彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ   作:XX(旧山川海のすけ)

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第59話 猛攻

 サカモト・ヨシツネ・リュウイチの斬撃は凄まじい。

 剣道部でも無いのに、二刀流で連続で斬りかかって来る。

 

 だけど。

 フットワークが軽いのが一番の脅威だと思う。

 

 ……正面から来ないんだよ。

 

 その跳躍力で側面に回り込み、斬りかかって来るんだ。

 これがものすごく厄介だ。

 

 いきなり目の前から消えるんだもの。

 

「召喚主ッ!」

 

 そのときだ。

 

 プリンシパリティが叫び。

 俺はその声で、突如目の前から消えたサカモト・ヨシツネ・リュウイチが俺の死角から斬りかかって来ることを理解した。

 

 しまったッ……!

 

 何度もやられているはずなのに、対応が遅れる。

 咄嗟にプリンシパリティが俺を庇いに入って、その斬撃をその身で受けた。

 

 グアアアアアッ!

 

 プリンシパリティの悲鳴。

 

「ホラホラ、最初の威勢はどうしたのぉ? ほんと情けないわね、ドブスの彼氏くん!?」

 

 矢野の嘲る声が、謁見の間に響き渡る。

 あの女は玉座にふんぞり返り、愉しげに俺たちを見下ろしていた。

 

「くそっ、てめえ!」

 

 その薄汚い笑みに、俺の頭に血が上った。

 

 そんな俺を嘲るように、矢野はさらに言葉を続ける。

 

「ねえ、ドブスの彼氏くん。ミキのこと、ほんと最低だと思わない?」

 

 俺の集中を乱すつもりなのか。

 

 俺は無視して戦うことに集中する。

 

 だけど矢野は黙らない。

 

「中学のときさ、そのドブス、部活の先輩にチヤホヤされて、調子に乗ってたのよね」

 

 その言葉には怒りが籠っていた。

 あと、心底見下した侮蔑も。

 

 その後に続く言葉は

 

「どうせ身体を使っていたからだろうけど、ムカつくったらありゃしない! だからちょっとお仕置きをしただけ。どう……理解した? 頭も冷えたでしょう?」

 

 ……俺の限界を超えていた。

 

 矢野の言葉は、俺の血を沸騰させた。

 

 中学時代、ミキが受けたいじめ──悪評を流され、仲間外れにされ、部活を辞めざるを得なかった地獄のような日々。

 中学を卒業しても引き摺っていたミキの傷を、矢野はまるで玩具でも弄ぶように笑いものにする。

 

「黙れ、矢野! お前だけは絶対に許さない!」

 

 俺の怒りが爆発し、夢想正宗を下段に構えて矢野に突進しようとした瞬間──

 

「マスター、死角だ!」

 

 ネメシスの叫びが響くが、遅かった。

 

 サカモト・ヨシツネ・リュウイチが再び跳躍し、俺の左側から鋭い二刀流の斬撃が襲いかかってきたんだ。

 

 避ける間もなく、刃が俺の左肩を深く切り裂く。

 

「ぐっ!」

 

 激痛が走り、血が噴き出す。

 

 左腕に力が入らない。

 刀を持つ手が震える。

 

 必至で構えを維持しつつ、俺は歯を食いしばった。

 

「ヨータ!」

 

 ミキの叫び声が聞こえたが、矢野の嘲りがそれをかき消す。

 

「よっわぁ~! ミキみたいなドブスに必死になって、馬鹿みたい! リュウイチくん、さっさと終わらせちゃって!」

 

 矢野の言葉が、俺の血をさらに沸騰させる。

 

 ミキを侮辱し

 ミキの中学時代のトラウマを嘲笑い

 俺たちの絆を踏みにじるその姿が……

 

 許せなかった。

 

 だが、その隙をサカモト・ヨシツネ・リュウイチは見逃さない。

 奴は再び跳躍し、今度は俺の胸元を狙って刀を振り下ろしてきた。

 

 クソッ……!

 

 俺は悔しさで震えつつ、だけどその一撃に絶望した。

 避けられない、と。

 

 けれども

 

「ヨータ、ダメ!」

 

 その瞬間、ミキが俺の前に飛び出したんだ。

 

 彼女の小さな体が、俺を庇うように立ちはだかる。

 

 そこにサカモトの刀が……

 

 彼女の身体を袈裟掛けに深く切り裂いた。

 

「ミキィィィッ!」

 

 その瞬間。

 俺の悲鳴がこの謁見の間で大きく響き渡った。

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