Re Take of Evangelion   作:Air1204

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ようやく本編書き終えましたよ。
ここから大きく歯車は狂い出します。



第14話 Air 破

「やっぱり…思ってたとおりね…。」

 

「うん。3機足りない。」

 

宇宙(そら)かそれともまだ身を隠しているのか…。」

 

戦自を、国連を除けたアタシたちはSEELEの寄越したエヴァシリーズとの戦いに身を投じた。

だが、アタシの予想通り。エヴァシリーズは地上に3機見当たらない。なんならその姿はかのエンジェルキャリアーと同じ姿を取り、この世界の使徒だけでなく他の時間の使徒の幼体をも抱え込んでいる。

 

「分が悪いったらありゃしない。おまけにメインシャフトへ降りられないように道を塞いでる。変に知恵があるのは使徒以上に厄介かもにゃあ…。」

 

「渚が先にセントラルドグマに降ったからいいものを…。これじゃアタシたちが手を出せない。」

 

「さっさとぶっ殺してそうそうにドグマに飛び降りるしか無いにゃん」

 

「クソホモ。タイムリミットは?」

 

「もって6分、それ以上持たせるように何とか踏ん張ってみるよ。」

 

「一機につき1分強。アディショナルタイムは自分達の腕次第って事ね。」

 

『アスカ!!ねぇ!アスカ!!』

 

「何よ!うるっさいわねぇ!!」

 

割り込まれた通信にでかい声のミサトが涙声にあたしの名を呼ぶ。なにかよからぬ事でもあったのか…?

 

「なに!?こっちも一刻を争うの!早くして!」

 

『ひっぐ…衛星軌道上にて…ひぐっ…ぐす…』

 

「なーによ!早く言えっての何泣いてんのよ!?そんなに状況が悪いの!?」

 

『うぇえんん!その逆よ!ー号機が…覚醒。シンジくんの目が覚めたのよ!』

 

ああ、成程…。だからこんなに泣いて…。

ニヤリと口角が上がる。これで不安の種は無くなった。後はあいつが帰ってくるまでのお膳立てをすればいいだけ。

これでようやく肩の荷がおりるって訳ね。

 

『鈴原くんもレイもこちらに向け帰投を始めているわ…ぐすっ…。』

 

「肝心のナイトはどうなってんのよ…?」

 

『それは僕の口から…。ただいまアスカ。』

 

「バカシンジ!?」

 

サウンドオンリーで接続された通信、そこには3年ぶりに聞くシンジの声が響く。

 

「1人にしてごめん。重荷を背負わせてごめん。」

 

「謝るのは後でいい!なんでアイツらと一緒に帰ってないわけ!?」

 

「エヴァシリーズが3機目の前にいるから。コイツらを殲滅して直ぐに戻るよ。」

 

「わかった。さっさと戻りなさい。地上はこっちで何とかする、アンタはカマホモの所にさっさと行ってやんな!」

 

「カマホモって…カヲルくんがそれじゃ可哀想だよ…。まったく…すぐに帰る、次こそはもう全員1人にしないから。」

 

そう言って切れた通信。顔が見れないのが少し寂しかったがそれでも変わらず、元気そうな声が聞けてよかった。

 

「ほぉ?やる気に満ちた顔してるねぇ?姫。流石は騎士(ナイト)様だねぇ。」

 

「そうかしら?ま、あんたがそういうんならそうかもね。一機40秒でケリをつける。もう二度とコアを潰さないなんてヘマはしない。」

 

「おおう!?強気にでたね!!ま、肝心のコアが見当たらないんだよにゃあ…どうしたもんかね…?」

 

「馬鹿ねぇ…何巡もしてるくせに弱点も把握してないなんて…。」

 

ー号機の装備である『ナイツオブラウンド』を装備し腹部の使徒の幼体が収められたコンテナへとそれを叩きつける。

大量の血飛沫を巻き上げ、形象崩壊を起こすソレ。

 

「動力源は使徒の幼体。それの持つS2機関がコイツらの動力って訳よ。」

 

「さっすがぁ!百戦錬磨の戦姫はなんでもお見通しだねん。」

 

「バカシンジが帰ってくるってのになりふり構ってらんないのよ。さっさとケリつけましょ。」

 

「ガッテン!」

 

 

「リリス、既に槍が抜かれ活動状態へとなったか…。」

 

落ちるように下るメインシャフト。目下Mark6は既に目標へと辿り着き槍を手にしている。

 

「綾波レイという魂もなく…か。いや…綾波レイを探している…?」

 

