カードゲーム世界の、場違いソウルライク   作:狸より狐派 ハル

1 / 4
エルデンリング ナイトレインを全クリしたので初投稿です。


序章

裏路地、と言うにはやや広く、そして暗かった。

 

太陽が雲で隠れているせいか、建物の影が濃い。

 

それが黒く、翼を持った小さな子馬を大事そうに抱える黒髪の少女にとって、目の前の恐怖を増幅させた。

 

3体の黒いゴミ袋が人の(かたち)をしたそれは、鉄パイプを持っている。

 

つい先ほど子馬を殴っていたもので、今からも少女ごと振るおうとしている。

 

少女は壁に寄りかかっており、足が震えて動けないでいる。

 

一歩、一歩と近づく黒い人形(ひとがた)のそれは十分距離を摘めるとゆっくりと鉄パイプを上げる。

 

少女がたまらず目をつむり、抱き締める腕を(りき)む。

 

そしてそれが振るわれた。

 

・・・かに見えた。

 

殴ろうとした黒い人形のそれは、背後に突如(とつじょ)現れた、盾と剣を持った少年に斬られることによって(さまた)げられた。

 

斬られたそれはキレイに二つに()け、中身の汚い紙やらプラスチックを撒き散らしながら崩れる。

 

驚いているのか、後ろ2体の黒いなにかは動かない。

 

その隙に少年は近くにいた1体を先に斬り着ける。

 

大振りの横斬りで、先の黒い何かのように中身を撒き散らしながら崩れゆく。

 

残った一体は急いで振りかぶろうとするが、そうしているうちに少年に接近を許し、同じように斬られ、中身を吐いた。

 

倒れた3体はそのまま動かなくなる。

 

だが次第にその体が白くなり、まるで煙のように消えていった。

 

そんな現象に呆然とする黒髪の少女。一方の少年は彼女に体を向けた。

 

剣を腰の(さや)(おさ)る。少女は彼に声をかけた。

 

「あなたは・・・いったい?」

 

少年は特に返さなかった。無口なのか、それとも単純に会話が苦手なのか。

 

少女は黙ったままの彼につい呆然とするが、自分が置かれた状況に気づく。

 

「・・・その、ありがとうございます。あなたが来てくれなければ、私とこの子は無事では済みませんでした」

 

そう言う少女。腕の子馬は少年をじっとみている。少年もその子馬と目を合わせている。

 

「あぁ、あなたもこの子が見えているのですね。この子はここに来る前に私が見つけたんです。

他の人たちには見えていないようで・・・」

 

この子馬は少女が町を歩いていたときに偶然見つけたもので、翼を羽ばたかせていないのに、ふよふよと浮きながらどこか行こうとしていた。

 

完全に目立つことをしているのに、横切る人たちは見えていないかのように素通りしていくのを見て、自分にしか見えていないことがわかった。

 

そして裏路地に行くのを見て自分も追いかけたら、こうなっていたと言うわけである。

 

「その、さっきのは一体なんだったのですか?ダストマンが端末も無しにひとりでに動いてたり、こっちを攻撃しようとしたり・・・」

 

ダストマン。この黒いなにかの名称である。なぜ彼女がそんなことを知っているのか、それは後述する。

 

「ひとまず、ここから出ましょう。またさっきのようなのがでたら危ないですから・・・」

 

ひとまず彼らはこの裏路地から出ることにした。2人は同じ入り口から入ってきたため出口のためにもそこに向かった。

 

裏路地は暗い。そんななか用心して先導する少年の後を追う黒髪の少女。一本道なため迷うことはないだろうが、その分逃げづらい場所だ。

 

奥の曲がり角に差し掛かる前、少年は顔を横に向け下を見る。

 

そこには足から膝までくらいの地蔵がある。これは彼女らが住むこの町によく点在するものだ。このようなものから手の平サイズ、場所によっては巨大なサイズまで。

 

彼は体ごとその地蔵に向け、手を合わせた。少女はぼうっと少年を見つめると、今度は地蔵を見る。そしてつられるように手を合わせる。

 

目をつむり、とりあえず無事にここから出れるお願いをする。目を開け、少年を見るとこちらを見ている。

 

お礼が終わったのを確認したのか、少年はもとの曲がり角に向かっていき、少女も後を追う。

 

道中にダストマンのような脅威はなかった。だが脱出地点の付近に来たときはなかった変化があった。

 

「やけに広い・・・はじめここを通った時はこんなに広くなかったはず」

 

彼女の言う通り、バスケットボールのコートが余裕で二つ分造れそうなほどに、やけに広い裏路地である。来たときは確かにここまで広くなかった。

 

