Re Take of Evangelion   作:Air1204

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第5話 決戦!第三新東京市

「状況は!?」

 

「相模湾上空にて使徒の発生を確認。現在は塔ノ沢上空を通過!」

 

「何やら生き物とは形容しがたい姿の使徒ね…。」

 

「ミサトさん。」

 

既に準備を終えエントリープラグで待機する僕と綾波。なりふり構うことは出来ない。僕に現状出来ることは…。

大きく深呼吸をし覚悟を決める。

 

「僕が出ます。使徒がどのような能力を有しているか分からない以上零号機よりも分厚い装甲をしてる初号機が出るのが得策だと思います。」

 

「えぇ、分かった。それで行きましょ。」

 

「初号機射出口に固定完了。」

 

「使徒!芦ノ湖上空へ浸入!」

 

「では、エヴァ初号機出撃」

 

覚悟を決め何度も手をにぎりしめる。久々にこの身で使徒の加粒子砲を受け止めるのだ。地上に出る前にATフィールドを全力で張る。

 

「使徒内部に高エネルギー反応!?」

 

「円周部を加速!?収束していきます!」

 

「まさか…。」

 

「シンジくん避けて!」

 

「ATフィールド全開!」

 

地上に出ると同時に僕の胸部への直撃。その熱量と威力の高さに身をよじる。

 

「ぐぅぅ!」

 

ATフィールドで威力を弱めてるとは言えど流石は強化使徒。2層、3層と多重に張ったATフィールドを貫通し機体まで届かせる威力を誇っている。

 

「リフト降ろして!早く!」

 

「ダメです地表融解!機器が動作しません!」

 

「シンジくん!」

 

「防護壁は!?」

 

「防護壁展開。」

 

父さんに秘密裏に頼んでいた防護用のビル。過去の経験からかそのビルは使徒の一撃によって粉砕されることは無かった。

だが…。

 

「使徒の体が展開…?」

 

「全域に広がっています!これは…。フィールド反射膜!?」

 

見たことも無い形状に変化する使徒。そして。

 

「熱エネルギーが収束…。マズイです!」

 

白昼カンカンと照りつける太陽、これが熱量兵器になるのだから恐ろしい。

 

「がぁあ!ATフィールドが中和されない!?」

 

ジリジリと胸を焼かれる。その苦痛に耐えながらどうにか避けるすべを探す。だが四方に張り巡らされたフィールド反射膜からは逃れることが出来ない。どう移動しようが的確に胸部を狙い撃ち続けられる。

 

「葛城一尉!」

 

「い、碇司令…。」

 

「やむを得ん、爆砕ボルトに点火。パイロットの救出が最優先だ。」

 

「は、はい!。」

 

足元からガクンと大地ごとセントラルドグマへと落ちる。白煙が立ち上る初号機の胸部に目を送る。見事融解し素体にまで損傷が及んでいる。そりゃあ僕にもこれだけダメージがある筈だ…。白む視界。朦朧とする意識の中僕を呼ぶ声が聞こえる。

 

―無茶するのねぇ…。―

 

綾波…?いや…母さんか…。何故?

 

―そりゃあ貴方を護るためよ。―

 

護る…。そうだ僕がこの街を護らなくては…。

 

―今はダメ。明朝00時06分54秒にはあの使徒の穿孔が本部に届く。―

 

それまでは休めってこと…?今までは楽に勝てていたのに?

 

―むちゃのし過ぎ。このままだと初号機も使えない。―

 

だから?

 

―止まってしまったあなたの心臓を貸して。―

 

何をするつもり…?

