彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ 作:XX(旧山川海のすけ)
サカモト・ヨシツネ・リュウイチの斬撃は凄まじい。
剣道部でも無いのに、二刀流で連続で斬りかかって来る。
だけど。
フットワークが軽いのが一番の脅威だと思う。
……正面から来ないんだよ。
その跳躍力で側面に回り込み、斬りかかって来るんだ。
これがものすごく厄介だ。
いきなり目の前から消えるんだもの。
「召喚主ッ!」
そのときだ。
プリンシパリティが叫び。
俺はその声で、突如目の前から消えたサカモト・ヨシツネ・リュウイチが俺の死角から斬りかかって来ることを理解した。
しまったッ……!
何度もやられているはずなのに、対応が遅れる。
咄嗟にプリンシパリティが俺を庇いに入って、その斬撃をその身で受けた。
グアアアアアッ!
プリンシパリティの悲鳴。
「ホラホラ、最初の威勢はどうしたのぉ? ほんと情けないわね、ドブスの彼氏くん!?」
矢野の嘲る声が、謁見の間に響き渡る。
あの女は玉座にふんぞり返り、愉しげに俺たちを見下ろしていた。
「くそっ、てめえ!」
その薄汚い笑みに、俺の頭に血が上った。
そんな俺を嘲るように、矢野はさらに言葉を続ける。
「ねえ、ドブスの彼氏くん。ミキのこと、ほんと最低だと思わない?」
俺の集中を乱すつもりなのか。
俺は無視して戦うことに集中する。
だけど矢野は黙らない。
「中学のときさ、そのドブス、部活の先輩にチヤホヤされて、調子に乗ってたのよね」
その言葉には怒りが籠っていた。
あと、心底見下した侮蔑も。
その後に続く言葉は
「どうせ身体を使っていたからだろうけど、ムカつくったらありゃしない! だからちょっとお仕置きをしただけ。どう……理解した? 頭も冷えたでしょう?」
……俺の限界を超えていた。
矢野の言葉は、俺の血を沸騰させた。
中学時代、ミキが受けたいじめ──悪評を流され、仲間外れにされ、部活を辞めざるを得なかった地獄のような日々。
中学を卒業しても引き摺っていたミキの傷を、矢野はまるで玩具でも弄ぶように笑いものにする。
「黙れ、矢野! お前だけは絶対に許さない!」
俺の怒りが爆発し、夢想正宗を下段に構えて矢野に突進しようとした瞬間──
「マスター、死角だ!」
ネメシスの叫びが響くが、遅かった。
サカモト・ヨシツネ・リュウイチが再び跳躍し、俺の左側から鋭い二刀流の斬撃が襲いかかってきたんだ。
避ける間もなく、刃が俺の左肩を深く切り裂く。
「ぐっ!」
激痛が走り、血が噴き出す。
左腕に力が入らない。
刀を持つ手が震える。
必至で構えを維持しつつ、俺は歯を食いしばった。
「ヨータ!」
ミキの叫び声が聞こえたが、矢野の嘲りがそれをかき消す。
「よっわぁ~! ミキみたいなドブスに必死になって、馬鹿みたい! リュウイチくん、さっさと終わらせちゃって!」
矢野の言葉が、俺の血をさらに沸騰させる。
ミキを侮辱し
ミキの中学時代のトラウマを嘲笑い
俺たちの絆を踏みにじるその姿が……
許せなかった。
だが、その隙をサカモト・ヨシツネ・リュウイチは見逃さない。
奴は再び跳躍し、今度は俺の胸元を狙って刀を振り下ろしてきた。
クソッ……!
俺は悔しさで震えつつ、だけどその一撃に絶望した。
避けられない、と。
けれども
「ヨータ、ダメ!」
その瞬間、ミキが俺の前に飛び出したんだ。
彼女の小さな体が、俺を庇うように立ちはだかる。
そこにサカモトの刀が……
彼女の身体を袈裟掛けに深く切り裂いた。
「ミキィィィッ!」
その瞬間。
俺の悲鳴がこの謁見の間で大きく響き渡った。