Re Take of Evangelion 作:Air1204
時は少し遡りケンスケのガレージハウス
「ったく…失敗した。なんでアンタなんか連れてきたんだろ…。」
「〜♪」
ケンケンに許可を貰い先にこのガレージハウスに来たアタシと渚カヲル。ここにあるものは好きに使っていいと言われた。
様々な音楽CDやカセットテープが有るからか、珍しそうにそれを物色してはあれやこれやと様々な音楽が不規則に流れている。
目を輝かせながらそれを物色する渚はまるで少年のように顔を輝かせている。
「不思議だね。これなんかは同じ作曲家が作った曲なのに全然顔色が違う。やっぱり音楽はリリンが生み出した文化の極みだよ。」
「アンタ、アタシの話聞いてないでしょ…。」
「聞いていないことはないさ。シンジくんについてだよね?」
そう、アタシがコイツに聞いたのはあのシンジが何者なのか。
明らかに色々と挙動がおかしい。
あんなに他人の為に熱くなれる奴じゃないし、もっと身勝手で自分のことしか考えていないような…そんな奴だった筈なのに。
中身がどうであれシンジらしいところはある。だからこそ心を許し一緒に居ることを選んだのだが…。
「式波君。君は円環というものを知っているかな?」
ガチャガチャとカセットテープの山を漁りながら問いを投げかけてくる。
「輪になっていて終わりがない。それがなんだっていうの?」
「終わりは始まりであり始まりは終わりでもある。ウロボロスってやつだね。」
的を得ない答え。簡潔に伝えてこないことにイライラとしてくる。
「だから。それがなんだって言うのよ。」
「僕達はその円環の物語の中に生きている。彼も同じく。だが、その円環に誰かが手を加えた。交わるはずのなかった円環の物語2つが一時的に重なり合ってしまったんだ。」
渚はひとつのCDを再生機器に入れる。ようやく気に入った音楽が見つかったようだ。これは…確か『パッヘルベルのカノン』
「シンジくん…彼はこの世界の彼じゃない。でも、僕は彼を覚えている。彼も僕を覚えている。生命の書に名前を書き連ねたのは僕だからね。」
「言い回しが口説い。もっと端的に言いなさいよ。」
柄杓で水を1口啜り睨みつけるように言い放つ。
流れている音楽に浸るように目を瞑りピアノを弾く様な真似もしている。
「今の彼はこの世界のシンジ君では無い。でもこの世界のシンジ君は彼の中で眠っている。彼自身が自分の代役として呼んだのが今の彼だよ。記憶の継続性もある、この世界の事も知っている、それこそ自分が経験してきたかのようにね。」
「そう…わかった。」
「あんまり驚かないんだね。」
「一々驚いてたらキリが無いわよ。エヴァはよく分からないものだものどんな事を引き起こしてもおかしくない。フォースを止めるのにでてきたあれが1番物語っているわよ。渚、アンタはどうすんの?」
「どうするって?」
キョトンとした顔でアタシの問を聞き返す。
「WILLEに来れば間違いなく拘束される。下手すりゃ普通に殺される。だってアンタは紛れもなくSEELE出身のエヴァパイロットだもの。」
「そうかもしれないね…。僕を恨むものは多くいる。きっとそれは君達WILLEの中にも…。葛城大佐は元気にしてるかな?」
「はっ…。アンタがミサトの心配?莫迦みたいね。良く知りもしないヒトの心配だなんて…。」
「そんなことは無いよ。リョウちゃんの忘れ形見だからね。彼女も、この村にいるあの少年も…。」
「知ったような口を叩くな!敵の分際で!何を訳の分からないことを!アンタが唆さなければシンジは第13号機にだって乗ることはなかった!敵なのよアンタは!」
「そうもいかないんだよ式波。」
後ろから声を掛けられ驚く。数刻前に酒瓶を片手に出ていったケンケンが顔を真っ赤にして帰ってきていたからだ。
いつの間にかそれだけ時間が経ってしまっていたみたいだ。
「どういうこと!?アタシに知らされていない事があるってーの!?」
「式波、君が眠っていた5年間。君やミサトさん達が殺されたり処罰をされなかったのは何故だか知っているか?」
真っ赤な真面目な顔でそう聞いてくる。
「それはNERVの前任の加持リョウジ副司令の命でって聞いてる。」
「そうだな。それで合ってる。じゃあその期間のNERVの司令は誰だ?」
…あの碇ゲンドウと冬月コウゾウが雲隠れしてしまった時にNERVの内部改革として2名が抜粋され司令と副司令の座に就いた。それはアタシも聞いていた。そのうちの一人が加持リョウジ。ミサトの旦那で無責任に孕ませあの人を変えてしまった元凶。それでも彼の尽力でサードは止まった。そう聞かされている。…じゃあ司令は…?一度もその名前を聞いたことはなかった。歴史の闇に葬り去られたNERVの新司令。…まさか…。
「その顔、やっと理解したみたいだな…。この渚君が君達パイロットの安全を保証し、NERVの職員たちが路頭に迷う前にWILLEという組織に組み込んだ。名前こそ公にされることは無かったが、彼が第1投目の槍を投げた立役者だ。それでも止まらなかったリリス、mark6を止めるために加持さんは槍を使ったんだよ。自分の命を賭してね。」