 

…。

 

無言…か。

 

―少し休みなさい。―

 

その声が聞こえた後僕の意識は深層へと沈んで行った。

 

「エヴァ初号機!シンクロ率400パーセントを突破!?」

 

「なんですって!?ダメよシンジくん!人に戻れなくなる!」

 

「これは…。エントリープラグ内に人影!?シンジくん以外のヒトの存在を確認!!」

 

「…ユイ…。」

 

「早くゲージに戻して!」

 

 

「エントリープラグの排出を確認。ですが…。」

 

「生きているわ間違いなく…ただ…。心臓だけがぽっかりと抜け落ちている…。」

 

白煙を吐きドクンドクンと心臓を鳴らすエヴァ初号機。その姿は目以外を除き黒い外殻によって多い隠されている。

 

「この黒い卵。内部構造がジオフロントと同じ…。黒き月の再現…?」

 

「内部モニターに映します。これは!」

 

おおと歓声があがる。そこにはドロドロに熔け骨格とあるはずの無い心臓を宿した初号機の姿。本来あるはずの装甲は全てLCLへと還元されている。

 

「とりあえず、シンジくんは緊急搬送、何せ鼓動がないのにちゃんと生きているんですもの。それに」

 

「外的損傷は確認できず…。あれだけの熱線を貰っておきながら?あの高シンクロ率で…?」

 

訝しむミサトに日向マコトが声をかける。

 

「あの使徒…。一定距離内の敵に向かって加粒子砲を打ち込んでる…。効き目がないと分かればあの熱量兵器。オマケにATフィールドは効果なし…堪ったもんじゃないですね…。」

 

「困ったものね…。本当なら私がシンジくんのところに行ってあげるべきなのだけどね…。」

 

「そうもいかないのは仕方ないわよ。作戦部長なんだから…。」

 

「齢14の子を人ならざるものにしてまでこの戦いに勝つ。それは大人がしていいことでは無いわ。」

 

沈黙。大人達は皆それを重々に承知している。子供にしか乗ることが出来ないエヴァという存在、そしてその未知数の可能性。神にも悪魔にもなれるとはよく言ったものだ。

 

「超々遠距離射撃、まさか碇司令自ら作成の指揮を取った兵器が今回の戦いに有効的とはね…。」

 

「聞くところによればあの武器の図案はシンジくんがされたとか…。」

 

「あの親子はどこまで知って…。いや…まさかね…。」

 

「とにかくあの弓、アズマテラスを使用出来る状態まで仕上げましょう。話はそれからよ。」

 

 

ここは…?やけに鼓動が静かだ…。痛むはずの胸も痛くない…。ふわふわした感覚のまま静かにまぶたを開く。

 

「んんー…。いつもの…病室か…。」

 

「碇くん!目を覚ましたのね…。」

 

隣の椅子にプラグスーツ姿のまま座っていた綾波が立ち上がる。

 

「よかったわ…。死んでいたらどうしようかと…。」

 

不安そうな表情を浮かべる綾波に笑いかける。

 

「大丈夫だよ。僕はそう簡単には死ねないからね。」

 

心臓の無くなった胸をさする。1度ならず2度も僕の心臓を取り込むとは余程切羽詰まった状況なのだろう…。

これから先の戦い初号機のみで太刀打ちできるのかそれとも…。

 

「作戦の概要を…。」

 

「いや、大丈夫。すぐにでも作戦室に戻るよ。」

 

そう言って立ち上がろうとするが上手く力が入らず倒れ込む。

 

「碇くん!?」

 

「あれ…おかしいな…。」

 

手を握っては開きその感覚を確認する。多少のズレというか…感覚の鈍さがある。ふと時計が目に留まる。まだ時計が指し示すのは午後9時。作戦開始にはあと3時間もある。

ということはまだ初号機の修復が完全では無い…のか?

 

「無理はしないで。まだ休んでいて大丈夫だから…。」

 

「そっか…ならもう少しだけゆっくりしようかな…?」

 

そう言って差し出された手を取り肩を借りベッドに腰を下ろす。

 

「でも…碇くん。その、前はきっと隠した方がいいわ。」

 

レントゲンやらMRIやらを撮るのに脱がされたであろうプラグスーツ。綾波の隣に綺麗に畳まれているのに今気づく。という事は…全裸?なれないものを見た、という感じで顔を赤らめる綾波は両手で目を隠しながら恥ずかしがっている。

 

「これが…恥ずかしいなのね。分かったわ…。」

 

「そんな冷静に分析しなくても…。」

 

携帯の着信音が鳴る。ミサトさんからだ。

 

「シンちゃん!?目覚めたのね!?よかったぁ…。」

 

はぁはぁと息を荒くしながらの電話。どこへ急いでいるのだろうか。

 

「お陰様です。心臓は置いてきちゃいましたけどね。」

 

「それでもあれだけの攻撃を食らって生きているのならどんな結果であれ良かったのよ…。」

 

風を斬る音がする。やはりどこかに向かっている?

