赤と青の螺旋   作:タヌキソード

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侵略のオーロラ

 

東京都内のある水辺、そこに一台の車が止まった。

 

 

「ん?何だあれ?」

 

「綺麗…!」

 

「ちょっと撮ってみようか!」

 

 

トレセン学園の生徒とその担当トレーナーがそのような会話をしながら車から降りてきた、空にはオーロラが発生していた。二人は携帯を取り出してカメラを起動し、オーロラを撮ろうとした。

 

 

「凄いな!日本の都会でもオーロラ見れるなんて…!」

 

「何か良いことがありそうですね!」

 

 

なんて会話をしていた時だった。

 

 

『ビッビー!』

 

 

停めたはずの車が突然ライトを点滅させたりワイパーを動かしながら発進したのだ。

 

 

「え?」

 

「え?何ですかこれ!?」

 

「あっ!待てー!」

 

「待ってー!」

 

 

二人は発進した車を追っていくのだった。そして同刻、空を飛んでいた小型飛行機がコントロールを失ってふらつき、風車型の発電機も何の脈絡もなく突然動いていたのだった。

 

 

 

 

~OP:僕らのスペクトラ

 

 

 

 

GGF教江野基地・アースガロン格納庫

 

マドカ・ユナ隊員。元々防衛隊の整備部隊に所属していた彼女は、卓越したメカニックとしての手腕を買われて特殊怪獣対応分遣隊SKaRDの一員として選ばれた。SKaRDの隊員達が使う装備のメンテナンスや、最大戦力である23式特殊戦術機甲獣『アースガロン』の整備は専ら彼女の仕事だ。今日もユナ隊員はアースガロンの整備を行っていた。

 

 

「な~に難しい顔してるんだよ?」

 

 

手元のタブレット端末を見て渋い表情をしていたユナ隊員に、ルカワ・ショウト隊員が話しかけた。

 

 

「自動制御装置の調子が悪くて…。この間の演習のせいかな?って…」

 

「頼むよ~!最近、妙な事故が多いじゃん!」

 

「はい」

 

 

ショウト隊員はユナ隊員の両肩を揉んでアースガロンの調整をユナ隊員にお願いする。

 

 

「ところで『例の件』、なんだけど…」

 

「例の件?」

 

「ほら!あの『腕時計にジャミング機能を付けて欲しいな~』って!」

 

「あ、アレ!ちょうど今朝、出来ました!」

 

「ウッソ!?やった~!見せて!」

 

「了解っす!ちょっと待ってて!、アースガロン!」

 

 

マドカ・ユナ…彼女は人から頼み事をされると断れない人間である。

 

 

 

 

 

SKaRD CP

 

 

「え~っと、どこやったっけ?あっ、あった!」

 

 

基地内にあるSKaRD専用の指揮所内の自分のデスク、そこで彼女はショウト隊員に渡す彼の時計を探していた。そんなユナ隊員にアヤセ・ユキ隊員が声をかけた。

 

 

「ユナさん!すみません!先日の報告書、再提出になっちゃって…」

 

「はい」

 

「ハードウェアの部分を添削して欲しいんだけど…」

 

「添削…?」

 

 

立て続けの頼み事、しかし彼女は…

 

 

「いいっすよ!」

 

 

即答で了承してしまった。

 

 

「ごめんなさい、忙しいのに…」

 

「全然OKっす!」

 

「あの、急ぎじゃないんですけど、早めだと嬉しいです…」

 

「早め…?」

 

「はい。よろしくお願いします!」

 

「はい!」

 

 

ユナ隊員は再びアースガロンの格納庫へ向かった。

 

 

「え~っと、ここはOKっと。あ、ここ『ハードウェアが間違ってます』っと…」

 

 

歩きながらもきちんと添削するあたり、ユナ隊員の生真面目な性格と有能さが見える。

 

 

「ソフトウェア…?う~ん…」

 

 

歩きながら添削するユナ隊員は、シンボリルドルフ隊長とすれ違った。

 

 

「ユナ?」

 

「ルドルフ隊長!」

 

 

朗らかな笑顔でユナ隊員はルドルフ隊長に返事をした。

 

 

「顔色が悪そうだね?…あまり無理はするなよ?」

 

