Re Take of Evangelion 作:Air1204
「えっと…。」
「アヤナミさんの…名前…?」
NERVの跡地で釣りをしているソウリュウとシンジに対する問いかけ。
「そう。私の名前。ここに居たいから、そのために名前が必要。だから2人につけて欲しい。」
「とは言ってもねぇ…。アヤナミは綾波じゃないし…。」
「でもアヤナミさんはアヤナミさんだし…。」
2人して頭を抱えて悩んでしまう。考えながらも目線はリールへと戻る。
「どんな名前でもいい。碇くんとソウリュウさんがつけた名前になりたい。」
自分からそうしたいと願うアヤナミ。その心境の変化をとても嬉しく思うシンジ。だがソウリュウは浮かない表情を浮かべている。
「初期ロット…ちゃんと動いてた…?」
ケンスケの家で、釣ってきた魚を調理しての食事が終わり、片付けの最中にアスカの不思議な問いかけに首を傾げてしまう。
「今日も来たけど…なんで…?」
「いや…元気そうならそれで良いの。」
その時、浮かない顔のままソウリュウは皿を地面に落として割ってしまう。
「あぁ!アンタ!貴重な皿落とさないでよね!?」
「ご、ごめんなさい…。」
やっぱり2人とも様子が変だ…。カヲル君も何時もならクラシックをかけているのに今日は…何で…?
夜、アヤナミはツバメが眠る部屋で絵本を読む。
何時でもツバメに読んであげられるようにと何度も何度も。
だが、手首のアラートが鳴り響く。それはプラグスーツの生命維持の機能が損なわれた合図。
無調整のままアヤナミシリーズは生きられないということを告げる警告。
ふっと体の力が抜けその場に倒れ伏してしまう。
そこでようやくアヤナミは思い出した。
自分が。『NERVでしか生きられない』という事を…を。
「すまないな…今日は、付き合ってもらっちゃって…。」
僕とアスカはケンスケに連れられてケンスケの父さんのお墓に足を運んでいた。
「ニアサーを生き延びた父親がまさか事故で亡くなるなんてなぁ…。そん時は思いもしなかったよ…。そんなことならもっと話して一緒に酒飲んどくんだったよ。」
「うん…。」
男手ひとつでケンスケを育て上げたケンスケの父は凄いと思う。僕の父さんよりは余っ程いい親父だったんだと思う。
「碇。お前の親父はまだ生きてる。無駄だと思っても一度はちゃんと話し合わないと、後悔するぞ。」
「バカね…コイツの父親には土台無理な話よ。」
呆れたように言うアスカ。僕だって一度は話し合おうと試みた。それでもあの父さんは僕を跳ね除け僕を避けた。
「それでも、親子だ。縁は残る。」
僕が来た頃よりも緑の範囲は大分広くなってきた。
動かなくなった浄化装置を何本も直してきたからだ。
小鳥の囀りに時折その姿を覗かせる小動物たちそよぐ風が心地よい。
仕事が早く終わったアヤナミは農婦達と線路沿いを歩く。
どうやらこの村でまた新たな命が生まれたようだ。
その吉報に農婦達4人は賑やかに話をしている。
「松方さんとこ、えらい難産だったみたいやけど…無事生まれて良かったわぁ…。」
「よう頑張ったわ。旦那さん泣いて喜んどったで。」
偶然。通りかかった猫、先日はお腹が大きく膨らんでいたが無事生まれたのか仔猫を3匹ほど連れている。
それを見て頬が緩むアヤナミ。
「あれ、アンタ…笑うんだねぇ?」
「?」
無自覚にしたその表情に農婦達が驚く。
「うんうん。可愛いわ。」
小さな子達や動物が可愛いのはわかるようになった。でも何故、今自分が可愛いと言われているのか理解が出来なかった。
「ほんとう、背格好もええし、たまには別ん服着てみてもええんやないかい?」
アヤナミは別の服というワードに目を輝かせ澄んだ声で返す。
「うん。別の服、着てみる。」
そしてそのまますぐにアヤナミの着せ替え大会がヒカリの元で始まった。
各自引っ張り出してきたであろう子供用の衣服。農婦達があアヤナミに着せては脱がし着せては脱がし似合う服を探している。
「この服はどうだい?」
「いいねぇ?似合うじゃないか。」
「やっぱ、かわええのう。」
「うちの嫁に欲しいくらいだねぇ。」
口々にアヤナミを褒める農婦達。引っ張り出されたかつての第一中学の制服に袖を通したアヤナミは鏡の前に立つ。
「これが…。『照れる』…。」
頬を赤く染めたアヤナミが鏡を見つめて1人呟く。それを見ていたヒカリが
「ホンットに可愛いねぇ…。」
「これが…『恥ずかしい』…?」
初めての感情に驚きが隠せないのであった。
「悪い、一日に何ヶ所も連れ回して。」
「気にしなくていいよ。」
「うちは、なんでも屋だからな。クレーディトとの連絡係もやってる。」
ケンスケと僕は防護服に身を包み赤い大地を練り歩いていた。
「ここは比較的にL結界密度が低い。だからこそ実験に持ってこいなんだよ。実はそのスタッフに紹介したいやつが居てな…。」
足を運んだ先には大きな穴が開けており、その中心は青々とした草原と円形の池がいくつも立ち並んでいる。
何かの機械が突き刺さっており、研究をしているようだ。
「相田先生!」
突然声をかけられ視線をその方に送ると白い防護服に身を包んだスタッフが声をかける。
「お久しぶりです!その人が新しい先生の助手。ですか?」
「ま、そんなところだ。」
防護服を外し顔を現わしたスタッフ。その顔は何処か見知った人の面影がある。
「初めまして。僕は加持。加持リョウジって言うんだ。」
名前を聞き驚く。彼がミサトさんと加持さんの…忘れ形見…?
