彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ 作:XX(旧山川海のすけ)
VIPの部屋はかなり広く、天井も高かった。
赤い絨毯が敷かれていて、壁紙は白。
高級ホテルの食堂のイメージ。
そこの中央に丸いテーブルがあり、そのテーブルに山盛りのから揚げ、チャーハン、そしてスープ、炒め物……
見るからに中華料理。
思わず唾を飲み込む。
視覚的にもだけど、香りも食欲を刺激する。
校長の精神本体はそこのテーブルで、スーツの上に白いエプロンをして。
一心不乱にその豪華な中華料理を口に詰め込み、喰いまくっていた。
軽子坂高校校長・大岡素一郎。
頭が縦に長い印象がある初老の男で。
顔は痩せてる。
……腹はどうも怪しいけど。
しかし
……校長の食べ方、汚いな。
良い大人の癖に。
まぁ、今それはどうでもいいな。
「校長先生、話があるんですが」
部屋に入って来ても食べるのを止めない校長に、俺は呼び掛けた。
校長は無視してから揚げを頬張っている。
俺は
「自己保身で虐められている生徒を見捨てて、教育者として恥ずかしくないんですか?」
そう、ハッキリ言ってやった。
するとだ。
校長の手が止まった。
……そっか。
俺の言ったことを言われたくなかったから、俺たちが入って来ても食事を止めなかったんだな。
校長の精神本体の行動理由が透けて見えて、こう言ってはなんだけど……
ちょっとだけ、面白かった。
人の心の動きが見えたことが、面白いと思えたんだ。
でもま、それこそ今はどうでもいい。
「……お前に教師の世界の何が分かる?」
食事を中断した校長精神本体の声は、底冷えしていた。
怒りに震えている。
それが伝わって来る。
俺はそんな校長に
「教師の世界は関係無いですよ。人として終わっているって言ってるんですよ。正義って言葉はご存知ですか?」
……少しばかり挑発を交えた返答をした。
正直、腹は立っていたからね。
俺のそんな言葉に
「黙れ。……いじめなんてものが発生したら、ワシは校長をクビになるかもしれんのだ。……穏便に済ませようとして何が悪い!」
校長は校長は怒りの表情を浮かべて、俺に向かって怒鳴りつけて来る。
内心、罪悪感があるから。
この態度なんだな。
本当に悪いと思っていないなら、こうはならない。
「穏便に済ませるために、いじめに遭っている方を、いじめた側に謝らせるなんてどう考えてもおかしいですよね?」
俺がなるべく怒りを抑えてそう言うと
校長が唾を飛ばす勢いで言い返して来る。
「いじめられる方に問題が無いと言うのか!」
ある意味、予想していた返し。
俺はそれにこう返す。
「問題があればいじめてもいいんですね? そんな理屈、俺はこれまで誰にも教えられませんでしたが?」
嫌うのは自由だ。
だけど、暴行や嫌がらせをするのは違うだろ。
どうしても嫌いなら、関わらなければ良い。
苦しめてやろうなんて考え方はイカれてんだよ。
「うるさい黙れ! ワシが校長になるために、どれだけ苦労したと思っている!? 不良生徒に処分をしても反発し、いじめが解決しないどころかさらに大事になる可能性がある! だからあの生徒に謝らせて何が悪い!?」
「本気でそう思っているなら、本当にあなた校長をする資格無いですよ。そのまんまで居座られると迷惑です。辞表を出してくれませんか?」
俺のその言葉に
校長はブルブル震えた。
……来るか。
俺は戦いを予感し
夢想正宗を抜き、八相に構える。
「……クソガキがぁ……」
怒りに震える校長の声が、何重にも聞こえた。
声の変質……
それを耳にしたとき。
校長の身体が膨張し、巨大化していった……
真っ赤な皮膚と、2本の黒い角を持つ巨漢の姿に。
悪魔の姿に変じた校長は、俺たちを睨みつけ。
こう名乗った。
「ワシの名はオオオカ・アザゼル・スイチロウ! ……ワシを怒らせたことを後悔するが良い!」