「大丈夫です!それより何かパソコンの調子が悪いって言ってましたよね?すいません!チェック遅れて!」

 

「あ、いや、それは別にいつでも…」

 

「これ終わらしたら、すぐに行きますんで!」

 

 

手元の頼まれ事を速攻で片付け、ルドルフ隊長のパソコンのチェックに行こうとするユナ隊員、後ろ向きで歩いていたせいで、ミカミ・ヨシト隊員とぶつかってしまった。

 

 

「すいません!」

 

「いや、問題ない」

 

 

頭を下げて謝るユナ隊員、ふらついているように見えるが…。

 

 

「大丈夫っす!」

 

 

ユナ隊員はルドルフ隊長に笑顔を見せて階段を登ろうとする、だがその途中でズッコケた。

 

 

「痛ったぁ…」

 

 

そんなユナ隊員を見て、ルドルフ隊長が一言。

 

 

「君、やっぱり疲れているよ」

 

 

 

 

 

 

「皆気づかぬうちにユナにハードワークを強いていた、と…」

 

 

疲労困憊の様子を見せていたユナ隊員は早退となった。スヤマ・ヤスアキ副隊長がやや厳しめな表情でルドルフ隊長、ショウト隊員、ユキ隊員を見る。

 

 

ユナ隊員への対応についての反省会である。

 

 

「だって『大丈夫』って言うから、つい…」

 

 

なんて言うショウト隊員をヨシト隊員は冷たい視線で見た、冷たい視線を感じ取ってショウト隊員は震え上がった。

 

 

「私も…」

 

「私も、つい細々と頼んでしまったな…」

 

 

全員思うところはあるようで、気まずい表情を見せていた。

 

 

「彼女は仕事熱心ですが、無理しすぎるきらいがあります。そういう所、隊長が先回りしてフォローしてあげないと」

 

「…だな」

 

 

たとえ上官と言えども、言うべき事はきちんと言う。ヤスアキ副隊長が『有能』と評される所以はここにある。そしてそういう指摘をきちんと受け入れられるルドルフ隊長もまた、隊長に相応しい器と言える。

 

 

「まあ、衛生課によれば単なる疲れという事で大事に至らず良かったですが…」

 

 

防衛隊衛生課の診断によれば、ユナ隊員の現状は単に疲労が溜まり気味なだけらしい。それでも彼女の現状を憂うヤスアキ副隊長は自分のデスクからトマトが大量に入ったマイバッグをデスクに持ってきた。

 

 

「…トマト?」

 

「実家から送ってこられた採れたてです。皆に配るつもりでしたが、ユナが早退したので渡しそびれました、隊長、届けてやってください」

 

 

ヤスアキ副隊長はそう言ってトマトぎっしりなマイバッグをルドルフ隊長に差し出した。

 

 

「…[[rb:Wilco > 了解]]」

 

 

隊長としては部下のフォローも重要な任務である。ルドルフ隊長は『了解』の返答をした。

 

 

 

 

 

 

 

所変わってここは下町のコインランドリー、早退したユナ隊員は洗濯物を乾燥機に入れていた。

 

 

「過労気味やってさ、『クルル』。いや~、でも頼まれると、つい張り切っちゃうねんなぁ」

 

 

物言わぬ乾燥機に話しかけるユナ隊員、実は彼女には『お気に入りの機械には愛称をつけて愛でたり話しかけたりする』というヤバい一面がある。

 

ガタンッ

 

「うぉっ!?どしたん、クルル?急に?返事したん?クルル、どちたの?可愛いね、クルル 」

 

 

ふと振動した乾燥機・クルルに対して猫なで声で話しかけるユナ隊員。……これは相当ヤバい…。

 

 

そんなユナ隊員の足元にトマトが転がってきた。視線の先にはトマト入りのバッグを持つルドルフ隊長、若干引いているように見えた。ユナ隊員は思わず背筋を伸ばして直立不動になった。

 

 

「…見てました?」

 

 

ユナ隊員は恐る恐る聞いてみた。

 

 

「いや!アパートに行ったら大家さんが『ここだ』って言うから、その…」

 

 

非常に気まずい空気が二人の間に流れる…。ここで乾燥終了を知らせるアラーム音がクルルから響く。

 

