赤と青の螺旋   作:タヌキソード

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ヨシト「今回はSKaRDの隊員である俺『ミカミ・ヨシト』が出ない回だ、実は前の日に怪我をしてしまってメガショットの性能評価演習には行けなかったんだ。前の日とはいったが正確にはレヴィーラの案件から数日後だ、行きたい気持ちを抑えて今は安静にしてる」

ショウト「むしろそうしとけ、お前いつも勝手にどこか行くんだから」



第6話 山が吠える

 

秋田県 市之字村 霧野山演習場

 

 

 

ここは、東北地方、秋田県に立つ霧野山。本日ここでGGF(地球防衛隊)が開発した新兵器の性能評価演習行われようとしていた

 

 

?1「近年増加する怪獣の現出に備え、防衛隊が開発中の新型レールガン『メガショット』、自動照準能力を有し、超電磁力により砲口初速、毎時マッハ5。毎分30発の砲弾を発射。対怪獣戦闘において、絶大な威力を発揮します!…なんてことはとっくにご存じですよね?最近は視察の方が多く、ついついガイドづいてしまいまして…」

 

 

GGF開発部部長・ヤマダが新型レールガン『メガショット』の基本性能を特殊怪獣対応分遣隊SKaRDのメンバーに説明していた、今回の性能評価演習にはSKaRDが有する最新の対怪獣ロボット[23式特殊戦術機甲獣・アースガロン]の協力が必要不可欠だからである、ルカワ・ショウト隊員のみ、SKaRD CPにて待機。残りのメンバー5人は全員、霧野山演習場に足を運んでいた

 

 

ルドルフ「メガショットの事は、ずっと前から気になっていました」

 

ヤマダ「ありがとうございます。今日の演習は実用化に向けての第一歩です!ご協力のほど、何とぞよろしくお願いします!」

 

全員「「「「「よろしくお願いします!」」」」」

 

 

一礼したあと、霧野山の風景を感慨深げに見つめるアヤセ・ユキ隊員。実は霧野山の麓にある市之字村はユキ隊員の出身地なのである

 

 

全員総出で、性能評価演習の準備が着々と進められていく

 

 

ユナ「え?ユキさんって、この村の出身なんですか?」

 

ユキ「そう。言ってなかった?」

 

ユナ「はい、初耳です。市之字村っていえば、確かお米が美味しいんですよね?」

 

ユキ「中学の時に引っ越したから、あんまり詳しくは…」

 

ユナ「ふーん」

 

 

機材の点検を行うユキ隊員とマドカ・ユナ隊員。そこにシンボリルドルフ隊長とスヤマ・ヤスアキ副隊長が資材を抱えてやってきた

 

 

ルドルフ「点検の方は?」

 

ユナ「異常なしです」

 

 

重そうな資材の箱を地面に置いたルドルフ隊長とヤスアキ副隊長

 

 

ルドルフ「ちなみに、この村で作っている日本酒は最高らしいぞ、水が良いのだろうな」

 

ユナ「そうなんすね?」

 

ヤスアキ「産地直送の野菜も人気ですね」

 

ユナ「へー!」

 

ルドルフ「そういえば、ヤスアキの実家も確か…」

 

ヤスアキ「はい、農家なんです。私の故郷自慢、ちょっと聞いてくれますか?」

 

ユナ「聞きたいです!」

 

ヤスアキ「ユキの地元はお米が有名です、日本酒が美味しいですね」

 

ルドルフ「うん」

 

ヤスアキ「私の地元は葡萄なんです」

 

ルドルフ「ほほぅ…」

 

ヤスアキ「と、いう事は…」

 

ユキ「あの!地元とか、そういうのを意識しちゃうと任務に集中出来ないっていうか…」

 

 

お国自慢で暴走する面々をユキ隊員が止めた、長年歩兵部隊に所属していたユキ隊員は所謂叩き上げの軍人、非常に真面目な一面がある。だがクギを刺されて気まずい表情になった隊長達を見て

 

 

ユキ「あ…、何か、すみません…」

 

 

自分が場の空気を悪くしてしまったと思ったユキ隊員は俯き、機材を取ろうとする……その時だった

 

 

(謎の地響き音)