同姓同名とは…如何なものかと思ったが、その優しげな表情はミサトさんとよく似ている。
「初めまして、僕は碇シンジ。よろしくね。」
簡単に挨拶を交わし握手をする。
彼の胸元には見知ったペンダントが掛けられていた。
「知らない人って初めてで…。良かったよ。僕と同じ位の人で。」
「どうだ?良い奴だろう?」
帰りの車中、工場地帯を走る車内でケンスケが言う。
タイミング的にも僕が落ち着きを取り戻し、ミサトさんたちの真実を知った上で話そうと思っていたんだろう。
「お前ももう色々と聞いただろう?ミサトさんや加持さんの話。」
「うん。リリスをMark6を止めるために犠牲になったって…。」
「そうだ。加持さんはそれを望んだし、ミサトさんは止めなかった。ミサトさんはお前に全部背負わせたことを後悔してる。私が背負うべきだったって…。碇をエヴァに乗せたくないのはそれはが理由なんじゃないか?」
ケンスケの言葉が深く刺さる。人の上に立つというのはそういう事だ。感情を表に出さずただひたすらに勝つことに執着するのは私情に流されない為に。
「お前一人が背負おうとしなくていいんだよ碇。お前には味方が沢山いるからな…。」
僕は無理を言って田園が広がる棚田に下ろしてもらった。
何故だか風に当たりたくなったからだ。たまには一人で考える時間も悪くない。
アスカやソウリュウのあの態度。カヲル君の様子。
アヤナミは…ここで生きていきたいのだろうか…?
そよぐ風に水が凪ぐ。ふと感じた土の匂い。加持さんを思い出す。
「…加持さん…。」
雲間から差す夕日が水面に当たり輝かしく色を放っている。
また1人また1人と去っていく公衆浴場。そこに1人浮かぶのはソウリュウ。彼女もアヤナミと同じく、最近ここに現れないアヤナミを心配していたのだ。何せプラグスーツの生命維持機能がもうダメになっている。
調整を施されていない彼女らは長くは生きられない。そろそろ頃合だ。
ソウリュウは会って二人で話がしたかった。
立ち直らせてくれたこと、ツバメのこと。村での仕事のこと
沢山話したいことがあった。消えて欲しくないとも思っている。でも自分に出来ることは何も無い。
きっとここで待っていれば彼女はここに来る、そう考えたからずっとここに居た。
ガラガラと重い引き戸が開く音がして目線を送る。そこにはやはりアヤナミが現れた。
「ソウリュウさん。お疲れ様。」
ソウリュウを一瞥するとシャワーに向かい体を清め始める。
それでもソウリュウは何を伝えたらいいかわからず黙っていることしか出来なかった。
「ありがとう。」
唐突に呟かれたそれはまるで別れを惜しむようにさえ聞こえる。我慢ならずソウリュウは口を開く。
「ありがとうって…。アヤナミさんアナタは…。」
「うん。もうじき、私は消える。だから最後になるから。ソウリュウさんありがとう。」
今まで目線を送ることさえ出来なかったその背中を見る。
やはり調整を施されていないからか、黒い痣が背中に現れている。
「消えるって…。つばめやシンジさんにはどうするのよ!」
「仕方ないの。私はやっぱりここでは生きられないから…。」
「なんですぐに諦めるのよ!どうにか…!どうにかなるって思わないの!?」
「うん。もういいの。でも。『未練』は沢山ある。」
「ならそれを果たしなさいよ!精一杯足掻いてどうにか生き残ろうって思いなさいよ!」
「…ごめんなさい。私にはムリなの。」
激昂したソウリュウは立ち上がりアヤナミの腕を掴む。
取った手の平にもその痣は進行している。
かける言葉もなくただ絶句することしか出来ないソウリュウ。
「アナタともっと仲良くなりたかった。もっと色んな話をしたかった。」
頭にシャワーを被ったまま喋るアヤナミの声は震えている。
「診療所でも働いてみたかった。子供たちともっと遊びたかった。」