モゾモゾと地を這うように動くそれは何かを探すように這い回っている。

 

「これがゼーレの思惑か。リリスにも自我が生まれ始めている。」

 

ウェポンラックからRSホッパーを切り離しMark6目掛け叩きつける。その衝撃によってはじき出され後ろへと後退するMark6

 

「1対2はさすがに骨が折れるか…。それにリリスの魂は僕の魂と波長がよく似ている。神の写し身たる第13号機ごと僕を取り込めば最も神に近しい存在になれる…か。」

 

体勢を立て直しこちらへ目線をやるMark6。それと同じく僕を見つけたリリスもこちらへと標的を定めた。

 

「やれやれ…。シンジくんがこちらに着くまでの時間くらいは稼がせてもらうよ。じきに鈴原くんや綾波レイもコチラに着く。何やら嫌な予感がするしね。」

 

腰部にマウントされた『袈裟羅』を構える、もう片方の手にはカシウスが握られている。

1対2の時間稼ぎどれ程の時間が稼げるかも分からないがやれるだけやってみよう。

 

 

「ウラァアアア!!」

猿叫を上げ、巨大な刀身へと変化したウルフパックを振るう。宇宙という抵抗が無い空間ゆえにその一閃は自身の身体を振り回すのは造作もなかった。

 

「うわっ!おっもい!」

 

その切っ先はエヴァシリーズの腕を掠めその1本をもぎ取った。

 

「なんちゅー重さ…!これは…さすがの僕でも扱いづらい…!」

 

イメージ次第とはよく言うが、これに関してはイメージの上を行き過ぎている。ぶっちゃけやりすぎだし…なんなら、完全に融合していて分離しそうにもないんだよね…これじゃwithウルフパックじゃなくて完全に新しい機体だ。

言っちゃ悪いがコロコロとその容姿が変わりすぎて中の人的にはラフ絵を書くのも苦痛だ。

それでも合体ロボや新しい形態変化ってのは男の子のロマン!ってよく言うよねぇ?

 

「シンジさん、兎に角一機ずつ相手に潰すしかないわ。」

 

「QRシグナムが見当たらない。だとしたら動力源は…?」

 

「きっと腹部の使徒の幼体。それの未熟なS2機関でその身体を維持してるはず。だから狙うなら腹ね。」

 

「やってみるか。」

 

他に武装もないままに放り出された宇宙(そら)。武装は扱いづらいウルフパック1つ。仕方ない…。手持ちの武装をイメージするのは難しいし…。

うん。まぁこれだよねぇ…。

背部の翼が6つに分かれる。一応、この間の世界のアスカが使ってた武装をイメージしたつもりだったんだけど…。

それの一つ一つが某機動戦士のドラグーンとよく似た形をとる。それだけにとどまらず、細長い、刀身にATフィールドを展開したサムライソード、…うん。どこぞのストフリとディスティニーでしょうか…?

 

「…サブカル好きねぇ…?前から思ってたけど…。」

 

「仕方ないじゃないか!なんだかんだ1番イメージしやすいんだよ!!」

 

「でも貴方はコーディネーターでもニュータイプでも無いのよ?上手く扱えるのかしら…?」

 

「やれるだけやってみる…。ウルフパックが食べちゃったあのユニットのおかげでこれだけできるんだと思うしね…。」

 

「エンディミオン・ユニット…ねぇ?この世界では存在しえない技術によって生み出された人外未知のシステム。誰が作ったかも定かじゃないのよ。」

 

「幸か不幸か、こういう人外未知のシステムには慣れてるから…ねぇ!?」

 

新たなシステムが立ち上がる。

モニターに映し出されたのはエンディミオン・システム

両肩のウェポンラックに収められていた黒い結晶が分裂し肩と膝あたりに黒いマイクロブラックホールのような何かが現れ黒い粒子を撒き散らす。

うんうん、いいねいいね。ドラグーン擬き改め『アルビオン』と命名しよう!…?厨二が過ぎるって?体は14歳だからセーフだよッ!