 

「まあ、後は若い人同士で?ごゆっくり…」

 

 

ルドルフ隊長は苦笑いをしつつそそくさとコインランドリーから立ち去った。そもそも乾燥機のクルルが若者と定義出来るのかは正直疑問である。

 

 

「最悪やーっ!むっちゃキモイとこ見られた!」

 

 

自分の悪癖を上司に知られ、ユナ隊員はクルルに寄りかかってそう嘆いた。

 

 

「隊長!今のはですね…」

 

 

ルドルフ隊長に釈明しようと振り返るユナ隊員、だがそこにルドルフ隊長の姿はない。代わりに、明らかに地球人ではない何者かが衣服を洗濯しに来ていた。

 

 

[フフッ!あんなにオロオロしなくたってねぇ!]

 

「…どちらさん?」

 

 

それは金と黒の縞々模様のシンプルな衣服を着た、金色の頭のエイリアン、両目はミラーボールのようになっており、まるでトンボを想起させる風貌だった。

 

 

「うわっ!?う、宇宙人…!」

 

 

ウマ娘世界では初のケースとなる、異星からの知的生命体との邂逅にユナ隊員は驚いた。

 

 

[落ち着いて。危害を加えるつもりはないよ。僕はカナン星から来た〔アルメ〕と言うんだ。どうぞよろしく、マドカ・ユナ君]

 

 

流暢な日本語でまるで友人に話しかけるかのように喋り、カナン星人アルメは手を差し出す。

 

 

「なんで、私の名前を…?」

 

 

ユナ隊員の質問に対してアルメは乾燥機のクルルを指差しながら楽しそうに話しだした。

 

 

[君の事なら何でも知ってる。地球防衛隊日本支部、SKaRD所属。この店の常連でお気に入りの乾燥機に〔クルル〕って名前を付けてる事もね]

 

 

話し終えるとアルメは手元のバッグから奇妙な形の銃を取り出し、引き金を引いて虹色の光線をユナ隊員に向けて照射した。

 

 

「うっわ!な、何じゃこれ!?」

 

 

得たいの知れない気持ち悪さを感じ取ったユナ隊員は帽子と上着を脱ぎ捨てた。帽子で隠れてた頭部には二本ののウマ耳が生え、腰の辺りにはふさふさの尻尾が生え、着ているシャツには『トレセーン!』という字がプリントされていた。実はユナ隊員は自身がウマ娘である事を隠して防衛隊員として活動しているのだ。そして彼女はトレセン学園に通っていたウマ娘で、ルドルフ隊長の後輩であった。彼女がウマ娘である事を隠す理由は猛バと恐れられた自分を隠す為だった。そしてクルルが誰も操作していないのにも関わらず勝手に乾燥した洗濯物を外に放り出した。

 

 

「何や、これ…?」

 

[クルルから君へのメッセージさ、乾燥機にも洗濯機にも、外を走る車やバイクにも、カナン星の定義では全ての機械に感情が宿っている。とても強い負の感情がね]

 

 

カナン星人アルメの話は〔地球人の定義〕ではあまりにも奇想天外なものであり、受け入れ難いものであった。

 

 

[考えてもみてよ!高い能力があるのに地球人にこき使われる、それって凄い苦しみだよ!クルルだって24時間働き詰めの上に君のボヤキを聞かされて、かなりストレスだったんじゃない?]

 

 

なんてアルメが言いながらクルルを愛おしそうに撫でると、クルルがまるで応答するかのように発光した。

 

 

「…!」

 

 

全ての機械には感情が宿っている…にわかには信じ難いものだが、目の前で見せられたらこればっかりは信じる他ない。

 

 

[この〔オーロラ光線〕はそんな負の感情を呼び出覚まし、彼らを操る事が出来るんだ]

 

 

アルメは先程の銃を構えて胸を張って得意気にそう言った。

 

 

「操る…?連続してる暴走事故って…!」

 

 

それを聞いたユナ隊員は最近の機械の暴走の背後にいる犯人が、目の前にいるエイリアンだと理解した。

 

 

[さっすが、鋭い!そう、あれは僕がやった。これから行う地球侵略のテストとしてね]

 

 

そしてアルメはあっさりと肯定し、恐ろしい計画の遂行を自白した。

 

 

「私がSKaRDって知ってて、何でそんな事教えんねん!」

 

 

だが防衛隊員であるユナに計画を打ち明けるのはアルメにとってはデメリットのはず、ユナ隊員がさらに問い詰めると、アルメは語り始めた。

 

 

[もうすぐオーロラ光線が地上を覆い、世界中の機械が反乱を起こす。その時に一役買って欲しいんだ!君と、アースガロンに!]

