『稟くん、桜ちゃん、おはよう!』
『えっ、か、楓?…ああ、おは…よう』
『おは…よう、楓…ちゃん?』
学校に行く途中に待ち合わせをしていた相手。
にこやかに、そして大きな声で挨拶してきた楓に幼馴染の土見稟と八重桜の二人はきょとんとしていた。
何しろ、目の前に居る幼馴染の芙蓉楓は引っ込み思案で気の弱い女の子であり、ニコニコ笑いながらこんなに大きな声で挨拶して来た事など一度もなかったのだから。
『な、何か良い事でもあったの楓ちゃん?』
『うん。あのね、昨日新しいお友達が出来たの』
『友達?』
その言葉に稟は不思議そうに首を傾げ、そして少しばかりむっとする。
自分達だって彼女の友達なのに、そんなに楽しそうな笑顔を自分達には向けて来た事は無かったのにと。
『それってどんな人なの、楓ちゃん』
『えっとね、タダくん!じゃなかった。浜菊忠夫くんっていう男の子』
『へえ~、私も会ってみたいな。あれ、どうしたの稟くん?』
『…別に』
『別にって、待ってよ稟くん。おいてかないでー』
楓を明るく元気にしてくれたその男の子に少し興味を持った桜だが、稟はそれが何となく気に入らなかったのかスタスタと早歩きで進んで行き、その後ろを桜と楓は追いかけて行く。
そして授業前のHRにて……
『今日から皆さんに新しいお友達が出来ます。名前は浜菊忠夫君です』
『浜菊忠夫です、よろしく』
今までは退院間もない事や、人付き合いなどを拒んでいた事などを考慮されて転入を先送りされていたのだが楓との出会いが彼を変えたのであろう。
あの後、孤児院に帰ってから院の子供達に今まで態度が悪かった事を謝り、仲直りをした。
これでもう大丈夫だろうと菊山先生は以前から転入の話を進めていたのが功を奏し、忠夫は今日から転入する事が出来たのである。
『あーー、タダくんだ♪』
『あれ、楓。このクラスだったんだな』
忠夫が転校生として同じクラスにやって来た事で満面の笑みを浮かべる楓。
当然、そんな楓を見て驚くクラスメイト達。
そして……
『あの子が楓ちゃんの新しいお友達なんだ。すごい偶然だね、稟くん』
『そうだな……』
喜んでいる楓を見て、自分も笑顔になる桜だが、それとは逆に稟はふくれっ面でそっぽを向く。
稟の忠夫に対する第一印象は友達の楓を取られたと感じた嫉妬からか、”少し嫌な奴”であった。
ー◇◆◇ー
「おはよう」
「おはようございます」
「おはよースッ」
「おはようございます」
「おはよう」
挨拶をしながら教室に入って来る稟達に麻弓=タイムは駆け寄って行く。
「あっ、土見くんにラバーズ諸君。聞いた?このクラスに転校生が来るんだって」
「もっとも男らしいから俺様には何の関係もないけどね」
「このクラスに?と言う事は忠夫の奴」
「一緒のクラスになったんですね」
「何?もしかして知ってる人」
「は、はい」
「わっ、楓ってば何赤くなってるの?もしかして楓の好きな人だったりして」
「はははは、麻弓、冗談は胸だけn…グボハッ」
そう微笑みながら答える楓の頬は赤く染まっており、それを見た麻弓はほくそ笑みながらからかう様に聞き、樹は麻弓の鉄拳を受けて吹き飛んだ。
「まったく、乙女の胸を冗談呼ばわりするとは何事よ!ねえ、楓……」
そう言いながら楓を見ると楓は真っ赤な顔をしながら俯いていた。
「ち、ちょっと、楓……えっ、マジ……?」
「「「何だとーーーーーーーーーー!!」」」
KKKの悲痛なまでの叫びは学園中に響き渡った。
第四話
「激震!嵐のバーベナ学園」(前編)
横島の担任となる女教師、紅薔薇撫子は肩をいからせながら廊下を歩き、その後からは漫画の様なタンコブを頭に作った横島が付いて行く。
「まったく、仮にも担任になる女性にいきなり飛び掛って口説こうとする奴があるか」
職員室に入った横島は、撫子の姿を見るなり何時ものルパンダイブをかまし、容赦ない拳骨をその頭に落とされたらしい。
「す、すんません」