 

 

突然地面が激しく揺れたのである、突発的な地震のように思えるが…

 

 

?2「お願いです!演習を中止してください!」

 

 

地震が起こった直後、突然響いた声。さらにいつの間にか演習場の近くに民間人の女性が立っていた。メガホンを手に必死にメガショットの性能評価演習の中止を訴えていた

 

 

?2「『ドルゴ様』が、ドルゴ様が目覚めてしまいます!今の地震も、その前兆なんです!」

 

 

女性は、[『ドルゴ様』が目覚めてしまうので演習を中止してほしい』と叫んでいた

 

 

ルドルフ「何だ?」

 

 

演習の中止を訴えた女性はそのまま演習場の敷地内に駆け込んできた

 

 

「君、君!ダメだよ!止まりなさい!」

 

「ここは立ち入り禁止だから!戻って!」

 

 

女性がやっているのは不法侵入だ、防衛隊員達が女性を止めに入るが、女性は自分を止めようとする防衛隊員達を強引に突破して、ルドルフ隊長達がいる方へ駆け込もうとする

 

 

「こら!待て!」

 

 

防衛隊員達も慌てて女性を取り押さえようとする

 

 

ユキ「えっ?」

 

 

そんな中、ユキ隊員が例の女性を見て驚愕の表情で目を丸くした

 

 

ルドルフ「どうした?」

 

ユキ「あ、あの人!多分私の知り合いです!」

 

 

なんと!演習の中止を訴えた女性はユキ隊員の知り合いらしい

 

 

ユキ「アユミ!アユミ!」

 

?2「えっ、嘘!?ユキ!?なして、ユキがここさいるの!?」

 

ユキ「それだば、こっちの話だぁ!危ねえべさ!、こったらところにいたら!」

 

?2「秋田弁!」

 

ユキ「あ…」

 

 

友人に会った気の緩みからか、ユキ隊員の口調が見事な秋田訛りになっていた

 

 

ユキ「何でアユミ、こんな所にいるのよ…」(小声)

 

 

慌てて標準語で喋り直すユキ隊員、例の女性の名前は『アユミ』、彼女はユキ隊員の古い友人らしい

 

 

ユキ「とにかく、向こうで話そう。あっ、すいません!大丈夫です、知り合いなので!」

 

 

とりあえずだが、ユキ隊員がアユミから事情を聞くことになった

 

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~OP : 僕らのスペクトラ

 

 

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ヤマダ「いや、隊員さんの幼馴染だったとは驚きました!古い神社のお孫さんなんですが、度々押しかけてくるんで困っていたんです」

 

 

ルドルフ隊長はGGF開発部のヤマダ部長からアユミの事を聞いていた

 

 

ルドルフ「何か訴えていたが?」

 

ヤマダ「『霧野山には怪獣が眠っていて地震はそのせいだ』とか。一応、話は聞きました。が、他愛のない昔話でして。そもそも建設前に土壌調査はしっかり行っていますから」

 

 

ヤマダ部長はアユミの話を信じていないらしい、だがルドルフ隊長は彼女の話に引っ掛かるものを感じた。視線をテント下で話すユキ隊員とアユミに向けるルドルフ隊長

 

 

ルドルフ隊長の視線の先、アユミは背負っていたリュックから布にくるまれた筒状の物体を取り出す、それはアユミの家に昔からある古い巻物だった、長テーブルの上に巻物を広げるアユミ、その巻物には森そのものを背負ったような、四足歩行の怪物の姿が描かれていた、これが『ドルゴ様』なのだろうか

 

 

ユキ「これは?」

 

アユミ「ウチに代々伝わる巻物でね、『土留牛(ドルゴ) 』って読むの。霧野山に1000年以上も眠り続ける守り神で、周りの土を豊かにして、水を浄化してくれるんだって」

 

ユキ「土留牛(ドルゴ)?…あ!昔、おばあちゃんから聞いたことがある!確か、山の上に祠があったよね?」

 

アユミ「そう!二人で、よくお参りしたでしょ?」

 

ユキ「行った行った!懐かしいね~!」

 

アユミ「ね~」

 

 

幼き頃、二人はちょくちょく霧野山に入ってドルゴ様にお参りしていたそうだ

 