弾き出した刹那、代わる代わる暗転する視界に目眩がする。

 

 

「うぇっぷ…。アスカのやつ…こんなの使いこなしてたのかよ…というか6機でこれ…?ナノマシンの集合体ってどんな体してんのよ…。」

 

目まぐるしく駆け回るアルビオンがエヴァシリーズを追いかけ回す。

 

「シンジさんッ!右っ!」

 

リンネの掛け声に反応しそれを差し向ける。2人いればいくらか視界のカバーは出来そうだ。

 

「中々にぶっ飛んだ威力なんだよなぁ…。あんまり集団戦では使いたくないな…これは…。」

 

辺り一帯、漂流物諸共塵になった宇宙(ソラ)で独り言を呟く。

だが、僕達はSEELEを甘く見ていたんだ。アイツらはマトモじゃないという事を念頭に置いて行動するべきだったんだよ…。

 

 

第2部 RE:Neon Genesis of ANIMA 第壱話 Air

 

 

 

「兎に角、地上に戻ろう。話はそれからだ。」

 

「そうね。シンジさん。サードインパクト止めないと…ね?…!キャッ!」

 

ズズんという何かが本体に直撃した感覚。

計器が警告音を響かせた、エヴァシリーズは殲滅したはず、じゃあ何が…。

 

「よお!碇!」

 

宇宙空間で聞くはずのないその声が耳に届く。

嘘だと思いたかった、未だ夢の中だと信じていたかった。

でも、現実は無情にも目の前に最悪の形となって現れる。

 

「悪いなぁ…久々の再会だってのに…。」

 

「なんで君が…君がそれに乗っているんだよ!!」

 

見て直ぐにNERVのものでは無いと分かるその姿、出で立ち。

エヴァンゲリオン正規実用型モデル 乙号機、そしてその兄弟機たる甲号機を混ぜ合わせたようなゴテゴテとした姿。

かつて、カヲル君が使った儀式のトリガーたる初号機と同等の性能を有した機体であり、ゼーレの切り札でもある。

 

「…なぁ碇。俺はずっとエヴァに乗りたかったんだよ、それがどんな形であれ…さ?」

 

「なら、尚更攻撃するのは僕じゃないだろ!?」

 

「それは違うぜ碇、俺は国連の上層組織所属のエヴァパイロットの1人だ。NERV殲滅の為に…な?」

 

…どんな悪夢だ…。親友と殺し合うなんて僕には出来ない。

 

「まぁ、理由は今となっちゃそれだけじゃないけどな。今しがたお前は、いやー号機は第13の使徒と認定されたよ。だから、俺がお前の敵なんじゃない。お前が人類の敵なんだよ碇。」

 

「んな!?」

 

「そりゃあそうだろう?ここまで生かして貰えたのはミサトさんや加持さんの尽力があってだろ?国連も甘く見てたんだろうよ。でも痺れを切らしたんだよ。今や一国のエヴァの保有数の制限を超えた独占。お前レベルのパイロットがゴロゴロいるNERVが怖くない訳ないだろ?だから攻め入った、そしてお前は目覚めた。自己進化を何度も繰り返した結果エヴァの域を超えたモノホンの神の御使いになっちまったわけだからな…。」

 

切っ先が悠にエヴァの体躯を超える長刀をこちらに向けるそれを力なく見つめることしか出来ない。

全ての流れが滅茶苦茶すぎるこの世界。よもやここまでエヴァが新造されて…。守るべきものがこちらに対して牙を剥くとは信じたくは無かった。

 

「ヱヴァンゲリヲン甲乙号機。第13の使徒を討ち取らせてもらう。」

 

「シンジさんッ!避けて!!!」

 

グッと身をかがめて一閃の構えをとった甲乙号機。

反応が少し遅れ脇腹を掠る。

 

「ぐふっ……。な、なんだこれ…。」

 

「お前のそれがATフィールドを持たずアンチATフィールドによって形成されているのは分かっているさ。だからATフィールドを持つ兵器は意味が無い。なら純粋に同じモノで切り裂いてやればいい…だろう?」

 

「っ!その機体も…!」

 

「さぁな、末端の俺には開示されていない情報の方が多いんだよ。でもお前を討ち取らないとみんなが幸せになれないんだよ。分かってくれ、碇。」

 

再び構えたそれを睨み次は当たる訳にはいかないと身構える。

 

「残念。こっちは本命じゃないぜ。」

 

肩に備え付けられたランチャーから弾頭がこちらを穿つ。

 

「ぐぅうう!!」

 

機体を襲うその攻撃によるダメージが酷く身体に突き刺さる。

 

「ATフィールドが中和されてない!?」

 

「あぁ、言い忘れてたな…ATフィールドがあろうが無かろうが、これはそういうもんなんだよ。碇と一緒に乗ってる奴には悪いけどさ。」

 

「シンジさん!一旦引きましょう!?地上に帰るべきですッ!」

 

「…そうしたいのは山々なんだけどさ…。」

 

「そうは問屋が卸さないよなぁ?ここでお前を殲滅できなかったら…俺の華々しい初陣が台無しだろ?」

 

ケラケラとおどけてみせるケンスケ。

ケンスケはなにをもってここまで変わってしまったのか…。

 

「そろそろだな…。お前に、いや、お前達に差し向けられたエヴァはこれだけじゃないぜ?」

 

「は!?」

 

「式波んとこにはお前がよーく知ってる女が向かってるしな。トウジの奴のとこはもっと最悪だよ。なにせ…。おっと、これ以上はお喋りがすぎるな…。」

 

「ッ!!ケンスケ!お前ぇ!!」

 

否応でも誰か分かるのが悔しい。しかも、コイツなんでこんなに僕の事情を知ってるんだ?

