彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ   作:XX(旧山川海のすけ)

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第65話 辿り着けたこと

「我が衝撃魔法マハザンダインを喰らうがいい!」

 

 ムールムールが大きく戦槌を振り上げ、自身の目の前に輝くものを集中させている。

 

 衝撃魔法だって……?

 この通路でそれを発動されるのは、非常にまずい!

 

「させるか!」

 

 俺が叫び、魔法発動前に抑え込もうと踏み込んだ。

 だけどその前に

 

「私が!」

 

 ミキが叫び、小さな輝きと共に狐のような怪人体──オルフェノクの姿に変わって先に飛び掛かったんだ。

 狐の怪人に変身した彼女の鋭い爪が、ムールムールを目掛けて襲いかかる。

 

 変身したミキの動きはまるで疾風のようだった。

 

「ぐっ! 何だその姿は!?」

 

 ムールムールは魔法の発動を諦め、咄嗟に戦槌を振り上げて応戦した。

 

 多分、相当重いであろう戦槌がミキの肩を狙って力強く叩きつけられた。

 

 だが──

 

「ガアッ!?」

 

 ムールムールが苦痛に声を洩らした。

 金属が砕けるような高い音と共に、本来ミキが受けるはずだった戦槌のダメージがそのままムールムールに跳ね返されたんだ。

 力いっぱい振り下ろした一撃が、自身に返ってくる衝撃に、ムールムールはたたらを踏む。

 

「な、何だ!? この力は……!」

 

 ムールムールが混乱する中、影の中のミキは冷たく微笑む。

 彼女の影に浮かぶ人間の顔が、力強く宣言した。

 

「これで決めてあげる!」

 

 ミキは大きく腕を広げ、自分の周囲に冷気の渦を巻き起こす。

 

 ミキの最大の攻撃魔法ブフダイン……

 ミキ曰く、氷結魔法の最高峰らしい。

 

 廊下全体が凍てつくような冷気に包まれ、俺の肌にもその冷気が突き刺さる。

 

 そして

 

「ブフダイン!」

 

 ミキの叫びと共に、渦巻く冷気がムールムールを飲み込んだ。

 氷の結晶が悪魔の甲冑を覆い、その巨体を氷の彫像に変える──はずだった。

 

「甘いわッ!」

 

 だが、氷の魔法がムールムールに届く直前、突然その冷気がミキ自身に跳ね返ってきたんだ。

 

「キャアアアアアッ!」

 

 相手が受けるはずだった凍結魔法に飲み込まれ、ミキは悲鳴を上げた。

 ムールムールには氷結魔法が効かないのか……!

 

 悪魔には属性相性というものがあり、その性質により特定の攻撃を受け付けない、もしくは反射する場合がある。

 ミキの場合は物理攻撃を反射できるわけだが、ムールムールは氷結魔法を反射するんだ……!

 

 ブフダインのダメージが深刻なのか、ミキはがっくりと膝をついた。

 

「ミキ!」

 

 俺が叫ぶ中、ミキは

 

「大丈夫……大丈夫だから……」

 

 苦しそうに、俺にそう言って来た。

 

 そんな様子を見て

 

「残念だったな。それが切り札だったのか?」

 

 ムールムールが勝ち誇ったように嗤う。

 

「今度こそマハザンダインを喰らうがいい」

 

 ムールムールは再び戦槌を振り上げ、衝撃魔法を放つ準備を始めた。

 輝く魔力が再び集まって来る。

 

「くそっ、ミキ!」

 

 阻止しないと。

 俺が夢想正宗を構え、飛び出そうとした。

 

 その瞬間──

 

「まだ……終わらないよ……!」

 

 ミキがよろめきながらも立ち上がる。

 その声には、決して折れない意志が宿っていた。

 

 彼女のオルフェノクの身体が微かに光り、彼女は弱々しく、しかし力強く呟いた。

 

「……マリンカリン!」

 

 その瞬間だった。

 ムールムールの周囲に不思議な波動が広がったんだ。

 

「なッ……!?」

 

 ムールムールは困惑していた。

 

 魔法の発動が止まり、消え失せる。

 

「何と……美しい」

 

 マリンカリンは魅了魔法だ。

 目の前の対象1人を、短い時間だけ術者の虜にする。

 

 通じれば、の話だけど。

 

 今だ!

 

 俺は一気に踏み込んだ。

 夢想正宗を両手で下段に握り、振り上げた。

 

 狙いはムールムールの首。

 俺の剣は一直線に、狙いに向かって空気を切り裂いていく。

 

「喰らえェェッ!」

 

 そして俺の剣はムールムールの首を切断した。

 

 斬首されたムールムールの身体が膝をつき、一瞬後塵になって消え失せた。

 

 やった……!

 やれたぞ……!

 

 俺は息を切らし、剣を下ろす。

 俺はハザマの世界を進んでいく実力を身に着けた。

 

 その実感で、震えた。

 

「ヨータ……やったね……」

 

 そこにミキが、変身を解いてそう言ってくれる。

 彼女も微笑んでいた。

 

 俺たちがここまでたどり着けたことに。

 

「ミキ……」

 

 待ってろ。

 

 そこで俺は彼女を回復するために。

 回復魔法を持つ仲魔のプリンシパリティを呼び出すためにスマホを操作した。

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