彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ 作:XX(旧山川海のすけ)
「手助けをしてくださるんですか? ……竜はとても強いですよ?」
俺の提案に彼女は戸惑いを見せた。
その様子に俺は
俺の提案は嬉しいけど、それで自分の目的が達成できるか分からない……
そういう気持ちを感じた。
まぁ、理解はできる。
彼女自身、簡単に達成できると思わないからこそ、こんなところで孤軍奮闘をしてたんだろうし。
多分、もしそう思っていたら、彼女はここで「姫を救いに向かう王子ポジ」をやっておらず「大軍を率いる武将ポジ」になっていたはずだ。
自分の決断しようとしていることに実現が見えているってことだし。
俺はそんな彼女に対し
「安心してくれ。俺たちは弱くない。絶対に出来る」
力強く肯定した。
言い切らないと、その竜とやらが強くなる恐れがあるしな。
彼女が実現に対して希望を見ること。
そこは絶対に重要事項だ。
俺の言葉は、彼女に伝わったらしい。
彼女の目に奮い立つものが宿ったのが見えた気がしたから。
……精神の世界だからかな。
ひょっとしたら現実で言うより、伝わりやすいのかもしれない。
「こちらです。先輩」
襲ってくる悪魔たちを撃退しつつ。
俺たち4人……レイコ、ミキ、ネメシス、俺……はチームで突き進んでいた。
茨の迷宮は続いている。
「距離とか分かってるの?」
そこでミキが口を挟んだ。
そこはまあ、俺も気にはなる。
この精神世界ではどうせ時間は流れていないんだけど、体感時間はちゃんと流れているわけで。
出来ることならどのくらい掛かるのかは知りたい。
するとレイコは
「ええ。迷ったりはしませんので安心してください」
まぁ彼女、この世界の主だしな。
自分の世界で迷子になったりはしないだろ。
彼女に言われるままに歩き続ける。
すると
『ごめんね、イデオ。あなた1人寂しい思いさせて……』
急に声が聞こえて来た。
そしてその声に合わせるように、イメージが流れ込んでくる。
そこはどこかの公園で。
落ち着いた感じの黒い衣装に身を包んだ中年女性が
中学生くらいの詰襟の少年と向き合って立っていた。
中年女性はどこかレイコに似た容貌の女性で。
その隣に、レイコの面影がある小学校高学年くらいの少女が立っている。
『でもね、あなたやお父さんが嫌になったから、家を出たわけじゃ無いのよ……』
中年女性はすまなさそうな笑みを浮かべて、その中学生の少年に。
『母さん、どうしても狭間の家にはいられなくなって……』
そんなことを言っていた。
これは……
さすがに分かる。
レイコの記憶だろう。
これはハザマとその母の面会の記憶だろうか。
でも言ってる内容が、レイコのさっきの話と食い違うな……
しかし、そこに関してもまあ、想像はつく。
……実際にその、恨みを持った相手を早死にに追い込む恐ろしい父親に養育されているのはハザマだ。
そんなハザマに、本当のことを教えるわけにはいかないだろ。
そんなの、確実にハザマを苦境に立たせてしまう。
……レイコは、彼女はこんな状況を小学生のときから目の前で見て来たのか……
俺はハザマの家の闇深さ、過酷さを知り
なんというか……
痛ましい気持ちになった。