カードゲーム世界の、場違いソウルライク 作:狸より狐派 ハル
なにとぞ、よろしくお願いします。
昼の公園、そこでも子供たちがホログラムを使ってフィールドマインダーを体験していた。
青く液状の球体が、相手の子供に向かっていく。するとぶつかる直前、緑のような色の光る壁に遮られる。
やったなー、と子供がいう。この世界にとってどこでも見る光景である。
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とある街角にある喫茶店。そこに少年が立ち入る。
「いらっしゃ・・・あぁ、あなたでしたか」
エプロンを着て机を拭いている黒髪の少女、松畑は彼に気づく。この店は彼女の父親が経営しているところだ。
「こちらに座ってください。いまコーヒーをお持ちします」
今回来たのは、松畑がお礼をしたくて招き入れたものである。少年はカウンター席に座り、少女もその内側に行く。
客は誰もいない。この時間帯は人が少ないのだろうか。
松畑はコーヒーメーカーを使って、淹れる準備を進めている。
すると裏から誰かが来た。
「いらっしゃい、キミが
整った顔つきの40代半ばほどの男性が顔を見せる。娘と呼んだあたり、松畑の父親なのだろう。
「うん、お父さんもわざわざここを貸してくれてありがとう」
「ああ、何かあったら呼んでほしい」
そういうと、彼は裏に戻っていった。
彼女がコーヒーメーカーから離れ、かがむ。そこからあるものを取り出して、少年の前に置く。
それはおいしそうな、チョコレートケーキである。
「コーヒーも入れますね」
またメーカーに向かい、今度こそコーヒーをカップに入れた。
それを小さなさらに
「こんなことぐらいしか出来ませんが、お礼です」
彼女は頭を下げた。すると横に少し光りながら羽を持つ黒い子馬も現れる。
この子馬は彼の近くまで寄った。
「その子もあなたを歓迎しているようす・・・事実、助けられましたからね」
そう、彼女は微笑んだ。
「・・・その子たちが見えるようになったのは、小さなのころ。当時の私は気味悪がられていました」
松畑の笑みが消え、一人語りが始まる。
「自身にしか見えないもの、聞こえないものがあって、それを言っても誰も信じてくれず、距離を置かれました。家族はそんな私を見捨てることなく育ててくれましたが、しばらく私も他の人と距離を置く生活を続けていました」
子馬が彼女のほうを見る。少年は静かに話を聞いている。
「
彼女は自分のコーヒーを入れようとし、自分のカップを取り出す。
「私が使うカードは
コーヒーを入れた松畑は机に置く。そして少年と目を合わせた。
「しかしその人たちもまた、私が見えるものが見えません。だから今もずっと隠し通しています。そんななか、あなたが現れた。だから相談できる人がいることが、すごく嬉しいんです。この先、私にできることは些細でしょうが、どうか役に立たせてください」
そう言って彼女はまた微笑んだ。穏やかな黄色い瞳に癒されるように感じた。
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ある工場。正確には
うち1人がやけに苛立っている。目の前には、男が殴られて倒れていた。
「てめえ、どんだけこのチームの看板に泥を塗ったと思ってんだ、ああ?」
その原因は今から1時間前、倒されている男が当時公園にいた子供たちにカードをよこせと脅した。
子供たちは怯えながらも断る。男は端末を取り出し、フィールドマインダーで無理矢理賭け事をやらせようとした。
そこを止めたのが1人の少年だった。
男はその少年も脅したが、引かなかったため、彼にもゲームをやらせようとした。
しかし彼はゲームに必要なカードの山札を持っていない。それどころか持つのが当然のそれを一枚も持っていないのである。
話にならないとわかった男は強く言いつける。しかし少年はそれでも引かなかった。
いい加減頭にきた男は彼の胸倉をつかむ。が、想像以上の力に押され返された。
その結果、男は一方的に少年から殴られた。
頭が痛みで冷え、男は逃げ出した。そして仕返しをするために自信が所属するチームに相談したところ、また殴られたのであった。
「ガキ脅しといて殴られてさぁ、お前・・・前々から思ってたんだがマジで使えねぇな」
副リーダーの男は苛立ちを全く隠さない。そしてリーダーと思わしき男に首を向ける。
「面倒なことになったな?おい」
「・・・はぁ、とりあえずそいつについて教えろ」
「ど、どうにかしてくれるんですか?」
「勘違いすんなバカ。看板についた泥とるためであって、てめえのためじゃねぇ」
副リーダーが吐き捨てる。期待した殴られ男は意気消沈しながら、その少年の特徴をいう。
彼らが行うのは《返し》というものだ。もともと彼らもカードバトルでなにかと問題を起こす存在で、古臭い言い方にすればカードゲームヤンキーといえばいいか。もっとも漫画にあるようなカッコよさは全くなく、この男のように気になるカードを見つけると、無理やり取ろうとする集団だ。
ゆえに今回カードが通じないなら、相手と同じやり方で返せばいいということである。
いつもどこも世にはこんな奴らがいるものである。
しかし彼らは気が付かなかった。
本来どこの世にもいない存在が工場内にいることに。
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「ここだな」
1人の男子学生が廃墟になっている工場の正門に立つ。彼は先日、夜に学校を訪れて怖い目にあった。
その後、以前から噂されていたタチの悪いフィールドマインダーチームの動きが
それにいてもいられず、何とかしようと単身乗り込もうとした。
やり方はフィールドマインダーによるゲームでだ。なぜだかこの世界ではそんなこともこれで決められるらしい。
男子学生が正門を通る。夜とは違い堂々と歩いていき、工場の入り口まで進む。
