彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ 作:XX(旧山川海のすけ)
「ミキ、キミは嫌だろうけど矢野の世界に行くぞ? いいよな?」
念のために確認する。
話題にも上げないくらい、嫌いでたまらない相手。
彼女にとって思い出したくもない過去。
……でも、思えばミキと仲良くなる切っ掛けはこれだったんだよな。
根本的な切っ掛けを考えると。
無論、だからと言ってこの女に感謝なんてしないけど。
ミキは俺と付き合う前は、可愛いけど愛想の悪い女の子と思われていた。
ぶっちゃけ、ミキが外見が悪い女子だったら、総スカンを喰らっていたかもしれない。
男子には。
彼女はクール系女子として男子の間で密かに人気があった。
ただトラウマで人付き合いから逃げていただけなんだけどな。
女子の間ではどうかは知らん。
でも、外見が良い女の子はコミュ能力が低いと女子社会で地獄を見るとか聞いたことあるし。
ひょっとしたら大変な状態だったのかもしれないな。
確認は取ってはいないけど。
俺たちが付き合うことになった切っ掛けは、廊下でプリントをバラまいている彼女を俺が発見したことだった。
廊下の真ん中で大量のプリントをバラまいて、彼女は1人で必死で拾い集めていたんだ。
それを俺は流石に見過ごす気にはならず手伝ったんだ。
別に彼女の気を引こうというわけじゃない。
単にほっとけなかっただけだ。
でも彼女、そのときに
「ありがとう」
……礼を言ったんだよな。
なんだ、普通に話せんじゃん。
そう思い、俺は彼女に興味を持ち。
挨拶をするようになって。
最終的に付き合うことになった。
それが無かったら今の関係は無かったかもしれない。
だけど……
俺は矢野には一切感謝しない。
当たり前だ。
彼女と同じくらい、あの女を憎んでいる。
そんな女の精神の中に入る。
嫌悪感しか無いし。
俺以上に、ミキは嫌だろう。
だけど……
「分かった。……しょうがないよね」
ミキは受け入れてくれた。
しょうがないんだ。
段階踏んで、俺たちのレベルを上げて行かないと、最終目的であるハザマの精神世界に行くことができないし。
ミキのことを、限りなく人間に近い存在に変化させることも出来ない。
「スマン……」
俺はミキに詫び。
スマホに表示された矢野の名前をタップする。
タップするとき、流石に決断が要った。
嫌いな人間の精神に入るなんて……
俺だって嫌だ。
そして俺以上に、ミキはもっと嫌だろうけど。
名前をタップした瞬間、俺たちは眩暈に襲われた。
異世界に行くとき特有の現象だ。
そして気が付いたとき。
俺たちは城の前に居た。
大理石で作られた、輝くような巨大な城の正門の前に。