Re Take of Evangelion   作:Air1204

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第3話 鳴らない?電話

「ふぁー。」

 

リビングの方から聞こえるトントンという心地よい包丁のリズムと味噌汁のいい香りが鼻腔を擽る。いつの間にやら眠りに落ちていたようで時計に目をやると既に10時半を指している。

 

「おはようシンちゃん。」

 

「おはようございます。ミサトさん。」

 

「よく眠れた?」

 

「うーん…ドキドキしてあんまり。」

 

「そりゃ結構。もう少し時間かかるからパパっとシャワー浴びて来ちゃいなさい。」

 

「ありがとうございます。」

 

そう促され浴室へ入る。丁度ペンペンの入浴時間だったようで面識のない僕を見てびっくりしたのかアコーディオンカーテンを全開にし飛び出して行った。

 

「あぁちょうどペンペンが入っていたのね。その子がもう1人のど…う…。」

 

こちらに顔を向け笑顔で説明をしていたはずのミサトさんの顔が真っ赤になる。

状況を確認しよう、全裸の僕、飛び出して行ったペンペン、こっちを向くミサトさん。

 

「…?」

 

うん。しっかり全部見られたね。急に込み上げてくる恥ずかしさで手に持っていたバスタオルで隠す。時すでに遅しとはまさにこの事だとは思うがひけらかしてブラブラとさせているよりは余っ程良いだろう。

 

「あ、いや、あははは、べ、別に見るつもりがあった訳じゃないのよ?ホントよ?うん…。ご、ごめんなさい!」

 

慌てふためくミサトさん。新鮮なんだよなぁ…こういう反応…。

あんまりこういう姿を見せることの無い人のこういう反応ってなにかこう唆るものがある。

 

「ご、ごめんなさいっ!」

 

そう言って後ろを振り返る。あえて足を閉じていないのはそういうことだ。なんだか、セクハラする役員の気持ちがわかった気がする。

 

「う、後ろもダメ!見えてる!見えてるからぁ!」

 

「え、あ、あ…はい!!」

 

さっとカーテンを締める。ふぅ…。ミサトさん。面白いな…。

 

「い、今の中学生ってあんななの…。えぇ…。」

 

という呟きが聞こえたがそれはあえて無視することにしよう。

 

「ふぅ…。風呂」

 

シャワーで軽く汗を流し湯船に浸かる。流石は温泉ペンギン、ちょうどいい温度の具合をよく理解している。

とは言ってもペンペンが僕に教えてくれたことだ、何度もこの家で生活する上でこの温度の湯船に浸かるのに慣れ、この温度が最適なのだ。

 

「風呂は命の洗濯よ…か…。」

 

かつてミサトさんに教えられた言葉を反芻する。あの頃は嫌な事ばかり思い出してしまう風呂が嫌いだった。何度も繰り返す内にノイローゼになった僕は1人で風呂に入るのを嫌った、ミサトさんやアスカにお願いをし一緒に入ってもらわねばおかしくなりそうな時期もあったのだ。1度アスカに断られ仕方なく1人で入った時は不安に駆られ半狂乱になりながらアスカのカミソリで腕を切り湯舟に沈めていた事もあった。

何かに脅えビクビクとしていた僕を立ち直らせたのはミサトさんだった。それからは心地よくて何度もミサトさんと一緒に居る未来を作った。でもやがてそれはただ、互いの傷を舐めあっているに過ぎないと自覚したのだ。

 

「でもやっぱり嫌な事も思い出すよなぁ…。」

 

ぶくぶくと顔を沈める。案外水の中で目を開くこのぼんやりとした感覚が嫌いでは無い。見たくないものを見ずに済む。直視しなくて済むこの環境は僕にとって心地好いものであった。

 

「シンちゃん…その…さっきはごめんなさい…。」

 

曇りガラス越しに話しかけられる。別に嫌な思いはしていないしなんならちょっとウキウキして悪ノリしてしまった自分も居るからだ。

 

「良いんですよ。気にしてませんし。それに後ろ向いたのはわざとです。」

 

「はい!?…んもう…全く…。そんなに自信あるワケ!?」

 

語気が強くなるちょっと怒ったかな?

 

「いえ?ちょっとした意地悪というか、ねぇ?」

 

「そんなに見せたいなら見てあげるわよ!全く…。」

 

サラッととんでもないこと言ってないかこの人…。

 

「いんや、僕はそういった趣味はございませんもので…。」

 

「あー!もう!私の方が心配しててバカみたいじゃない!」

 

心配?はて、なんの事やら…。僕は心配されるようなことをしたか?頭にはてなマークを浮かべて黙っていると

 

「年頃だしそういうのに敏感でしょ?だから見られて恥ずかしいだとかいやな気持ちになってたんじゃないかって心配したのよ!」

 

「あぁ成程。そこまで僕はヤワじゃ無いですよ。でも、ありがとうございます。ミサトさん。」

 

「か、感謝されることでは無いのだけど…。あー!もう!調子狂うわねぇ!」

 

「でもこういうやり取り嫌いじゃないでしょ。」

 

うぐぐと唸り声をあげて黙るミサトさん。図星なんだ…。

畳み掛けるように僕は

 