あのアスカと僕の共通の知り合いでエヴァに乗れそうな人なんて…霧島マナ以外には居ない。でもこの世界でカノジョには会っていない。

それにトウジだ。最も最悪な再会を果たしているはずだ。…エヴァンゲリオンウルトビーズ。それは委員長、洞木ヒカリが駆る弐号機の姉妹機。

 

「碇、感情に任せて攻撃しても無駄だぜ。俺は死ぬ気でお前とやり合う為に訓練を重ねたんだ、お前の思考くらい読めるよ。」

 

 

「お莫迦さん。1人じゃないってのをお忘れかしら?」

 

アルビオンをけしかけるリンネ、8つある内の1つが甲乙号機の左腕を穿つ。

 

「っツッ!!おいおい…シンクロってのはこんなに痛いもんなのかよ…聞いてなかったよ…。」

 

貫かれた左腕は宙を舞い、支えをなくした長刀が手から離れる。

 

「まぁいいか…。今日は挨拶程度だな、上の連中の望みは叶ったみたいだしな…。よく覚えておけよ碇。」

 

そう捨て台詞を残したケンスケはゆらりと輪郭が揺らめくと極彩色のカーテンに包まれその姿を晦ました。

 

「…行きましょう、シンジさん。この世界の私やセンセが危ないわ。」

 

「…うん。」

 

煮えきらぬ態度のまま、リンネの言葉にうなづく。

戦況は有利でも、心理戦ではこちらの完敗だった。

 

 

 

「エヴァシリーズは粗方片付けた、後はサードインパクトの本流を食い止めるだけね。」

 

死屍累々、ちぎっては投げ、コアと思しき使徒の幼体が収められたコンテナを叩き潰してエヴァシリーズは全滅させた。

 

「ナイスファイトやよ〜姫ぇ〜。」

 

最後の一機が8号機の足元でもがくが頭部をまるでタバコの火でも消すかのように踏みつけすり潰す。

 

「嫌味かしら?コネメガネ!あんたの方がキッチリやってるわよ!!」

 

だがしかし、こんなにきな臭いもんなのかしら?

手応えが無さすぎる。各支部で建造していたエヴァシリーズ。

S2機関搭載型で、無限に再生するそれだとしても。些か手応えが足りない。

…時間稼ぎか?あれをあてがって時間を稼ぎ…本隊をコチラに寄越す…算段か?

刹那、嫌な感覚が駆け巡る。咄嗟にマリに視線を移す。背後に音もなく現れたそれはしっかりと8号機を見定めている。

 

「避けろ!!コネメガネッ!!」

 

「んぇ!?うぉあ!?」

 

間一髪放たれた其れを避けられたマリ。

その背後に佇むのはあたしの記憶に存在しないエヴァの姿、その姿は小豆色に染め上げられ、まるで、あの嫌な女の髪色を思い起こさせる。

構えられた腕と一体化したライフルらしきそれをもう一度構えアタシを、真弐を狙う。

 

「ふぅん…アンタ…まさかだけど…霧島マナ?。」

 

「…あら、私の事、知ってるのね?なら話は早いわ。貴方は使徒として私に殲滅されなさいッ!!」

 

「どっこい!あんた如きにやられてアタシのシンジ様を手放すようなザコじゃないのよ?弁えなさいよ!!カスの分際でッ!」

 

うち放たれたそれをナノマシンで形成したブレードビットによってたたっ斬る。実弾だろうがレーザーだろうがこの装備には関係ない、アタシの障害になるものを叩き伏せるだけだ。

 

「ち、ちょ!アスカ!?これのパイロット知ってんの!?」

 

「まーまー昔にシンジを取り合っただけよ。最後は無様に瓦礫の下敷き、救いようのない女よ。シンジだけを選べなくて、悲惨な思いをした馬鹿ってだけ。」

 

「何を訳の分からないことを!!」

 

何度も打ち出されるそれを避けては切りを繰り返す。

一辺倒で何も面白くない。昔から変わらない女だ。まぁこの世界じゃ会ったこともないけど!

