そこは使われていない空き教室、黒いカーテンで窓が覆われた暗闇の中。
そして黒板の前には代表であろう一人の男が立っており、机や椅子が片付けられた場所には幾人もの黒くて怪しい装束に身を包んだ男達が立っている。
まるで何処かの眼鏡な娘を崇める教団の様だ。
『全員集合したようだな』
『ああ』
教室の前面にはある少女の大きな写真が飾られていて、男達…もとい男共はその写真を崇める様に見上げている。
『美しい、我等の女神よ』
『しかし、またしても邪魔者がいるな』
『K K K・P P Pは軽くあしらわれているらしい』
『ちっ!あの役立たず共が』
『だが何としても』
『うむ、奴を排除して我等の女神を……』
『『『『タマモたんを我らが御前に!!』』』』
そう、男共の眼前に飾られている写真には………
隠し撮りされたタマモの笑顔が写っていた。
閑話1
「さらばTTT!
キーンコーンカーンコーン
「ふう、やっとメシか。腹減ったー。」
「横島君は今日も今日とて愛妻弁当なのですか?」
「いえ、今日は……」
楓は申し訳なさそうに俯いてしまった。
「今日は珍しく楓も寝坊してな、弁当までは手が回らなかったらしい」
「すみません……」
「いや、いいんだよ。今日寝坊したのだって疲れがたまってたんだろうし、少しは手を抜くぐらいの方が…」
「それはダメです!タダくんのお世話で手を抜くなんて考えられません!」
そう言って楓はすごい勢いでまくしたてた。
「楓さんは横島さまのお世話が本当に好きなんですね」
「はい、私の生きがいですから」
頬を染めながらそう言う楓を見て男共から何やら禍々しい黒いモノが噴き出してきた。
「な、何で楓ちゃんはあんな奴の為に…」
「奴を葬れるなら俺は悪魔にだって魂を売るぞ!」
「……アレにか?」
「「「………」」」
男共の脳裏にはのほほんと笑っている長髪の男が再生される。
「二束三文で買い叩かれた上にクーリングオフで突き返されるのがオチだな」
「神は死んだ…」
「……アレがか?」
「「「………」」」
男共の脳裏には和服を着こんだ恰幅のいい親父が再生される。
「「「幸せになりたいだけなのに…」」」
―◇◆◇―
そして昼休みになると、タマモとプリムラが一緒に横島達の教室にやって来た。
「ヨコシマー、食堂に行きましょ」
「おう、行くか」
「今日は私もお弁当はないから一緒に行ってもいい?」
「私もー」
「では、私もお願いしますね」
「当然でしょ、皆で行こう」
シアと桜とネリネがそう言うとタマモは当然と笑いながらそう言った。
「麻弓はどうする?」
「当然お付き合いするのですよ」
「ならこれで全員だな、じゃあ行くか」
「さらりと俺様を除外した稟には地獄への片道切符をプレゼント、フォーユー」
「……自分で使え」
―◇◆◇―
「初めて来たけど結構広いのね」
横島達が生徒達で賑わう食堂を見回していると、其処に亜沙とカレハが連れだってやって来た。
「あっ稟ちゃーん、皆も今日は食堂組なの?」
「ええ、亜沙先輩達もですか」
「うん、今日は日直だったのをうっかり忘れていてお弁当作る暇がなくて」
えへへと笑いながら頭を掻く亜沙であった。
タマモはメニューを眺めながら“ある食べ物”を捜していたが、どうやら無事に見つかたようで目を輝かせながら注文する。
「私はきつねうどん♪」
「じゃあ、俺も」
それぞれが自分の食事を注文していった。
「ここのお揚げは美味しいわね、気に入ったわ」
「タマモちゃんはやっぱりお揚げが好きなんだ」
「もっちろん!あ…もう無くなっちゃった」
「ほれ」
横島はごく自然に自分の揚げをタマモの器に移した。
「うふ、ありがとヨコシマ♪」
「でもそれじゃあ忠夫くんの分は素うどんになっちゃうよ」
シアの疑問に横島は溜息を付きながら答える。
「俺のお揚げはタマモの腹に入るように宇宙意思に定められてるんだ」
「そういう事♪」