そのうち、シャワーでは隠し切れないほどの大粒の涙を流していることに気づく。
「泣いているのは…私…?」
「…それだけ『寂しい』ってことなのよ。」
「そう…これが『寂しい』…。ありがとうソウリュウさん。」
何度も繰り返し言われる感謝にソウリュウの涙腺も限界を迎える。
「感謝しなくちゃいけないのは…私の方なのに!なのに…!私だってアナタとこうして話をしてるの楽しかった。もっと仲良くしたいって思ってたのに!…どうして…。なんでなの…。」
やり場のない感情に膝から崩れ落ち嗚咽を上げる。
「アナタも…寂しい…?」
「当たり前でしょう!短くても一緒に暮らして…それで…。助けてもらったのに…私はなんにも返せてない…。返せてないのよ!!」
「いいの。ソウリュウさん。貴方には色々と教えて貰ったから。いつも朝、髪を直してくれてありがとう。歯磨き、教えてくれてありがとう。私もいっぱい貴方に感謝してる。」
お互い嗚咽混じりに声にならない声で話す。
「ごめんなさい。私もう行かなくちゃ…。ギリギリまで…ツバメと一緒にいたいから。」
「…うん。わかった。私も直ぐに戻る。」
「さようなら。」
そう言い残しアヤナミは浴場を後にした。
一人取り残されたソウリュウは1人静かに泣きじゃくるのであった。
「あなた、お帰りなさい。」
「おう、ただいま。ツバメはどうしたんや?」
「今日は抱っこしてたいってそっくりさんが。」
「なんや、偉いなついてしもうたのう…。」
「ホンットに。私より懐いてるもの…。」
少しムスッとした表情をするヒカリ。それに対してトウジは
「なんや、妬いとるんか?」
「うん。ちょっとね。でも、助かってるもの。そっくりさん、ずっとこの村で暮らせば良いのにね。」
「せやなぁ…そっくりさんもソウリュウさんもこの村で暮らせばええのに…。」
悲しきか、夫婦の会話は叶うことは無い。
奥の部屋ではアヤナミがツバメの面倒を見ている。
それは最後の挨拶も込めて。
「ツバメ、ありがとう。」
起こさないように小さな声で言う。頬を撫でる
モゾモゾと小さく動くその姿を見てアヤナミはポタポタと大粒の涙を流す。
「寂しいのね…私。」
別れの時間はあと少し…。
なんだか胸騒ぎを感じた僕は眠れずにそのまま、NERVの跡地にて湖畔を眺めていた。
「シンジさん…。」
背後から僕を呼ぶ声が聞こえた。か細く弱りきった声。顔を向けると目元を真っ赤に腫らしたソウリュウが立っている。
「ソウリュウ!?どうしたの!?」
だがソウリュウはそれには答えない。寂しげな瞳のままに僕の胸へと飛び込み嗚咽を漏らし泣きはじめた。
「ひっぐ…。ひっぐ…。うえぇーん!」
そっと頭を撫でてやることしか出来ない。きっとソウリュウが泣いているのと僕の胸騒ぎは別の話じゃない。
聞くことは叶わない。それでも、静かに頭を撫でる。
それはソウリュウが泣き止むまで…。日が登り辺りが白むまで続いた。
「ヒトの別れというのは悲しいものだね…。」
唐突にカヲルが呟く。
「…仕方ないわよ。アヤナミシリーズは元より管理される為に生み出された存在。NERVでの調整が無ければ生きてはいけないのよ。」
「そうは言っても。君もそんなに浮かない表情を浮かべている。」
顔に出てたか…。
「…。誰だって死ぬのは嫌よ。別段仲良くしていなくとも初期ロットはアタシたちに迷わず着いてきた。人間性を得てこの村に溶け込んで暮らしていたんだもの。」
「きっとまた縁が彼女を巡り合わせてくれるさ。それこそ、次はもう…。NERVに縛られない世界で…ね?」
屈託のない笑みで分かったかのように物を言うコイツは苦手だ。人の苦悩を知りもしないで向けてくる笑顔が苦手だ。
それでもコイツも思い悩み。だからこそ最初に口を開いた時に凄く悲しい表情をしていたんだと思う。
「シンジくんは…凄いね。周りを巻き込んでどんどんとヒトを変えてしまう。彼にしかできない事だよ。」