「僕は好きですよ。ミサトさんとのこういうやり取り。」

 

「う…。貴方も物好きね…。一回り以上も年上の人とのこんなやり取りが好きだなんて。」

 

ちょっと卑屈な返答にムッとする。そういう事では無いのに…と

 

「年齢なんて関係ないですよ。僕は年上の女性だからからかっているのではなく、ミサトさんとだからこうして馬鹿なこと言えるんですよ。」

 

「っ!バカ!さっさと風呂出てご飯にするわよ!」

 

ピシャッとアコーディオンカーテンの閉まる音が聞こえた。

1人浴槽でにやにやしながら外に出たミサトさんの反応を思い描く。大方顔を真っ赤にしてニヤつきそうになる自分を律して居るだろう。

 

ダメ押しにもう1回言っておくか。

 

「ミサトさーん!僕はちゃんとミサトさんを女として見ていますよ!」

 

「う、煩いわよ!バカ!大人をからかうのも大概にしてよね!」

 

なんともまぁ気の抜けた嬉しそうな声色だこと。

もう一度湯舟に頭を沈める。思い馳せるのはトウジの妹のこと。

 

「何事もなく無事だったらいいけど。」

 

水の中で声にならない声は泡となって水面に消えていった。

 

風呂から上がると既に朝餉の準備が成されていた。朝餉とはいえもう時刻はほぼ昼時だが…。

見るからによそいたての白米と温かな味噌汁は僕が風呂を上がり髪を乾かしている間に盛ってくれて居たのだろう。

頂きますの挨拶をし口に運ぶ。チラチラと僕の顔を伺いながらも目線が合えばツーンとそっぽを向くのはご愛嬌だ。

さながら飼い慣らされた家犬のようにチラチラと僕を伺う様はどう考えても「今日は美味しいかな?口にあったかな?」とでも言いたげだった。だからこそちゃんと「今日も美味しいですよ。ミサトさんの旦那になる人は幸せ者ですね?」と伝えた。

にへらと笑い良かったと安堵した笑顔を浮かべた後に僕の言葉の真意に気づいたのか「大人をからかうんじゃないのよ!」っと顔を真っ赤にして怒っているのか笑っているのか分からない表情はとりあえず僕の記憶のフォルダーに留めておこうと思う。

 

「シンジくん、とりあえず今日はこの模擬体でシンクロテストして貰います。初号機だと思ってシンクロしてくれて構わないわ。」

 

「はい。」

 

ふぅっとため息を着く。一頻りミサトさんをからかった後に2人で本部へ足を運ぶ。家を出る頃には機嫌を直したミサトさんは今日、当直で帰れないと思うから、と万札を渡された。

しゅんとして今日は一緒にご飯食べれないんですねと伝えるとどうにかしてでも帰るから待っていてと何故かやる気スイッチを押す結果になったようだ…。アーメン日向さん。

 

「スコア48ぃ?平均値じゃないのよ」

 

マイクでミサトさんの声が入る。そりゃそうだ、母さんが居ないこれに乗ったところで数字が出るはずは無いのだ。普通に嘘だが。母さんが居るものより数字を落とすのは気楽であるのが事実。

 

「ふぅん…成程…ね?シンジくん上がってちょうだい。模擬体でのテスト止めるわ。」

 

なんとまぁ勘のいいこと。科学者の勘とは末恐ろしい。事もあろうに隣の実験室には既に初号機が在りさもこうなるのを予想していましたと言わんばかりの状況である。

 

「…最悪だ。」

 

「ん?何か言ったしら?」

 

地獄耳で本当に困る。僕は首を横に振り何も言っていませんよと否定する。だが、僕を訝しむ顔は一向に晴れることは無い。

困ったものだ…。適当にやって適当に乗り切ろう…。

 

「スコア…78!?なんですかこれ!先日の戦闘よりも高いじゃないですか!」

 

マヤさんが声を上げる。悲鳴にも近いその声に管制室はおおと驚きの声を上げる。

 

「…シンジくん、やはり貴方、先日の戦い、手抜いてたでしょ?」

 

「なんの事ですかね?」

 

「自分でもわかってる筈よ。それに今も…。」

 

本当に困った人だ…。どこまで僕を詮索すれば気が済むのだろう。知ってしまえば自分が傷つくことだってあると言うのに…。

 

「強情…ね?誰に似たのか…。いいわ、それならこちらにも手があるもの。」

 

奥の手…なんだ?僕が適当な情報で動くとでも思っているのだろうか。そんな甘っちょろい僕では無い。大体の機密事項をしっている僕にさらけ出せる情報など…。

 

「…ミサトの大学時代の写真。」

 

「は!?リツコ!?」

 

!?何それ超見たい!そんな餌をぶら下げるなんて…卑怯にも程がある!