「…そんな…。じゃあアタシたちは嘘を教えられていたっていうの…?」
「式波君。それは違うよ。僕が止めたのさ。名が広まってしまえば裏で動くこともままならなくなる。WILLEの創始者として表立ってリョウちゃんがやってくれて助かったよ。」
そんな事。今更信じろと言われても無理だ。
だってコイツは敵でSEELEの送り込んだ使徒で…。シンジを誑かしてエヴァに乗せた張本人なのに。これじゃあ本当に…。
「アンタは…本当にシンジの幸せを願っていた…?」
「勿論。君の事を命を捨ててまで殺したくなかった彼の為に君をあのまま見殺しには出来なかったからね。それは葛城大佐も同じくだよ。」
「…その事は…ミサトは?」
「勿論知っているよ。人目につかぬように母を捨て戦うことを決めた彼女の為に、あの子をここに連れていくように言ったのも僕だからね。」
「そう…。ごめん、アタシはアンタのこと勘違いしてた。」
「いいんだ。そうやって謝って貰えた。分かり合えないヒトとヒトの思いはこうして紡がれるからね。僕と君だと使徒と使徒だけどね。」
にっこりと微笑む渚。本当になんというか、人畜無害な奴ね…。言ってることは難しいけれど馬鹿では無いんだ。
「ふぁーあ…。そろそろ俺は床に就くよ。渚君も式波も早めに寝た方がいいぞ。明日はインフラの整備やら食料調達に忙しいからな。」
大きな欠伸をして奥の自室へと入っていったケンケン。
渚はニコニコとまたCDを漁り始めた。
1人悶々としたままのアタシは外に出て空を眺めるのであった。
「おはようさん!」
しゃっと勢いよく開かれたカーテンに2人の少女はその日光から逃げるようにゴロゴロと転がりまた寝息を立てている。
「ごめんよ…トウジ…。」
「ええって気にすんなや。ケンスケが、拾ってきた言うとったけどそれまでは歩きやろ?当然疲れとるんや。も少し寝かしてやりーや。」
トウジは優しい表情を浮かべ、2人を見守る。ツバメちゃんや委員長は既に起きて朝食の準備をしているようだ。
「シンジ、今日はワシの手伝いやのうてケンスケんこと手伝って欲しいんや。大丈夫。ソウリュウさんはワシんとこ手伝って貰う、そっくりさんはヒカリと一緒に田植えや。」
「…2人とも大丈夫かな?」
不安な表情を浮かべる僕の肩を叩くトウジ。
「大丈夫や。なんかあったらワシが助けちゃる。それはヒカリも同じや。気にせんと行ってきたらええ。」
「…分かった。任せたよ。」
そう言って僕は村外れにあるケンスケの家を目指す。トウジから渡された地図によると山間にケンスケの家はあるみたいだ。
歩いていると早朝だと言うのに意外と多くの人が家の前の掃除や朝の挨拶を交わしているのが目に入る。彼らは僕に気付くとにっこりと微笑みおはようと声を掛けてくれる。トウジのジャージを借りているからどこの家から来たのか直ぐに分かるのだろう。道行く人と挨拶を交わしながら目的地へ急ぐ。
畑を抜け、田園を抜け。山間の道に入った。鳥の囀りと木々の揺れる音が心地よい…。
サードインパクトの影響か、常夏であった日本の地軸は元に戻り四季を取り戻したという事らしい。冬を抜け春に差し掛かった時期だと言う。2000回弱のループを繰り返しても四季は感じたことが無かった、だからなのか明け方のまだ冷え込む時間帯。ジャージの温かさを初めて実感した。徐々に険しくなる道を進むと開けた場所に出た。
無人駅を改装したであろうログハウスにケンスケの技術が光っている。扉の前に立ちノックをする。出てきたのはなんとまぁあられもない姿のアスカであった。
「あら、シンジ。早いのね。」
そう言った彼女はついさっきシャワーでも浴びたのだろう、髪からは水が滴り落ちている。
「おはよう。アスカ。」
「おはよう。ケンケンはまだ寝てる。昨日遅くまで飲んでたみたいだから。」
「僕も一緒に飲んでたんだよ。トウジやケンスケと一緒に。」
「あんなに真っ赤になって帰ってくるから何事かと思ったけど…そういうことなのね。どう?中々にいい村でしょ?ヒカリも幸せそうだし。アタシには願ったりよ。」
ふふっと微笑むアスカ。数時間会わなかっただけなのにこんなにも愛おしいのは僕の心に眠っている彼の影響か。それでもそれを態度に出すことは無い。かえって心配させてしまうのは申し訳ないと思うからだ。
「うん。ツバメちゃん、可愛かったよ。アヤナミもソウリュウもベッタリだった。」
「オリジナルは世界を、世の中を知らないで育てられたし、初期ロットは生まれたばかり、赤ちゃんって言う知識があっても実物は知らないんだもの。仕方ないわ。」
心做しかアスカも嬉しそうな表情を浮かべる。だからこそ疑問に思っていたことをぶつける。
「アスカはなんで…村に行かないの?君達は彼らを守る為に戦っているのに…。英雄視されてもおかしくは無いんじゃないの?」
その言葉に顔を曇らせる。嫌なこと言ってしまったかな…?
