彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ 作:XX(旧山川海のすけ)
「えっ」
今のって……
鴨志田先生の過去……?
石の宝物庫の中は空っぽで。
足を踏み入れた瞬間に、さっきのイメージが流れ込んで来たんだ。
「今のって……」
ミキも今のイメージを見たらしい。
ミキも戸惑っている。
鴨志田先生は堅物で、真面目で。
熱い先生だというのが俺たち生徒たちの共通認識だったのに。
そんな鴨志田先生にこんな過去が……
俺としては
同情。
鴨志田先生の兄がクソ野郎なのは疑いないと思うけど
鴨志田先生は関係無いだろ。
別人格なんだから。
……でも
世間はそうはいかないだろうな。
高校生の俺でも、それぐらい予想はできる。
俺が「これは理不尽だ」と思うのも、それはただ単に、本物の鴨志田先生を知っているからだし。
鴨志田先生を知らない人にとっては「性犯罪者の弟」だ。
それ以上の情報は知らない。
だから悪評が立つのは理不尽だけどしょうがない面がある。
「……酷い」
ミキがそう呟くように言う。
俺は
「そうだな、酷いと思う……だけど」
そこで俺は言葉を切り
「別に世界中の人は、目の前の人をキチンと理解しなければならない義務は無いんだよな」
義務が無い以上する必要は無いし。
今、偉そうに言ってる俺だって、多分やれて無いと思うよ。
会った人を「正しく理解しようとする努力」
それで引き起こされる事態で何か起きたとしても。
その責任を持たなければならないのは、決断した側に対する不利益だけ。
鴨志田先生を教師にしなかったせいで、教師の質が下がったとか。
生徒を熱血指導してくれる先生がいなくなった、とか。
鴨志田先生が、子供のころからの夢を危うく捨てなければならなかったことに責任を持たなければならない理由は無いんだ。
俺の言葉に、ミキは黙る。
残酷な世の中のルールに、そうするしかなかったのかもしれない。
だけど
「でもさ」
ミキが言ってくれた。
「これで、この宝物庫の門番が弱かった理由が分かった気がするよ」
さっき感じた疑問の答えを。
「理由って?」
俺は彼女に訊ねた。
それってどういうことなのか。
彼女は
「鴨志田先生は、秘密を抱えるのが嫌なんだと思う。本心は」
その言葉に
あっ、と思った。
そういうことか……
本心としては自分の事情を知って貰いたいけど、言えない。
隠さなければならない。
その気持ちが、あの弱い番人という形で表れている……?
「なるほどな……納得いったよ」
俺はそう言って頷き
「行こう……今度は鴨志田先生の居場所に」
本丸に向かっていった。
スフィンクスが守っているあの場所に。