 

アユミ「あの祠にはドルゴ様を鎮める役割があったの」

 

ユキ「なるほど、そういうことだったのか。私、何も考えずに手を合わせていたけど…」

 

アユミ「…でも、あの『大砲』っていうか、ほら、えっと…」

 

ユキ「メガショット?」

 

 

ユキ隊員がそう言うとアユミは頷いた

 

 

アユミ「メガショットを設置する工事で祠は壊されてしまった、『資材を運ぶ通り道にあった』とかで」

 

アユミが悲しそうに言うと、ユキ隊員は『あちゃー』という表情になった

 

アユミ「封印が解かれ、ドルゴ様は目覚めようとしている。見て」

 

 

アユミは、ユキ隊員にドルゴの絵が描かれていた巻物の続きを見せた、そこには身を乗り出して天を仰いで咆哮するような怪物の姿が描かれていた、その先は焼き切れていて、続きはなかった

 

 

アユミ「ドルゴ様が怒った時の絵」

 

ユキ「凄い絵…。でも、これだけじゃ証拠にはならないな…」

 

アユミ「隊員さん達にも言われた、だけど工事が始まってから私にはずっとドルゴ様の声が聞こえるの。『痛い!苦しい!』って…」

 

ユキ「土留牛(ドルゴ)の声?」

 

 

ユキ隊員がそう尋ねるとアユミは頷いた、それを聞いて、何かを思い出した表情をするユキ隊員

 

 

ユキ「アユミ!あなた、今もまだ『声』が聞こえるの?動物とか、虫とか、草花の声が?」

 

 

ユキ隊員がそう言うと、アユミは微笑んで頷いた、どうやら実家が神社であるアユミは『巫女』のような『人ならざる者達の声を聞く力』を持っているらしい

 

 

アユミ「みんなが私の事からかったけど、ユキだけは違ったね」

 

ユキ「だって、憧れていたもの。虫は別としてね」

 

アユミ「ホント、苦手だったよね」

 

 

昔の事を思い出して笑い合うユキ隊員とアユミ、しかし直後にユキ隊員は苦い表情を見せた

 

 

ユキ「あなたの話、信じてあげたいけど…」

 

 

どうやらユキ隊員もドルゴの話はいまいち信じきれていないようであった、いくら幼なじみの頼みとはいえ、絵巻物が証拠ではメガショットの性能評価演習は中止出来ない

 

 

アユミ「大切なお仕事なのは分かる、でもこのままじゃ取り返しのつかない事になる。みんなに話して、演習を中止して!お願い!ユキ!」

 

 

真剣な表情でユキ隊員に訴え賭けるアユミ、ユキ隊員はどうすればいいのか思い悩んだ、そこへ…

 

 

ヤスアキ「ユキ、そろそろ集合時間だ」

 

 

ヤスアキ副隊長がやってきた、SKaRDの一員であるユキ隊員としては、上の命令に従う他はないのである

 

 

ユキ「了解。…ごめん!続きは、また後で聞くから!」

 

アユミ「ユキ!」

 

アユミをテントに残して、ユキ隊員は演習場へと向かった

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー---

 

そのあと…

 

 

アースガロン「ワオオオーンッ!」

 

 

メガショットの前に立つアースガロン、いよいよ、メガショットの性能評価演習が始まる

 

 

ルドルフ「アースガロンへ、こちらルドルフ、これより性能評価テストを開始する」

 

ヤスアキ{了解!アースガロン、前進!}

 

ユキ「Wilco(了解)!」

 

 

アースガロンの機長はヤスアキ副隊長、操縦士はユキ隊員が務める、ルドルフ隊長は仮説指揮所でテストの指揮を取り、ユナ隊員はテストのデータを記録する、アースガロンが前進を開始するとメガショットはアースガロンの挙動に合わせて砲身を自動で動かした、そしてアースガロンに向けて砲弾を発射する

 

 

(着弾音)

 

 

アースガロンの前進を邪魔するかのように着弾する電磁誘導砲の砲弾、アースガロンは反転して、尾部のテイルVLSををメガショットに向けて発射

 

 

