Re Take of Evangelion   作:Air1204

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人の立ち入れる所まで歩みを進めるシンジとその一行。
だが見えぬ目的地に徐々に疲れが見えてくる。
顕著なのはアスカとソウリュウの2人を夜な夜な相手にしているシンジだった…。


第3村の人達の温かさに触れる篇
RE:EVANGELION:3.0+1.01 THRICE UPON A TIME その①


「ア゙ア゙〜。疲れたァァァ!もう限界!」

 

「泣き言言うなバカ!まだ全然集落まで距離あるんだから歩かないとどうしようもないのよ!」

 

あれから赤く染った大地を何日も練り歩く、それこそ寝る間も惜しんで。最初こそワイワイと会話があったもののとうとう話題も尽きたのか誰1人口を開かず重苦しい空気が漂って居た。

流石に耐えきれずに音を上げたのは僕だ。カヲル君も徐々に笑顔を取り戻し普通に会話もしていたが明らかに疲労が見えるようになってきた。S2機関も万能ではないってことだ…。

 

「そりゃアスカは楽だよ!相手にしてんの1人なんだから!僕なんて2人だからね!?腰やら太腿やら悲鳴をあげるよ!」

 

「ッ!そんなでかい声で言うやつが居るかバカ!」

 

「言わなきゃ止まってくれないじゃないか!ソウリュウも何か言ってやってくれよ!」

 

「あら…。ん〜、なら次は3Pにしとく?そっちの方が早く済むんじゃない?」

 

「「そういう問題じゃなぁーーい!!」」

 

静まり返った赤い町に響く僕達の喚き声。そのおかげか近くに偵察に来ていたであろう古いJeepが休憩していた僕らの前に止まった。

 

「おう!式波。その面々も遅くなってすまなかった!」

 

その壮年期の眼鏡の男は僕たちに向け頭を下げる。

しっかし…この顔はどこかで…。

 

「おっそーい!あとどんだけ歩けばいいか分からなかったじゃない!」

 

「悪い悪い。悪かったよ式波。みんな、車に乗ってくれ、あ、あ、碇お前は俺の隣だ。」

 

僕の苗字をさも友達のように呼ぶ男に助手席に詰め込まれる。他の面々もゾロゾロと車に乗り込む。

 

 

程なくして車は荒廃した街を抜け山間部を抜け走り続ける。

後部座席ではカヲル君、アヤナミ、ソウリュウはコクコクと船を漕いでしまっている。そりゃあ仕方ない、何せ殆ど眠れていない状態だったからね…。でもこの人はなんで僕のことを知っているのだろう…。

 

「あの…どこかでお会いしましたっけ…?」

 

「おい…。まさか俺だってわかってないなんて事ないよな…?」

 

「全然分かりません…。」

 

「はぁ…そうだよなぁ…俺ももうおじさんだからな…。相田だよ、相田ケンスケ。中学ん時3人で馬鹿やったじゃないか…

 

ケ、ケンスケ!?いやだって…こんないい男に…。あん時は結構ヒョロっちくていかにもオタクっぽくて…えぇ…?

後ろのアスカに目線を送ると気づいていなかったの?とでも言わんばかりの表情を浮かべている。…14年も経ってんだよ…気付ける訳無いだろ…。

 

「まぁ、無理もないか…。碇は初号機と一緒に眠っていたもんな。」

 

「あ…いや…。気づけなかった僕が悪いよ…。」

 

「気にしなくていいさ。さ、もうそろそろ着くぞ。」

 

そう言うケンスケはグッとハンドルを握り直し前を見据える。

その声につられ前を向くとこの赤くなった世界には似合わないであろう青々とした木々が目に入る。大地に深々と突き刺さり轟々と音を立てて動いているのは相補性L結界浄化無効阻止装置。僕やマリさんの助言がなくとも時間が経てばリツコさんが解析して自分達で制御できるようにできてしまうのか…。さぞあの人の科学力というものは常軌を逸している。

 

 

「良い?アタシと渚はケンケンの家に行く。」

 

突拍子もない事にびっくりしてしまう。

 

「えぇ!?なんでさ!僕はアスカと一緒じゃ無いの!?」

 