 

「すみません。まさかあそこまで火力が高いとは…。」

 

「良いのよ。別に作戦の責任者は私。私が貴方なら勝てると思って送り出してしまったのよ。だから貴方が謝ることでは無いの。それに…。」

 

ばんと扉が開き汗をびっしょりとかき肩で息をするミサトさんが入ってくる。そしてカツカツとヒールの音を響かせ、電話を切るのも忘れたまま僕に抱きつくと泣き出した。

 

「私のせいで貴方が死んでしまったら…私はどうすればいいのよ…。」

 

「ごめんなさい。ミサトさん。でも貴方の指揮下だからこそこうして僕の命は紡がれた。それは揺るがない事実だから…。ありがとう…。」

 

わんわんと泣き声を上げて泣くミサトさんの背中は小さく、まるで子供のようであった。

先程まで繰り広げられていた作戦会議、その中でどれだけ自分を偽り自分に嘘をつき気丈に振舞っていたのだろう。

頭を撫でてあげることしか僕には出来ない。

 

「シンジくん…。好きよ。」

 

甘い言葉に甘い口付け、綾波が居ることさえも厭わない。失ってしまったらもう二度と出来ないその言葉を必死で紡いでいる。

 

「ミサトさん。僕もです。」

 

「ちゃんと言わねばどこかに行ってしまう気がして…。ちゃんと伝えなきゃって思ってたのに伝えられなくて…。」

 

「だから、今ですか?」

 

ふふっと笑う。

 

「大丈夫ですよ。僕は何があってもこの一連の戦いが終わるまでは死にませんし死ぬ訳にはいきませんから。」

 

「その強がりが私を不安にさせるんでしょ!もっと子供らしく振る舞いなさいよ!」

 

「そんなに怒ることですか…?でも、僕はミサトさんにちゃんと子供らしく接しているつもりでしたけど…。」

 

「何よ!私の方がわんわん泣いてるのよ!子供みたいにあやしてもらって!抱きしめてもらって安心する自分が情けなくて嫌なのよ!それに比べアンタは1回も泣いてないでしょうよ!」

 

そんなふうに思ってたのか…。それなら…ミサトさんと綾波になら僕の身の上話をしても。大丈夫だろう…。

 

「そこまで思っているのなら、僕は僕のことを包み隠さず全て話しますよ。」

 

きゅっと胸の内が苦しくなる。伝えねばならないこと、伝えてはいけないこと。それらを分別し話すのにはとても苦労を要する。それでもこの2人にはちゃんと伝えるべきだ。そう感じたから。

 

 

「じゃあ…貴方はこの戦いを何度も1人で…。繰り返してる…そういうこと…。」

 

「遠からず近からず、ですかね。」

 

苦虫を噛み潰したような苦い表情に変わる。それもそうだ、彼女らは僕をよく知らない。でも僕は彼女らをよく知っている。そういう話だ。心を許したとはいえ出会ってから間もない他人が自分の全てを知っていたら大層気持ち悪いだろう。

 

「でも、この世界は僕の知っている世界とは何もかもが違う。あの使徒はここまで強くもなかったし前回のもそうだ。」

 

暗い表情のままの綾波とミサトさん。これだけ話してしまえば僕はもう1人で戦うことになるのだろう。それでもこの世界で父さんと紡いだ絆は間違いではなかった、そう信じている。

 

「うん。かねがね分かったわ。それで?シンジくんはどうするつもりなの?」

 

「気味悪いでしょうし、ミサトさんのところ出て1人で暮らしますよ。それで綾波とも深く関わらない。ただのパイロット同士だ。そうすれ…いたたた!痛い!」

 

両頬を2人から抓られる。

 

「私が。いえ、私達がそれで結果満足するとでも思っているのかしら?」

 

うんうんと頷く綾波。先程までの苦悶の表情はどこへやら強い眼差しで僕を見つめる。

 

