彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ 作:XX(旧山川海のすけ)
クーフーリンは特に問題なく撃退できた。
本来のこの悪魔は、多分もっと強いんだと思う。
でも、自由意志を縛られているならこんなものなのか。
俺もだいぶ経験を積ませて貰って、そこそこ強くなったと思うけど、さすがにそれで武人とされる悪魔に通用するとまで自惚れてはいない。
「なんかズルをした気分で、達成感なんて無いな。……それどころじゃ無いのは分かってるけどさ」
俺は夢想正宗を鞘に納めながら、そう呟くように言う。
「先に進もう。……私も長居したい世界じゃ無いし」
ミキも気分は良くないみたいだ。
彼女もそうなのか。
こういうときに何だけど、そこは少し嬉しかった。
城の中に突入すると、衛兵の襲撃は頻繁になってきた。
「マハブフーラ!」
ミキが掲げた両手のひらから巻き起こった吹雪の嵐が、衛兵悪魔たちを飲み込む。
かなりの高威力みたいで、たちまち氷漬けになり、彼らはそのまま砕け散った。
「ミキ、すごいな」
思わず出た俺の言葉に
「……もう3回進化してるからね。このぐらい当然だよ」
ミキはそう返す。
俺に褒められてまんざらではなさそうだったけど、少し複雑そう。
望んで成ったわけじゃないもんな。
何だか気まずい空気が流れて来たので、俺は
「先に行こう」
そう言って先を急いだ。
「……拷問部屋?」
そして衛兵の悪魔たちを倒しながら進むと。
そんな部屋を見つけたんだ。
……どうする?
見るべきか?
ぶっちゃけると、ここは精神世界なわけだから。
ここに誰か囚われていたとしても、それは多分、実在の人物じゃ無い。
校長の世界における、ハザマの偽物と同じで。
この世界の主が思う他人だと思う。
だから放置しても全く問題は無いはずなんだけど……
「ぐあああああっ!」
……悲鳴がさ、聞こえて来るんだ。
この部屋から。
つまり、誰かいる。
……気分的に、気づかなかったフリをして通り過ぎるにはきつすぎる。
現実に存在する人間でなくても、罪悪感がある。
だから俺は
「……助けて良いか? 中の人は現実に存在する人物じゃ無いのは分かってるけど」
振り返って、ミキに訊ねた。
勝手に決断して良いことじゃ無いからな。
俺の言葉にミキは
「……気持ちはわかるし、ここに来た理由が修行だからね。大丈夫、行こう」
俺の提案に同意してくれた。
ありがとう……
ミキの許可が出たので。
バンッと
俺たちは拷問部屋の扉を蹴り破った。
強度は大したことなかった。
何か意外だな。
……精神世界の主が、そこまでイメージできなかったのかもしれない。
中に飛び込むと、そこには不潔な石壁に鎖で手枷足枷をつけられて拘束された、上半身裸の若い男性と
その男性を拷問している貴族風の衣装を身に着けた緑色の髪の若い男。
男は手に鞭を持っていて、それで激しく鎖で拘束した男性を打ち据えていた。
こんなことを叫びながら
「あの女など愛していないと言えーっ!」