 

 

アルメの目的…それはSKaRDの所有する特戦獣・アースガロンの強奪であった。

 

 

 

 

 

{顔を見ただけ?}

 

 

一方、ルドルフ隊長は、恐ろしい魔の手が迫っているなど露知らず、ユナの対応に困っていた。ルドルフ隊長はスマホでヤスアキ副隊長に助けを求めた。

 

 

「ん?まぁ…」

 

{トマトを預けたのは彼女と話して欲しかったからですよ}

 

「いや、それが何というか、取り込み中だったみたいでね…」

 

{じゃあ、わざわざ行ってトマトを渡しておしまいですか?}

 

「ん、ん~…」

 

 

ルドルフ隊長は気まずそうに手元のトマトぎっしりのバッグを見た。

 

 

 

 

 

場面を戻し、ここは緊迫した様子のコインランドリーの店内。

 

 

[地球侵略に先だって、僕はずっとSKaRDを調査していた。アースガロンは最高の兵器だ。地上の制圧に大いに役立つ。そう思った]

 

 

かつての怪獣レヴィーラとの戦闘において、アースガロンは新型殺菌剤〔FK1〕をアンプル弾に搭載し、レヴィーラの体内に直接撃ち込み撃退。あの時アルメはその様子を戦闘区域から少し離れたビルから双眼鏡で見ていた。そこでのアースガロンの活躍を見たアルメは例の計画を思い付いた。

 

 

[でも気づいたんだ。彼の性能を100%発揮させる為には、最高の腕を持つ君が居なければ駄目だって。オーロラ光線は照射済み。アースガロンは合図一つで僕の元へ駆けつける]

 

 

秋田県での怪獣ドルゴとの戦いの裏でアルメは暗躍していた。ピクニックを楽しみつつ片手間にアースガロンにオーロラ光線を照射していたのだ。ドルゴとの戦いでアースガロンの動作が一瞬だけ停止したのはアルメのせいだった。

 

 

[後は君が仲間になってくれたら完璧さ!あっ!]

 

 

ここで何かを思い出したかのようにアルメは自分の背後にあるバッグから何かを取り出した。それは自分が着用しているのと同じ金と黒の縞々模様の服。

 

 

[さあ!僕と一緒に来なよ(着なよ)!グフフッ、どうだい?「一緒に来なよ」と「服を着なよ」を掛けてみたんだけど、分かったかなぁ~?]

 

 

やってることはとてもシリアスだが、この状況でダジャレを言うアルメの精神は図太かった。

 

 

「…おもんな」

 

 

それを聞いたユナは呆れながらボソッと呟いた。

 

 

[いや~!この星の、この国の言語って実に興味深いね!あははははははははっ!!]

 

 

ユナ隊員が自分の話に乗ると思っているのか、アルメは大爆笑していた。

 

 

「私の…、私の答えは、これや!!」

 

 

ユナ隊員はズボンのポケットに差していた〔23式電磁拳銃〕を手にし、アルメに向けた。しかし…。

 

 

「えっ…?」

 

 

引き金を引くことが出来なかった。

 

 

[さっき、オーロラ光線を浴びただろう?]