「仕方ないでしょ。アタシが村にいると迷惑掛けるのよ。それは渚も同じ。だったら人目のつかないケンケンの所にいた方が安全ってだけ。」

 

「使徒だから…ってやつか…それ、言ったら僕だって13αだよ?」

 

「いいんだよ碇、お前は…。お前に会いたいってやつがいるんだ、着いてきてくれるか?」

 

「え、うん…。」

 

 

ソウリュウとアヤナミを連れて村の中心を歩く。まさか14年後とは思えぬタイムスリップでもしたかのような街並み。平屋や共同用の宿舎が有るだけで近未来チックな機械の類は全然見当たらない。

時折動いているのは路面電車の格納庫だろうか?もう、何十年も前のモノではあるが、それがギギギと錆び付いた音を出しながらも動いている様はヒトの技術力の高さが伺い知れる。

 

「ここは、第3村さ。サードインパクトによって行き場を失った人達の集落さ。大体1000人ぐらいがここで生活してるな。お前がさっきっから見てるあの車庫は配給所。週に3日日を決めて日用品や食料を配ってる。」

 

「配ってるって…。」

 

「ここでの生活では物資が限られてるんだ、水も食べ物も昔みたいに湯水の如く使える訳じゃないんだよ。」

 

「…それもこれもサードインパクトのせいか…。ごめん…。」

 

バツの悪い顔を浮かべた僕の肩にケンスケの手が置かれる。

 

「何もお前は謝る必要は無いよ。ニアサーはきっかけであって原因じゃ無い。碇、お前は人に誇れる立派なことをしたんだ、お前が居なかったら俺達は既に死んでるさ…。それに親の為に子が頭を下げるなんて間違ってる。」

 

「…ありがとう。」

 

14年という年月は幼かったケンスケの精神を成長させるには充分な時間だったみたいだ。

 

「会わせたい奴って言ったろ?多分お前もビックリするしアイツもビックリするだろうよ。なに、変なやつじゃない、お前も俺もよく知ってる人物だ。」

 

コンコンと診療所と書かれた扉をノックするケンスケ。奥からは少し大人びてはいるが聞き覚えのある声が聞こえる。

 

「へいへい。ちょいお待ちを…。」

 

ガラガラと扉が開きその先に立つ白衣の男性。

 

「ケンスケやないか…どないしたんや…?…シンジ…!?シンジやないか!なんや元気そうやないか!」

 

バンバンと僕の肩を叩く彼は。

 

「トウジ?」

 

「せや!鈴原トウジ!おおきに!まさか14年も経っとるって言うんに子供んまんまの姿とは…。でも元気そうでなによりや!」

 

カラカラと笑うトウジ、その笑顔には昔の面影が残っている。

 

「な?言ったろ懐かしいやつがいるってさ。んじゃ俺はちょっと出る。碇と他の2人も任せるよ。」

 

「おう!お前もいそがしいやっちゃのう…。シンジと…綾波?あと式波…?なんであない雑な説明やったんや?」

 

「私、綾波レイじゃ無い。」

 

「はえー…よう似とるけどなぁ…。んでお隣さんは?」

 

「ソウリュウ…です。」

 

借りてきた猫のように大人しいソウリュウ。それもそうか。エヴァにダイレクトエントリーする前は大人達に良いように実験道具にされていた訳だし…人見知りしても仕方ない。

 

「アヤナミんそっくりさんと、ソウリュウさん、シンジ。ワシの仕事ももうじき終わる。うちに来て飯でも食うていけや!ワシの自慢の嫁さん紹介したるさかい。」

 

「アスカから聞いたよ、委員長と結婚したんだって?良かったじゃないか。」

 

「へへ…。よせや、照れるやろ。娘も生まれてのう…それがまた可愛ええんや…。」

 

「僕も楽しみだよ、委員長や娘さんに会えるの。」

 

あと五分だけ待っとってくれや!と言い残しトウジは扉の奥に引っ込んだ。

幸せそうだし何よりとても男らしく、凛々しくなってた。

父親になるとはそういうことなんだと思った。

 

「鈴原さん…。悪い人じゃないみたい。」

 

「僕の友達だよ。ケンスケもトウジも、まさか2人ともちゃんと生きててくれてるなんて…。良かった。」

 