それなりに大きい両開きの扉に立ち、彼も両手を使って切り開くように開けた。
室内に光が入り込み、奥まで見える。しかし結果は拍子抜けだった。
「・・・誰もいない?」
少し暗かったが、それでも見る限り誰も見当たらない。なかに入ってみる学生は周りを見渡しながら進んでいく。その代わりか奥のところにタイヤやら板やらが乱雑にばら蒔かれていた。
とりあえず入り、なかを確認していく。それでも人は見かけられず、タイヤ付近まで行っても影1人誰もいなかった。
「なんだよ、逃げたのか?」
端にある山積みの鉄やらの金属部品を見る。こう言ったところは来たことはないが、そういう場所かと思い呆れて立ち去ろうとした。
ガシャガシャガシャン。
「えっ?」
山積みの金属がひとりでに崩れていった。そして・・・
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あるそれなりに広い平屋、裏口あたりにある石畳の部屋に誰かがいる。
まず白い肌をしている。白人よりも、というよりありえないほど白い。
それでいてというべきか、筋肉も発達している。そしてその体つきは女性のものだ。
だが足がおかしい。具体的に言うと股がなく、そのまま胴体と同じくらいに太い脚が一本垂直に出ているようだ。
そしておかしいといえば顔もだ。白く荒れながら全体的に逆立っているのはまだギリギリわかるだろう。
だが問題は顔、具体的に言えば目。
その目は普通の人でいうところの
口の牙もそろってまさになにかの妖怪にしか見えない。そんな老婆は今とても大きな本を読んでいる。
先日ここに住むもう一人の住人が持ってきたもので、なにかできないかと渡してきた。なので彼女はとりあえずこれを読むことにしたのだ。
老婆が本から目を離し、上を見上げる。すると部屋の外から足音が聞こえてくる。
扉を開けるその人物。この少年こそがもう1人の住人である。
「ああ、お前さんか。とりあえず読んでみたんだが・・・」
一度少年に目線を合わせると。また本のほうに目線を移す。
「まったく何書いてるかわからなかったよ。とりあえずこの本には妖力・・・いや魔力といったほうが正しいか。それが詰まってることぐらいしか、だね」
横にあったとっくに冷めている湯呑を口にする老婆。もう一度少年のほうに目を向ける。
「・・・それで、なにかあったかさね?」
そう質問され、少年は先ほど電話があったことを話す。
深恵からの連絡で、今日学校で親しい1人が動揺しながらこんなことを言っていた。
好き勝手やっている奴らがいる廃工場にいくと、鉄くずが集まって人の形しだして、こちらに歩いてきたとのこと。
その者は驚いて真っ先に逃げたためそのあとにどうなったかはわからない。だがこの目で確かに見たと言ってきたそうだ。
周りの者たちは全然信じていなかったらしいが、深恵と少年、そしてこの老婆には心当たりがありすぎた。
「ふむ・・・このところ多くなってないかい?本来見えない者が見るだなんて。まあつぶせば同じか」
そう言って老婆は立ち、一本しかない足で跳ねながら大きく厚い棚に向かう。
その棚には何段かに下から分かれており、剣やら、槍やらが寝かされている。
うち、その一本の武器を取り出す。それはメイスと呼ばれる鈍器であり、棒こと
「鉄くずは硬い、刃じゃ軽いだろうから持っていきな」
少年はそれを確かに受け取った。
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夕方。例の廃工場の近くにやってきた少年。そこで先に来ていた深恵と仔馬に出会った。
「すいません。心配になって来ました。私は中に入れませんが・・・その、なにか手伝えることはありませんか?」
少年は現状を確認する。
「少なくともここからでは、なにが起こっているのかがわかりません。ですが気づいてますか?工場が・・・どこか暗いことに」
たしかに、まだ夕方に入ったばかりだが、何となく工場が暗く感じる。
というのも怪物がいる場所はどういうわけか、そう暗く感じるのだ。
「それに気配を感じるんです。あの工場の中に何かがいる。あの日以来、そういうのをより感じるようになったんです」
深恵は不安な顔つきで工場をみる、そしてそのまま少年のほうに向いた。
「お願いです。どうか、どうか無事に戻ってきてください」
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工場の施設入口付近にも地蔵があったため、それにお参りしてから少年は扉に立った。
というのもその入口はとっくに開ききっており、そのまま中に入っていく。
広い室内には、なにかが散らばっている。ある程度近づくとそれは鉄くずだとわかる。
だが散らばっているというには、違和感がある。たしかに形をとどめていないのだが、問題は配置場所だ。
山の形したそれが点在しているようだ。まるで一つ一つ適当にグラムを合わせたパンの生地のように。
そして異変が起きる。
鉄くずの一つが少し動く。そしてそれが再度動くと、ほかの鉄くずが動き出す。
別の場所に山積みになっている鉄くずもそうだ。まるでその場所の中心にそれぞれ集まる。
そのせいで不自然に建てられていく。下から徐々に、まるで人の脚。正確には骨組みのような形で。
どんどんと上に作り上げられていく。ついにそれは人の形をしだした。
そう、この鉄くずでできた人形たちこそ、今回の少年の相手である。
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《クロポニサス》
全身真っ黒で、羽が背に生えた小さな仔馬。
黒は不吉の象徴と言われる一方、何色にも染まらない美しい色ともいわれている。
大きくなれば、さぞ美しい天馬となるだろう。
ご愛読ありがとうございます。
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