 

 

アルメの声は先程までとは一変して感情のない冷たい声になった、オーロラ光線を浴びたせいで23式電磁拳銃も作動しなくなってしまったのだ。

 

 

[君の気持ちは分かった]

 

 

アルメが指を鳴らすと、クルルから光が放たれて空間に門が形成された。あのオーロラ光線の効果なのか、クルルは転送装置として機能しているようだ。

 

 

[君ならきっと、負の感情を持ったアースガロンとも上手くやれたのに…残念だよ]

 

 

洗濯物を入れていたバッグを持ってアルメは門の向こうへ立ち去った。

 

 

「待てっ!!」

 

 

ユナ隊員は思わず追いかけようとしたが、ここでタイミングの悪い事に、コインランドリーに来た壮年の男性と鉢合わせた。かつて競走バ時代に猛バと言われ周りから恐れられた時の恐ろしい顔をしていたユナ隊員を見た壮年の男性は表情を凍らせ、後退りしながら去っていった。

 

 

「…」

 

 

ユナ隊員はすぐに表情を普通にして服を着て尻尾を隠し、帽子を被って耳を隠す。クルルに問いた。

 

 

「なあ、クルル。奴は『負の感情』って言うてたけどホンマにそれだけなんかな?私、いつも君に会うのが楽しみやったんや。何て言うか、友達みたいに思ってたんよ。だから悩み事ばっか聞かしちゃって、もしそれがストレスになってたんなら、ごめん。けど…、もし良かったら、助けて欲しい!」

 

 

ユナ隊員は、友としてクルルに必死に頼み込んだ。

 

 

「お願いや、クルル!奴の所に連れて行ってくれ!」

 

 

アルメを止めるには今、自分が動かなければならない。だから助けて欲しい…。ユナ隊員の祈りが通じたのか、クルルは発光して作動し始めた。そして空間にゲートを形成。

 

 

「ありがとう、クルル!」

 

 

クルルに感謝して、ユナ隊員は23式電磁拳銃を調整した。

 

 

「ユナ!」

 

 

そこへ、引き返してきたルドルフ隊長が姿を見せた。ゲートを見てルドルフ隊長は驚いて目を丸くしていた。

 

 

「これは…」

 

「宇宙人の侵略計画です!アースガロンに注意してください!」

 

 

ユナ隊員は手短に状況を説明し、ゲートに飛び込んだ。

 

 

「ユナっ!!」

 

 

 

 

 

転送された先にあったのは、海岸近くに設置された一機の風力発電機。恐らくだがこの風力発電機はアルメが侵略基地をカモフラージュしたものだろう。ユナ隊員は意を決して、風力発電機に似せた侵略基地へ向かった。

 

 

[@":#、・:〇\~∥^〇゛゜](訳 これより30分後、オーロラ光線をフルパワーで放出)

 

 

その侵略基地の内部ではあのアルメが地球侵略計画を進めていた。隣にいるもう1体のカナン星人の名は〈ロル〉、見たら分かる通りアルメの仲間である。

 

 

「;@%&#_;∥´―※▲♭︎†□♯︎△‡」(訳 約2時間で日本列島を覆い、28時間後には全世界に拡散)

 

 

「■●◇△&〒*%:※|~-◇†♭︎」(訳 アースガロンを呼べ、その間、この基地を護衛させる)

 

 

「*#◆&」(訳 了解)

 

 

アルメの指示を受け、ロルは手元の球体状のコンソールを操作した。

 

 

 

 

GGF教江野基地・アースガロン格納庫にて

 

 

 

遂に恐れていた事が起きてしまった。オーロラ光線の影響でアースガロンが暴走し始めたのだ。普段は青く発光するアイパネルも赤く発光し、瞳が描写されていない。まさにこれは怒れる機械獣だ。

 

 

「「「「うわああああああっ!!」」」」

 

 

整備隊員達は一目散に避難。アースゲートも勝手に開き、アースガロンは勝手に飛び出そうとしていた。

 

 

 

 

 

下町のコインランドリーにて

 

 

「え、え~っと…」

 

 

その頃ルドルフ隊長は目の前の乾燥機・クルルに話しかけようとしていた。

 

 

「クルル、君?いや、クルルちゃん?かな?頼むからユナの居場所を教えてくれない、かな?」

 

 

ルドルフ隊長は腰を低くしてクルルに頼んだ。しかし応答はない。

 

 

「お願いだ!クルル様!いえ、クルル殿!何卒ーっ!」

 

 

