極地戦の極み   作:夜かな

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買い物

 

 ケープタウン、アフリカ南端にある港湾都市である。第二次ネウロイ戦役時には統合軍の重要な拠点として機能していた。

 

「凄い、人が沢山集まってる。見に来てる?」

 

 宗谷が埠頭に接舷するタイミングで蓮はデッキに上がると大勢の人が集まって港に押し寄せて来ていた。人種を問わず幅広い国々の人々が歓迎している。

「どうやら、他国の観測船も同じタイミングで入港しているからみたいですね。ほらあれです」

そう言って犬居が指差した先にはオラーシャやリベリオン、カールスラントの国旗を掲揚している船が埠頭に停泊していた。

「なるほど、それでか」

蓮は頷いて納得した。

 

 乗組員たちが埠頭に向かってロープを投げてそれを受け取った人が特殊な結び方で、映画とかで水夫がカッコつけて足を置いたりする所、に固定していく。何ヶ所か結ぶとタラップが降りて埠頭に降りれるようになった。

 

 その光景を見ていた所で蓮は犬居に話しかけた。

 

「犬居、市街地に行ってみよう。艦長...じゃなくて船長に許可は貰ってるから」

 

「えっ?い、いやでもお世話もありますし.....さすがに」

 

 適当な言い訳を口にして遠慮する犬居。蓮は至近距離まで近づくとわざと上目遣いで見ながら「だめ、かな」と小首を傾けるトドメの一撃をぶち込んだ。

 

 

 ケープタウンの港町は祭りの様相を呈していた。結局蓮のお願いには勝てなかった犬居は一緒に行くことにした。

 犬居は生まれてから一度も扶桑から出たことはなく、シンガポールでは街に降りたりもしなかったので初めて異国の地に足を踏み入れた。だからか緊張した様子。でも物珍しいものばかりであっちを見たりこっちを見たりと忙しない。その初々しい様を周りの人々は可愛らしいものを見る目で見ていた。

 

 少しでも離れてたら迷子になりそうな犬居を歩くペースを合わせながら、時々フラフラ〜となるのを引っ張っては一緒に歩く。どうも街は祭りがあるのか若しくは日常なのか道には屋台が並び活気に溢れている。

 蓮は屋台に寄ると店員に二つの物を詰めて貰う。そして犬居に近づくと一つを手渡した。

 

「この街の名物なんだって、すごく美味しそうだよ」

「わっ、ありがとうございます。干し肉ですか? んっ......柔らかくんて食べやすいですね」

 

 ビルトン、保存食のようなものでビーフジャーキーに似ている。今回蓮が買ったのはスライスしてチップスのように食べやすくしたもの。

 

 二人はビルトンを食べながら街を散策する。時折り蓮が屋台に寄っては食べ物を色々買ったり、袋いっぱいの食材を買っては犬居が荷物持ちをする。

 

「それにしてもなんだがお祭りみたいな雰囲気ですね?何かあるんでしょうか」

「ごっくんっ......ん、ああ、それは......」

 

 蓮が何か言う前に通りの先で人が集まって何か盛り上がっていた。もっと言うなら中心で誰かが揉めていた。

 

「喧嘩でしょうか?それにしてはなんだか盛り上がっているようですけど」

「少し気になる。見に行く」

「えっ?ちょっ、喧嘩に巻き込まれたら大変ですよ」

 

 犬居が群衆の中に入って行く蓮を引き止めようとしたが、人が多くて更に荷物で両手が塞がっていたので出来なかった。

 

 群衆を掻き分けて、というか背丈の小ささを活かして蓮は中心にでるとそこには、

 

「あのさぁ、ウラルの田舎者がおんまり図に乗るなよ。先に極点に行くのはウチらリベリオンだから」

 

 扶桑人の女子平均より遥かに背が高い、革ジャンを着た金髪美人のリベリオン人と、

 

「ウラルっていつの話よ、無駄にデカいその脂肪に脳味噌吸われて頭チキンなのかしら?そのお粗末な頭程度じゃ極点に着く前に永久凍土の氷像になるのが落ちよ」

 

 逆に平均より小さい、ジャケットを着てストッキングまで履いた髪も肌も真っ白な美少女のオラーシャ人。

 

 睨み合うおそらくウィッチと思われる二人が居た。あまりに背丈がかけ離れているので絵面はライオンと猫である。

 

 二人は盛り立てる周りの勢いに載せられたのもあるのか、さらにヒートアップしていく。

 

「はっ、今だってほとんど変わってねえだろ。結局は出遅れて先遣隊だってまだ送れてねーじゃないか。諦めてうちらの後からついて来りゃ良いのさ」

 

「あら、それは貴方達と違ってちゃんと準備して来たからよ。普段から氷の海には慣れているもの、備えるのは当然よ?力に頼ってばかりの貧弱軟弱な貴方達は威勢だけは良い見たいだけど......氷海にハマって動けなくなる未来が見えるわね」

 

「なんだと、もういっぺん言ってみろ」

 

「これだからヤンキーって野蛮ね」

 

 遂にはお互いの顔が近づくだけの至近距離にまで迫り、いつ殴り合いを始めてもおかしくない、

 

「......口だけヤンキー娘と生意気チビ娘か」

 

 ボソッと呟いた蓮の一言、掻き分けて進んだ結果いつの間にか二人の近くにまでいたことが災いして、それを聞いた二人の視線が蓮に集中する。

 

「あっ、やばい聞かれちゃった......つい本音が」

 

 視線に気づいた蓮は、適当に口を手で塞いだ。余計なことを付け加えながら。爆発寸前の火薬庫に火と油を注いだ。

 

「へぇ?いうじゃん」 「誰がチビですってぇ」

 

 二人は蓮をマークした。蓮は急いで逃げようとするが両肩をしっかりと掴まれてしまい逃げられない。

 

「おい待てよ逃げんなって、てめぇ同類だろ?話そうぜ」

 

「まぁまぁ待ちなさいな。まずは自己紹介からしましょう、お話はそれからよ」

 

 力強く掴まれているせいで逃げることは出来ない。そう悟った蓮は渋々振り返って逃げるのを諦めた。

 

 

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