。」

 

「ち が う で し ょ ?」

 

「へ!?」

 

ほら来た。ムッとした優しい怒りの表情を浮かべて指摘する。

 

「ここはあなたの家よ。家に帰った時はなんて言うの?」

 

「た、ただい…ま?」

 

優しい笑みに戻りそっと囁くように言う。

 

「はい。おかえりなさい、シンジくん。」

 

あぁ、やはり僕はこの優しい笑みが好きなんだ…。

 

「ちょっち散らかってるけど…気にしないでね…?」

 

そういうミサトさんに相槌をうち部屋に入る。ところがどっこい、部屋には脱ぎ捨てられた洋服もなく、飲み干した缶ビール、ゴミの類も全くないどころかペットを飼っているのに床にその痕跡1つすら残っていないのだ。

 

「え…いや…。相当片付いてますよ…これ…。」

 

「そ、そうかしら…?でも荒目立ちするかもしれないからあまりしっかり見ないで欲しいわ…。」

 

恥ずかしそうにそういうミサトさん。既に僕の荷物はこちらに運ばれてきているようであった。

大量の荷物をキッチンへと下ろし一息つく。

 

「ふぅ…やっと椅子に座れた気がするわね…。」

 

「ご苦労様です…。わざわざ僕のために…。」

 

「もう何度も礼を言わない!一回で充分よ。それより…。シンちゃん。あれよアレ。」

 

「え゛もうですか?」

 

「いいのよ目出度い日は。シンちゃんも飲む、でしょ?」

 

イタズラな笑みで僕を誘う。当たり前だ飲まないわけが無い。これだけ暑い日にあれだけのことをして飲まないわけが無い。

 

「んじゃお言葉に甘えて。」

 

「一先ず前哨戦ってことで〜!」

 

「「乾杯!」」

 

プシュッと心地いい音が鳴る。缶ビールはこれでなくては。

コップを並べそこに注ぐなどというお行儀のいい真似などはしない。カンっと缶の縁を合わせ一気に煽るのだ。

 

「くぅぅ〜!これよ!やっぱり!」

 

「ん〜!染みますね…。」

 

「あらぁ?シンちゃん中々悪いことしてきたのねぇ?」

 

肉体年齢は14とはいえ精神年齢はそれ以上だ。飲んでいない訳が無い。

茶を濁すようなことをしまいとミサトさんはそれ以上追求することなく缶を煽る。正味えびすは苦手だがサッポロであればいくらでも飲める。

物欲しそうにアルコールコーナーでサッポロを眺めていたかいがあったというものだ。

 

「久々に飲むとサッポロも美味しいわね。」

 

「僕は1番好き、ですかね。」

 

ニヤッと悪い笑みを浮かべる。優しい笑みを浮かべたミサトさんは「私はやっぱりえびすかなぁ」などとおどけて見せる。

 

「とりあえず先物しまいましょう?」

 

「そうね、引越しの荷物は…。」

 

「後回し。です。」

 

「それもそうね。」

 

2人で顔を見合わせて笑う。

 

「それじゃあ私着替えてくるわね。流石にかたっくるしくて…。」

 

「あぁ、なら僕は冷蔵物とかしまっちゃいますよ。」

 

そう言い残しそそくさと自室へ消えてゆくミサトさん。僕も立ち上がり袋を開け冷蔵物をしまっていく。

思った通り冷蔵庫の中は差程荒れていない。ペンペンの食事もしっかりと個舗装され袋に包まれている。

腐っているものも無いようで一安心だ。

次に手をかけたのは衣服。洗濯糊が付いているのが不快な僕は洗濯機を借りようとミサトさんに声をかける。

 

「ミサトさーん。洗濯機借りますね。僕の洋服洗っちゃいたいんで…。」

 

「はぁーい。洗剤も柔軟剤もすぐ分かると思うからおねがぁい…?ち、ちょっと待って!!」

 

時すでに遅し、脱衣所のアコーディオンカーテンを開けた僕はそこに干されているミサトさんの下着に目が止まる。

oh...Jesus…。

相も変わらず派手で少し安心したがその規格外の大きさに目を奪われる。

 

「でっっか…。」

 

「あちゃー…遅かった…。ごめんシンジくん…。」

 

「あ、いや…。」

 

規格外の大きさに目を奪われたままから返事をする。

 

「ちょっ…ちょっと見すぎじゃない…?」

 

恥ずかしそうに顔を赤らめて垂れ下がった下着を回収する。

うん。新鮮でとても良い。

 

「その…使うのは構わないけれどちゃんと…洗濯…するのよ?」

 

恥ずかしそうな笑みを浮かべている。そんな姿を見ればこっちだって恥ずかしくなるし使うって…。

 

「へっ!?」

 