乾燥機に土下座するいい歳したウマ娘、傍から見れば明らかに変人。だが今はそんな事を気にしている場合ではない。ルドルフ隊長はクルルに必死に頼み込んだ。するとクルルは発光して起動、ルドルフ隊長の必死の願いが通じたようだ。乾燥機の蓋のガラスにあの風力発電機が映し出され、ルドルフ隊長はそれを凝視。同時にルドルフ隊長のウマホが着信を知らせ、ルドルフ隊長はそれを手に取って通話ボタンを押した。

 

 

「こちら、ルドルフ!」

 

{こちら、ヤスアキ!緊急事態です!アースガロンが勝手に動き出し、格納庫から外へ!最高速で移動中!}

 

「進行方向は裾ヶ先海岸方面、そうだろう!?」

 

{何故分かったんですか!?}

 

「SKaRD、出動だ!!」

 

 

 

 

その頃、ユナ隊員は密かにカナン星人達の侵略基地のコントロールルームへの侵入に成功した。アルメとロルはユナ隊員の存在に気づいていない。手元の23式電磁拳銃を触ると問題なく起動した。

 

 

「やっぱりや、基地内ではオーロラ光線を無効化してる」

 

 

23式電磁拳銃が使えることを確認すると、ユナ隊員はアルメとロルに向かって走りだし、そして23式電磁拳銃を彼らに突きつけた。

 

 

「動くな!」

 

[うっ!?]

 

「手ぇ上げて、装置から離れるんや!」

 

 

アルメとロルに投降を促すユナ隊員、ロルは大人しく手を上げたが、アルメは手を上げた直後に指を鳴らした。するとユナ隊員の周囲の景色が一変、これはホログラムだ、映し出された映像には吹雪に晒された荒廃した市街地が映っていた。

 

 

[これが僕らの故郷。戦争を繰り返したせいで、この有り様さ]

 

 

これは荒廃したカナン星を映したもののようだ。

 

 

[地球が欲しくなる気持ち、分かるだろう?]

 

 

星を荒廃させたのは自分達なのに、その責任も取らずに他者の惑星を奪おうとするとはあまりにも身勝手なもの。すると、明後日の方向から何かが飛んできた。

 

 

「っ!?」

 

 

ウマ娘特有の非常に優れた感覚でそれを感知した事により、攻撃を回避したのはいいもののユナ隊員はそのまま体勢が崩れて倒れた。どうやらロルが光線銃で銃撃してきたようだ。ユナ隊員は負けじと23式電磁拳銃から電磁誘導弾を撃つ、弾はロルに命中し、ロルは姿が消えた。だがアルメの姿が見つからない。

 

 

[形勢逆転だね。いいもの見せて上げる]

 

 

アルメはいつの間にかユナ隊員の背後に回り込み、光線銃を突きつけた。それに気づいたユナ隊員は手を上げて降参の意思を示した。アルメは指を鳴らした後にユナ隊員の手から23式電磁拳銃を奪い取った。ユナ隊員は立ち上がり、映し出された映像を目の当たりにした。そこにはこちらへ向かって高速飛行するアースガロンと、同じくこちらへ急行する車両・SKaRD MOPが映っていた。

 

 

「アースガロン!皆!」

 

 

 

 

 

「今のアースガロンは緊急用の遠隔操作も受け付けません」

 

「司令部は不測の事態に備え、既に攻撃準備を開始」

 

「その前に、必ず私達の手で止める!」

 

 

対策としては、アースガロンより先にカナン星人の侵略基地に乗り込んで制圧、アースガロンのコントロールを奪還といったところだろう。だがここでSKaRD MOPの近くにアースガロンが着陸、仲間であるはずのSKaRDの面々を排除すべき敵と認識させられているようだ。全力で疾走するSKaRD MOPだが、アースガロンに追い付かれてしまい、アームで掴み上げられてしまった。

 

 

[ほら、よくご覧。仲間達の最後の姿を…!]