「い、い、か、し、ら?シンジくんが例え未来がどうなるかを知っていようが私達には関係ない。この世界はこの世界。姿形がよく似た誰かの話なんて興味無いもの。今のシンジくんとこの私達が紡いだ絆でしょ。」

 

「だからって…。」

 

「碇くん卑屈なこと言わない。」

 

「はい…。」

 

やはり女とは怖いものだ。自分達の不信感よりも愛した男の感情を憂う。全く…。

頬を涙が伝う。あれ…。なんで…。

 

「碇くん…泣いてるの?」

 

「あれ…なんでかな…悲しくなんて無いのに…苦しくなんてないのに…。」

 

「それはあなたが背負っている業を全て洗いざらい他人に吐き出せたからよ。感謝して欲しいくらいね。」

 

いつもの優しい表情のミサトさんに戻る。それに加え綾波も優しく僕を見つめ頭を撫でる。

 

「はは…ありがとう…ございます。」

 

「泣いてるんだか笑ってるんだか分からないわよ!全く…。そ!れ!に!ちゃーんと責任はとってもらうわよん?」

 

「はい…。必ず…。僕は綾波もアスカもミサトさんも幸せにしてみせます。」

 

「よく言ったわ!ならその気概!見せてみなさいよ!」

 

ばんっと背中を叩かれる。少し痛いがそれでもそれが心地よい。

 

「碇くん。私も…幸せにしてくれるの?」

 

「うん。綾波も…必ず。」

 

「そう…なら私も。」

 

そう言って抱きしめられる。こんなに大胆だったっけ?

 

「あーレイ!狡いわよ!」

 

「かつ…ミサトさんはさっき碇くんにしてた。」

 

「ほぉ?なぁに?レイ。」

 

ニヤニヤと綾波を見つめるミサトさん。

 

「だから。か、ミサトさんが先に碇くんを抱きしめてた。だから私の番。」

 

「うふふ…。2人して!全くもう!」

 

綾波ごと僕を抱きしめるミサトさん。余程綾波から名前で呼ばれたのが嬉しかったのだろう。その手は力いっぱい僕達を抱きしめている。

 

「シンちゃん。さっきの話、私達3人の秘密ね。」

 

「あ、はい…。でも時が来たらアスカには…話そうかと…。」

 

「そうね…エヴァに乗れないくらい疲弊されてしまうのは良くないわ。でもリツコには…」

 

「「絶対バレちゃダメ。」」

 

「そんなところ仲良く2人で言わなくても…。ふふ…でも良いわ。約束よ。」

 

そう言って3人で指切りを交わす。

ミサトさんの顔が仕事モードに変わる。

 

「よっし…シンジくん。レイ。2人ともエヴァに乗ってくれる。それだけで感謝してる。でも今回の戦い、日本国民全員の願いと希望を預けられた作戦なの。だから失敗はできない。」

 

「「はい。」」

 

「だからって2人の重荷になるような事言ってはいけないのだろうけれど。それでも2人にお願い。必ずこの戦いに勝って、私に2人の笑顔を見せて頂戴。」

 

「「了解。」」

 

館内アナウンスが入る。

 

―作戦科部長の葛城ミサト一尉、葛城ミサト一尉至急第4ゲージへ。赤木博士より黒き月の外殻にヒビを確認との報告。至急第4ゲージへ―

 

「ようやっとお目覚めか…。シンジくん。レイ。行きましょう。」

 

手の感覚を確認する。先程のようなブレは全くない。それは初号機の完成を意味していた。

 

 

 

「初号機は?」

 

駆け足でゲージへと入る。リツコさんが画面とにらめっこしたまま慌ただしそうにしている。

 

「シンジくん。良かったわ目が覚めて。」

 

「ちょっとリツコ!ちゃんと顔ぐらい見てあげなさいよ!」

 

「それどころじゃないのよ!初号機が全く新しいエヴァに…。今にも外殻を突き破って出てきそうなのよ!」

 

画面に映るのはERRORや測定不能の文字。

そして。

 

「何より完成された完全なるS2機関…。これが初号機に…。シンジくんの心臓と融合して…?ああ、もう!」

 

どうやら頭がごっちゃになるくらい今のリツコさんには意味不明なようだ。

 