「そうね。だからこそアタシもアイツを信じてる。カヲル、さっさと準備なさい。明日にはAAAヴンダーがここに着く。そうしたら…最後の戦いよ。」
「そうだね。式波くん。悔いの残らないようにすべき事を済ましてしまおう。」
そう言ってカヲルが流したのは『G線上のアリア』だった。
翌朝、いつものようにツバメを抱き抱えアヤナミを起こしに部屋を覗く。
「そっくりさん。おは…。」
そこにはアヤナミの姿はなかった。綺麗にたたまれた制服。その上には小さなメモ用紙が1枚置かれていた。
きれいな字で書かれたそれを手に取り目を通す。
「おやすみ。おはよう。ありがとう。さよなら」
ヒカリの胸をなんとも言えぬ不安が過ぎる。
最も、いちばん敏感なのは子供。ツバメが激しく泣き始めたのだ、並々ならぬ不安。ヒカリはその不安を拭い捨てるように受話器を握りしめ電話を何度もかける。
「おはよう。」
まだ、朝靄が晴れぬうちにアヤナミが湖畔へとやって来た。
「おはよう。アヤナミ。どうしたの?こんなに早く…。」
隣にいるソウリュウの手が僕の手を強く握りしめ震えている。
「碇くんに会いたかったから。」
隠すこともなく、純粋な気持ちで言うアヤナミ。その表情はなんだかいつもより穏やかで…。寂しげな瞳をしている。
「あのさ…頼まれてた名前だけど…。やっぱりアヤナミはアヤナミだよ。綾波とは違うかもしれないけれど…。それでもやっぱり君はアヤナミだよ。」
「ありがとう。碇くん。名前、考えてくれて。それだけで嬉しい。ここじゃ生きられない。でもここが好き。」
胸のざわつきが強くなる。原因はアヤナミ…?ソウリュウの震える手が更に力を増す。ボロボロと大粒の涙を流しアヤナミを見据える彼女。
「アヤ…ナミ…?」
震える声。涙ぐむアヤナミ。そして泣きじゃくるソウリュウ。
「好きってわかった。嬉しい。」
アヤナミが僕の目を見据えて言葉を紡ぐ。
「…ねぇ…どうしたの…?」
「最後に、仲良くするためのおまじない。」
そう言って僕とソウリュウの手を握りしめ、綺麗な笑顔を見せる。ふっとその手を離し僕達から距離をとる。
アヤナミのプラグスーツから何かを告げるカウントダウンのような警告音が鳴り響く。
「ねぇ…待ってよアヤナミ…!」
「稲刈り。してみたかった。」
足元から焼けるようにその白さを増していくプラグスーツ。
「ツバメ、もっと抱っこしたかった。」
足から腹部、胸にかけ白く染るプラグスーツ。待ってよ…アヤナミ…。君とはまだ何にも…。淀みなく言葉を紡ぐアヤナミ、その瞳からは一筋の涙が零れる。
「好きな人ともっと一緒に居たかった。」
その言葉を聞きはっと息を飲む。襟元まで白く、以前のアヤナミのプラグスーツのような色に染まる。そのまま僕とソウリュウにしっかりと目を向ける。
「さよなら。」
「アヤナミッ!」
駆け出すも遅く。眠るように瞳を閉じたアヤナミはそのままバランスを崩すように倒れ込むとLCLへと姿を変えた。
「アヤナミ…さん…。嫌だ!嫌だよう…。」
膝から崩れ落ち叫び声を上げ泣きじゃくるソウリュウ。
僕はその白く染ったプラグスーツを抱きしめて静かに泣いた。
「今までありがとうね、ケンケン。」
「気にするなよ。それより撮っても良いか?今日だけは記録に残しておきたいんだ。」
「うーん…仕方ないわねぇ…。今回だけよ。」
カメラを回すケンケンを尻目に運び込まれる物資と降りてくる乗組員に目を送る。
「離船希望者が船を降りてる…。決戦が近いってことか…。」
カヲルも船を見つめて寂しそうな表情を浮かべている。
「家族の為に戦うもの。終わりの瀬戸際まで家族と過ごしたいもの、リリンは様々だね…。」
「これ、ミサトさんから頼まれてた村の記録。ヴィレクルー達の家族の写真もある。それと、トウジから妹さんに。『あんじょう頼む』だってさ。」
「分かった。」