安堵し胸を撫で下ろす。ソウリュウもアヤナミも外界のNERV関係の者以外と話すのは初めてだからか、とても緊張しているのが見て取れた。みな、生活は苦しくとも何とか幸せに暮らしていけている様だ、僕を含むNERV、父さんが起こした事は許されることでは無い。それに、ミサトさんの気遣いか、僕の名前や顔が市民にバレていないのは大きい。本来ならばニアサーを起こした者として恨まれつまはじきにされてもおかしくは無いのにここの者は皆優しい。珍しそうに僕らを見る子供達。優しくそれを見守る大人達。ちょっと外に出れば赤い世界だと言うのにあいも変わらずヒトは変わらぬ優しさを持っているみたいだ。

 

「碇くん。『トモダチ』って何?」

 

「友達って言うのはね、難しく言うなら志を共にしている人。仲間って奴。簡単に言うなら気を許して馬鹿な事をやったり面白おかしく一緒にいるやつのことさ。」

 

「そう、わかった…。『トモダチ』覚えたわ。」

 

一人でウンウンと頷きながらその言葉を反芻するアヤナミ。

何も知らぬこの子との関わりを絶っていた老人2人に嫌気が指す。

アヤナミの周りにはいつの間にか子供たちが群がっている。

子供たちはやっぱり素直だ。純真無垢で何も知らないアヤナミだからこそ子供達に好かれるのだろう。

プラグスーツの端を摘まれ引っ張られ変な格好と笑いながらアヤナミの反応を伺っている。可愛いものだ。

 

「ソウリュウは…良いの?トウジが来るまで子供達と遊んであげなくて。」

 

「私は良いの。子供、苦手だし。人付き合いも慣れてないから。」

 

「そっか…。でも、君もヒトとして生きていくと決めた以上他人と関わらずに生きていくことはできないよ。僕とだけじゃダメだ。」

 

「うぅ…そうは言ってもね…。やっぱり大人は…苦手なの…。」

 

無理強いするのも良くないか…。

 

「なら、まだ僕の傍に居ればいいよ。君が少しでも大人と話してもいいって思える迄、僕が支えるよ。」

 

「ありがとう…碇シンジ。」

 

「…そのフルネーム呼び面倒くさくないの…?」

 

「…そんなに親しくないのに呼び捨てもおかしい、名前で呼ぶのも変でしょう?」

 

「親しくもないって…。体の関係結んでる時点で親しくないも何も無いでしょうよ…。」

 

「そう言われればそうかも…。じゃあ私も…シンジ君って呼んでも…?」

 

慣れないからなのか、僕の顔色を伺いながら呼んでもいいかと尋ねてくる。この上目遣いはアスカにない芸当だよなぁ…。

 

「その顔で君付けはちょっと違和感有るけれど…。ソウリュウがそう呼びたいなら良いよ。」

 

「ありがとう。」

 

照れているのか困っているのか、なんとも言えぬ表情。でもなんだか肩の荷がおりた様なそんな感じが受け取れる。

 

「すまんのう!遅くなってしもた!んなら我が家に行こか。…?そっくりさんはどこ行ってしまったんや…?」

 

そういえば…。辺りを見渡す。子供の群れに囲まれ手を引かれくるくると回られあっちへこっちへ引っ張りだこ、良かった。

あの子が1番馴染めるかどうか心配だったからね…。

 

「さ!着いたで!我が家や!ワシが医者やってるからって一軒家に住まわせてもろうてる。」

 

道中色んな事を話した。ニアサーの時攻め入った使徒の話。

サードの時に委員長とはぐれてしまった話。でもこの村に移住した時に再会できたこと。縁が導くとはカヲル君も言っていたがここまでラブストーリーめいている再会は中々無いものだろう。

トウジが古びた木製の引き戸に手をかける。

 

「ただいま!すまんの飯の支度すぐするからな。」

 

ガラガラと大きな音を立てた扉を潜りただいまと大きな声で挨拶をした、つられるように僕とソウリュウも声を出す。

 

「「お邪魔します。」」

 

 

「すまん、皆!お待ちどうさん!熱々のうちに食うてくれや!」

 