「兎に角!今の初号機ならあのアズマテラスを1発だけでなく複数回撃つことも可能だわ!これなら…!」

 

目を輝かせコチラを振り返る。

 

「よもや、科学者の私でも分からないことが起きるなんてね…。でもこれなら作戦の成功率が5%程から12%まで跳ね上がるわ。」

 

「砲身固定位置は?」

 

「最も作戦成功の見込みアリと出ているのはここね。」

 

「二子山山頂ね…。シンジくんココからなら狙えるかしら?」

 

「はい。なんとか。」

 

「パイロットからの許可も下りた。あとは防御ね。」

 

「それは2課から貰ってきたわよ。超電磁フィールドコーティング対使徒用シールド。」

 

「またよくそんなもの作ってたわね。」

 

「万が一に備えてだそうよ。これなら17秒はあの加粒子砲に耐えられる。万が一あのフィールド反射膜による熱線があったとしてもこの初号機なら問題ないはずよ。」

 

「はい。」

 

大きな衝撃音がゲージに響き渡る。そして、初号機の腕がその黒い殻を突き破り現れる。

黒い粒子となり散ってゆくその、外殻の中から現れた初号機のそれは僕の知る限りどこの世界にも存在し得ない初めての姿で、言うなればSエヴァに近い力を有しているのは分かった。

 

「損傷した本来の初号機の持つコア。そして覆い被さるように他次元から現れたあの初号機の持つS2機関、それに加えヒトであるシンジくんの心臓を喰らい新たに生み出された動力ってことかしらね…。」

 

ドクドクと強く鳴り響く鼓動。脈打つ度に散らされる黒い粒子はその仰々しさたるや…。

その様相ははっきり言ってしまえば正義の味方。等と簡単に形容できる容姿では無い。時が時なら紫の悪魔、と呼ばれ恐慄かれているであろう。

F型装備よりも華奢になり取り払われた装甲、そして増設された背部のパイロンは最終号機のように翼を展開できるような形になっている。

大腿部には新設されたウェポンラックが4箇所。そしてオマケと言わんばかりに産み落とされた袈裟羅と婆娑羅が申し訳程度にそこに納まっている。

頭部保護用の開閉式の赤いバイザーが下りその眼は隠されている。

 

「これが…初号機…。確かに強そうだけど…今までのものより装甲…少ないような…。」

 

「ミサト。この機体はそもそも物理的な装甲を持つ意味がないの。」

 

「と、言うと?」

 

「『心臓 』によって増幅したATフィールドが幾重にも折り重なり防御層を形成している。その上耐熱、耐寒性に優れた合金によって装甲をカバー、極めつけはその盾と同じくATフィールドの層の下に超電磁フィールドが展開されてるのよ。それを勝手にやってのけているのよこの機体は…。興味深いわね…。」

 

「それって…超絶硬いってこと?」

 

「えぇ。そこの零号機の30倍近くね。先の初号機で大体5〜6倍前後ってところかしら。」

 

「つまり?」

 

「現時点では再現不可。そもそもS2機関の量産が無理。次点で量子波動ミラーが机上の空論ですもの。」

 

S2機関ありきの技術がまだ量産されていないこの時代に再現は不可能であろう。

もっと噛み砕いて説明して欲しい顔のミサトさんを置いて淡々と説明を続けるリツコさん。大凡の話は理解できるが何せ初めての姿であるこの機体のスペックが計り知れない。

1度乗って確認しておきたいところだがそんな時間は残されていない、後1時間足らずで地上に出てアズマテラスとの接続を始めなければならない。

 

「シンジくん。良いわね。本作戦の砦は貴方なの。初号機がやられてしまえば本作戦はパーそうならないようにあたし達もレイも貴方のバックアップに回る。」

 

「…はい。必ず仕留めてみせます。」

 

「その心意気や結構。ですが、今回は初号機の『心臓』のみを動力として使用した場合、どのような影響が出るか分からない。なので本作戦では理論上の限界値である一億八千万kwを日本の電力で賄い、後を初号機の『心臓』によって負担してもらいます。」

 

「分かりました。」

 