 

「!シンジくん明らかに動揺しています。…あ!スコア2上昇!」

 

「ふぅん…大学時代の写真だとこの程度か…。じゃあ…。」

 

次は何が来る…。干してある下着を見ている、手に届くところにある、高々そんなものを提示されたところで僕は揺るが…。

 

「院生時代の水着写真…。」

 

「リツコ!?」

 

はいはい…上げればいいんでしょ上げれば…。全く…。

先日の腹いせと言わんばかりにミサトさんさえも攻撃対象とは恐れ入った…。サポートとして座っている日向さんの方が反応してるよ…。羨ましいんだろうな…。

 

「あっ4上昇です。」

 

「ちょっとリツコ!?なんであんたそんな写真持ってるのよ!」

 

「細かいことは気にしちゃダメよミサト。今はシンジくんの実力を測るために仕方ないのよ。」

 

「だからといって…えぇ…。私?私の写真で数値上がるの…?」

 

照れるな。いや、僕が悪いのは悪いけど、嬉しそうにするな!それ見ろ!隣の日向さんがびっくりしてるじゃないか!葛城さんってそういう趣味なのみたいな目で見てるよ!

 

「まだ行けそうね…。なら…ミサトの生着替え…。」

 

「だぁぁ!なんでそんなもんまであるのよ!消して!今すぐ!消して!!」

 

「あ、4下がりました。」

 

「…という事は既に見たという事ね…。」

 

余計なこと言うな。バレるじゃないか。そりゃ見るよ、隣の部屋だもん襖だもん。

 

「シンちゃーん?後でお姉さんとお話しようね?」

 

こわぁーい顔でモニターを睨むミサトさん。困ったものだ…。ふむ…何か良い手は…。

 

「…。」

 

「あ、78に戻りました。」

 

「ミサト!」

 

「当たり前でしょうよ!怒るわよこんなの!」

 

「ふぅん…なら…逆にこういうのの方がいいのかもね。」

 

何を出す?生乳か?それとも…。それ以上か?

 

「ミサトの全力笑顔。」

 

「!?シンクロ率90!?」

 

「シンちゃん!?」

 

買いだよ全く…。ミサトさんの今の表情を含めいいものを見せてもらった…。リツコさん僕の負けです、白旗上げますよ。でもこれ以上は上げたくない、だってプラグの先で母さんが手を振って待ってるんだもの…。「シンちゃーん」って…。まだ会いたくないんだけど…。

 

「シンジくん。まだまだ行けるわね?」

 

「あのいや…。」

 

「ダメよ!私も出せるものは全て出し切るわ!だからあなた…。」

 

館内アナウンスのコールが入る。

 

「技術開発部顧問の赤木リツコ博士、赤木リツコ博士。碇総司令がお呼びです。至急司令室までお願いします。」

 

しめた!これでこの地獄から開放される!

 

「チッ!本日のシンクロテストはこれで終了とします。命拾いしたわね…ミサト、シンジくん。」

 

いや、舌打ち、しかもセリフが悪役!でも助かった…。

エヴァから降りシャワーを浴びた先で待っていたのは目が全く笑っていないが笑顔のミサトさん。ニコニコと「シンちゃん?こっち来よっか」と手を引かれてミサトさんの執務室へ。そこでこっぴどく叱られてしまった。そりゃ覗いた僕が悪い。

だけど不思議なのがそれ以降家で着替える時必ずちょっと襖が開いている。これみよがしと覗けと言わんばかりに…。まったく素直じゃないんだから!

あぁ、リツコさんが呼び出されたのはやはり父さんが僕のシンクロテストを見ていたからで「赤木博士。あれ以上シンジがシンクロし帰って来れなくなった場合君は責任を取れるのか?」と大いに脅されたみたいだ…。それ以降無茶苦茶なシンクロテストは行われなくなったからめでたしめでたしだね。

 

 

「シンちゃん?今日から学校だけど…大丈夫そう?」

 

「えぇ、とりあえずは、学力も特に問題なさそうですし。」

 

そう、今日この日が僕の転校初日、トウジに会うまでは妹さんの様子は分からない。ちょっと不安だがきっと大丈夫であろう…。

 

「お弁当作ってあるわよ?」

 

「え、態々ありがとうございます。」

 

「いいのよ。いつも私がいない間にペンペンの面倒も部屋の掃除もしてくれてるし助かってるもの。私が返せるのは食事位なものよ?」

 

「まるで愛妻弁当ですね?」

 

「もう…まったく…。顔が冗談言ってる顔じゃないのよ。」

 

照れて頬をかく。うん、良い感じに好感度は掴めてきているようだ。かれこれ1週間こんな問答を続け僕を意識させた甲斐があった。

 

「それじゃ、行ってきます。」

 

「うん、行ってらっしゃい。」

 

ニコニコと制服の上にエプロンを付けた姿のミサトさんが手を振る。いやぁ僕に向ける笑顔が母親のそれでは無いのよ。

今日はなんだかペダルを踏み込む足が軽いや!

 

「えー、本日は転校生を紹介する。」

 

「えー!聞いてないー!」

 

「男の子かな?女の子かな?」

 

「俺女の子がいいなぁ?」

 

「残念だな、俺は見たぞ?男の子だった。」

 

「カッコイイと良いなぁ?」

 

そんな喧騒がクラスから聞こえる。

やはり何度経験しても転校というものは慣れない。ドキドキとしたまま先生の号令を待つ。

 

「色々と家庭事情が複雑みたいでな、深く聞かないでやってくれ。碇良いぞ。」

 

カツカツと教室へ入る。静まり返る生徒たち、えぇ…前は「キャー美男子」とか「かっこいい!」とかめっちゃ歓声上がってたじゃんなんで?