メガショットはミサイルに即座に反応し、再び砲弾を発射してミサイルを撃ち落とした

 

 

(爆発音)

 

 

空中で次々と砲弾に破壊されて爆発するミサイル、テストの様子を不安に見つめるアユミ、対照的にルドルフ隊長やユナ隊員、ヤマダ部長はメガショットの性能の高さに驚愕・歓喜の表情を見せていた

 

 

アユミ「…」

 

 

ルドルフ隊長の様子を複雑そうに見つめて、手元の巻物に視線を移すアユミ、一方でアースガロンは両腕の榴弾砲『アースガン』をメガショットに向けて連射、メガショットは榴弾砲にも即座に反応して、これを砲弾で相殺、テイルVLSも併せたアースガロンの弾幕をメガショットは凌ぎ切ってみせた。その戦果を見たルドルフ隊長達は満足そうに頷いた…その時!

 

 

(謎の地響き音)

 

 

再び、霧野山演習場の地面が激しく揺れ動いた、近くにあるものにしがみつくルドルフ隊長達

 

 

ユナ「また!大丈夫ですか!?」

 

 

ユナ隊員はアユミに呼びかける、アユミは胸を押さえて苦しそうに呻いていた

 

 

アユミ「ドルゴ様が…!」

 

 

アースガロンの眼前、メガショットが設置されている山が激しく揺れ動く。山肌から不自然に石柱らしき物体が突き出てきた、そのうちの二本はメガショットを上に乗せている、周囲の木々が次々と倒れ、半円状の角と鋭く尖った鼻を持つつぶらな瞳をした苔むした巨大生物がその巨体を震わせて現れた

 

 

ドルゴ「ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」

 

 

これがアユミが言っていた市之字村の守り神、『山怪獣ドルゴ』である

 

 

ヤスアキ{こちらアースガロン、怪獣現出!}

 

 

ユキ隊員はアユミの言っていた事が真実だったことに改めて驚き、ヤスアキ副隊長は冷静に状況を報告した

 

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ヤマダ「まさか…!そんな!」

 

 

事前の土壌調査で何も異常は見つからず、『怪獣はいない』と思っていたヤマダ部長は現状を信じられず、呆然としていた

 

 

ルドルフ「こちらも確認!目標の行動によっては攻撃を許可する!」

 

 

ルドルフ隊長は冷静に現状を把握し、ヤスアキ副隊長とユキ隊員に命令を出した

 

 

ドルゴ「ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」

 

 

巨体を揺らして前進するドルゴ、鼻先に雷光を集中させ、その雷光をアースガロンめがけて迸らせた

 

 

アースガロン「ワオオオーンッ!」

 

 

一瞬の事であった為、回避が間に合わず、アースガロンはドルゴの雷光の直撃を受けてしまった

 

 

ユキ{操縦系統に異常発生!}

 

 

グルグル目になってよろめくアースガロン、動けないアースガロンに向かってドルゴが巨体を揺らして更に前進してきた

 

 

ヤスアキ{来るぞ!}

 

 

ドルゴに体当たりされるかと思い、思わず目を瞑るユキ隊員、しかしドルゴは動けないアースガロンを横目に通りすぎると、なんと近くの湖の水を飲み始めた

 

 

ドルゴ「ゴッ、ゴッ、ゴッ…」

 

ユキ{え?}

 

 

ドルゴの行動に首をかしげるユキ隊員、水を飲み終えたドルゴは濡れた髭のように見える植物を撫でると、地面に体を置いて、瞼を閉じて再び眠りについた

 

 

ドルゴ「グオオオオオオオオオオ…」

 

 

鼻孔から鼻提灯が膨らむユルい光景

 

 

ユキ{に…二度寝ぇ!?}

 

 

ヤスアキ副隊長もユキ隊員もこれには唖然とするしかなかった

 

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メガショットを背に乗せたまま、鼻提灯を膨らませて眠り続けるドルゴ、ルドルフ隊長達はひとまずドルゴの監視を続けていた

 

 

ヤマダ「土壌調査の際、生命反応等は一切ありませんでした、それが何故…?」

 

ヤスアキ「ドルゴは体力温存の為、生命活動を大幅に抑制していたのでしょう、いわば山そのものになって冬眠していた…」

 

