彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ 作:XX(旧山川海のすけ)
「ラブレターを渡したことが問題だってんだ」
「気持ちを伝えることの何が悪い!?」
俺の言葉に即座にハザマが言い返す。
……ハザマのこの反応を、まともに考えないで逆切れって決めつける奴はいるだろうけど。
違う。
そうじゃない。
「……お前は自分の気持ちを知って貰えばそれでいい、って気持ちだったんだろうけどさ」
俺はコイツのラブレターの文面見て無いから、ひょっとしたらその文面は
矢野のヤツにもう相手がいることに途中で気づき、自分が矢野のことが好きな事だけ書いてて。
坂本を振って自分に乗り換えろという内容では無かったのかもしれないな。
でもさ
「ちゃんとした相手がすでにいるのに、そんな気持ちを押し付けられる相手の気持ちは考えなかったのか?」
……俺が言いたいのはこれだよ。
すでに交際している相手がいる子に気持ちを伝えるなんて、迷惑以外の何物でも無いんだ。
対応に困るだろ。
矢野のヤツがいくらクソ女でも、何をしても良いなんて、そんなわけあるかよ。
「でも、読まずに破り捨てるなんて!」
ハザマの声はまるで悲鳴に聞こえた。
そこに
「……私でも読まないで破り捨てると思う。ゴメン。ハザマくん」
ミキが。
俺たちの会話に加わった。
ミキの表情は少し複雑だった。
ミキは矢野に恨みを持ってるし。
トラウマめいた嫌悪感がある。
ミキにとって矢野はゴキブリみたいなもんだろう。
だけど
ハザマがしたことが絶対的に正当化できないことだから、言わずにいられない。
そういう気持ちなんだと思う。
それがミキという女の子なんだ。
「何で読まなければならないの? 読んで私は何を得るの? ヨータ以外に、他に自分への好意を持ってる男の子の存在? そんなものを知ってどうするの?」
魔神皇を名乗る相手に対して、ミキは怯えていなかった。
いや、威圧感は感じているかもしれないけど、それを表に出してはいなかった。
堂々とした声で、ハッキリと
「私にはすでにヨータが居るのに? 読むこと自体が意味不明。むしろ読むことでヨータを裏切った気持ちになる」
女の立場から、ハザマのやったことを糾弾する。
「だから絶対に破り捨てる。読まない。当然だよね? ……その件は完全にハザマくんが悪いと思う」
ミキの言葉に
ハザマは真っ青な顔になっていた。
ハザマの中では、あの出来事は矢野に酷い目に遭わされた辛い記憶なんだろう。
……でも、そうじゃ無かった。
あの件に限り、自分は加害者だった。
そこを自覚したのか。
ミキはさらに
「ハザマくん。誰かのことを大事にするってことは、別の誰かを大事にしないってことなんだよ」
俺もそう思ってる、真理と思えることを口にした。
誰かを特別大事にするってことは、その誰かの優先順位を上げるってことだ。
優先順位を上げるってことは、優先されない誰かを作るってことだ。
だから究極……そういうことだろ。
決まった相手への誠を尽くすために、貰ったラブレターを読まずに破り捨てるのは普通のことだ。
そしてそれは……
「ハザマ、香山先生がお前を拒絶したのも同じことだ」
もうひとつ、思っていたことを口にした。
ハザマは香山先生に慰めて貰おうと縋りつき、拒絶され。
それで絶望を深めたが……
「香山先生に婚約者がいたことをお前、知ってたか?」
俺の言葉にハザマの顔色が青くなる。
……こっちは知らなかったのか。
少しだけ可哀想になったが
俺は……
「香山先生も同じだ。婚約者への誠を尽くすために、お前を振り払ったんだ。それだけの話なんだよ」
キッパリと言い切った。
その言葉を聞いたハザマは……
真っ青な顔で、ただ震えていた……