 

「すっごい綺麗な顔…。お人形さんみたい…。」

 

「それに程よく引き締まった体…。凄いわよ…。」

 

ああ、成程…。子犬を可愛がるような歓声では無くなった訳だ。

黒板に自分の名前を書く。振り返り教室を見渡し見知った顔を探す。

お、いたいた、綾波に、トウジ、ケンスケ、委員長。未だ包帯姿で痛々しいけどちゃんと学校に来れているようで良かった。何せ今日が初邂逅だ。

 

「碇シンジです。宜しく。」

 

簡素な挨拶を済ませる。これといって語ることも無いため満面の笑みで自分の名前を告げる。

面白くなさそうなトウジと「これは金儲けになるぞ」といった表情のケンスケ、まぁ別にここで変なことをする必要は無い。静かにしてよう。

 

「碇お前の席は…。相田の隣だな。」

 

「分かりました。」

 

そそくさと自分の席へ行きカバンを下ろす。ちょんちょんと肩を叩かれ振り返る、そこにはケンスケがニコニコと僕に話しかけてくる。

 

「やぁ。俺は相田ケンスケ、よろしくな!」

 

「うん!よろしく相田くん。」

 

「でもまぁなんでこの時期にこの街に越してきたんだよ、ドンパチで何人も疎開してるって言うのにサ。」

 

「うーん…親戚がここに住んでて…そこに引っ越したから?」

 

「なんで疑問形なんだよ!でさ、俺のパパがNERVに勤めてるんだけど、それで昨日パパのパソコン見てたら見つけちゃったんだよ使徒っていう怪物とエヴァンゲリオンって呼ばれてるロボットがドンパチやってる動画がさ!すげぇよなぁ…。俺も乗ってみたいよ。」

 

間髪入れずにこの話し様、相変わらずのケンスケ節だ。しかしまぁ自宅用のパソコンに入れておくべきデータでは無い。普通にケンスケの父さんの首が飛ぶことになる。職を失う、ではなく文字通り。ね?

 

「でもまぁ、楽なもんじゃないよ。」

 

「ははっ!なんで転校生のお前がそう断言できるんだよ。」

 

まどろっこしいのは辞めだ。ストレートにつけてしまって伝えられないものは機密事項として黙っていればいい。そうすれば自ずと分かってくれるだろう。

 

「なんでも何も僕があれのパイロットだからに決まってるだろう?」

 

「なぁ?転校生、吐くならもっとマシな嘘つかないとさ…?」

 

「エヴァンゲリオン初号機だろ?」

 

「へ?」

 

「その兵器の名前。しかも最後は無様に自爆ってね。」

 

「…。なぁお前本当に…。」

 

疑り深いやつだ、真実を告げているというのに何をそんなに疑うのか分からないがとりあえず職員の息子ならと知り得る情報を投げる。

 

「ていうか薄々気づいてたんじゃないの?NERVの総司令、碇ゲンドウの息子だって…。」

 

「あ…。同じ苗字…。てことはまさか本当に!?ウッソだろ!!!すげぇ!!うわぁ!かっこいいなぁ!」

 

わかりやすいヤツめ、こんな単純なヒントで理解して目をキラキラ輝かせるなんてね。

まったく…。

 

「やっぱり親に乗ってくれって頼まれたのか?」

 

「ま、そんなところだよ。」

 

「すっげーアニメみたいだ。どうやったら俺もなれるかな?」

 

「…そんなに良いもんじゃないよ。」

 

がっと後ろから肩を掴まれる。振り返るとトウジだった。

険しい顔つきで僕を睨みボソッと口を開く。

 

「おい、転校生、ちょっとツラァかしゃあ…。」

 

「ト、トウジ…。」

 

屋上に腕を掴まれ連れていかれる。こりゃあやっぱり妹さん怪我したかな…。後ろから着いてくるケンスケもバツが悪そうだ。

 

「おう…転校生。早々にこんな呼び出ししてもうて申し訳ないわ。」

 

「えっと…鈴原くん…だっけ?なにか…あったの?」

 

恐る恐る聞いてみる。険しい表情のまま詰め寄ってくる。

 

「トウジ!?流石に八つ当たりだろ!?やめろって!」

 

「じゃかしいぞ!ケンスケ!ワシやぁコイツを殴らなアカンのや!」

 

「何でだよ!妹無事だったて言ってたじゃないかよ!」

 

妹は無事ぃ!?じゃあなんで呼び出されてんだ!?

 

「何でやと!そんなの決まっとるわ!妹は助けてくれたそんロボのバイロットに、お前に夢中じゃ!、オトンもオジンもこないだの戦闘の処理で帰って来ん!ワシに誰じゃか調べろ言われてもワシにゃわからん。オトンもオジンに聞こうにも機密事項や言うて教えてくれんで辟易しとったんじゃ。そん中に転校生お前が来てくれて助かったわ。おまんせいでわしゃあてんてこ舞いなんじゃ!しかもあないな近くでドンパチやりよって妹が怪我したらどうすんじゃ!」

 

えぇ…。そんな理由?しかもなんかシスコン過ぎないか…?