両手持ちのアルミ鍋の蓋を開けると鼻腔をくすぐるいい匂い。味噌の香りだ。

 

「ぎょうさん食べてええからのう。あっちの飯は美味くなかったやろ?温かいもん食えるだけでもワシらは恵まれとるんや。ほな!」

 

「「頂きます!」」

 

居間に居たのは委員長のお父さんだろう。トウジがお義父さんすんません。と頭をさげていたから間違いはないと思うけど…。

5人でちゃぶ台を囲み口々にいただきますを告げる。

だが1人不思議な顔をしてその言葉に疑問を持つ者が居た。

 

「『いただきます』って…何?」

 

「なんやそっくりさん、そないな事も知らんのか…。いただきますっちゅうんはな、飯を作ってくれた人に、食材に感謝を告げる言葉や。」

 

わかりやすいトウジの解説。すっと黙り込みその言葉を反芻しているようだ。

 

「分かった。いただきます。」

 

僕らと同じように手を合わせ茶碗を手に持つ。トウジがよそってくれたそれはもくもくと湯気が立ち上りいかにも美味しそうだ。中には里芋や人参、米が見える。

こうでもしないとみなの口に米が入らなくなってしまったのかと悲しくもなる。

だがそれも意に介さず、和気藹々と会話をし食事をする様は世界がどうなっても変わらないんだな…。そんな風にも思った。

 

「どや?美味いやろ?」

 

「口の中が変。ホクホクする。」

 

アヤナミが1口すするとびっくりしたような顔でトウジからの問にそう答える。

 

「それが美味いってやつや。ほれ、シンジもソウリュウさんも食うてくれや。」

 

ニコニコと急かされ茶碗を口に付ける。久々の味噌の味。食材の食感、温かい食べ物。いつからちゃんとしたものを食べていないか忘れてしまったけど。それでもそれはちゃんと美味い、そう感じられた。

 

「…美味しい…です。」

 

遠慮気味によそったそれをひと口すすり微笑むソウリュウ。

せやろ?と微笑むトウジとお義父さん。その笑顔を見て少し心が開いたのか、もう1回、もう1回と茶碗に少しずつよそって食べるソウリュウ。

 

「美味しいよ、トウジ。久々にレーションじゃないもの食べれたよ。」

 

「あんなん食えたもんやない…。ただの栄養食で味も何もあらへんのやから…。でも良かったわぁ…お前に食わすんだけはちょっと緊張したんやで?シンジは料理上手いからのう…。」

 

「や、やめてよ!限られた材料でこれだけのものを作れるトウジや委員長の方が凄いよ。」

 

その言葉に先程まで口を開かなかったお義父さんが嬉々として口を開く。

 

「ワシの娘は下ごしらえがしっかり出来とるからのう。」

 

「ホンマに世界一の嫁さんや。そろそろ帰ってると思うんやけどなぁ…。」

 

すると玄関からあの大きな音が響く。快活な女性の声が居間にまで届く。

 

「ただいま!遅くなってしまってごめんなさい。」

 

「お、噂をすればやな。おかえりぃ!待っとったで!」

 

声の主のその女性、委員長は赤ちゃんを抱えて居間に入ってきた。

 

「連絡を受けた時には信じられなかったけれど、今目の前にいても夢みたい。碇くん、それに綾波さん、アスカ。」

 

朗らかなその声、あの頃みたいなソバカスはもう残ってはいなかったけれど、それでも委員長と分かった。

 

「久しぶり。洞木さん…あ、いや…今は鈴原さんか…。」

 

「ふふっ。無理に苗字で呼ばなくても。昔みたいに委員長で良いわよ。」

 

ニコニコと笑うその姿、トウジも委員長もそうだが、僕の容姿が変わってないことを無理に聞いたりしてこない。これが、優しさなんだろうと思う。

 

「わかったよ。委員長。お邪魔させてもらってます。」

 

「お構いなく。綾波さんもアスカも元気にしてたの?」

 

「綾波じゃ無い。」

 

「私も…アスカじゃありません…。」

 

2人に否定されびっくりした顔を浮かべる委員長。いや、説明は出来ないんだけど…。どうしたらいいんだろうか…と思っているとトウジの助け舟が出る。

 

