彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ 作:XX(旧山川海のすけ)
「ウォォォ……オッ、オレ……腹減ッタ……ニグ……」
ダラダラと涎を垂らして俺たちを見るその化け物。
コイツ……悪魔って奴か。
悪魔って会話をすると仲魔にできるって確かアプリに……
そう思い俺は、一歩踏み出し、話し掛ける。
「……お腹が空いているのか?」
会話ができるのであれば、なんとかなる。
俺にはその自信があった。
ちょうど俺の上着のポケットに、プロテインバーが入っていた。
筋トレをしてる関係上、定期的に食おうと思ってて。
入れてたんだよ。
これを食べさせて、交渉をしてみる……
そう思い、俺がポケットに手を入れた瞬間だった。
「ニグウウウウ!」
悪魔が襲って来たんだ。
その口を限界まで開いて。
牙がずらりと並んだその口で俺の腕に噛みつこうとする。
それに驚き、俺は身を引こうとした。
だけど
その前に、ミキが割り込んで来て
悪魔を引っ掻いたんだ。
ただ、その引っ掻きが……
猛獣の爪の一撃を思わせたんだ。
今の彼女は人間ではない。
「グギャアアアア!」
悪魔の悲鳴。
ミキはそれだけで終わらせず、悪魔に組み付いて……
その首筋に噛みついた。
その瞬間、悪魔が動かなくなる。
噛みつき……
そしてそのまま。
ミキは悪魔に馬乗りになって、爪の攻撃を悪魔相手に連打して。
数十秒で、悪魔は塵になった。
「……ヨータ。危なかったね」
そう言って、振り向く彼女。
俺は
「あ……ありがとう」
驚きはしたけど、恐怖は無かった。
助けて貰っておいてそんなことを思うのは、自分勝手過ぎる。
そういう思いが根底にあったからかもしれない。
……言い直す。
多分、恐怖は無かった。
見ると、ミキの太腿の下に何かが転がっていた。
俺は
「ミキ、ちょっとどいてくれ」
そうお願いし。
立ち上がった彼女の足元から、それを拾い上げる。
それは……
「ナイフ……」
明らかに戦闘用のナイフ。
いわば、アタックナイフだった。
……おお。
なんてことだ。
ミキに悪魔を倒して貰って、ナイフが手に入った。
運動部の部室に武器を貰いに行かなくてもよくなった。
なんというか……ツイてる。
俺はナイフの刃をハンカチで包んで、そっとそれを制服の上着の内ポケットに隠し
鞘が欲しいな。
そう思った。
よし……
「ミキ、異世界に行こう」
覚悟が決まったので、そう呼びかける。
ミキは頷いてくれた。
また、人目につきにくい階段の踊り場で。
俺はイセカイナビを起動する。
イセカイナビが指し示す、5つの精神世界持ちの人間。
そのうち、一番最初に名前がある
……これを選んだのは、名前が一番上だったからだ。
俺が最初に選択し、結果ミキをゾンビにしてしまった精神世界の持ち主の
これ、多分偶然じゃ無い。
上から順に、段階的に精神世界の危険性が上がっていく。
多分、そういう意味合いなんじゃないだろうか?
一応、根拠はある。
表示されている順番に規則性が無いんだよ。
名前しか書いて無い。
五十音順でも無いし。
年齢順でも無い。
鴨志田充は倫理の先生の名前だし、大岡素一郎は校長の名前だったはずだ。
鴨志田先生はまだ若い先生で、校長よりは絶対に年下。
なのに校長の下に学生の名前が書いてある。
これを年齢順と考えるのには無理がある。
まぁ、一番そう思った理由はそこには無いんだけどな。
俺が疑いを持った理由。
……それは
このアプリに、迂闊な使用者をハメようとする悪意があるような気がするからだ。