彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ 作:XX(旧山川海のすけ)
ミキの鮮血が飛び散り、膝からゆっくりと倒れる。
彼女の体から力が抜け、床に崩れ落ちる姿を見て、俺の頭が真っ白になった。
「ハハハハハ! やっちゃった! リュウイチくん、最高! 中学のときからウザかったクソブスが、ようやく消えた! ほんと、せいせいするわ!」
矢野の高笑いが謁見の間に響き渡る。
この女の声は、ミキの苦しみを……彼女の過去を……まるでゴミでも投げ捨てたように嘲笑っていた。
俺はミキの倒れた姿を見つめ、時間が止まった気がした。
彼女の血が赤い絨毯を濡らし、俺の視界が揺れる。
こんなことになるなんて……。
「癒しの光を……メディラマ!」
プリンシパリティが回復魔法を使用してくれた。
だけどそれが効果を上げているようには見えなかった。
俺たちに降り注ぐ光のシャワーが、ミキを回復させている様子を見せていない。
俺の傷には効いているのに。
つまり……
ミキが……死んだ?
これは俺が矢野の精神世界に来ると決めたから……。
でもそれは、ハザマの精神世界を攻略するためで……
けど……
そもそも、俺がそうしなければならなくなったのは。
変なアプリを2つ手に入れて、これを使えば状況を打破できるんじゃないかと妄想したからだ……
だからどこまで行っても
ミキをこんな目に遭わせたのは、俺のせいだ。
「ミキ……ごめん……」
唇が震え、涙が溢れそうになる。
だけど……逃げるわけにはいかない。
俺だけ逃げたら、そもそも行動を起こさなかったら良かったんだ。
そういうことに、なるだろ。
「ミキ……」
足に力を込めて立ち、夢想正宗を八相に構える。
左肩の傷がズキズキと痛むが、そんなこと気にしてる場合じゃない。
俺には最後まで前に進む責任があるんだ……!
サカモト・ヨシツネ・リュウイチが再び襲いかかってくる。
ネメシスが俺の援護に入るが、奴の動きは速すぎる。
二刀流の斬撃が俺とネメシスを同時に圧倒し、俺は防戦一方だ。
「クソッ……!」
一撃を躱しきれず、腹に浅い傷を負う。
血が滲み、足元がふらつく。
もうダメか……
ミキ……スマン……!
俺の脳裏にミキと過ごした時間が走馬灯のように過ぎていく。
初めて一緒に映画に行ったこと。
初めて一緒に博物館に行ったこと。
中華街に行ったこと。
そして夜景の前で初めてキスをしたときのこと……
幸せで、今となっては悲しい記憶。
だけど
そう思ったその瞬間だった。
視界の端で、倒れていたミキが起き上がって来たんだ。
致命傷を負ったと思ったミキが……!
彼女の死体が消えなかったのは、彼女が人間から変化した悪魔だからだと思っていた。
なのに……こんなことが……
復活したミキ。
その姿はまた、少しだけ変わっていた。
金髪だった髪が、元のように明るい色……栗色になっていた。
生前の彼女、そのまんまだ。
「何でドブスが生きてんの……?」
矢野も驚いている。
声に呆気に取られたものがあった。
矢野にとっても理解不能のことなのか。
ミキは俺たちの視線を受けて
「……矢野さん」
そう、呟くように言い
続けて
「あなたが奢り高ぶるのも、ここまでよ!」
そう、吠えるように言い放った瞬間。
彼女の顔に薄く隈取のような文様が浮かんだ。
そして、彼女の身体が光に包まれ――
一瞬で、彼女の姿が変わっていた。
まるで彫像のような灰色の体色を持つ、直立した狐を思わせる女怪人の姿に……!