彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ   作:XX(旧山川海のすけ)

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第56話 ミキが彼女で良かった

「何でもね」

 

 俺が坂本のことで不機嫌になっていることを察したのか。

 ミキがポツリとこんなことを言い出した。

 

「容姿の整っている人間って、正しいと心理的に思われるらしいの」

 

 ……一瞬、なんでそんなことをミキが言い出したのか理解できなかったけど

 ミキはきっと、俺が不機嫌になってるのが嫌だったんだろうな。

 

 思い返すと「坂本の野郎」とか「あんな女に惚れるような男はクズだ」とか

 そんなことを言っていたかもしれないし。

 

 そこに気づいたから俺は

 

「そうなの?」

 

 彼女の話に乗った。

 彼女は頷き

 

「なんていう現象か忘れたけど、人間心理として、容姿が良いだけで良い人間であると思ってしまうことがヒトの本能として書き込まれているんだって」

 

 美容整形が題材の小説読んでて知ったんだけどね。

 

 容姿が良いだけで性格が良いように見えて、場合によっては頭まで良いみたいに見えちゃうの。

 

 だから美人に騙されるというのは、男の人のせいではないのかもしれないよ。

 

 ……そうなんだ。

 

 彼女の知識に感心しつつも、俺はヒトの本能の厄介さにうんざりした気分になった。

 

「……なんでそうなるんだ?」

 

 なので理由を訊ねた。

 すると

 

「んー、確か」

 

 人間は複雑なことを考えるのを無意識に避けるので、見た目が良い場合は他も良いだろうと考えた方が楽だから本能的にそうなる、だったかなぁ?

 

 そうしないと瞬間的な判断をする場合に不都合だから、本能になってるんだって。

 即断しなきゃいけない状況で、これだけの情報では全体像が分からないからと決断を保留していたら、手遅れになるかもしれないじゃん。

 

 ……そんな感じで。

 

 間違ってるかもしれないけど、と付け加えながら顎に手を当てて必死で思い出しつつ、俺の質問に答えてくれる彼女。

 

 俺はその様子に、彼女が俺のサポートをしてくれていることを実感して

 

「ありがとう」

 

 ……礼を言うしか無かったよ。

 彼女は俺に礼を言われて

 

「えっと、何が?」

 

 そんな返しをした。

 彼女としては、俺が坂本のことで不機嫌になってるのを俺が口走った言葉の端々から察して言っただけで。

 別に俺の機嫌を取ろうとしたわけじゃなかったのかもしれないな。

 

 でも、気を遣わせたんだから。

 感謝以外無い。

 

 前にミキは、俺が彼氏で良かったって言ってくれたけど。

 俺の方こそ、ミキが彼女で良かったと思う。

 

 そして

 

「ここかな」

 

 目の前には仰々しい装飾が施された大扉がある。

 ……辿り着いた。

 

 多分、この先にお城名物の謁見の間があるんじゃないかな。

 

 玉座の据えられた、王様や女王様が居る場所。

 この建物がお城である以上、この世界の主はそこに居るはず。

 

 ましてや、この世界の主はあの矢野だ。

 自分が一番でないことが我慢できないクソ女だ。

 

 ここ以外考えられない。

 

「……行くぞ。準備して」

 

 俺はそう皆に断ってから。

 その大扉を蹴破った。

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