でもまぁそれで気が済むなら1発くらい殴られてやろう…。

 

「碇!逃げろ!」

 

ケンスケの制止を振り切り僕の目の前までやってくる。

 

「すまんな転校生。ワシはお前を殴らなあかんのや!」

 

1発頬に貰う。だがよろけることも無くしっかりと頬で受け止める。服を着ていればある程度は華奢に見えるを余程簡単に殴り飛ばせるとでも思ったのだろうか。飛ばない僕を見て焦りを感じているようだ。

 

「…鈴原くん。これで気が済んだかな?」

 

言わなければいいものを僕の行為は火に油を注ぐ。

 

「おんどれぇ!人を舐めよってのう!さっきのが全力やと思うんちゃうぞボケェ!」

 

2発目。仕方ない僕のミスだ。言葉選びをしくじった僕のミス。

甘んじて受け入れよう。

ケンスケに目線をやる。ハッとした顔のケンスケは

 

「トウジいい加減にしろよ!何も2発も殴ることは無いだろ!?」

 

「ケンスケはだあっとれ!もう引くに引けんのじゃ!なしてこんなヘナチョコが街を守るなんて抜かしとるんじゃ!できるわきゃねぇ!」

 

ぷつんと何かが切れる音がする。あぁ、僕の堪忍袋だ。

その振りかぶられた腕を掴みそのまま背負い投げる。

どんという衝撃音。トウジの肺から空気が絞り出される。

 

「かはっ…。」

 

やりすぎたか…?でもまぁ仕方ない。彼が悪いのだから。

フゥっと小さくため息をつく。

 

「鈴原くん…。僕が君の家庭に傷を付けたのはよく分かったよ。でもね、ヘナチョコでも弱虫でも何でもいいよ。でもね、僕がこの街を守れないなんて言うべきじゃなかった。」

 

「ぐうぅ…。はっは…。」

 

酸素を求めるように浅い呼吸をするトウジ。とりあえず聞いてるだけいいか…。

 

「お、おい。碇…。」

 

「あぁ、悪いね相田くん。鈴原くんのこと、保健室に連れて行ってあげて。僕、気分悪いから早退する。それだけ担任に伝えておいて欲しいかな?」

 

そう言って校舎を後にする。いつもならこのタイミングでの使徒襲来だが今回は起こらないようだ…。綾波も来ていないし。

後になって分かることなのだが、ケンスケから僕がトウジを伸した事が学校中に広まったようでこっぴどく担任や委員長にトウジは絞られたようだった。

 

「全く…。今日もこうしてるつもり?」

 

「んー…だって学校行きたくないんですもの…。」

 

「そうは言ったってねぇ…。私だって有給使ってずっとこうしてるのは限界があるのよ?」

 

あれから3日程学校を休んだ。校内に広がりつつある僕がパイロットであると言う噂とトウジをぶん投げたという噂が相まって相当面倒なことになっているようなのを学校からミサトさんへ連絡があったようだ。

 

「そりゃあ転校初日に僕に殴りかかった同級生をぶん投げて全治1週間の怪我をおわせたんですよ?行きたくないでしょ…。」

 

「でもねぇ…。かと言ってずっとあたしの膝の上で寝てるのはどうかと思うけどね?」

 

ちょうど僕が帰ってきた日ミサトさんは忘れ物か何かで家に戻ってきたタイミングだったようで「シンちゃん!?どうしたの!?学校は!?」と大いに心配されたが、事の経緯と僕の気持ちを伝えたら納得してくれた、そこから有給を使ってまる3日休んでくれているようで助かる。綾波やアスカとの接点ができる前にミサトさんとの関係を完成させてしまうのが1番手っ取り早い。

 

「居心地いいんですよ。柔らかくてムニムニで…。」

 

「まったく…。」

 

呆れた表情の後、優しい笑みで僕の頭を撫でる。

 

「あぁ…そういえば…綾波?って子がもう1人のパイロットって聞いていて…。学校では一応顔、合わせたんですけど…何だか話しかけづらくって…。」

 

「あらいい機会ね。学校行ってないんだし会ってきてみれば?」

 

頭を撫でる手は止まらない。

 

「はぁ…。でもなんの用事もなく家に行ったら不自然じゃないですか?」

 

「それなら私が作ってあげるわよ。」

 

すっと差し出されるID。あぁ、そういえばこれくらいの時期だったか…。綾波のIDが更新されるのって…。

 

「リツコからよ。いつまでも私にかまけてないでレイとも仲良くしたらってね?大きなお世話よ。」

 

ムッとした表情を浮かべる。だがその手は動作を止めることは無い。

まぁ一世一代の大イベント。関係値ゼロので綾波の乳を揉めるチャンスだと思えば気楽なものだ。

 

「うぅむ…。悩ましいですね…。ミサトさんとこうイチャイチャしてる方が僕にとっては有意義だとも思いますけど…。」

 

「バカねぇ…。子が親に甘えてるだけでしょ。」

 

「親は子に膝枕はしません。」

 

「…バカ。」

 

ふふっと微笑むミサトさん。うん。だいぶいい仕上がりだ。ここいらで1回かましておくのも悪くは無い。

 

「でも私、今日リツコに呼ばれちゃってさ…行かなきゃなんないのよ…。」

 

チッ余計な真似を…。絶対綾波の保護者としてその自覚を芽生えさせてやる。子を持つ親の気持ちを味あわせてやるから覚悟しておけよ!