「いや、だから…コレよ…コレ。」

 

手を筒にし上下する。ミサトさん、その表情でそれはちょっと…。よくないな…。

 

「つつつ、使いませんよ!何言ってるんですか!」

 

僕の反応を見てかイタズラな笑みが帰ってくる。ニヤニヤとしながら

 

「あらぁ?お姉さんはシンちゃんのお眼鏡に適わないのかしら?」

 

「あ、いや…そんなことは…。その…充分魅力的で…あう…。」

 

たじろぐ僕を見てぷふっと吹き出すミサトさん。つられて僕も声を出して笑う。なんだかこういうの久しぶりだな。

他人に迷惑をかけぬよう宿舎に住むのが定番となっていたがやはり人と暮らすのは良い事だ。

 

「良かった、シンちゃんが楽しそうで。」

 

「ミサトさんも楽しそうですよ?」

 

「そりゃそうよ。やっぱりいいわね、人と暮らすって。」

 

「そうですね…人からしか得られない養分って有りますよね。」

 

1人が良いふりをしていた時期もあった、誰にも頼らず孤独に闘い全てを護った世界もあった。それでもやはりこうして何度も世界のやり直しをさせられるのはそれが人として適切では無いからであろう。人との繋がりを持ちそれを紡ぎ折重ねる、それがヒトが生きる上で大切なことだというのを再認識させられる。

 

「それじゃ…ご飯にしましょ?ぱぱっと作っちゃうわね。」

 

「なにか手伝いましょうか?」

 

「良いのよ。昔の言葉にキッチンは女の戦場って言葉があるの、この多様性の時代そんな言葉はそぐわないだろうけど今日くらいは貴方の歓迎会だもの、私に作らせて?」

 

何度観ても癒されるその優しい笑みを見て僕は照れるしか無かった。部屋着姿は変わらずゆるっとしたタンクトップにデニムのショーパン。然してこの姿、中学生に対しては刺激が強すぎる。

 

 

「ちょーっち待ってね?もう少しだからぁ」

 

手際よく料理を作り次々と並べられる料理の数々、以前のミサトさんであれば食卓に並んでいたのはダークマターの数々であっただろうに…。丁寧に盛りつけされたそれらはとても鮮やかで中学生という成長期真っ只中の僕の為を思ったフードセレクトなんだと思う。並ぶそれらを眺め舌鼓を打つ。

久々の他人の手料理にワクワクしている自分がいる。

 

「さ、最後は唐揚げよん。たーんとお上がりよ?」

 

「ミ、ミサトさぁん!」

 

「な、何!?どうしたの!?」

 

「いや…感動してしまって…。久々にちゃんとしたものが食べられそうで…。」

 

はっとした顔をして気難しい表情に変わる。

 

「そういえば…。シンジくん親戚の家で…。」

 

「はい…まぁまともな物なんて食べさせて貰えませんでしたよ。父が養育費にと渡していた金もさも自分たちの私財のように扱い年間数千万を超える額着服してましたしね。いやぁあの顔は忘れませんよ。シンジくんお前の部屋だと言って外に立てられた掘っ建て小屋に押し込まれた時はいつかこいつらぶっ飛ばしてやるって思うくらいには腹立たしかったですよ。」

 

「シンちゃん…。」

 

「ま、今じゃこんなにいい物が食べられている。本当にありがとうございま…うわぁ!?」

 

突然後ろから抱きしめられる。優しくギュッと…。

 

「何も遠慮はしなくていいの。甘えたい時に甘え、当たりたい時には当たればいい。それが家族なの。」

 

「…ありがとうございます。」

 

「無理はしないこと。何かあったら必ず相談すること良いわね?」

 

「それは『命令』ですか?」

 

いじらしくイタズラな笑みを浮かべて聞いてみる。

全くと呆れた表情を浮かべた後に優しい顔をする。

 

「いいえ?これは命令ではなく、『お願い』よ。」

 

「分かりました。そのお願いきちんと果たせるよう頑張ります。」

 

「さ、冷めてしまう前に食べましょう?」

 

その笑顔がなんだか擽ったい。ここまで楽しい日々はいつ以来だろうと考える。だが、いくら思いを馳せても過ぎ去った世界は元には戻らない。消えてしまった人々も救えなかった世界も…。

 

「それじゃあ!」

 

「「頂きます。」」

 

あれもこれもとミサトさんに勧められついつい箸が伸びる。どれもこれも上から目線になってしまうがとてもよく出来ている。聞けばこの世界のミサトさんはセカンドインパクトの後に引き取られた養父がしっかりしていたようで炊事に洗濯といった家事全般をしっかりと叩き込まれたみたいだ。大人になって苦労が無いようにと入念に。

 

「だから養父は好きなのよ。」

 