「すまん!ヒカリ、こん2人はよう似とるけど別人らしいんや、こっちはソウリュウさん。んでこっちは…。なんやよぅわからんが自分の名前がわからんらしくてのう…。」

 

その説明に笑顔に戻る委員長。この夫婦は本当に無理な詮索もしないし助かるよ…。

 

「あら、ならそっくりさんね!」

 

「そっくりさん!ええのう!」

 

2人の大きな声に驚いたのか委員長の腕の中で眠る赤ちゃんが起きてしまったようで泣き声を上げる。

聞いたことも無い赤ちゃんの泣き声にビックリする2人は委員長の腕の中を覗き込むように赤ちゃんを覗く。

 

「何…?これ…?」

 

不思議そうに人差し指をだしつんつんとその手を突くアヤナミ。アワアワとどうにか泣き止まそうとするソウリュウ。なんだか不思議なコンビだ。

 

「ワシらの娘のツバメや。かわええやろ〜?」

 

トウジも同じく委員長の腕の中を覗き込みニコニコと微笑んでいる。ツバメちゃんはアヤナミの指を見つけるとその指をぎゅっと掴み泣き声から変わって笑い声をあげている。

 

「ツバメ、そっくりさんのこと好きなのね?こんなに簡単に泣き止むなんて…。」

 

ビックリする委員長。自分も触りたいのかうずうずとしているソウリュウ。

 

「不思議。人だって分かるのに…。なんでこんなに小さいんですか?」

 

ソウリュウが口を開く。目を丸くしてツバメちゃんが笑っているのを眺めている。

 

「なんや、赤ちゃん見るんも初めてなんか。」

 

「生まれた時はね、もっと小さいのよ。赤ちゃんは直ぐに大きくなっちゃうの。」

 

「これが…可愛い…?」

 

アヤナミ、ツバメちゃんと触れ合って何かを感じたみたいだ。

 

「せや!これが可愛いや!そりゃあワシらの娘やからのう!」

 

その声に驚いたのかまた泣き出すツバメちゃん。

 

「あぁ!ごめんねぇ…。びっくりしちゃったかなぁ?」

 

ヨシヨシとあやす委員長。よく知った2人が子育てをしている姿を見るとなんだかむず痒くなる。

 

「すまんなぁ…ツバメェ…。泣かせてもうたかなぁ?」

 

そう言って父親の顔をするトウジ。それを微笑ましく見つめる義父といつの世も変わらぬ一家団欒の姿がここにあった。

すると突然、ガンガンと窓を叩かれる。

 

「おーい!トウジ遅くなった!」

 

「きたきた。大将のお出ましや。」

 

ガラガラと勝手に窓を開き差し込まれた手には1つの酒瓶が握られていた。

 

「「「おお!」」」

 

それを見て嬌声を上げたのは僕を含む男衆3人だった…。

また、それにびっくりしたのかツバメちゃんの泣き声も勢いを増す。慌てるアヤナミとソウリュウ、まったく!と言った表情の委員長が僕らに向け口に人差し指を当て。

 

「シー!」

 

なんだか、バツが悪くなってしまった。

 

 

「お父さん!寝るんなら寝室に!もう!そんなに若くないんだから…相田くん達と合わせて飲んでたら潰れるに決まってるのに…。」

 

つばめちゃんを寝かしつけコチラの様子を伺いに来た委員長が酔いつぶれてしまったお義父さんをどうにか寝室に連れて行こうと起こしている。

あの二人はどうやらミルクを与えられ眠っているツバメちゃんと一緒に眠ってしまったようだ。

 

「お、おうおう、すまんすまん…。」

 

そう言って起き上がったお義父さんはヨロヨロと立ち上がり奥の部屋へと消えていく。

 

「まったくもう…。よいしょっと。」

 

僕たちが座るちゃぶ台の横に腰掛ける委員長。これでようやく同窓が揃ったという所か。

 

「あれ?委員長酒飲んでいいんだっけ?」

 

「まだダメ、でも、雰囲気くらい味わうのは悪くないでしょ?」

 

ケンスケがからかうように委員長に言う。委員長の手にはグラスが握られており、中には淡い琥珀色の液体が注がれている。

 

