彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ 作:XX(旧山川海のすけ)
湿っぽく黴臭い地下牢の世界。
石で出来てて、鉄格子には錆が浮いてて。
ガランとした、無人の牢が並ぶ、中世の牢獄。
俺たちは再びこの世界に戻って来た。
最初は平和ボケした普通の高校生としてだったけど。
今は違う。
この世界の常識に意識を合わせ、準備を整えた人間として。
かつて守り切れなかった恋人と一緒に再びやって来たんだ。
ハザマの世界は牢獄。
……今となっては理解できる気がする。
妹であるレイコの世界で見聞きした事実から、想像は出来る。
多分、ハザマは父親の命令か何かで、この軽子坂高校にやって来たんだ。
どんな命令かは全く分からないけど、そうとしか俺には思えなかった。
そんな状況で、苦しいだけの学園生活。
そりゃ、世界が牢獄になってもおかしくないよな。
「いくぞ、ミキ」
「うん。行こうヨータ」
そして俺たちは歩き出した。
俺は夢想正宗を抜いて。
そしてミキはおそらく、いつでも変身できる覚悟を固めて。
少しぬめりがある気がする石の廊下を歩きながら。
俺は目を凝らして前を見つめ、足を進める。
……そろそろな気がする。
あのときの……
ミキが悪魔になる原因になった、あの悪魔に遭遇した、あのポイント。
それがそろそろの気がするんだ。
アイツには……
礼をしてやる。
ミキをこんな目に遭わせたことに対する。
すると
「……また来たか。懲りぬ奴よ」
のそり、と。
闇の中で動く影。
それは全身を灰色の甲冑で覆った2メートルを超える戦士。
背中に灰色の大きな翼を持ち、爬虫類のような尾を尻に備えている化け物。
そしてその顔は灰色の金属の面で隠されている。
……こいつが最初に、ミキをゾンビに変えた……!
「おい。覚悟しろ。ぶっ殺してやる」
俺はそう言いつつ、夢想正宗を正眼で構えた。
少し狭いが、戦えるだろ。
むしろこの廊下の幅は3メートルくらいしか無いから、アイツの方が不利なんじゃ無いか?
俺の言葉に、因縁のその甲冑の悪魔は
「……ほほう。我を倒すとほざいたかニンゲン。女をゾンビにされたのがそれほど悔しかったか」
肩を震わせるようにして、嗤いを交えてそう返して来た。
俺はその言葉にはまったく返さず。
「俺の名前は
名乗った。
甲冑の悪魔はそんな俺の振る舞いに。
「……何故名乗る? 何がしたい?」
困惑の声で、そう返して来る。
俺は
「……お前をブチ殺す相手の名前を教えておいてやらないと、だろ?」
そう、自分でも不思議なくらい、冷静な声で返す。
そんな俺の言葉に、甲冑の悪魔は一瞬固まっていたけど。
次の瞬間……
「面白い」
肩を震わせながらそう呟いた後。
甲冑の悪魔は
「我が名は堕天使ムールムール」
そう名乗り、その手に大振りの戦闘用のハンマーと、大型の盾を召喚し。
「……生意気なニンゲンめ。正面から叩き潰してくれるわ!」
襲い掛かって来た。