『袈裟羅』と『婆娑羅』のデータを用いて、モルドレッドを改良した『素戔嗚』と『加具土』の切っ先を首元に押し付ける。

 

「アタシはシンジほど甘かないのよ。このまま頚椎に突き刺してエントリープラグぶち壊したって構わないのよ?」

 

「ふふっ…。弐号機パイロット式波・アスカ・ラングレー。事前情報通りの女ね。碇シンジ、第14の使徒として認定された彼もまた殲滅対象よ。」

 

「黙れ女狐。容赦しないって言ったでしょ。」

 

鋏の要領で首を掻っ切る。吹き出る血飛沫。だがなんとも言えぬ悪寒が背筋を泡立たせた。この女…悲鳴のひとつもあげてないッ!否応でもシンクロ状態、首なんてシンクロ率が低かろうと掻っ切られればとてつもないストレスが襲ってくる。

 

「だから詰めが甘いって言われるのよ。式波・アスカ・ラングレー…。」

 

「あ゛?」

 

気づいた時には遅かった、ライフルではない方の腕ががっしりと真弐の左腕を掴んだ。

 

「姫!?その機体ッ!全身がコアだ!!逃げてっ!」

 

掴まれた腕に侵食が始まる。青い粘菌のような物を滴らせ纏わりつくそれを左腕ごと切り捨てた。

 

「あら、もう少し怒ってくれると思ってたんだけど…中々資料通りにはいかないものね。」

 

小豆色のその機体は揺らりと立ち上がりコチラに相対する。

弾け飛んだ頭部は既にその形を再生させている。

 

「…SEELEの造りだした真なるエヴァンゲリオンか…。まさか完成してるなんてね…。」

 

「コイツが?…!?渚が掻払ったのって…!」

 

「そ、ヱヴァンゲリヲンシリーズ。ここに居るのがこれだけってことは…厄介だなぁ…。シンジくんの所にも一機、トウジたちの所にも一機、そして私達に差し向けられたこの一機。カヲルが地下で相手してるmark6もそれに付随するモノだからね…。」

 

「ッチ…。霧島マナ…あんた達の目的は…何?」

 

「…使徒の殲滅、私達が受けた命令はそれだけよ。でも気が変わったわ。もう少しだけ猶予をあげる。なんか上もきな臭いしねぇ…ケンスケ君も引いたみたいだし。」

 

「…おい、小豆色…お前今なんてった?ケンスケ?なんであいつがエヴァに乗ってんだよ!!」

 

珍しく声荒らげるマリ。確かに、相田が本当に乗ってるんだったら嫌な予感がする。

鈴原の所に出たもう一機って…。

刹那、共鳴とも取れる不思議な感覚がアタシを襲う。

成層圏突入の寸前、弐号機に似た何かが鈴原達のエヴァを襲うシーン。しかもこのパイロットって…

 

「霧島…アンタ最悪…。昔っから性格なんていい方じゃなかったけど。今回に関してはあんた最悪よッ!」

 

「アスカ!?何が見えたの!?」

 

「さぁ?直接私も会ったことは無いもの、ただ、上から命令を受けて今ここに立ってるだけだもの。意味わかるわよね?」

 

噛み締めた奥歯が軋む。鈴原がどんな思いであの子を探していたと思ってるの…?

こんな形での再会なんて誰も望んじゃ居ないのよ…。

 

「吐かせッ!今ここでアンタを引きずり下ろしてぶっ殺してやるッ!」

 

「ハハッ!血気盛んなのはいい事だね!でも、未だ死にたくは無いかな?そんじゃ!」

 

背面に備え付けられていたウェポンラックらしき物がウネウネとまるで生き物のように姿を変えてロケットのようなスラスターへと姿が変わる。

吹き出したATフィールドが真弐、8号機を吹き飛ばし、そのまま戦線を離脱。

 

「ぐぅぅ!!逃げんなぁッ!」

 

「アスカこれ以上は辞めよう!?早くセントラルドグマ降りなきゃマズイよっ!!」

 

刹那、開かれたガフの扉が空を覆う。

 

「渚のやつシくった!?」

 

「…いや…違う…。この感じ…マズイッ!」

 

―ワォーン―

 

何処か遠くで狼のような嘶きが木霊した。

 

 

 

「なんやこの機体…!2号機そっくりやないかっ!!」

 

「鈴原くん!前っ!」

 

大気圏突入寸前に、肩のパイロンにEUROの刻印が施された白銀色の機体が私達を襲う。

…この感じ、玖号機と同じ…?

