彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ 作:XX(旧山川海のすけ)
「最低だな」
餓鬼が何を言っている。
そう言われるかもしれないけど。
俺はそれは違うと思うんだ。
自分の仕事が危うくなるからって、理屈に合わない……いや……
正義に著しく反することを選ぶのはおかしいだろ。
そんなことは自分の食い扶持を稼いでから言ってみろ?
そんなことをさ、言われるかもしれないけどさ
それが許されるなら、自分の食い扶持を稼ぐためなら強盗でも人攫いでもしても良いってことにならないか?
大体仕事って何だよ?
他人の役に立つことをやって、その見返りにお金を貰うためにすることだろ?
個室でふんぞり返って、言われたことを適当にこなしながら規定時間居ることじゃないはずだ!
そんな心から出た俺の呟きを
「そうだ最低よ。ならば妾の邪魔をするでない」
ネメシスは不敵に笑う。
笑いながらも、続けてニスロクやビフロンス相手に大剣を振るい、暴れ狂っていた。
そこで俺は
「でもさ」
女神に訊ねた。
自分の剣は下ろしながら。
「このまんま、アンタは校長の精神本体に向かっていくつもりなのか?」
「……何が言いたい?」
ネメシスは戦い続けながら訊き返して来た。
「このまんま、首尾よく校長の精神本体に辿り着いても、校長は多分自分も被害者だって言うぞ? そんな奴を叩き斬って、それでアンタは解決だと思えるのか?」
……正直、俺自身はそれは起こらないと思ってる。
何故って、ここは校長の精神世界だから。
その精神世界で、校長の自責の念の象徴としてここに出現している女神ネメシスが、この世界の主を倒すことができるとはとても思えない。
なのでおそらく、この女神は何らかの理由でそれが達成できないはずだ。
……女神本人は気づいて無いようだけど。
そんな俺の言葉に
ネメシスは考え込んだ。
戦いながら
……強いな。
さすが神罰の女神ってだけあるな……
内心、まともに戦うことにならなくて良かったと思う。
ついでに俺は
「なぁ、そこのハザマくんよ」
偽物のハザマ……校長の考えるハザマに声を掛けた。
そしてこう続ける。
「校長に反省させることで制裁に代えるってことで大丈夫か?」
その言葉に校長の考えるハザマは
ただはっきりと
「許さない」
真顔でその一言。
……なるほど。
校長自身は、このことについてハザマが許してくれるとは思ってないんだな。
「どうしても許せないか?」
念を押して訊ねる。
俺の問いに
「許せるわけが無いだろう!」
やや声を荒げるハザマ。
そこに俺は
「じゃあ、その気持ちを言葉にしてくれ」
そう返した。
すると
ハザマの顔が強張った。……そりゃあ、そうだろうな。
だって、校長にハザマの思いなんて分かるわけがないんだから。
俺の言葉でハザマが頭を抱えた。
「分からない……なんで僕は許せないんだろうか……?」
俺は
それはアンタが本物の人間じゃ無いからだ。
そう言おうとした。
そのときだった。
「なんで僕は……なんで僕は……」
ハザマ……偽物のハザマが
みるみる膨れて、人の形を失っていった……