「シンジくんは照準、手動になってしまうけれど、MAGIが基本的にはサポートしてくれる、安心してくれていいわ。レイ…貴方は…。使徒がこちらに気づき迎撃してきた場合に初号機を、シンジくんを守って。」

 

「了解。」

 

「では最後に、何度も言うように2人ともありがとう。エヴァに乗ってくれた、それだけでも感謝しているわ。それと共に貴方たち2人に日本を。いや世界を背負わせてしまった事を深くお詫びするわ、そして、この戦いが終わったら。みんなでおいしいものでも食べに行きましょう。それくらいの権利は私達にはあると思うから。」

 

にへらと笑うミサトさん。それに応えるように僕も綾波もミサトさんに微笑みかける。

 

「それと、本部広報部宛にシンジくん。貴方へのメッセージが録音されていたわ。」

 

リツコさんが端末を渡してくる。心做しか呆れたような?優しいようなそんな表情で。

 

「おう!シンジ!気張りや!負けんとしっかり勝って来るんやで!」

 

「碇!頑張れよ!」

 

トウジとケンスケだ。全く…さっさとシェルターに避難すればいいものを…。頬が緩む。僕はやっぱりこの世界は好きだ。

 

「では両者、エントリープラグへ。」

 

「「了解。」」

 

大きく出た満月が辺りを照らす。簡易的に作られたプラグへの搭乗ブリッジに綾波と共に腰かける。

 

「ふぅ…。なんか決戦前だって言うのに嫌に落ち着いてるよ。」

 

「碇くんも…?私もあまり不安、感じてない。」

 

はっと思い出したようにゴソゴソと何かを漁る綾波。取り出したのは僕が昼間に渡した弁当であった。

 

「バタバタしてて食べられなかったから…。」

 

「そう…だよね。」

 

「勿体ないから食べるわ。」

 

そう言いランチボックスを開く。中のトマトとレタスのサンドウィッチをツマミ頬張る。

 

「…美味しい。」

 

何度も研究を重ねた綾波専用のサンドウィッチだ。普通の人が食べてもその味には驚くであろう現に朝、ミサトさんは驚いてふたつも食べていたし。

 

「こっちも…。やっぱり美味しい…。」

 

むぐむぐと咀嚼をする綾波。ちゃんと顎を動かし食事をとるという事の大切さがわかっただろうか…。

 

「どちらも美味しいわ。1人で食べてしまうの…勿体ないくらいに。」

 

「それは綾波のやつだ全部食べていいんだよ。」

 

「…。本当に?」

 

「あぁ、綾波のすきにしたらい…むぐ!?」

 

口にサンドウィッチを押し込まれる。強引すぎて突然なあーんにびっくりしすぎて変なところに入る。

 

「げほっげほっ…ん゛ん゛ぅ。」

 

「…ごめんなさい…大丈夫?」

 

「あ、あぁ。大丈夫だよ…。でも強引に口に入れちゃあダメだよ。」

 

「気をつけるわ。碇くん口、開けて。」

 

「いや、綾波が食べていいよ。」

 

「だめ、碇くん何も食べてないもの…。それに私が一緒に食べたいの。」

 

「んむぅ…まったく強情な…。分かったよ。あーん。」

 

口に押し込まれるサンドウィッチを咀嚼する。うん。美味しい。そういえば今日自分の分、学校に忘れてきたな…。持って帰って洗うの…嫌だなぁ…。

 

「んむ…。んく…。碇くん。時間だわ。」

 

そんなに急いで飲み込まなくても…。喉…詰まらせたら大変なのに…。

 

「ふぅ…。よし行こうか。必ず生きて帰ろう?」

 

「大丈夫よ碇くん。」

 

立ち上がりカツカツと音を立て歩きエントリープラグに手をかけこちらを振り向く綾波。その優しげな笑みのままこう言い放つ。

 

「貴方は死なないわ。私が守るもの。」

 

いつもと変わらぬ言葉、だが今までと違う暖かさを感じるその表情に僕は返す言葉が見つからない。

 

「あ、あやな…。」

 

「さよなら。」

 

そう言ってエントリープラグへ消える。僕はひとかじりした綾波によって口に押し込まれたサンドウィッチを全て口へ押し込み初号機のエントリープラグへと手をかける。

 