やられてばかりな事が気に食わない鈴原くんがその機体に詰め寄って攻撃をする。

でも、何かがおかしい。

 

「!?なんやコイツ…!ATフィールドが無い!?」

 

「厄介…。しかもこの感じ…ダミーシステムじゃないっ!」

 

ヴォルテクス翼を巧みに操り無重力下でも縦横無尽に駆け回るソレはから感じるナニかが私を攻撃させるのを躊躇わせる。

 

「くっそ!誰だか知らんが!邪魔するっちゅーんやったらっ…。」

 

「「鈴原(トウジ)ッ!!絶対にダメだッ(わッ)!!」」

 

碇くんとアスカから同時に通信が入る。この2人がこれだけ静止するってことは…。まさか…!?

 

「鈴原くんッ!その機体には…!」

 

「ご名答…!トウジ…久しぶりだなぁ?」

 

ぬっと現れたライトオーク色のそれが4号機の肩を掴みこちらへ放り投げた。片腕は何かに切られ見当たらない。…でもこの声って…。

 

「ケンスケ…?ケンスケか!?なんでお前がエヴァになんて乗ってるんや!?」

 

「そりゃ俺も、トウジみたいに志願したからさ。まぁそのウルトビーズのパイロットは違うけどなぁ…?」

 

「ウルトビーズ…?このギラギラそない名前なんか!?そのパイロットがどないしたっちゅーんじゃ。」

 

「トウジ!!聞くなッ!!僕が何とかするから退いてくれ!!」

 

「おいおい、碇…。俺ら親友だろ?隠し事は無しだろ?トウジ、それに乗ってるのはぁ…?」

 

「ケンスケェッ!辞めろって言ってんだろうがァああ!!」

 

「お前が会いたくて逢いたくて堪らないやつだよ」

 

「あぁあぁッ!!!」

 

碇くんの悲痛な叫びが木霊する。

それを嘲笑うかのように話を続ける相田くんはウルトビーズの肩をポンポンと親しげに叩く。

 

「サードの時に疎開したんだよ。委員長も、家族と一緒にな?そっから最悪だったなぁ…。家族拉致られて…エヴァに乗ることを強要されちゃってさ…。ま、今やこうして従順にエヴァに乗ってくれてるから俺らとして助かってるんだけどさ。」

 

モニターに映る鈴原くんと碇くんの顔が酷く曇る。

曇るどころじゃない、こんな表情の2人を私は今まででも見た事なんて無かった。

 

「な、なんや…やったら早う言ってくれや…。ワシや…鈴原や…戦う必要なんてあらへんのや…一緒に帰ろうや…ヒカリ…。」

 

戦意を失った鈴原君は、力なくウルトビーズへと近づく。

だが、悪寒が背中を泡立たせた。絶対に近付かせてはダメだと心が叫ぶ。

 

「鈴原君ッ!だめっ!」

 

間一髪、4号機にそれが叩きつけられる前に押し出す。

だが、振り下ろされた槌は玖号機の飛行ユニットを容易く叩き潰した。

 

「おお!?本命の方が自ら突っ込んできてくれるとはっ!助かるなぁ!?」

 

いつの間にか再生した左腕が私を締め上げる。

 

「ぐっ…。」

 

「お上は玖号機を返して欲しいらしくてな。まぁあと、ついでに綾波の事も欲しいらしい。借りてくぜ?碇。」

 

「巫山戯るのも大概にしろよ!?ケンスケッ!!綾波は物じゃないっ!!」

 

「…肉体的に予備がある時点でヒトじゃ無いだろ…。」

 

ぐぐぐと首を締め上げられる。苦しく呼吸がままならない。

 

「あ、綾波さ…!すぐ助けんでッ!!」

 

すかさずコチラに割って入ろうと四号機が寄るがウルトビーズが其れを阻む。

 

「トウジ…。考えればわかるだろ…?なんでお前の所にこれが差し向けられてるかなんてさ…。」

 

玖号機を掴もうと伸ばされた腕は軽く、ウルトビーズによって阻まれる。

 

「い…かり…く…。す…は…く…」

 

「綾波ィィっッ!!!」

 

「じゃあな!碇っ!ミサトさん達によろしく頼むよッ!!じゃあなぁ〜。」

 

「ケンスケぇぇぇえッ!!!」

 

私の意識はそこで闇へと沈んだ。

 

 

 

