彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ   作:XX(旧山川海のすけ)

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第20話 宝物庫の中身は……

 さて、行こう。

 

 その意味を込めて。

 彼女から離れて、宝物庫の番人の妖獣ワイラに向き直る。

 

 ワイラはなんかボケーッとしていた。

 

 本当に番をする気があるのか?

 宝物庫の番人なんだろ?

 

 ……理解に苦しむ。

 

 

 でも、倒さないと話が進まないし。

 気にするところではないな。

 

「ネコマタ、グーラー、頼む」

 

 俺の言葉に

 

「ウニャー!」

 

「分かったわ」

 

 それぞれそう返し。

 

 突っ込んでいく。

 赤い色の妖獣に。

 

 で

 

 ニャーと叫びつつネコマタがその手の爪でワイラの身体を引き裂き。

 グーラーも引っ掻いて、ワイラを麻痺させ。

 

 麻痺したワイラを一方的に、ぶっ殺した。

 

 1分掛からず、塵になって消えていく。

 

 グオオオオ……

 

 断末魔の最期の声を残して。

 

 ……マジ?

 

 弱すぎんだろ……

 

「なぁピクシー、ここ、本当に宝物庫なんだよな?」

 

 一応訊いてしまう。

 不安になったので。

 

 すると

 

「うん。宝物庫だよー」

 

 間違いない、とピクシー

 

 俺は

 

「……扉に罠が掛かっていたりしないか?」

 

「知らなーい」

 

 ……ものすごく不安になる。

 

 もしそうだったら困るが……

 

 見抜く術がないからな。

 

 俺はそこで言葉を切って

 

「……よし」

 

 覚悟を決めて、思い切り宝物庫の扉を押した。

 

 

 

 宝物庫の扉は特に抵抗なく開き。

 同時に

 

 俺の頭の中に、イメージが流れ込んで来た。

 

 

 

 ……僕は、ずっと教師になりたかった。

 

 小さい頃から、教室に立つ自分を想像してた。

 黒板の前に立って、生徒たちに勉強を教える。

 生徒たちに、人間として正しい方向を指し示す……それを夢見ていた。

 

 剣道だって、インターハイまで行った僕の誇りだった。

 教師になったら、剣道部の顧問になって、汗と笑顔にまみれた部活を指導するつもりだった。

 

 それが、僕の描いた未来だったんだ。

 

 でも、全部……兄のせいでぶち壊された。

 あいつ、僕に先んじて体育教師になった。

 オリンピックで金メダルを取ったんだ。

 そのツテだった。

 

 なのに……アイツは自分の学校の女生徒に……酷いことをして。

 ある日それが明るみに出て、アイツは逮捕されて実刑判決を受けた。

 

 そこから、僕の人生は一変した。

 

 世間は僕まで同じ目で見るようになった。

 

「あの性犯罪者の弟」

 

「カスの一家」

 

「どうせあいつと同じだ」

 

 そう、皆が噂した。

 

 そして僕の夢が、木っ端微塵に吹っ飛んだ。

 

 教師の採用試験はどこ受けても門前払いだった。

 

 もう駄目かと思った。

 教師の夢は諦めるしかないのかって。

 

 ……それでも、なんとか軽子坂高校で雇ってもらえた。

 

 奇跡みたいなもんだよ。

 だから真剣に、全力でやってるよ。

 そのお陰かな。

 多分、学校からの評価も悪くない。

 

 ……けどさ。

 

 僕は心のどこかで、いつもビクビクしてる。

 まるでジャングルにいるみたいだ。

 

 いつ、どこから「僕の家族の秘密」という猛獣が飛び出してくるか分からない。

 

 アイツのことが、頭から離れないんだ。

 

 そのせいで剣道部の顧問だけは……どうしても引き受けられなかった。

 

 生徒たちにスポーツを教えることで、兄の顔がチラつく。

 お前にはその資格がない。

 

 そう、僕の中の誰かが囁くんだ。

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