 

 

アースガロンがSKaRD MOPの車体を上下に軽く振るだけでも車内は大混乱。アースガロンはSKaRD MOPに向けて荷電粒子砲〈アースファイア〉を放とうとするが、何故か動力停止。仕方なくアースガロンはSKaRD MOPを放り投げた。普通の車なら車体が大破して搭乗者は全員死亡になるところだが、そこは流石の改造車、強化ガラスが衝撃に耐えきれず割れる被害は出たものの車体は無事で、中にいる4人も無事だった。

 

 

「ゲホゲホッ!はぁ、はぁ…」

 

 

ルドルフ隊長はSKaRD MOPからよろめいて出てきた。

 

 

「おーい、アースガロンッ!撃つなら私を撃てっ!」

 

 

ルドルフ隊長はアースガロンを挑発、どうやら囮になるつもりだ、アースガロンはルドルフ隊長に近づく。

 

 

「こんな小さな的を撃てるかい!?ほらっ!こっちだ!」

 

 

ルドルフ隊長はそう叫んでSKaRD MOPから距離を取るべく走り出した。アースガロンが後を追う。

 

 

「ルドルフ隊長ーっ!!」

 

 

ルドルフ隊長はある程度、SKaRD MOPから距離を取った。だがここでアースファイアに吹き飛ばされた。

 

 

「うぅっ!」

 

 

ルドルフ隊長はその場に倒れ込んだ。アースガロンは眼前に迫ってアースファイアを放とうとした。だがその時、ルドルフ隊長の命の危機を察したのか、ルドルフ隊長の左腕にブレーザーブレスが出現。ルドルフ隊長はブレーザーブレスのスリットにブレーザーストーンをセットし、逆の位置にあるスイッチを右掌で押した。するとルドルフ隊長は光に包まれ、ウルトラマンブレーザーが出現した。

 

 

『ルウウウウウウオアアアアアアアアイッ!!』

 

ドガァッ!

 

 

アースガロンのほぼ真下から出現したブレーザーは飛び出した勢いでアースガロンを海へ殴り飛ばした。ブレーザーも飛んできて海面に立つ、本来ならば共に戦うべき仲間であるはずのブレーザーとアースガロン、望まぬ戦いが今始まった。

 

 

「ウルトラマン!」

 

[現れたな…!アースガロン!始末しろ!]

 

 

アルメの命令を受けてアースガロンはブレーザーに突進、ブレーザーは何とか押さえ込もうとするが後ろに押された。パワーではアースガロンの方に軍配が上がるようだ。ブレーザーはアースガロンの頭部に肘打ちをかますが、逆に腕を痛めてしまった。そこで頭部を押さえ込んだまま、連続で膝蹴りをアースガロンの装甲の隙間に叩き込む。だが今度は足をとられて転倒させられてしまう。尾部の攻撃がブレーザーを打ちのめしていく。

 

 

[ハハハ…!アースガロン、やっぱり君は最高だ!だろう?]

 

 

アースガロンの性能を見てアルメは満足げになり、そのままユナ隊員に問いかけるがそこにはもうユナ隊員の姿はなかった。

 

 

[あれ?]

 

 

 

 

アルメの元を離れたユナ隊員は、風力発電機の展望デッキ部分に来ていた。眼前でブレーザーとアースガロンが激しい戦闘を繰り広げている。

 

 

「止めてーっ、アースガローンっ!君の敵はウルトラマンやない!!」

 

 

アースガロンに向かってユナ隊員は必死に叫ぶ、機械に感情があるなら、アースガロンにも感情がある。そう信じて、アースガロンの心に必死に呼びかけていた。

 

 

「君の役目はそんな事ちゃうやろーっ!!」

 

 

両腕のアースガンに口内のアースファイア、兵装をフルに活用してブレーザーを追い詰めようとするアースガロン。ブレーザーはアースガロンの右腕を掴んで押さえるもアースガンの乱射は止まらない。そして流れ弾の一発が、ユナ隊員がいる風力発電機の展望デッキ部分に当たってしまった。

 

 

「うわああああああああああ!!」

 

 

それによりユナ隊員は落下していった。

 

 

「アースガローンッ!!」

 

『ハッ!!』

 

 

ブレーザーはユナ隊員の落下に気付き、彼女を助けようと駆け出した。

 

 

「「ユナさんっ!!」」

 

 

ブレーザーは必死に手を伸ばすが僅かながらに届かない。ユナ隊員が地上に激突しそうになった寸前、別方向から伸ばされた機械の手がユナ隊員を優しく受け止めた。それはあのアースガロンのアームだった。赤く光るアイパネルは青く光り、瞳が映し出される。その直後にアースガロンは緊急停止した。ユナ隊員の必死の叫びがアースガロンの心に届いた瞬間であった。

 

 

 

 

[どうした!?戦え!戦うんだ、アースガロン!]