「ちゃんと梅ジュースよ。毎年の楽しみなの。お義父さんとと旦那には梅酒作ってるんだけどね?」

 

そうにっこり笑って告げる。

 

「しかしまぁ、14年も経つなんてなぁ…。」

 

「しゃあないやろ。シンジも大変やったんやからのう…。」

 

ケンスケが持ってきた氷をグラスに入れ戸棚から日付が書かれたらべるのついた梅酒を取り出し注ぐ。

 

「あなた!明日も仕事でしょ。あんまり飲みすぎないでよ!」

 

「気ぃつけるわ。んでも、久々に同窓に会ったんや今日くらい許してくれへんか?」

 

「まったく…。なにかつまめるものあったかしら…。」

 

「いいよ、委員長。貴重な食べ物だし、君達で食べたほうがいいよ。」

 

「そういう訳にはいかないのよ。鈴原く…トウジはね、必ずおもてなしはするようにって言ってるから。」

 

「委員長のその呼び方懐かしいな。」

 

「仕方ないでしょう?これだけ同窓が揃ってたら嫌でも昔の呼び方が出ちゃうもの…。取ってくるから待っててね。」

 

耳まで真っ赤にした委員長が土間の方に出ていく。ニヤニヤと笑っているケンスケの顔は赤い。

トウジは自慢げに

 

「ええ嫁さんやろ?」

 

「あぁ、お前には勿体ないくらいだよ。」

 

「お前ってやっちゃ…。こうして3人並んどると昔みたいやな。」

 

懐かしむようにグラスに口をつけるトウジ、それに釣られ僕とケンスケもグラスを煽る。

 

「あの頃は馬鹿やったよなぁ…?シェルター抜け出してさ。危うく碇に踏み潰されるところだったよ。」

 

「なっ!それはお前らが悪いんだろ?」

 

「ははっ全くや。でもあん時お前が、ミサトさんが助けてくれんかったらワシらは死んでしまっとる。感謝してるんやで…。」

 

ありがとうと頭を下げる2人。なんだか照れくさいな。僕じゃない僕の話なのに…。

 

「あ、思い出した…。トウジに会ったら謝らなきゃって思ってたんだよ。あと怒ろうとも思ってた。」

 

「ん?なんや謝ることって…それに怒る…?」

 

赤らむ顔で頭にはてなマークを浮かべるトウジ。

 

「妹、サクラちゃんに会ったんだよ。WILLEの戦艦。なんだっけ?」

 

「AAAヴンダー」

 

ケンスケが呟く。そうだ、それそれ。

 

「そうそう。その中でさ、僕目覚めたんだけど…。君の妹が僕の担当だったんだよ、でもね、僕の問いかけは無視するし、検体呼ばわりするし、まるで虫でも見るかのような顔でさ、僕を見下すから…。申し訳ないけど…頬叩いたんだよね…。」

 

そこに一切の冗談はなく、まじまじとトウジの顔を見て話す。

 

「ありゃ…殴ったんか…。まぁどないな理由があっても女ァ殴るんはいけんなぁ?」

 

諭すようにお叱りを受ける。そりゃそうだ。僕だってやりたか無かったさ。

 

「ごめん。その通りだ。次、船に戻ったら謝るよ。」

 

「せやかて、お前ん気持ちはよう分かる。無視せんと相槌も打たんサクラも悪い。何せ14年も眠っとったんにいきなりモノ扱いされて虫でも見るように無視されてたんじゃ溜まったもんやない!」

 

「茶化すの下手くそか…。でもありがとう。」

 

「ワシからもサクラにはよう言うとく!でもアイツも感謝しとるんやで?ワシもお前ん事殴ってしまったさかいに…。人のことは言えんがのう…。」

 

「そう考えたらトウジんとこは碇に助けられてばっかりだな。」

 

「せやな。でも、もう船に戻らんくとも、お前ん幸せは此処で見つけられたらええんとちゃうんか?」

 

ニコニコと梅酒を煽るトウジが言う。

確かに、それも間違ってない。僕がここに残って楽しく暮らせたら、そう思う。

でも、僕の落とし前はしっかりつけなきゃならない。父さんの尻拭いも。

 