「サヨナラなんて…悲しいこと言うなよ…。」

 

 

「エヴァ両機作戦位置!」

 

時報がカチカチと予定時刻へのカウントダウンを始める。

 

―ただいま、零時丁度をお知らせします。―

 

「では、ヤシマ作戦、開始。」

 

「アズマテラス固定位置へ!」

 

「第1次接続開始しました!」

 

「電力変換システム及び供給システム問題ありません!」

 

その声を深く受け止め大きく深呼吸をする。鼓動の高鳴りを感じる。

 

「エヴァ初号機の心拍上昇を確認!アズマテラスへの接続開始しました!」

 

「了解。間髪入れずに攻撃を続けて!悟られるわよ!」

 

「第3ブロック蒸発!」

 

「次よ!」

 

「第2迎撃システム攻撃を開始!」

 

「構わないわ!そのまま第7砲門まで開いて!」

 

ドクンドクンとはやる鼓動に身を任せる。

黒い粒子が胸部から吐き出されアズマテラスへと吸収されていく。

 

「第4次接続を開始!」

 

「こちらも問題ありません!撃鉄を起こせ!」

 

ガチンという音と共に砲門が開き照準モードへと移行する。

 

「地球の自転、及び重力の誤差修正!プラス0.00009」

 

あとは照準さえ合えば…!

 

「照準調節完了!」

 

「第5次最終接続。」

 

一撃で決める。もうあの2人を可哀想な目には遭わせたくない。

 

「初号機の心拍さらに上昇!」

 

「超高電圧放電システム問題なし!」

 

「陽電子砲射撃まで!」

 

―10.9―

 

今まで何度も渡り歩く中で諦めた普通の生活。護ると決めたこの街。そして出来た大切な人たちを守る為に…。

 

―8.7―

 

僕を再びちゃんと人の道に戻してくれたのはこの世界のミサトさんだった。

時が来れば僕が使徒としてリリスを殲滅し僕も殲滅される手筈のつもりだった。

 

―6.5―

 

でもまた生きたいと願った。願ってしまった。

だったら僕が出来ることを…。

 

―4.3―

 

カウントが遅く感じる…。まだかまだかとトリガーを引く指が震える。これを撃てば…!

 

だがマヤさんの声で現実に引き戻される。

 

「使徒フィールド反射膜を展開!?」

 

「ここに気づいた!?まずい!アズマテラスは!?」

 

「行けます!」

 

―2.1―

 

「発射!」

 

僕がトリガーに指をかけた瞬間、その熱線が初号機の左目を穿つ。

 

「ぐぁ!」

 

発射されたそれは使徒を貫き本体に風穴を開けた。

 

「やった!?」

 

女性的な悲鳴をあげ辺りに血をばらまき体を変形させる使徒。フィールド反射膜は地に落ちた。

だが…。

 

「いや!目標健在!」

 

「失敗!?」

 

この使徒知能が高い。間髪入れずに打ち込んだ使徒迎撃都市の全兵装、それらの使用位置から僕らの場所を割り出したとでも言うように的確にその反射膜による熱線を当ててきたのだ。それにより1射目は掠るだけの結果となる。よって最悪なのは…。

 

「目標内部に高エネルギー反応!」

 

「完全にバレた!総員直撃に備えて!」

 

そう、僕らの場所を完全に把握し今度こそその加粒子砲を的確にこちらへ打ち込んでくるのだ。直撃だけは避けなければならない。

 

「ATフィールド!全開!」

 

打ち出された加粒子砲をATフィールドで受け止める。

流石は新たな初号機。その出力は伊達では無い。

だが、展開できる広さには限界がある。

薙ぎ払われ蒸発する山頂。その熱量に地盤が溶かされアズマテラス固定位置が歪む。

 

「きゃあ!」

 

白煙が立ち上り焼け野原と化した山頂。辛うじて幾つかの送電システムは無事なようだ。万全とは行かないその状態に覚悟を決めアズマテラスを持ち上げる。

 

「シンジくん!?」

 

「ミサトさん…もう1回です。あと1回。足りない電力は僕が何とかする!」

 