ワンワンと犬が吠えている。その方向に目をやるとシンジが立っている。
「あら、来たの。まだ来ないと思ってた。」
「…いつまでも悲しんでられないからね。」
そういうシンジの目は赤く腫れている。その隣に立つアタシのオリジナルの方は見るに堪えないくらい目を腫らし未だに鼻を啜っている。
「そう…。分かった。それなら…。」
アタシが規則、とスタンガンを出そうとすると後ろから待てがかかる。
振り返るとそこにはこの場に降りていていいわけが無い人がたっていた。
「葛城…艦長。」
「式波大佐。此度の護衛と監視ご苦労さま。」
「よそよそしいのね…舟から降りてアタシとシンジの前だってのに…。」
睨みつけるようにミサトに言う。それでもその姿勢は崩さずその瞳はシンジを見据えている。
「碇シンジくん。」
「はい。」
「この度は度重なる無礼と説明不足、艦の責任者として代わりに謝ります。ごめんなさい。」
「気にしなくていいですよ。その…横柄な態度もとったし
大切な乗組員にだって手を挙げたのは僕だ。」
「っ…。ではここからはWILLEの葛城ミサトではなく貴方の保護者の葛城ミサトとして…。」
不器用な人だ。口に出さないと気持ちを切り替えられないなんて…。
「お帰りなさい…シンジくん。無事に帰ってきてくれた。それだけでも良かったって思ってる…。」
「うん、ただいま。ミサトさん。僕が迷惑をかけたせいでその後始末に追われたのも知ってる。だからごめんなさい。」
優しく抱きしめられる。歳食って柔らかくなってはいるけれどそれでもたわわなアレは健在だ。
「良いのよ、シンジくん。私はあなたに全て背負わせてしまった事を後悔してた。何度も自分が背負えば良かったって思った。謝るべきは私の方。ごめんなさい。」
「うん。ミサトさん。僕がケリをつける。父さんとの因縁。この世界の為にも。」
「シンジくんならそう言うと思ってた。分かったわ。だからこそ貴方の席を用意しておいたんですもの。碇、特務大佐?」
「与えられた役割はしっかりと果たします。けど…。反感を抱くものもいくらかいると思うんですけど…。」
「その点は大丈夫さ。」
カヲル君が声を上げる。その姿はいつの間にかWILLEの勲章が輝く軍服を肩にかけ位が高いであろう紋章が刻まれた軍帽を頭に被っている。
「お久しぶりです…。渚司令。」
しっかりと敬礼をしたミサトさんがカヲル君へ挨拶をする。
「いやいや…。ご苦労さま。葛城艦長。こんな大層なもの準備してくれなくても良かったのに…。」
「はい。ですが…。示しがつかないものですから…。」
「示しも何も…ずっと雲隠れしていた僕が司令だと名乗りを上げたところで…最終決戦の役には立たないとは思うけれどね?」
いつも通りふふっと微笑むカヲル君。それでもその眼差しは何処かいつもより真面目な物を感じさせる。
「シンジくんには話して居なかったね。僕がNERVの元司令、そして現WILLEの創設者で司令なんだよ。」
「あぁ…だから君は…。」
「そう、君は何も気にしなくていい。元より僕はもうこの世に居ないよていだったが…ことが変わってしまったからね。僕が表立って現場に立つのも悪くないかと思ってね…。」
ふっと嘲笑するカヲル君。呆然と眺めるソウリュウとアスカ。
「じゃ、船に戻ろう。何も気にしなくていいさ…。僕達でこの戦いを終わらせよう。」
「うん。」
僕とカヲルくんは視線を交し互いの手を取り合う。
今まではどうにもならなかったであろうこの世界にもその兆しがようやく見えてきた。
これにて第3村編は完結です。
書くためにシンエヴァを見返し文字起こしを読み。
普通に涙腺が崩壊しました。書いてても涙腺がダメになりました。
アヤナミ…どうか彼女に幸があらんことを…。
次回よりNERVとの決戦が始まります。
不穏な事を言うなら…。グレンラガンって良いよね…。
次回更新までお待ちいただけると助かります。