 

「綾波さーん?居ますか?」

 

無言。

 

「ベル壊れてるのか…。」

 

無言。ま、いつもの事だ。

 

「入るよーん…と。」

 

いつも通りの伽藍堂の部屋。脱ぎ捨てられたワイシャツと下着の数々。血まみれの包帯。ビーカーに試験管。うん!綾波って感じ!

 

「鍵も開けっ放しだしこの部屋って…。」

 

「誰?」

 

oh.....予定通り。シャワー中でしたね。

 

「貴方…初号機パイロットの…。」

 

「うん。シンジ。碇シンジって言うんだ宜しくね。」

 

にっこりと笑顔で手を差し出す。全裸、という事は気にしない。というか綾波はこれがデフォルトなのだ。

 

「碇…。司令の…?」

 

「うん、父さんの。」

 

「仲良くしよう?」

 

「それは『命令』?ならばそうする。」

 

「これは僕からの『願い』だよ。」

 

この時の綾波は言っちゃ悪いがとっつき辛い。余計なワードを呟いてしまえばそこに噛み付いてくるし意味を理解するまで詰められる。下手な言葉選びは出来ないのだ。

 

「『願い』…。?分からない。」

 

「願いというのはね、君への提案、そうするかそうしないかは君次第。君が僕と仲良くしたいならばそうすればいい、逆に僕が嫌いなら仲良くしなければいい。それだけの事だよ。」

 

「碇…くんは私と仲良くしたい…。私は…?初めて、分からないわ。」

 

「なら少しづつでもお互いを知れたらいいね?」

 

優しくバスタオルを肩にかける。前が隠れるように。

 

「何故?」

 

「素っ裸は恥ずかしい事なんだよ。」

 

「裸。生まれたままの姿、それが恥ずかしい…何故?」

 

「人は弱点を隠して生きてる。それは体のパーツも同じだよ。人と人が営み、愛し合うのに使う場所は人には触れられたくない弱点なんだ。」

 

「愛し、営む…。」

 

「そ、子を育てるのにここは使う。他人にはそこは触らせちゃダメだ。そしてこっち、こっちは命が生まれ育まれる部屋だ。小さなガフの部屋とでも言えるのかな?」

 

「それなら…分かる。命が生まれ…帰る場所…?」

 

「うーん還りは出来ないけど。でも生まれるところだよ。だから人に無闇に見せてはいけないんだ。好きな人以外には…ね?」

 

「好きな人…。気に入り心を惹かれる人…?分からない…。」

 

俯き下を向く綾波。まぁ最初はきっとこんなもんだ。上々なコンタクトとも言える。

 

「大丈夫綾波もそのうちその言葉の意味がわかるよ。」

 

「分かった…。でもなんで私?」

 

「それは僕が君に心惹かれてるからさ。」

 

「私を…好き?葛城一尉は?」

 

「もちろんミサトさんもね?」

 

「人は1人を愛し寄り添うもの…そう聞いた。あなたは…変。」

 

「そう言うなよ…。僕だって難儀だなぁって思うけど好きになったもんは好きなんだよ。それは変えられない。」

 

「変な人。」

 

無表情ながらも少しムッとしているようだ。

これが綾波のいい所でもある。

 

「ま、とりあえず新しいID置いておくから。ちゃんとそっち使うんだよ?昔のじゃ入れな…。」

 

突如として鳴り響くサイレン。

 

「ようやくおいでなすったか…。綾波さん。僕は先に行くよ。」

 

「本当に変な人。」

 

最後にそう呟きが聞こえた。さしずめ、先程までのヘラヘラした顔とは違う顔をしていたからだとは思う。

とりあえず、ミサトさんが全速力でこちらに向かっているらしいので落ち合って本部に向かうとしよう…。

 

「状況は?」

 

「先刻、日本領海に侵入との報告。一般市民の退避は既に完了。日本政府はエヴァの出動要請を出しています。」

 

「態々言われなくても出すもん出すわよ…。」

 

「まったくね?碇司令の居ぬ間に第5の使徒襲来と…。」

 

「こっちの事情も考えず、とは女に嫌われるタイプね?」

 

「前回が15年、今回が3週間ですもんね。」

 

慌ただしい管制室の声が入る。モニターに映るそれは紛うことなきシャムシエル。名前もないなんて可哀想だが…。

懸念点はトウジとケンスケ、あのバカ2人が出てこなければ幾らかこちらがやりやすいというのに…。

 

「なぁトウジ。」

 

「なんやケンスケ。」

 

「上見に行こうぜ?」

 

「お前ってやっちゃなぁ…!?死ぬかもしれんで!?」

 

「死ぬ時ゃこんなとこに隠れていたって死ぬさ!だったら死ぬ前に上見てから死にたいんだよ!なぁ頼むよ!」

 

「何のためのNERVじゃ…。」

 

「そのNERVの大切なパイロットを3度もぶん殴って挙句にぶん投げられたのはどこのどいつだ?」

 

「な!?2発や!2発!最後の1発は当たらんくて投げられてもうたわ!」

 

「学校にも来ないし、もしかしたらエヴァにも乗れなくなってるかも…?」

 

「ぅ…。」

 

「俺たちは見届ける義務があると思うんだよ。」

 

「しゃーない!わかったわ!」

 

「鈴原!煩い!」

 

「あーすまんいいんちょ、わしら2人便所や。」

 

 

「…今回はゲージで変態…ね?」

 

頭を抱え唸るリツコさん。

 

「修繕費いくらになるかしらね…。」

 

「なら無駄に拘束しないで地底湖にでも沈めとけばいいんじゃない?ほらマジーンゴーっていえば出てくるみたいな?」

 

「アホらしい考えだけど悪くはないかもしれないわね…。」

 

やーいやーい。僕と母さんを無駄に酷使するからだよ!