彼女だけならば、通ろうとするのを躊躇(ためら)っただろう。一方の少年は周りを見回したあと、慎重に足を踏み入れた。

 

黒髪の少女も腕の子馬を大事に抱え、ついていく。

 

真正面に見える出口への光を見つめながら進む少年。周りを不安そうに見回しながら歩く黒髪の少女。

 

その時の流れはやけにゆっくりと感じる。進み、進み、光の切り込みまであと何メートルか。

 

その時、背後からズシンッ、と普段聞かない大きな音が響く。

 

少女はとっさに振り向き、少年も振り向いた直後、少女の前に出る。舞う砂ぼこり、そしてその体勢は下にうつ向いている。

 

人というにはかなり、いや不自然に大きすぎる。丸まっているのに身長も()()()も良すぎるとわかる。

 

巨体が動く。徐々に体と顔を上げていく。

 

その顔は、牛である。

 

比喩(ひゆ)でもなんでもない、牛そのもの。茶色く、整っていない毛並み。

 

しかしそこから下は人のように服を着ている。

 

白く(えり)のないボタン服、その上に(そで)のない青のベスト。黒いズボンを()いているが靴は履いておらず、牛特有の太い(ひづめ)(あらわ)になっている。

 

手こそ人の形だが、ここも毛むくじゃらだ。そして右手には教師が使うような棒が。

 

そして左手には人が抱えれるかが怪しい青黒く大きな本を持ってある。

 

その者の姿を、黒髪の少女は見覚えがあった。

 

「たしかあれは、《牛教師 ティーチャウロス》・・・!?」

 

先日交番を横切ったとき、掲示板に落とし物として『このカードを探しています』と書かれたものを見たことがある。

 

そして目の前にいる怪物はまさにそれだ。

 

怪物はこちらを見ている。少年は剣を抜き、盾を少女の方に何回か向ける。

 

先に行け、と訴えるように。

 

腕の子馬が恐怖のせいか暴れだす。少女もたまらず離してしまうと、子馬は瞬く間に飛行しながら出口へと逃げ出した。

 

「あっ!」

 

少女は逃げる子馬を目で追い、少年を見る。自分にはあの怪物をどうにも出来ないと悟った少女は子馬のあとを追った。

 

少女が立ち去り、1人と1体になるこの空間。盾を怪物に向けた少年は様子を見る。

 

そして怪物は、低い(いなな)きを響かせながらズシン、ズシンと少年に近づき始めた。

 

少年も少しずつ近づく。お互いの目線が合わさりながら距離が縮まっていく。

 

怪物の棒が届く範囲に入ったとき、体を開くよう右腕を下げる。

 

そして棒を横に大振った。鉄パイプほどのそれは当たれば瞬時に肉塊(にくかい)に変えてしまうだろう。

 

それを少年はその怪物の右腕の下に行くようにローリングで避けた。

 

鉄パイプのような棒が空振る。怪物は少年を見直す。立ち直したのを見ると振った右腕をそのまま左肩への位置に持っていき、そして殴るために振るった。

 

少年はわかっていたように今度は逆の方にローリングする。

 

また空振る。代わりに少年が立った直後、振るった剣の刃が怪物の腹に走った。

 

そこの服が避ける。そこから少なくない血が出る。怪物はなにも言わずまた棒を横に振るう。

 

ガァン!!と少年がとっさに構えた盾に衝突する。少年は後退(あとずさ)る。怪物は鼻息を荒くしながら首を振る。

 

怪物が近づきながら腕を大きく上げてそのまま落とすように振るう。

 

少年は真横にステップする。彼の代わりに路面が叩かれ、ヒビが入る。

 

また右腕が上がり、また落とされたそれは少年に向かうが、少年も逆方向にまたステップして避ける。

 

怪物は苛立ったのか何回も乱暴に上げては振り落とし始めた。

 

ガンッガンッと、その(たび)に少年はステップで避ける。

 

不意に怪物が棒を左に持っていき。そして横凪(よこなぎ)に振るう。

 

盾を構える少年。だがぶつかると同時に踏ん張りが効かなかったせいか、後ろに吹き飛んだ。

 

背中が路面に当たる。それと同時に足を上から後ろに持っていき、受け身で立ち直る。

 

苦痛の顔を見せながら怪物を見る。

 

なにもしないかと思ったら、怪物は右足でその場の路面を後ろに蹴っている。

 

通常の牛が前足で地面を蹴るように、それは突進の予兆だと察する。

 

予想通り、怪物が体を低くする。すると一気に少年へ頭と角を向けながら突進してくる。

 