 

 

アルメは必死にアースガロンに命令を飛ばすが、自ら停止したアースガロンはそれを二度と受け付けなかった。〈機械には感情がある〉とアルメは言った。だが人間と同じように機械にも負の感情だけでなく正の感情があった、正しい心で紡がれる繋がり〈絆〉。アルメはそれを全く信じず、機械達を都合の良い道具だと見下していた。その傲慢さが作戦の破綻の一番の原因であった。ブレーザーは映像越しに怒りを込めてアルメを睨み付けた。

 

 

[くっ…!]

 

 

アルメは思わず光線銃を構えるがそんなものではブレーザーを倒せはしない。侵略計画は失敗したと判断したアルメは風力発電機に擬態した侵略基地を竹とんぼのような形の宇宙船に変形させ、飛び立った。地球外に逃亡する気なのだろう。

 

 

『ルオオオオオオオオオオオオッ!』

 

 

だがそれをブレーザーは逃がしはしなかった、右掌から光槍〈スパイラルバレード〉を形成し、スパイラルバレードを握ると360度以上、一周以上回って思いっきり捻り上げた、人体の構造上絶対不可能な芸当だがウルトラマンという常識外れの生命体であるブレーザーには可能だった。ブレーザーは元に戻る力を利用してスパイラルバレードをカナン星人の宇宙船めがけて思いっきり投げ飛ばした。スパイラルバレードは途中でカッター状に変化し、カナン星人の宇宙船を真っ二つに割った、その後にカナン星人の宇宙船は空中で爆散、中にいたアルメは断末魔を上げることなく爆死し、裾ヶ崎海岸の上空には美しいオーロラがかかった。ブレーザーは顔を上げ、オーロラが揺らめく空へ飛び、高速で彼方の方へ飛び去った。ヤスアキ副隊長達は風力発電機の近くで満足げに笑い、ユナ隊員はアースガロンを見上げて笑顔を見せた。

 

 

 

 

事件が終わり、ルドルフ隊長とユナ隊員は今回の影のMVPである乾燥機・クルルの手入れをしていた。

 

 

「助かったよクルル。ありがとう。…あぁ、光線の効果はもう切れたか」

 

 

ルドルフ隊長の言葉通り、いくら話しかけてもクルルは反応しなかった。元の、ただの乾燥機に戻ってしまったようだ。

 

 

「仕事が好きだと、つい許容量(キャパ)を超えて抱え込んでしまう事、私もよく分かるよ。だが私達はチームだ。今後は気兼ねなく相談してくれ、クルルにだけじゃなく」

 

 

「はい。でも、また無理しちゃいそうやなぁ、アースガロンとも早よ仲良くなりたいし」

 

 

ユナ隊員は断れないウマ娘。だがそれが彼女の良いところなのだろう。

 

 

「ん?もうバッチリだろう?」

 

「えっ?助けてくれた事っすか?」

 

 

ユナ隊員が質問するとルドルフ隊長は黙って頷いた。

 

 

「でもあれは私の声が届いたのか、単なる誤動作だったのかハッキリしませんし…」

 

「君の声が届いたんだよ」

 

 

ルドルフ隊長は真面目な表情でそう答えた。

 

 

「そうですかね…。仲良くなりたいです!クルルとみたいに!」

 

 

ユナ隊員が笑顔でそう言うと、クルルの内部からドラムが作動した音が聞こえた。それはまるでユナ隊員に同意しているかのようだった。

 

 

「…聞こえてるようだ」

 

「え~、そうなん?クルル~!」

 

「クルル~!」

 

 

笑い合いながらルドルフ隊長とユナ隊員はクルルの手入れの続きをするのだった…。

 

 

~ED : BLACK STAR

 

 

 





予告ナレーション「怪獣研究の第一人者・赤坂和典教授。シンボリルドルフとかつての恩師が再開する時、未曾有の大事件の幕が上がる」

予告ナレーション「次回、赤と青の螺旋 『虹が出た 前編』 天に数多の虹が輝く時、それは現れる」
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