「どんなに世界をこの村を守ってるとはいえエヴァは彼らにとっては忌むべき存在。それのパイロットであり歳を取らないアタシたちはあそこに住む人達には化け物に見えるのよ。アンタは好きって言ってくれたけど、エヴァに乗る為だけに人型を保てているのよ、必要のない器官は削ぎ落とされ無駄のない身体に作り替えられる。この間見せたようにアタシは今や女を感じられるような部分はどこにも残って無い。ま、多少あるのはこの胸くらいなものかしらね?そんな体で出歩いてりゃ普通じゃないって思われるのよ。」
自分を嘲笑するかのように笑うアスカ。そんな悲しい話…あってなるものか…。
「だからいいのよ。アタシは無理してあの村には行かない。此処でケンケンの手伝いでもして迎えが来るのを待つだけなの。」
「…。そんなこと…」
「はいはい。そんなに悲しい顔しない!これからケンケンの手伝いするんでしょ?そんな顔してたら笑われるわよ!」
パンパンと僕の両頬を叩き口角が上がるように口元を抓られる。
「い…いひゃいよ…あふは…。」
「シャキッとしろ!バカシンジ!あんたが無事に生きてるからアタシは幸せなのよ。だからアンタはあたしの隣で笑ってりゃいいの!」
まったく…強情なヤツだ…。アスカがそういうなら僕はそうするしかないじゃないか…。
…?そう言えばカヲル君は…何処に行ったのだろうか…。
「アスカ…その…カヲル君は?」
「あぁ、カヲルの奴ならついさっき『僕が食料係だね。任されたよ。』って言って竿とバケツ持って出てったわよ。」
本当に自由な人だなぁ…。でもアスカ…カヲルくんの事をカヲルって呼ぶなんて何があったんだろう…。
不思議な顔をしているとそれに気づいたアスカが頬を掻きながら答える。
「アタシ…勘違いしてたのよ。カヲルの事。もっと悪いやつだと思ってた。でも、アンタがこの世界に帰ってきて悲しくならないようにってアタシらエヴァパイロットやミサト達、元NERVの職員を匿うためにこの組織を作ったんだって。アイツのお陰でアタシ達は生かされてる。だからこそアンタとこうして再会出来た。そう思ったらなんだかね…。」
成程…そういう事か…。カヲル君もあんなに普段はのほほんとしているのにやる事はしっかりやってるんだから…抜け目無いよなぁ…。
そんな会話をしていると奥から準備を済ませたケンスケが顔を覗かせる。
「あれ?碇…早いな。迎えに行こうと思ってたのに手間が省けたよ。」
「あぁ、おはようケンスケ。よく眠れた?」
僕が笑いかけるとまぁまぁだなみたいな表情を浮かべた。
その手にはWILLEから支給されたのか真新しいパソコンを抱えている。
「今日はこの街のインフラに関わる仕事だ。最も重要な仕事の内の一つだ。手伝ってくれるか?」
「勿論だよ。僕にできることならなんでも言ってくれ。」
「そりゃ結構だ。式波、悪いけど留守番頼む。何かあったら連絡してくれ。」
「はいはーい。じゃ、気をつけるのよシンジ。」
「うん。ありがとうアスカ。行ってきます。」
そう言ってケンスケのJeepに乗り込んだ。
次からお仕事編が始まります。
気がつきゃ10000UA
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