彼女がゾンビになったので、俺は魔神皇に抗議しに彼の精神世界に行くよ 作:XX(旧山川海のすけ)
ポロン、という通知音が鳴った。
俺のスマホだ。
誰かがメールを入れてきたようだ。
その通知された名前を確認し
「どうしたの?」
「メール」
ミキの言葉に、俺はそう一言返してスマホを制服のポケットに戻した。
下駄箱で靴を履き替え、外に出る。
まだ16時。
ここから急速に暗くなっていく季節。
今はそれなりに陽が落ちるのが早いから。
並んで手を繋いで歩きつつ
一緒に下校していると
「ねぇねぇ、私、オルフェノクの力をある程度人間体のままで使えるようになったんだよ?」
住宅街だけど、周囲に人が居ないから。
ミキがそう話を切り出す。
俺は
「えっ、何が出来るわけ?」
そう返す。
彼女は笑顔で
「氷結魔法の能力が一部使えて、冷気を纏えるの」
今は寒くなっていく季節だから役に立たないけど、夏場は重宝するよ。
メイクも暑さで崩れたりしないだろうし。
オルフェノク様様だよ。
ありがとうヨータ。
……礼を言われるようなことじゃ無いんだけどな。
俺としては
「じゃあ来年の夏は、ミキの傍にいたら猛暑でもへっちゃらかな」
そこはありがたい。
俺のそんな言葉に
「うん。私がいればあなたに熱中症は訪れない」
ミキがそう返して。
その表情は本当に幸せそうに見えた。
分かれ道が来たので、ミキと別れた。
自分の家に帰っていく彼女にバイバイして1人になり、そこでようやくさっき来ていたメールを確認する。
メールの差出人から、もしかしたらミキに見られるとマズい内容かもと思ったからさっき見なかったんだ。
メールの差出人名は「ハザマ」
……ハザマは現在、軽子坂高校にはいない。
俺たち同様、あの後政府に拘束されたけど
しでかしたことが重大過ぎて、その後解放して貰えなかったんだ。
現在彼は、強制的にヤタガラスの職員になるための訓練を受けさせられてるらしい。
魔界の一部を掌握して、魔神皇を名乗れる実力。
それを捨てるが惜しいのと
単純に、ハザマを処分するために払うリスクが相当高いと思われた面があるんだろうな。
俺は事情を訊かれた際、ハザマと連絡を取らせてくれと政府にお願いし。
メールでの対話だけ許して貰った形だ。
彼は尋常じゃ無く頭が良かったから。
俺が「精神世界でお前と交流を持った」という話を信用してくれた。
……深層心理で、俺と握手した実感があったからかもしれないけどな。
『火宮君、この間の平成仮面ライダーに関する話だが……』
メールの文面は穏やかだ。
現在の彼はヤタガラス職員を目指すことを強制されているけど。
暮らしぶりは前よりずっと良いようで。
……やっぱ彼の日常が地獄だったのは、彼の環境が悪かったのが大きな理由だったのかもしれないな。
最近では菅野とかいう、話が合う女性の知り合いが出来たらしいし。
それなりに楽しくやってそうなので、俺は嬉しかった。
俺はメールを読み進めながらそんなことを頭の片隅で思う。
『結論としては、おそらく火宮君の彼女さんが短命である可能性は低い』
そして。
その一文を見たとき
「ありがとうハザマ!」
彼に聞こえるわけでもないけど。
思わずそう声に出していた。
……彼に相談していたんだよ。
ミキにオルフェノクの短命設定がついたまんまなのかどうか。
彼は俺の相談内容に答えるために。
彼は悪魔について正式に勉強した上で
問題の平成仮面ライダーの
テレビ本編全50話に、小説版。
そして劇場版2本、その上ライダー大戦まで見たらしい。
その上での結論だ。
喜ぶしかない。
『その根拠は、実在の伝承とそこから生えて来る悪魔の実態の関係が……』
ハザマは結論の後、その結論に至った根拠を長々と書いている。
俺にも分かるように、かなり平易な書き方をしてくれてるように思える。
ギリギリ理解できたから。
神獣クダンの例は、妖虫ミルメコレオの例は……
色々実例を書いてくれている。
それを読みながら俺は思った。
やっぱり他人とは、憎しみあいではなく、真っ当に手を握り合う関係であるべきだよな、と。
<了>