「僕は僕の落とし前をつけたい。でも、ことが終わったらここに戻って暮らすのも悪くないのかもしれない。」

 

「お前がそう決めたんだったら、俺らは応援するよ。頑張れよ碇。」

 

「せや、ワシらはお前がしたいようにするんが1番やと思うとる。気張れやシンジ。」

 

2人の激励が涙腺を緩ませる。このふたりはどんなになっても優しいままなんだ。こんな世界でも。

 

「ありがとう。2人とも。」

 

「でもさあ、昔の碇だったら絶対心塞ぎ込んでるよな?全部自分のせいにされてわけも分からず、お前は悪だって言われてんだからさ。」

 

「間違いないわ。眠っとるだけやと思っとったが…。ちゃんと成長しとるんやな…。」

 

「もしかして、中身が別人とか?」

 

ケンスケが悪ふざけのように言った言葉で時が止まる。

返す言葉が見当たらなくて黙ってしまった僕が悪いのだが…。

 

「…マジ?碇…お前は…。」

 

「…全部話すよ。」

 

 

真剣な顔で僕を見つめる2人に観念して。僕の話をすることに決めた。

別の世界から来た碇シンジである事。本当のこの世界の碇シンジは僕の中で眠ったままだと言うこと。それでも、僕はこの世界の記憶があること。そして…自分の辿ってきた旅路の事を

 

「んなけったいなこと…あるんか?」

 

「確かに、エヴァは前人未到のシステムだ。そういうことも有り得るのかもしれない。」

 

「でも…それじゃこの碇くんが…あまりに不憫だわ…。」

 

いつの間にか戻ってきた委員長も会話に加わり悲痛の表情を浮かべる。

 

「でも、悪いことばっかりじゃないから。」

 

僕が締めくくるようにそう言う。3人とも静かになってしまった。

 

「そんなに悲しい顔しないでよ…。時が来ればきっと僕の中の彼も起きるだろうし、僕はいなくなる。全部元通りになるんだ。」

 

「碇くん、貴方は居なくなってしまったら何処に行ってしまうの?」

 

委員長が尋ねる。

 

「分からない。死んでもないしリセットもされていないから元の世界に帰れるのか、それともまた別の世界で新しく始めるしかないのか…。それは僕にも分からないんだ。」

 

「そんなのあんまりやないか!ワシらとの思い出は!?記憶は!?わしらの思いは何処に消えるんや!」

 

「大丈夫。この世界は絶対に終わらせたりはしない。君たちの所に今まで通りの彼が戻って来るだけだよ。」

 

「んなこと…。悲しいやないか…。こうして飲んだことも、語らったことも全部全部別の世界の話になるなんて悲しすぎるやろ!」

 

「仕方ないよ。それが僕だから。」

 

笑ってみせる。とうにそんなことには慣れた。全員との関係値がリセットされることなんて、僕にとっては些細なことでしか無いから。

 

「ワシらは…絶対にこの話もお前ん事も忘れん。そんでお前がちゃんとした事は後世に繋ぐ。約束や。」

 

歳食っても相変わらず熱いのは変わらないんだな。

その言葉にウンウンと頷く2人。良かった、この世界の3人に出会えて。

 

「ありがとう、3人とも。僕はこの村で時が来るまで、やれることをやるよ。トウジやケンスケを手伝わせてくれ。」

 

夜も深け、僕の話が終わり。また懐かしい話をして馬鹿な事を言い合ったあと解散になった。

酔いどれとなったトウジはケンスケが帰ると電池が切れたように布団に倒れ込み、眠ってしまった。

委員長もそれに続くように寝室へと行きおやすみと言い残しその襖を閉じた。

そして僕は1人外に出て空を眺めるのであった。

 




新章第3村篇始まりました。

感想やコメントを見て結構心が折れそうな事を書かれていましたが何とかここまで書きました。

もう少し、戦闘機や戦車など知識があれば文面も書けるのかなと思ってはいます。
この歳で多くを覚えるのは難しいことです。

評価欄やUA数が励みになってます。星9評価多くて嬉しいです。
書きながらの更新になっているので今までより連載ペースは落ちますが見て頂けると嬉しいです。
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