 

「シンちゃーん?聞こえる?」

 

「ん?はい!」

 

「出撃、良いわね?」

 

「問題ないです。」

 

座に着き手の感覚を確認する、変わらずf型装備のそれは重いが難なく動きそうだ。

 

「相手の能力が分からない以上近接戦はおすすめ出来ないわ。ギリギリ中和できる距離でのパレットライフルの掃射良いわね?」

 

「あの…。多分手がデカすぎて持てないんですよね…パレットライフル…。」

 

「「あ゛」」

 

ミサトさんとリツコさん揃って間の抜けた声を出す。

そりゃそうだ初号機のこの状態など失念していても仕方ない。

 

「ごめん…シンちゃん…失念してた…。」

 

「お気になさらずに。常設の武器で何とかなりますよ。」

 

「よろしく頼むわね。」

 

「ではエヴァ初号機リフトオフ。」

 

さてさて…。トウジ達は…。いつも通りあそこか…なら、こっちで決着つければアイツらに危害が加わることは無いな…。

 

「葛城…一尉。」

 

「あらレイ。珍しいわねここに顔出すなんて…。」

 

「碇…君のについて聞きたいことがあって…。」

 

管制室から聞こえる声に耳を傾ける。

綾波…変なこと言わなきゃいいけど。

 

「レイも会ったものね。どうだったの?」

 

「不思議な人でした。ずっと笑っていて、その優しさ。というか…。でも変でした。」

 

「ん?変?何が?」

 

「彼が好きなのは葛城一尉だと思っていました。でも私も好きだと…。」

 

oh......悪手!帰ってどう弁明しよう…。

 

「あらシンちゃんがそう言ったの?」

 

「はい。でも葛城一尉も大好きだと。」

 

「ふぅん…それで?」

 

なんだこれ…。公開処刑?あぁ、ダメだ目の前の使徒に集中しなくては…。

 

「私に裸は恥ずかしいものだと教えてくれました。好きな人の前でするものだと。」

 

「うーん…。まぁ間違っちゃいないわね。」

 

「不思議と理解出来ました。彼の言葉は。だから…その…。」

 

「なぁに?」

 

「もっと彼を知りたい…。何故かそう思ってしまいました。」

 

「そりゃ好都合。彼の原動力とその芯の強さはきっとここで見れるわよ。」

 

「あの時と同じ顔。不思議。」

 

ふたりの会話がこそばゆい。あー!もう余計なことを考えていたら倒せるもんも倒せない!さっさと決めよう。とマゴロックスとカウンターブレードを抜き取り構える。相手の光鞭はいつも戦ってきた相手だどうにかなる。

 

「シンジくん!避けなさい!」

 

「は!?」

 

足元を掬われる。眼前には押さえつけられた2本の光鞭があるいったい何故…?足元に目を落とす。そこにはもう2本の光鞭が初号機の足を捕らえていた。やられた!

足を絡め取られて転ばされる。

忘れてた。使徒も自己進化するって事を。

 

「まずい…。このままだと非常にッ!」

 

足を掴まれいつも通りの場所に放り投げられる。

F型装備だと潰してしまいかねない…。どうにか少しでも位置をずらさなくては。

背部のフィールドリアクターを全開にする。多少これで落下の位置はずらせる筈だ。

ドンと叩きつけられる。機体が重い分そのGは生半可では無い。

肺に残った空気が押し出され音にならない声がでる。

 

「かはっ…。」

 

「シンジくん!大丈夫!?」

 

「えぇ…なんとか…。」

 

「初号機直下に生体反応!」

 

「なんですってぇ!?これは…シンジくんのクラスメイト!?」

 

間一髪ぶち当たることだけは避けられたようだ。掌の間で怯えている2人。下手に優しい言葉をかける必要は無い。

 

「何してんだよバカ!非常事態宣言、避難勧告出てただろ!?それなのに態々このドンパチ見に来たってのか!?」

 

「「…。」」

 

「死にたくないなら早く逃げろよ!あぁ!」

 

使徒の腕を押さえ込み暴れぬように制する。

 

「なんで戦われへんのや!」

 

「違う…トウジ…。俺たちがここにいるから…!」

 

「ッ!自由に…動かれへん…のか…。」

 

エントリープラグを排出しハッチを開ける。

 

「そこの2人!早く乗れ!」

 

「シンジくん!?許可なく一般人を乗せられると思ってるの!?」

 

「緊急時です!ここで2人を死なすくらいなら軍法違反でも命令違反でも何でもいい!」

 

