彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ 作:XX(旧山川海のすけ)
「俺たちはお前と話をしに来たんだ」
いきなり戦いになる雰囲気を感じたから、俺はそう話をまず切り出した。
俺の言葉にハザマは
「お前たちがこの偉大なる魔神皇と会話だと?」
……そんな返しをする。
中二病かよ。
こいつ、見た目は決して劣ってるわけじゃないし、むしろ良い方なんだが……
言動が中二過ぎる。
精神本体まで自分のことを魔神皇と名乗るなんて。
正直予想していなかった。
まぁ、別にそれはいいや。
俺の話の本題はそこにない。
「……学校を魔界に堕としたのは、学校の連中が憎かったからか?」
俺は真っすぐにハザマを見つめて、そう問いかける。
するとハザマは
「身の程知らずの獣どもを、相応しい場所に送ってやっただけだ」
唇の端を吊り上げつつ、そう返して来た。
冷静を装っているけど、その内心には怒りが燃えている。
やっぱり、そういうことなのか。
俺は
「……お前、父親に命じられて嫌々転校してきたんだな」
ハザマの返した言葉には答えずに。
ここに至るまでにハザマについて知ったことを語り出した。
「そうだ。私は好き好んでこんな獣の住処に来たわけでは無い」
ハザマは少し戸惑っているように見えた。
非難の言葉が来ると予想していたんだろうか?
だったらこのまま続ければ、会話になるかもしれない。
「嫌々転校して来て、そこで爪弾きにされれば、そりゃ恨むだろうさ。そこは分かる」
俺は正直に自分の気持ちを言った。
俺はハザマに同情の気持ちは持っていた。
「……媚びても無駄だぞ?」
ハザマの表情には緊張があった。
騙されてなるものか。
そういう、自分を守る意思を感じた。
俺は
「媚びてねえよ……言ったろ? そこは分かるって」
声に力を込めた。
この言葉は、震え声で言う言葉じゃない。
腹に力を入れ、ふんばり
「……お前さ。その力を手に入れるまでは自分だけが被害者だったと思ってるだろ?」
真っ直ぐにハザマの目を見つめて、そう言い放った。
ハザマに信じてもらうには、媚び諂うような態度は駄目だろ。
言うべきことは言わないと。
そうでなければ、きっと見透かされる。
俺はハザマに同情している面はあったが、それだけしかないわけじゃない。
思うところがあったんだ。
「お前さ、矢野の奴にラブレターを渡したよな?」
俺はまずそのこと……
最初に言う気になっていた、そのハザマの加害行為について口にした。
俺の言ったことは、ハザマにとってはトラウマだったらしい。
「それが何だ!? 僕は精魂込めてラブレターを書いたんだ! それを! それを!」
……一人称が僕になってる。
よほどあの記憶が辛いんだな。
まあ、監獄に封印するくらいだしな。
俺は笑わずに首を左右に振った。
そして
「……矢野のヤツ、坂本の馬鹿野郎と付き合い出したの、確か1年の3学期なんだわ」
ハザマの行為が加害行為であることの根拠を口にした。
ハザマの転校は2年になってからなんだよ。
つまり、あの時点で矢野は坂本の彼女だったんだ。
……矢野のヤツは坂本と恋人関係になったことを隠そうとはしなかった。
かなりあからさまにしてたと思う。
それをコイツが知らないとは……
俺の言葉に
「自分の気持ちを好きな人に伝えて何が悪いんだ……? せめて知って欲しかったんだ……」
ハザマは目を逸らしていた。
俺から
そして
「僕には誰かを好きになる資格も無いって言いたいのか……? お前は……?」
嫉妬と、憎悪。
それを滲ませている声で俺に。
俺はその言葉に
……首を左右に振った。
「そうじゃねえよ」
そう。
そうじゃない。
問題はそこじゃないんだ。