とにへらと照れくさそうに笑うミサトさんはとても綺麗だった。

 

「んんー。我ながら上出来ね?」

 

「美味しかったです。もう流石に入りませんよ。」

 

「無理して食べなくていいわよ。明日のお弁当にでも回しましょ。」

 

「さっきの話の続きですけど。もちろん父さんには報告済みです。」

 

まぁ割ととんでもない事をしでかしている母方の叔父と叔母。父さんに伝えた時にはものすごい顔をしていた。それこそある世界で出会った父さんのように母の愛を一身に受け育った僕を妬み憎んだその父の形相であった。

 

「その時の司令の反応は?」

 

「こちらで対処する、シンジは何も気にする必要は無い。」

 

「あっははは。シンジくん司令のモノマネ上手すぎ。リツコにも見せてあげたいわね。ぷくく…。あーおっかし」

 

酒も進みお互いに酔いが良い感じに回ってきている為に出来るモノマネだ。

箸も止まりグラスも空になりかけてきた。

名残惜しそうにグラスを2回しする。

 

「あら、飲み足りない?」

 

「えぇ、まぁ…。」

 

「明日はお昼からだしもう少し嗜みましょうか。あ、そういえばいいものが…。」

 

そう言って席を立ちキッチンの下を漁る。ツンと突き上げられたおしりが妙に艶めかしく僕の欲求を煽る。

これ以上は良くないとグラスに目線を戻し残ったものを飲み干す。

 

「あった!これよ〜これこれ!取っておいたかいがあるってもんよね。よいしょっと。」

 

取り出されたガラス製のボトル。よく見知ったその形の色は茶。そして…。

 

「!?25年!?ミサトさん激レアじゃないですか!どこで…。」

 

「養父がね、私がNERVに就職した時にお祝いにって、ね?こういう大切な時に取っておいて正解だったわ。」

 

ペリペリと封を外す音がする。完全な新品のそれを手際よく開けていく。僕は買っておいたロックアイスを取り出し僕とミサトさんのグラスへと入れる。

 

「あら、気が利くのね。」

 

「そんな貴重な物飲めるなら僕はなんだってやりますよ。」

 

「ありがと。」

 

とくとくと音を立てグラスに注がれる。封開けの香りだ。

鼻腔を擽るこの心地よい香りが気持ち良い…。

10年やノンエイジよりも綺麗な琥珀色、見ているだけでも口の中に唾液が充満する。

 

「綺麗ね…。」

 

「まったくですよ…。」

 

「じゃあ乾杯しよ。」

 

「はい。」

 

チンっと優しくグラスを合わせる。飲む前に香る。うん。やはり近くで嗅ぐとまた違った顔を出す。

口に含み下で転がす。

ずっと広がる樽の香り、そしてその味に舌鼓を打つ。

流石はオークションで何百万と付くだけの値打ちがある。

 

「んんん〜。こういうのはオンザロックじゃないとね?」

 

「大変美味しゅうございます。」

 

「あはは、変な言葉遣い。にしても趣味が渋いのね?」

 

「まぁ、やることも無かったし…。それに酒だけは無駄に常備されてましたんで…。」

 

「飲んで怒られなかったの?」

 

「バレなかったですよ?出る時に腹いせに全部水入れても多分バレちゃいないですね。」

 

「良くやるわね…。」

 

元の身体の僕は結構偏屈な性格であったようで、そのような陰湿な仕返しが僕の記憶には刻まれている。

掘っ建て小屋を与えられたとは言えどその一角。そのほかのスペースは見事に倉庫として利用されていた。そのためコレクションとして補完されていたウイスキーやらビールをしこたま飲んでやったのだ。

 

「まぁ、バレたところで…父さんのお金ですし僕に非は無いですよね?」

 

悪戯な笑みを浮かべミサトさんの返答を待つ。

 

「ま、それだけの事をシンちゃんにしたのだから妥当よね。」

 

「です。」

 

ケラケラと笑いながら談笑は続く。荷物の片付けも忘れて夜更けまで。

そろそろお開きにして寝ようかとなった時に、ベッドの上が悲惨なことになっていることに気づく。

1人で片すのでミサトさんに寝るように促したが寝るところがなければ一緒に寝ればいいと寝室に招かれてしまった。

背中合わせで布団に入る。直ぐに眠りに落ちたミサトさんとは裏腹にボクは悶々としたまま朝を迎えるのであった。




2話目です。
えぇ、なんにも無い説明回的な…。
でもちょっぴりシンジとミサトさんの関係を築くのに大事な回だと僕は思っていますとも…。
拙い文章、何度か読み直して書き足し消して書き足しを繰り返した結果今の形に落ち着きました…。

文章力…養わないといけないなと思う20代後半でした。
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