ルドルフ「それで?奴はまた、このまま眠り続けるのか?」

 

ヤスアキ「久々の覚醒で体機能を調整中と思われます、脳波を見るに眠りは浅く、あと一時間程で完全に覚醒するかと」

 

ヤマダ「メガショットは停止信号を受け付けず制御不能です!あのまま動き回られたら大変な事に!」

 

 

ドルゴの覚醒と同時にメガショットが暴走すれば周囲に甚大な被害が出る。ヤマダ部長はそれを非常に危惧していた

 

 

アユミ「あの…」

 

 

そんなルドルフ隊長達にアユミが話しかけた

 

 

アユミ「皆さんはもしかしてドルゴ様を、その…」

 

 

アユミは、ルドルフ隊長達がドルゴの排除を検討しているのではないかと疑っていた、ルドルフ隊長達は何も言わずに頷いた、その様子を見てアユミは自分の推測が正しかったと確信

 

 

アユミ「そんな!ダメです!守り神を殺すなんて!これを見てください!」

 

 

アユミは、リュックに入れていた布にくるまれた物体を取り出して布を取った、布の中身はドルゴの封印を司っていた祠に祀られていたご神体、それは仏様が手を合わせて祈っている石像であった

 

 

ルドルフ「これは?」

 

アユミ「祠のご神体です、廃材と一緒に運び出されていました、ご神体を元の位置に収めればドルゴ様はきっとまた深い眠りにつくはずです!」

 

 

自分達の行動がドルゴの覚醒を促してしまった…その事実にルドルフ隊長達やヤマダ部長は閉口した

 

 

アユミ「私に行かせてください!」

 

 

するとアユミが『ご神体を元の位置に収めに行く』と言い出した、ご神体が元々あった位置とはドルゴの頭頂部付近である、つまり…ドルゴの背中に乗らなければいけないのである、非常に危険な行為だ

 

 

ルドルフ「行くって、奴の背中にか?」

 

ユナ「無茶ですよ!」

 

ヤスアキ「そもそもご神体に効果があるのかどうか…」

 

 

一般人のアユミにそんな危険な行為はさせられない、当然ルドルフ隊長達は猛反対した、ドルゴを眠りにつかせる事が自分では出来ないと知り、アユミの表情が曇った……その時だった

 

 

ユキ「私が行きます」

 

 

なんとユキ隊員が「アユミの代わりに自分がご神体を元の位置に収める」と言い出した

 

 

アユミ「ユキ…」

 

ユキ「さっきはごめんね、信じてあげられなくて」

 

 

ユキの言葉を聞いてアユミは安堵した表情をみせた、微笑み合う二人

 

 

ユキ「山岳での任務は何度も経験しています、土地勘もあります。ドルゴが眠っているうちにやるだけやらせてください」

 

ルドルフ隊長に意見を具申するユキ隊員

 

ルドルフ「うーん…」

 

 

渋い表情で右のこめかみを指で揉んで思案するルドルフ隊長……その時!

 

 

ショウト{おーい、もしもーし!みんなー!}

 

 

SKaRD CPで待機していたショウト隊員から連絡が入った、パソコンを覗き込む一同

 

 

ショウト{予定通りなら今頃みんな、温泉に浸かっていたのに、ツイてないですね~}

 

ルドルフ「ショウト…」

 

ルドルフ隊長がショウト隊員を窘めようとしたが

 

ショウト{なんてね、これ、参考になるかと思って}

 

 

ショウト隊員がパソコンに画像データを表示した、なんとその画像はアユミが持っていた絵巻物の続きだった、途中で焼き切れて失われていたものの続きをショウト隊員が探し当てたのである

 

 

アユミ「ちょ、ちょっと!ちょっと!」

 

ヤマダ「痛って!」

 

 

思わずパソコンを再度覗き込む一同、そしてアユミも割り込んでパソコンの絵巻物の画像を見た

 

 

アユミ「この絵…!どこにあったんですか?」

 

ショウト{ユキさんが絵巻物の写真を送ってくれて、検索で科学博物館のデータベースに行き着いたんです、ずっと出所不明で扱いに困ってたみたいですよ}

 

