忘れかけてた夢をもう一度 作:シーブック マクロスを生涯推す
俺は一般限界サラリーマン。
ペーパーレスが進んでいる昨今、いまだに紙ベースを突き進める弊社において、残業と戦う毎日を送っている。一時期ペーパーレス促進運動が進められていた弊社であったが、社長による「やっぱり紙の方が楽」という悪魔の一言によって見事に取り消されてしまった。おかげさまでここ最近残業続きだ。
こんな俺を支えてくれるのが上手い酒である。
20歳の時にはそこまで好きではなかったビールも、10年以上の付き合いになっている。
ここ最近出来たいつもアホ毛がはねてる後輩も
「こんな仕事飲んでなきゃやってられません!」と飲みに行くたびにビール片手によく叫んでいる。やはり酒は良い。
今日は久しぶりの休日のため、酒が上手く飲めそうなグラスを探しにリサイクルショップに行くつもりだ。リサイクルショップは良い。
掘り出し物を探せるし、良い時間潰しにもなる。
近所にあるリサイクルショップは、俺が小さい頃から世話になっている年季の入った店だ。
そのため自動ドアなんてものはなく扉を開けると大きなベルの音が鳴り響く。
「いらっしゃいませ〜ってまた君なのかい?
他にもお店はあるだろうに。今日は休みかい?」
気怠そうな店主が読書をしながらそう話しかけてくる。1人でこのお店を切り盛りしているとは到底思えないくらいのやる気のなさと、緩いBGMによってこちらも脱力してしまう。
「今日は良い感じのグラスを買いに来たんですよ」
「グラスねぇ...そういえば面白そうなのを見つけて来たから見てみるかい?」
やる気はないこの店主だが、全国各地を定期的に旅しており、個人的にピンとくる商品を見つけてくる。その見つけてくる商品のセンスが偶然俺と相性抜群であるため、俺はお願いしますと返事をしていた。グラスを探してくれている間に店の中をブラブラすることにする。
個人的にお気に入りなのが特撮コーナーだ。
店主曰く、「創意工夫によって、物語りを生み出せるのは、人の特権である」らしく、かなり力を入れているようで、他のリサイクルショップよりも多くの商品が常に陳列されている。
「おっ?」
ふと置かれているワゴンに目が入った。
そこには早い物勝ちとPOPが付いている商品が多く入っていた。いつもは人気があるため商品が無いことが多いのだが、今回は運が良かったのだろう。俺の琴線に触れる商品が多すぎたのである。
「いやーやっと見つかったよ!待たせたねって、どうしたんだい?」
思わずワゴンの前にしゃがみ込んでいた俺に向かって店主が話しかけていた。どうやら夢中になって商品を眺めていたらしい。
「今回のは自信があってね、
各地から探し出してきた掘り出し物ばかりさ!どうだい?お眼鏡にかなったかな?」
かなり自信満々の店主、ここしばらくお店が閉まっていたのはこれらを探しにいくためだったのか!
俺は興奮のあまりただ首を縦に振るのみだった。
「ありがとう。本当に奇跡だと思うよ、
これは僕がのめり込んだ原典。
だけど僕はこんな狭いお店でディスプレイされ続けているよりも、大切にしてくれて、心から楽しんでくれる誰かの手に渡ってくれた方がいいと思うんだよ」
そして俺の肩に手を乗せると
「僕はもう歳をとり過ぎてしまった。
心から楽しめるほどの熱も燻ってきてしまった
だからこの商品達を君に貰って欲しいんだ。
昔から見て来ていた君になら安心して任せられるだろうからねぇ...」
「いやでもお金が無くて...」
「いいやお金なんていらないんだ、
ただ僕が君に託したいんだよ
僕と同じウルトラマンを愛している君に」
いつにもまして真剣に語る店主に何も言い返せずにいると、店主の両目から涙が溢れていることに気づいた。
大の大人がこんな俺のために涙を流してくれている。店主はここまでの決断を出すのに、大いに苦しんだろう。だってこれは店主にとっての原典なのだから。それを他人に、ましてや俺に譲ると言っているのだ。
それは店主の半分も生きていない俺でさえも分かること。なら俺がやることは一つしかないだろう。
「分かりました。大切にさせていただきます!」
力強く店主の目を見てこの言葉を告げたのだった。
店主から託された物は皆様ご自身でご想像された物になると嬉しいです。