「アズマテラス固定位置へ!現在砲身の冷却中!まだいけます!」

 

「送電システムは!?」

 

「全損が4割、損傷が2割、残りの4割がフル稼働と言ったところね。」

 

「…そう。なら持てる全てを初号機へ…。」

 

再び電磁加速器へ光が点る。先程よりも弱々しい稲光、それは電力が足りないことを示している。

 

「あぁ!もう邪魔だ!」

 

初号機のバイザーを持ち上げ肉眼に切り替える。

どうせ誤差の修正はこの地形じゃMAGIには無理だ。後はこれまでの経験と勘を頼りにぶち抜くしか術はない。鼓動を強く高鳴らせる。先程よりもより強く舞い散る粒子がアズマテラスへと供給されていく。

 

「砲身固定位置!射撃用所元、再入力完了。以降誤差の修正はパイロットによるマニュアルになります!」

 

「!使徒内部に高エネルギー反応!?フィールド反射膜展開!これは不味いです!」

 

よもやここに来て大技ってことか。あれだけの加粒子砲に夜にもかかわらずあの熱量を誇る攻撃、同時に撃ち込もうと考えるとは…。

 

「シンジくん!避けて!」

 

打ち込まれたそれが僕に届くことは無い。零号機が眼前に立ち

その攻撃を防いだ。

 

「綾波!」

 

「まだなの!?」

 

「あと20秒!」

 

照準を合わせる。早く…早く…早く早く早く!

 

「盾持ちません!」

 

ボロボロと崩れるその大盾。それでも避けることもせずその凶悪な砲撃を身に浴びる零号機。

照準がハマり鳴り響くシステム音、それを合図に一気にトリガーを引き込む。

打ち出された光矢は見事使徒のコアを撃ち抜く。バリバリとその結晶が音を立て崩れる。弓をかなぐり捨て零号機に近寄りハッチを無理やりこじ開ける。

強制排出されたエントリープラグを引き抜き初号機から飛び出す。

あれだけの熱兵器を浴び、カンカンに熱を持ったそれを無理やりこじ開けプラグ内へ駆け込む。

 

「綾波ィ!」

 

「い…かりくん?」

 

辛うじて虫の息ではあるがその生存を確認する。

何度経験してもこの場面は肝が冷える。何度かそのまま絶命した事もあったが…。

今回は大丈夫なようだ。

 

「また…泣いてるの?悲しい?」

 

「違うよ…綾波が生きていくれて嬉しいんだ…。」

 

「嬉しくても…涙が出るのね。」

 

ぐしぐしと涙を拭う。プラグスーツは硬くて嫌になる。

 

「別れ際にさよらならなんて悲しいこと言うなよ…。」

 

「ごめんなさい…。こういう時どんな顔すればいいか分からないの…。」

 

「…笑えば…いいと思うよ。」

 

いつもよりも優しく柔らかな笑顔。生きていてくれて良かったと安堵するその表情に僕は駆け寄ってわんわん泣いた。

ミサトさん達が僕らの救助に来た時には僕も綾波も抱き合ったままエントリープラグの座席で眠っていてしまったようで。

「あらあら」と笑顔で僕たち2人を担ぎ出したようだった。

かくして第6の使徒との戦いは終え、いくらか日常が戻ってくる。

これから先どうなるかは分からないが一先ずはこれで良かったのだろう…。

 




うん。書いてて思いましたけど。第6の使徒は一番書いていて気が楽でした。
幾らかオリジナルの要素はぶち込みましたけどね。
何よりアズマテラスというANIMAの要素、フィールド反射膜というMark4の要素どちらも取り入れるのはちとばかし苦労をしたなぁと思います。
初期案である、サハクィエル。これがフィールド反射膜っぽい、というかそれらしいので取り入れようとしたのが最初の構想でした。ま、もう少し上手く動かせたら良かったのかなぁとも思いますがね…。
次からオリジナルの展開をしつつも破の要素を含んだ話が始まります。
一体この世界のアスカは…。何をもってしてスパアスなのか。
ひとまず序編は完結と。何事もなくここまでかけて良かったのかなと思ってます。

時間でもできたらキャラの説明でもしましょうかね。
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