 

「早く乗れよ!死にたくないんだろう!?」

 

ドボンと水に飛び込む音

 

「うわ!なんや水け!?」

 

「か、カメラが…。」

 

「ぐぅぅ!」

 

押さえ込む両腕が焼けるように痛む。オマケに2人も異物を乗せているせいで頭が痛い、吐き気がする。

やっとの思いで使徒を放り投げる。

白煙を上げる両の拳。

 

「シンジくん!一時撤退!」

 

「撤退…。撤退ねぇ…。」

 

チラリと2人の顔を見る。

 

「な、なぁ?逃げろ言われとるで転校生!?」

 

「…エヴァの私的利用、それに加えて命令違反。今更2人を連れて帰ったところで…。」

 

先にこの2人を届けてしまえばどのような目に遭うか想像はできない。ならば…。

 

「さっさと殲滅して帰った方が被害は少ない。だろう!?」

 

プログレッシブダガーを引き抜き斜面を駆け下りる。

 

「シンジくん!?退却よ!」

 

「すみません!ミサトさんッ!」

 

懐に入り込みダガーをコアへ突き立てる。

侵食型ATフィールドと称されるそれを展開したその刃は火花を散らしながらコアへと突き刺さる。使徒も負けじとその4本の光鞭を初号機の腹部へと深々突き刺さる。

 

「うっ…。」

 

口から空気が漏れる。何よりも腹の中を何かが突き抜けているという状態が死ぬほど気持ち悪い。

嗚咽を何度も繰り返しながらもモニターを睨みつける。

 

「おい!転校生!逃げろ言われとるやろ!」

 

「お前らだって僕が逃げろって言った時に逃げなかった癖に人には逃げろって言うのかよ!大体地上にいなけりゃもっとスムーズにこの戦い終わってるんだよ!」

 

「…。」

 

「僕を殴ったのも僕を侮辱したのも許してやる!でも今日この日にシェルターを抜け出したことだけは何があっても当分許してやらない!その代わりに!今日は無事に君達を家に届けてやる!だから!静かにしててくれ!」

 

目一杯操縦系を押し込む。バリバリと音を立ててめり込むダガー。そしてひび割れたコアはその輝きを失いその活動を止めた。十字架と虹が立ち上がりそこに残るのは初号機ただそれのみとなった。

 

「なぁ…おい…。」

 

「何か言う前に…助けて頂いてありがとうございます…だろ?」

 

朦朧とする意識の中トウジとケンスケにそう伝え意識は深淵に落ちていった。

 

プラグから放り出された僕はロッカールームでミサトさんと対峙していた。目を覚ましたのはミサトさんの平手打ちだった。

 

「呑気に寝てんじゃ無いわよ!」

 

「呑気…に?何を言って…。」

 

「命令違反!エヴァの私的利用!どれだけのことをしたのか分かっているの!?」

 

「ここで逃げ帰るより倒してしまうのが得策だと僕は判断した迄です。」

 

バンとロッカーに掌が叩かれる。

 

「いい?私が作戦部長なのよ?あなた達パイロットの命、市民の命どれも守る必要があるのよ!?それを理解して…」

 

立ち上がり壁ドンの姿勢へとなる。ドンと叩きつけられる僕の拳、それはロッカーを歪ませ大きな音を立てた。

 

「理解?僕は誰よりもそれを痛いほどに理解している。分かっているつもりです。あなたの痛みも話してくれた事も、全部全部!だがあの使徒があのまま活動し市街地へ戻り本部への進行を始めた場合あの光鞭でどれだけの被害が出るか想像しましたか!?修繕費も、疎開も、全部全部!」

 

「シンジ…くん…。」

 

「それでもなお僕を責め立てると言うならお聞きしますよ。ただ僕は貴方を軽蔑する。それでいいのだったらそれで構いません。続けますか!?」

 

「責め立て…そんなつもり…。」

 

ふうっと大きく息を漏らす。

 

「いいですかミサトさん。僕は街を市民を護らなくちゃならない。この先何が起ころうとも。だけどその前に僕はミサトさんや綾波を護らなくちゃならない。護りたいんだ。好きになったから、好きだから。苦労を心配をかけたのは謝ります。でも…それいじ…んん!?」

 

押し黙らせられるように口を塞がれる。すっと離れ顔を赤くする。

 

「もう…いいわ…。それ以上言わないで。」

 

踵を返し後ろを向くミサトさん。照れてる!?

 

「あなたが思うように私は貴方が大切なのよ。それだけは忘れないで。」

 

それだけ言い残すと早足で。というか駆け足で更衣室から出ていく。

呆然と立ち尽くすしかない僕はまだ唇に残る感覚を思い出すかのようにひと撫でした。

 




…うん。関西弁難しい。破綻しないようにとりあえずミサトさんルートを確立。
もっとエピソード増やしても良いのかなと思ったけどグダるのでNG。
テンポよく読み進めたいかなと。考えた上で…。
ちょっとHな今回の話。次回はレイ、心の向こうにはこの回で同じ流れを汲んでしまったので何とか書いた次の話はほぼオリジナル展開…。どうにか粗が目立ちませんように…。
感想、指摘、こうして欲しいあれば感想などお願いします。
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