「くれぐれも言っておくが厄介な問題だけは起こすんじゃないぞ。解ったか、横っち」
「なるべく努力してみます」
「なるべくでは無く、しっかりと努力しろ!」
「先生…、出席簿のカドは体罰に入ると思います」
撫子は横島のそんな呟きを無視して、教室に着くと騒がしい生徒達を一括しながら教室へと入って行く。
「騒ぎはやめて全員席に着け。皆は知っているようだが今日は転校生を紹介する。先に言っておくがこれから紹介する奴はある事情から土見と一緒に芙蓉の家に住む事になっている」
「「「何だってぇーーーーーーーーーっ!」」」
「やかましい!これは芙蓉の父親も承知している事だから詮索は無用だ。では横島、入って来い」
「どうも、横島忠夫です。よろし……」
撫子に呼ばれると横島は教室に入って行くが、男共は殺気を隠す事無く横島を睨み付けて来る。
「な、何じゃ、この尋常じゃない殺気は」
「気にするな。もてない男共の哀れなやっかみだ」
撫子はその男共にあっさりと止めをさした。
「「「ひ、ひどい……」」」
男共に出来たのは涙ながらにそう呟く事だけであり、そんな男共を尻目に麻弓は手帳を片手に横島へと近づいて行く。
「ねえねえ。貴方、楓とどんな関係なの?そこの所をちょっと詳しく…」
「僕は横島忠夫、美しい君の名前を教えてくれないかな?」
横島は麻弓に話しかけられるや否や、すぐさま駆け寄りその両手を掴んでナンパを始める。
「えっえっえっ?美しい?私が?何、ひょっとして私ナンパされてるの?あ、そっか、私は麻弓=タイム。よ、よろしく」
「よろしく、麻弓ちゃん。へー、オッドアイか。幻想的で素敵な瞳だね」
麻弓の左右、色の違う瞳を見つめながら横島は微笑みかける。
(へ……今何て言ったの?……幻想的で素敵……そ、そんな事言われたの初めて、何?これって私のターン?つ、遂に私の…貧乳の時代がっ!」
麻弓は横島に手を握られたまま顔を赤くする。
そんな二人を見ながら、楓は頬を膨らませて剥れている。
「むー、タダくんてば」
「ははは…。忠夫の奴、やはりこうなったか」
「よかったじゃないか、麻弓。その胸でもいいそうだよ」
「誰だ、お前は?」
横島はそう言って来る男、樹を睨みつけながら聞く。
「一応紹介しておくわね横島くん。これは自他と共に認める史上最悪の女好きの男、緑葉樹よ」
「史上最悪とは聞き捨てならないね。俺様はすべての女性を平等に愛しているだけだよ」
「では緑葉よ。一つ聞くが”その胸”でもとはどういう事だ?」
「どうも何も麻弓の貧乳では…」
「馬鹿野郎ーーーっ!」
「がはあっ!」
横島は樹に駆け寄るとギャラクシアンなファントムをぶちかました。
「い、行き成り何をする!?」
「愚か者め、貧しいとは何事だ!女性の胸に貧しいという形容詞はあってはならない。俺も男だしもちろん巨乳は大好物だ、しかし同時に小さな胸も否定しない。女性の胸は生命を育む神秘の象徴、それを小さいというだけで否定した貴様に女好きを名乗る資格はない!」
横島が言い終えると樹は真っ白に燃え尽き、とたんにクラスの女子から拍手が巻き起こった。
「そうっス、胸の大きさなんか関係ないっス!」
「だよね、だよね!」
「はあ、またややこしい奴が増えたか」
撫子は額に手をやりながら頭痛を堪えている。
「お、俺様は……俺様は……」
樹は未だ白く燃え尽きたままだった。
《続く》
(`・ω・)横島、初登校の巻。
撫子、そして麻弓をナンパした彼ですが女性の胸に大きい・小さいは関係ないと樹を論破した事でクラスの女性陣からの好感度は良い様です。
『ちょ、それはきっと俺の好感度さんなんだよ。異世界の何処を探しても見つからないと思ったらそんな所に異世界召還されていたんだよ。だからそれは俺の落し物で行方不明の好感度さんなんだよ。みたいな?』
( ・ω・ )……いいかげんアキラメロン。
ひとりぼっちのSSも書いてみたい気がするけど遥はオイラの手にはおえなそうにもない。
五示正司さんはマジすげぇ。