ドドドドと、恐ろしく速く見える巨体が迫ってくる。

 

少年は急いで横にローリングする。

 

ギリギリのところで怪物が通りすぎていった。

 

怪物が壁に衝突する。とても大きな音がなりそこから砂ぼこりが舞う。大きな衝突後が残った。生身で受けたら壁と一体化していただろう。

 

だがそんなことを考える隙も与えようとしない怪物は少年の方に向くと、今度は路面を蹴らずにすぐ向かっていった。

 

少年はまた横にローリングする。怪物が当てようとする直前首を(かし)げるようし、そして斜め上に頭で持ち上げるように突き上げた。

 

体と片足ごと浮く怪物。その片足が路面に着いたとき、怪物は腰を落とした体勢になる。直後、ほぼ真上に跳躍した。

 

少年は焦りか疲れからか怪物の方を見遅れた。

 

そこにあの巨体がいないことに気づく。そして音がなる真上を見る。

 

牛の顔をしたヤツが、左手の本を振り上げている。それだけじゃない、本が(あお)く光っている。

 

そもそも顔を上げた時点で少年へと落下している。

 

そしてその本の形した鈍器は、少年に向かって落ちていった。

 

 

 

━━━━━━━━━━

 

 

 

少女は気がついたら住宅街にいた。子馬も疲れているのか、道の真ん中でぐったりと寝伏せている。

 

少女も膝に手を当てながら息を切らしていた。

 

ふぅ、と息を整えると、子馬を見つめる。

 

「大丈夫?」

 

そういうと、子馬は顔を少女に向ける。

 

黄色く真ん丸の目だ。月のように、少女の目のように。

 

「ねぇ、よかったらうちに来る?」

 

少女が手を差しのべる。

 

「外は危ないけど、うちなら大丈夫だと思うから」

 

子馬はじっと目を合わせる。その場から動かず、ただ彼女を見ている。

 

すると子馬の体が黒く光る。形がおぼろ気になっていき、そして小さくなっていく。

 

形が変わっていく。そしてその体は、一枚のカードになって浮いていた。

 

少女はそんな光景に口を少し開けていた。だがそれだけだ。特別驚きはしていない。この光景を知っていたかのように、手に来るカードをそっとつまんだ。

 

「クロポニサス、それがあなたの名前、なんだね」

 

カードの上側に書かれていた名前を読む。その下に先ほどの子馬が描かれている。

 

目を合わせるようにカードを見つめる彼女。ふと思い出したのか、先ほどまで走って来た道を振り替える。

 

「あの人は、無事なのかな・・・」

 

心配する一言がポツリと出た。

 

 

 

━━━━━━━━━

 

 

 

今から50年前、月本(つきもと)と呼ばれる国にある円賀県(えんがけん)にて、そこに拠点を置く企業、別場玩具(べつばがんぐ)。もともと名前の通り玩具やシール、ゲームソフトなどを開発する知る人ぞ知る組織だった。

 

だがカードを使うテーブルゲームとして、《フィールドマインダー》と言うものを開発する。このゲームは先攻後攻に別れ、シートに動物や機械などが描かれたカードをだし、戦わせると言うものである。

 

本作の人気が日本中で爆発的な人気を出し、カードは国外にも広がっていくことで社会現象を起こした。

 

しかし別場玩具はその急すぎる影響についていくことが難しくなり、存続が危ぶまれた。

 

そこに声をかけたのが世界最大国家《ビーマイア》に本社を構える大手ソフトウェア企業《マジックホイッスル》。この組織が別場玩具を買収、子会社化をすることにより起動が上限を大きく越えて回復する。

 

社名もカードゲームに特化するためシフトチェンジして《カードメイク ベツバ》になり、その波は止まることを知らなかった。

 

そして現在、今やスポーツを通り越してあらゆる世間に大きく影響を及ぼすほどに成長したこのゲームは、誰もが義務的に知る必要になり、そして違和感を持たずに受け入れられるようになった。

 

それが自分の人生と社会的立場を左右するほどとを知ってなお・・・。

 

 

fin...

 

 

~~~~~~~~~~

 

 

《ダストマン》

 

ゴミの入った黒いビニール袋が人の(かたち)をした汚らわしい人形。

 

鉄パイプを持っていたり(くさり)など他のを持っていたり、なにも持たなかったりする。

 

身に付けているものは、中身を廃棄した者の影響を受けている。




いかがでしたでしょうか。ソウルライク作品の影響を受けて書かせていただきましたが、楽しんでくれたら幸いです。

ご愛読ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。