「ああああああああぁぁぁっっつっつ!!!」

 

響くシンジの慟哭で心が傷む。

単純な話だった。気付けたんだ。

SEELEがリリス本体を手に出来ないなら自分達が手中に納めたいのは…その魂である綾波レイ…。

シンジを取り戻すという目的の為に、全ての事象が頭から抜け落ちていた。

…それによってシンジが引き起こしかねない事態すらも。

 

「…ソレノイドグラフ反転…!?ー号機が増幅させて…!マズイです!!」

 

「マズイわね…このままだと…。」

 

計器が指し示すのはリリスとの共鳴。

それは地下にいる渚も異変に気付いたと言わんばかりに反応を示す。

 

「…やられたね。第1目標は綾波レイの奪取。第2にシンジくんをトリガーとしたサードインパクト…か。」

 

「渚ァ!!今すぐMark6ぶっ壊せッ!!リリスを止めろ!!」

 

「既にMark6に関しては活動を停止させたよ。リリスはダメだ、完全にシンジくんと共鳴してる。」

 

「…万事休すか…。」

 

最悪の結末を迎える結果になってしまった。

これで種の大量絶滅は免れない。既に開きかけたガフの扉。

だけど…。

―ウォォォオン―

さっきは遠かったその遠吠えが自分達の真後ろで聞こえた。

 

 

「!?何事なの!?」

 

「し、正体不明!ですが…!ー号機と同レベルの出力を持った何かが突然真弐と8号機の真後ろに出現しました!!」

 

「なんですって!?」

 

「エヴァ…?でも人型では無いエヴァの建造計画なんて…。」

 

激動の発令所、現れた謎のそれの目的も分からないままに、シンジを止めねばならないと駆けずり回る。

未だ主機がない上に未完のAAAヴンダーを駆る事は出来ない。

画面越しにー号機と黒い獣のようなそれを交互に見やることしか出来ないミサトは奥歯を噛み締め、シンジとお揃いのロザリオを握り締めた。

 

 

 

グルルと喉を震わせコチラを一瞥するそれは8号機を見るとその動きを止めた。

 

「…獣に堕ちてその権能すら失ったと思っていたけど…。それすらも克服して人型に戻りかけているなんてねぇ…。」

 

―冒涜の子よ、久しいな…。―

 

「おぉ、獣性が故に言葉も失ったと思っていたけど、それすら学習し直していたんだ…。でも、残念、あの子は私のクローンに獣たちを混ぜ合わせた子達だから私では無いよ?」

 

―そうか…。然して人の子よ…。―

 

男性的とも女性的とも、幼くも年老いたとも取れるその声の方向がアタシに向けられた。

 

―面白い…。ヒトという生き物が御使いになれるとは…。まだ終わらせるには惜しい…。―

 

「え?は…?エヴァが…普通に話しかけてる…?」

 

―リリンの女王よ…。貸しだ。―

 

空を見上げたそれは翼を拡げると天高く舞い上がる。

 

「な、なんなのよあれ…。あれがアルマロスだって言うの…?」

 

記憶を覗き見たアタシはあれに似たなにかの存在は知ってはいた。でも、明らかに違うその姿に冷や汗が額を伝う。

 

「…あれじゃもう新たな生命だよ…全く…この世界どうなってんのよ…。」

 

舞い上がりドグマへ向けて投下された見知らぬ槍。アタシ達には見届けることはできなかった。

渚はどんよりとした顔で報告を入れる。

 

「…アルマロスが僕達側に立っている?そんな馬鹿な話…。だが…リリスを殲滅したのは事実だ…。…状況終了…帰投する…。」

 

嘲笑うかのように更に高く高度を上げていくそれ。

まさか…シンジを殲滅するつもり!?それだけは許さない…。

 

「マリッ地上は任せるッ!!ボケシンジとアホの鈴原はアタシが責任持ってもって帰るッ!!」

 

「アスカッ!!無理だけはしないでッ!!」

 

 

「ああああああああぁぁぁっ!!!」

 

「落ち着いてシンジさんッ!!これ以上ダメよっ!!」

 

私の声も届かない程に自分の精神を追い詰めてる…。

この世界のセンセのお嫁さんを人質に取られて…綾波さんまで…でもこのままだと…シンジさんが悪く…!!