「う、宇宙意思っスか…」
「…宇宙意思っス」
「まままあ♪宇宙意思に定められた二人、そして二人はあーなって、こーなって、まままあ♪」
もう、突っ込む者はいないらしい。
そんな彼等を食堂の入口から見つめる集団が居た。
『おのれ横島め、なんと羨ましいシチュエーションを……。まあいい、今日こそは目に物を見せてやる』
そして放課後、稟達は帰り道を歩いていると横島がふと思い出した様に呟いた。
「今日の追撃戦は結構楽だったな」
「そういえば何だか何時もより人数が少なかった様な」
「……まさかな…」
「稟、何か心当たりでもあるの?」
タマモは肩車をさせている横島の頭の上から聞いた。
「いや、プリムラが学園に通いだした時にもこうやって襲って来る親衛隊の数が減った事があって」
「……ちょっと待て……それって、まさか…」
横島が嫌な予感に顔を青くしていると。
「じーーーー」
プリムラは羨ましそうに横島に肩車され(せ)ているタマモを見つめている。
「なによ、プリムラ。ここはダメよ、私の指定席なんだから」
そう言ってタマモは横島の頭にしがみ付き居場所を主張する。
「ちぇ」
そしてその目線を稟に変えて。
「じーーーー」
「な、何かなプリムラ」
「お兄ちゃん、私も肩車」
稟がプリムラの視線にうろたえていると、数十人の集団が道を塞ぐように広がって行く。
「「「「横島忠夫!今日こそ決着をつけさせてもらうぞ!」」」」
横島達が目を向けるとそこにはバーベナの制服を着た一団が居た。
「……やはりか」
「何よあいつら?」
タマモがそう呟くと集団の中から一人の男が歩み出て来た。
「我々ですか?タマモたん。我々は……」
男がそう言いながら右手を高々と上げると、後ろに居る集団はその合図で声を上げて叫び出す。
「「「「我々は麗しきタマモたんを悪しき横島から解放する為に結束を固めた同志達、その名も『とっても、とっても、タマモたん』通称「TTT」であります!」」」」
ひゅ~~~…
シアや楓達女性陣を含め、全員は残念そうな目でその集団を見つめていて、タマモはというと、全身に鳥肌を立てて、そのナインテールも逆立っていた。
「「「「さあ、我らが女神よ!今こそ我々にお言葉を!」」」」
期待に満ちあふれていた彼らにタマモが下した言葉は。
「……死ねば?と言うより 死 ん で 」
パキインッ
そして、彼らは期待に満ちていた笑顔を崩すことなく一瞬で石化し、稟と横島はその石像を通行の邪魔にならない様に道の端へと転がして行く。
「…さて、帰るか」
「そうだな」
「ねえねえ楓、今日はこのまま楓の家に遊びに行ってもいい?」
「構いませんよ、シアさん達も良かったらどうぞ」
「わーい、行く行く」
「遠慮なくお邪魔させていただきます」
「じゃあ、早く帰ろう」
稟はすたすたと足早に進むが、
「じーーーー」
プリムラは稟の肩を見つめながら後を追いかけていた。
「ねえ、お兄ちゃん。肩車…」
「さあ、帰ろう帰ろう、すぐ帰ろう」
「肩車ぁ~~」
「微笑ましいねー」
「そうですね」
微笑みながらプリムラを見つめるシアとネリネだが、楓はタマモを肩車している横島を見つめていた。
「じーーーー」
「な、何を見ているんじゃ」
「い、いえ何でも」
「ふふん♪」
「む~~」
横島に肩車されているタマモは勝ち誇った様に頭に抱き付き、それを見た楓は頬を膨らませて剥れる。
そんな暖かな雰囲気の中忠夫達は帰って行った。
そして、石化したまま残されたTTTの面々は自力で復活するまでの数日間、放置されていたままだったといふ。
《続く》
次回予告
何時も其処に笑顔があった。
何時も其処に笑い声が聞こえていた。
何時も其処に貴方がいた。
でも今は……
《NEXT・第六話「広くて狭い世界」》
横島さぁん……会いたいよぉ…
(`・ω・)プリムラは横島に懐いているだけでラヴァーズ入りしている訳ではありません。