ヤスアキ「睡眠を司る脳幹部分に刺している…ひょっとしたら麻酔効果があるのかもしれない」

 

ユナ「よく眠れるツボみたいな?」

 

ルドルフ「じゃあ、ご神体は効くって事なのか!」

 

ヤスアキ「スキャン映像と照らし合わせる限り否定はできません。あくまで可能性ですが…」

 

 

それでもご神体を元の位置に収める事でドルゴを再び眠らせる事が出来る裏付けが取れた

 

 

ルドルフ「アースガロンの復旧にはどのくらいかかる?」

 

ユナ「整備班もみんな来てるんで一時間ももらえれば!」

 

再び右こめかみに指を当ててルドルフ隊長は決断を下した

 

ルドルフ「ユキは祠の跡地に向かえ、ただし、私も同行する」

 

ルドルフ隊長がそう言うとユキ隊員は頷いた

 

ルドルフ「ユナとヤスアキとヨシトはアースガロンの復旧作業を、タイムリミットは一時間!ご神体に効果がなくドルゴが再び暴れだした際は、速やかに攻撃開始だ!」

 

4人「「「「Wilco!」」」」

 

ヤマダ「お願いします!」

 

こうして、ドルゴに対する作戦行動が決まった

 

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ドルゴ「ンゴゴゴゴォォォ…」

 

 

早速ドルゴの背中に上るルドルフ隊長とユキ隊員、ドルゴのいびきがうるさく響く、一方演習場敷地内ではヤスアキ副隊長、ユナ隊員、そして整備班の面々がアースガロンの修復を急ピッチで進めていた

 

 

ヤスアキ「OD-1は?」

 

「終了!」

 

ヤスアキ「了解!OD‐2は?」

 

「終了です!」

 

ヤスアキ「了解!」

 

 

ユナ隊員も必死に修復作業を続ける、一方ルドルフ隊長とユキ隊員は祠の跡地に到着した

 

 

ユキ「アユミ?」

 

 

ユキ隊員が、ヘルメットに取り付けられたカメラから、祠の跡地の映像をパソコンへと送った

 

 

アユミ{そう!それが祠の土台!真ん中にご神体を収める穴が開いているはず!}

 

ユキ「分かった!」

 

 

ルドルフ隊長がユキ隊員が背負うリュックの口を開けて、布にくるまれたご神体を取り出す

 

 

ルドルフ「ユナ、アースガロンの復旧状況は?」

 

ユナ{間もなくです!}

 

 

(地響き音)

 

 

これならあとはご神体を収めるだけでなんとかなりそうである、そう思っていたルドルフ隊長とユキ隊員だったが、突然ドルゴの体が大きく揺れ動いた、どうやらメガショットから火花が飛び散った事と関係があるようだ、鼻提灯が割れてドルゴが遂に目を覚ましてしまった

 

 

ドルゴ「ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」

 

 

パソコンのカメラの映像は激しく揺れ動き、そして『NO SIGNAL』という表示が出てしまった

 

 

アユミ「ユキ!」

 

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「予備電源において火災発生の模様!」

 

ヤマダ「何っ!?」

 

 

メガショットのショートが原因でドルゴは暴れ始めてしまった。その様子はどこか苦しそうに見えた

 

 

アユミ「ううっ…」

 

 

ドルゴの声が聞こえるアユミはまるで自分が苦しんでいるかの如く頭を押さえ呻いていた、そしてドルゴの背中に乗っていたルドルフ隊長とユキ隊員も足場が不安定になってろくに立っていられなくなった

 

 

ルドルフ「うわっ!」

 

 

バランスを崩し、現地から見て崖側の方に転がりそうになるルドルフ隊長

 

 

ルドルフ「ユキ!」

 

ユキ「隊長!」

 

 

咄嗟にルドルフ隊長は手に持っていたご神体をユキ隊員に渡す、直後ルドルフ隊長は転がり落ちていった

 

 

ルドルフ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

ユキ「隊長ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 

ルドルフ隊長が転がり落ちていくのを見てユキ隊員は絶叫した

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー---

 

アユミ「ユキ、なした!?返事せぇってば、ユキ!」

 

 

