彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ 作:XX(旧山川海のすけ)
「あれが竜?」
少しだけ想像と違う。
全体的には竜そのものだけど、身体のパーツのところどころにヒトっぽい部分がある。
……それって
あの竜は、ハザマを取り巻く辛い環境そのものの象徴なのかもしれないな。
だから目や鼻の部分にヒトっぽさがあるのかも。
「ええ。アイツを倒さない限り城に進むコトは出来ません」
そうレイコは言って頷き
いきますよ、と断った後。
その茨の蔓が絡んだ門を開けた。
鍵は掛かっていなかった。
門が開くと、地に伏せていた番人の竜が背中の翼を大きく羽ばたかせ
『俺をイラつかせたのだから当然だ。まともな人生を歩けなくなることは覚悟しておけ』
『ハザマって前の学校でノゾキをしたから転校になったんだって? 皆言ってるよ』
『えっ、動物を殺して前の学校に居られなくなったんでしょ?』
そんな言葉を、吠えるとき複数の声音で響かせる。
……これはレイコが考えている、もしくは気づいたハザマの周囲にあったと思える言葉……
だとすると、やはり俺の想像通りなのか。
……俺は少しだけ同情した。
ろくなもんじゃないな。
「……倒そう」
俺は夢想正宗を抜いた。
純粋に酷いと思ったから。
番人の竜は羽ばたき、浮かび上がり。
ホバリングしながらさらに吠えた。
その衝撃が俺たちを襲う。
まるで全てを吹き飛ばすみたいな。
そこに竜は突っ込んで来て
その爪で俺を引き裂こうと、前脚を振るってくる。
俺はその一撃を避けるために身体を捌こうとするが
……何だか身体が重い。
さっきの咆哮に何か効果があるのかもしれない。
爪が俺の頬を掠めた。
皮膚が避け、血が流れる。
「ヨータ!」
ミキの悲鳴。
ミキは咆哮の影響を受けていないのか。
俺と竜の間に割って入り、爪攻撃の後に追撃で入って来た尻尾の一撃を俺の代わりに受け止めた。
彼女はその一撃で吹っ飛ばされたが
おかげで直撃を避けられた。
俺は吹っ飛んで来たミキを受け止め
「ネメシス! 頼む!」
「任せい!」
俺の呼びかけにネメシスが舞い降りて来て、俺たちを仕留めようと飛来する竜に、その手から雷撃を放射した。
グアアアアアッ!
竜の悲鳴。
その隙に俺たちは体勢を立て直す。
竜は……
俺たちに向けて、火炎のブレスを吐こうとしている。
口の中を見れば分かる。
その牙の生えた大顎の中に、火炎が燃えていたから。
血の気が引く。
浴びたら終わりな気がする……!
そのときだ
「先輩!」
レイコが俺たちの前に
俺たちを庇うように立ち塞がったんだ。
そこに竜の吐く灼熱の火炎が
ダメだ、逃げろ!
思わずそう言おうとした
言おうとしたが……
火炎のブレスが……吐き出されなかったんだ。
えっ
一瞬、分からなかった。
だけどすぐに理解した。
……彼女はこの世界の主だ。
竜は一応、ハザマの眠る城の番人の立ち位置だけど、この世界ではレイコの下の存在のハズ。
この世界の主人を傷つけることはできない……!
仲間として一緒にここまで来たから、その部分を見落としていた。
なので俺たちはレイコを盾にする形で竜と戦った。
致命打が来そうだと感じたら、レイコの後ろに逃げるんだ。
そうするとやり過ごせる。
レイコの方は何故それが成り立つのかが理解できないみたいだった。
まあ、彼女は彼女で勝てるかどうかわからない巨大な敵相手に奮闘しているって立場だし。
この精神世界では。
その設定が成り立たなくなる事実は理解できない仕様なんだろう。
そして俺たちは……
ギャアアアアアアン!
甲高い竜の悲鳴。
ネメシスが自分の剣を竜の脳天に突き立てて
竜は断末魔の悲鳴をあげて消えていく。
……勝てた。
正直……
レイコを盾にすることが可能である発想が無ければ、ほぼ無傷では勝てなかったと思う……