 

―ここにも面白いヒトの子が居るな…。貴様…女王…いやそこの小僧と…?混ざり物か。―

 

「なっ何…!?誰!?」

 

ぬっと眼前に現れた黒いウルフパックの様な何か。その獣性は保ちながらも2足でバランスを保っている。

グルグルと喉を唸らせ顔を覗き込むそれ。

 

―欲しいな…。その力、我がものに…。―

 

「触るな下郎!!お前はなんだ!?」

 

―終末の獣…混ざりものの姫よ。お前の望みを叶えてやる。何より、その心の臓、そしてその獣…我が身体でありながらも…別の存在として個を確立している…尚面白い…。―

 

「だから何!?触れるな!私のシンジさんとー号機にッ!!」

 

―どの世界の童よりも愛されているな…。自主性を持ち自我が確立した童やその周りのリリン達…。だからこそこの世界にアレが降り立つか…。―

 

「アレって何よ!?」

 

―多くを語るべきではない。兎も角、童が起こす事象はこの世界に芳しくはない…。貸だ。―

 

ウルフパックに良く似た何かはそう言葉を紡ぐ。

掴み掛ったそれは、引き連れてきた見知らぬ槍を突き立てる。

 

「ぐっ…。」

 

突き刺されたそれによって苦痛の表情を浮かべるシンジさん。

ガフの扉が閉じ空が元の色に戻る。それは踵を返して私達に背を向ける。

 

―落ち着け童。守りたいものがあると言うなら必ずそれに打ち()て。その先我が立っていようと自分の世界が欲しいのなら下せ。リリスの魂は肉体がなければ使い潰せん。当分はあのまま幽閉される。―

 

「ぐっ…うぅ…アルマ…ロス…?お前が…何故ここに…?」

 

―余は終焉、我は結末我の欲しいもの以外は要らぬ。―

 

「つくづく僕だな…。アルマロス…嫌な貸しを作ったな…。」

 

―幾つかの制約を用いた枷だ。それのポテンシャルを制限する為の…な。―

 

「それでもこの際…構わないさ…。」

 

突き刺された槍が帯状に姿を変えてー号機の体を包みこむ。

 

「シンジぃぃぃいッッッ!!」

 

血相を変えて飛び込んできたのは見たことも無い弐号機の姿をした何か。この声は…この世界の私の声?

 

―暫し眠る。道を違えるなよ童。―

 

そう言って先程の甲乙号機とは違う窓のようなものを潜りその場から姿を消した。

 

「逃げんなァァ!!」

 

全てが終わった虚空にアスカさんの慟哭が木霊する。

 

「ご苦労さん…。後は俺が何とかする。君達パイロットはゆっくりしていてくれ…。あとの仕事は大人である俺達に任せてくれ。」

 

苦虫を噛み潰したような表情でモニターを睨む加持リョウジの顔がモニターに映る。

 

「シンジくん、帰ってきて早々の戦役ご苦労さん。そして…この日の為に黙っていた事を告げるよ。」

 

そう言った加持リョウジは退くとカツカツと革靴を鳴らす音が響く。

 

「すまなかった…シンジ。」

 

「!?父…さん…?一体今までどこに行ってたんだよ!?」

 

「順を追って説明する。何よりもお前達がコチラに帰って来るのが先だ。」

 

「無理ですよ!綾波を…!綾波を取り返さないとッ!!」

 

「現時点、それは出来ないのよ。」

 

「リツコさん!?それでも綾波を助けないと!!」

 

「追う術が、無いのよ。あのような空間転移…。見た事も聞いたことも無い…未知の技術なの。到底我々には再現できない…ね?」

 

「じゃあ…綾波は…助からないって…事ですか…!?」

 

「シンジ君、大丈夫さ。SEELEが彼女を殺す為に捕まえたとは考えにくい。可能性としては最も純粋な雌雄も穢れもない存在、アドバンスドアヤナミシリーズの構築、そして真なるヱヴァシリーズの再建。その礎にされるはずだ。」

 

「とはいえ…。早く助け出さないとッ!」

 

「…シンジ君。少し冷静になんな、ケンスケが殺しやしないって言ってたんだから対策練らないと。艦長になるんだから冷静に…ね?」

 

「冷静になれって言ったって…!クソッ…。」

 

あの世界であれだけ仲が良かった彼があれに乗っている。それに加えてツバメのお母さんまで…。

あの世界は過酷ではあったけど、それでも救いのある世界だった。でもこの世界は…シンジさんが苦しむように組み上げられている。そう感じてもおかしくない程に…運命の歯車が狂いだしたのを身をもって感じた。




時間、掛かりましたね。
オリジナルってほんとに厳しいんですよ。
何より、ケンスケ、マナ、委員長を敵に回すともなると
シンちゃんのメンタルブレブレですね…。
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