アユミも必死にパソコンに向かって呼びかける、しかし返答はない。その頃、ルドルフ隊長の命の危機を察したのか、ルドルフ隊長の左腕にブレーザーブレスが光と共に出現、ルドルフ隊長はポケットに入っていたブレーザーストーンをブレーザーブレスのスリットにセットし、起動したブレーザーブレスのスイッチを掌で押した、すると瞬く間にルドルフ隊長の体が光に包まれた

 

 

ブレーザー「ウゥゥゥルルルルルルオオオアアアアアアイッ!!」

 

 

(大きな着地音)

 

 

地面に降り立つウルトラマンブレーザー。その衝撃で土柱が立った

 

 

ブレーザー「ルアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

すぐさま、ブレーザーはドルゴに駆け寄って動きを押し留めようとする。しかし背中に乗っている2機のメガショットがブレーザーに反応し、敵と認識したのかレールガンの砲弾をブレーザーに向けて放った

 

 

ブレーザー「ルォッ!?」

 

 

2発は何とか回避するブレーザー。しかし直後の3発目はモロに顔面に砲弾を食らってしまう

 

 

ブレーザー「ルァアアアアアアアアイイイイッ!!」

 

 

吹き飛ばされて大地を転がるブレーザー

 

 

アユミ「ユキィィィィィィィィィィィッ!!」

 

 

アユミはテントを飛び出し、友達の名前を大声で叫んだ

 

 

ブレーザー「ルアッチ…イッテ…」

 

 

レールガンの直撃を受けた顔を押さえて呻くブレーザー、間髪入れずにドルゴの鼻先から雷光が迸った

 

 

ドルゴ「ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」

 

 

ブレーザー「ハッ!」

 

 

側転で咄嗟にドルゴの雷光を回避するブレーザー、しかしドルゴの背に乗っているメガショットの1機がブレーザーに照準を合わせていた、ブレーザーは上空に飛び上がったが、メガショットは砲身を上へと向け、空へと飛んだブレーザーを撃ち落とす

 

 

ブレーザー「ルアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

(落下音)

 

 

敢えなく地面に体を叩きつけてしまったブレーザー、ドルゴが巨体を揺らしてブレーザーに迫り来るが

 

 

アースガロン「ワオオーンッ!」

 

 

そこへ、修復を終えたアースガロンが参戦、ブレーザーにとっては心強い援軍である

 

 

ヤスアキ{待たせたな!}

 

ユナ{来い、メガショット!}

 

 

ユナ隊員が操縦するアースガロンが両腕を構えてドルゴを挑発

 

 

ドルゴ「ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」

 

 

ドルゴの背中にあるメガショットがアースガロンに向けて火を噴く、だがアースガロンは横跳びをしながら両腕のアースガンを2機のメガショットの根本めがけて正確に撃ち抜いてみせた

 

制御を失った2機のメガショットは、まともに照準を合わせられなくなってしまう

 

 

ブレーザー「ルオオオオオオオオオオイッ!!」

 

 

それを見たブレーザーはすかさず右掌の内にブラックホールのような所を発生させ、そこから光の槍『スパイラルバレード』を取り出した…かとおもうと、スパイラルバレードの両端を握りつつ膝で真っ二つにへし折ってしまった、これは二刀流ならぬ二槍流…とでも言うのだろうか、両手に先程へし折って二つにしたスパイラルバレードをドルゴの背中…もといメガショットの根本めがけて思いっきり投げつけた

 

 

ブレーザー「ルアアアアアアアアアアイッ!!」

 

 

(着弾音)

 

 

ドルゴ「ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!」

 

 

強力な武器を失ったかに見えるドルゴ、だが今度は半円状の角から青紫色の雷光を放射

 

 

ブレーザー「ルァッ!」

 

 

咄嗟に左腕に光のバリアーを形成し、ドルゴの雷撃を受け止めるブレーザー、バリアーを投げ捨てて雷撃の軌道を横に逸らす、そしてブレーザーは空に飛び上がった

 

 

ユキ「くっ…」

 

 

その頃ユキ隊員はドルゴの背中の上でよろめきつつも必死に祠の土台に向かって歩いていた、そして遂に祠の土台の前に立つユキ隊員、後ろを振り返ると、ブレーザーがすぐ近くまで接近していた、ブレーザーを見上げて微笑むユキ隊員、ブレーザーが必死にドルゴを押し留めている間にユキ隊員は空手の三戦(サンチン) 立ちで体勢と呼吸を整えると…

 

 

ユキ「眠ってけれ!」

 

 

祠の土台、つまりドルゴの脳幹にユキ隊員はおもいっきりご神体を刺した

 

 

ドルゴ「ルヴオオオオオオオオオオオオ…」

 

 

青い雷光がドルゴの体に纏わりつき、目を白黒させた後、ドルゴは瞼を閉じた。ようやく休眠状態に入ったのである

 

 

ブレーザー「フオオオオ…」

 

 

眠りについたドルゴに敬意を払うかのように、ブレーザーは天を仰いで祈祷し、そのあと…

 

 

ブレーザー「オオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 

ブレーザーはドルゴを力いっぱい押し出して、ドルゴの巨体を元の位置に戻した

 

 

ブレーザー「ルロッチ!」

 

 

ブレーザーは空へと飛び去っていった、ドルゴの尾や背中の石柱が引っ込み、山そのものになった

 

 

ヤスアキ「よくやった!」

 

ユナ「はい!」

 

 

今回はドルゴを殺さず鎮める事ができた。最悪の事態を回避できた事に安堵する一同、ユキ隊員も安堵した表情で、山に戻ったドルゴを見つめた…その時だった

 

 

『『あははははははは…!』』

 

 

この場にはいないはずの少女達の声がユキ隊員の耳に聞こえた、そしてドルゴの背にいたユキ隊員の傍を二人の少女が駆け抜けていった、その後ろ姿にユキ隊員は見覚えがあった、なぜならその二人の少女は幼き日の自分とアユミだったからである

 

 

『『ありがとう!』』

 

 

その感謝の声がユキ隊員の耳に残響した、幼き日の自分達の幻影はドルゴの意志の代弁なのだろうか…、元の場所に収められたご神体を見てユキ隊員は微笑むのだった

 

 

ルドルフ「ドルゴの脳波を再測定したところ、既に冬眠状態でした。何事もなければまた1000年でも眠り続けるでしょう」

 

 

メガショットの性能評価テストは結局のところ失敗に終わってしまった。しかしそれは価値ある失敗だった

 

 

ヤマダ「今日の一件で様々な課題が見えました。開発部一同、気持ちを新たに頑張ります!」

 

 

ヤマダ部長は「今回のテストの失敗で見えた問題点を解決してメガショットを改良する」と、ルドルフ隊長に約束した、そしてGGFの関係者は撤収の準備を始めた

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー---

 

その少し後、ユキ隊員とアユミは演習場の近くを並んで歩いていた

 

 

ユキ「私にも聞こえたよ」

 

アユミ「きっと、もう大丈夫だよね」

 

ユキ「んだね」

 

アユミ「ほんと、いがった!」

 

ユキ「いがった、いがった!」

 

 

秋田弁で喋りながら、山に戻ったドルゴを見上げるユキ隊員とアユミだった

 

そして、性能評価演習を終えたSKaRDの面々は東京への帰路へと就く、ルドルフ隊長とユキ隊員はSKaRD MOPに乗り込み、ユキ隊員はハンドルを握った

 

 

ユキ「ルドルフ隊長」

 

ルドルフ「ん?」

 

ユキ「…故郷(こきょう)っていいものですね」

 

ルドルフ「んだべー?」

 

ユキ「何ですか、それ!」

 

 

秋田弁で応えたルドルフ隊長を見て笑うユキ隊員、そしてSKaRD MOPは東京へ向けて走り出した、その上空をアースガロンがSKaRD MOPと同じ方向へと飛び去っていくのであった…

 

 

~ED : BLACK STAR

 




予告ナレーション「空を覆う不気味な光、カナン星人の企みが実を結ぶ時、自我に目覚めた機械達が一斉に狂いだす」

予告ナレーション「次回 赤と青の螺旋 『侵略のオーロラ』 マドカ・ユナを誘う言葉は天使の福音か、それとも悪魔の囁きか」
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