ちなみに二つの世界に時間のズレはありません。
学校からの帰り道。
楓達と別れ、孤児院へと歩いていた忠夫が空き地を通りかかった際ふと振り返ると其処には後をつけていた稟が居た。
『何か用か?』
『・・・・』
そう問われても稟は答える事も無く、ただじっと忠夫を見つめていた。
『ひょっとして、俺が楓と仲良くしているのが気に入らないとか』
『そ、そういう訳じゃないけど…』
図星を突かれた稟だが、素直に認める事が出来ずに言いよどむ。
『楓と仲良くするのにお前の許可が必要なのか?』
『違う!そうじゃ…なくて…、僕が、楓は僕が笑わせたかったんだ!』
此処でようやく稟は忠夫を拒絶していた理由に気付いた、楓の本当の笑顔は自分が引き出したかったという事に。
だから自分より先に楓に笑顔を与えた忠夫が気に入らなかったんだと。
『くっだらねぇ!』
『何だと!』
『俺が楓と会ったのはついこの前だ。だから他にどんな友達が居るかなんて知らないしどんな付き合い方だったのかも知らねぇ』
『何が言いたいんだよ…』
俯きながらも目線だけは離さない稟に忠夫は言う。
『つまり楓はそれほど明るい子じゃなかった。でも今はちゃんと笑う事が出来る』
『……(コクリ)』
『それの何が気に入らないんだ。自分じゃなきゃダメだなんてただのワガママだろ』
正論ではあるが、それを素直に受け入れるには稟はまだ子供過ぎた。
『お前が、お前に楓の何が分かるんだ!』
『はぁ……、さっきも言ったけどまだ会ったばかりだから何もかもなんて分からねーよ。だけど笑っている時は楽しそーで可愛いって事は分かるし、笑わせた俺が気に入らないみたいだって事もな』
『違う!』
『違わねーよ』
『うるさぁーーーーっい!』
稟はパンチを繰り出すが忠夫は目を瞑りながら顔をずらす。
”紙一重でパンチをかわす俺、カッコいい”をやりたかった様だが残念な事にずらす方向を間違えてしまった。
『ぶべっ!』
『ほえっ?』
稟の右ストレートは忠夫の右頬に突き刺さった。
『いってぇ~~、やりやがったな!』
『やったも何も今のは自分から…』
『問答無用じゃ~~~っ!』
・
・
・
・
・
『『ぜ~~は、ぜ~~は』』
十数分後、息を切らせながら横たわる彼らがそこに居た。
所詮は子供同士の喧嘩であり、大した怪我もしていなかった。
『や、やるじゃねーか…』
『お、お前もな…』
そう言いながら拳を合わせた二人は同時に笑い出した。
『『漫画かっ!!』』
ともあれ、お互いを認め合った忠夫と稟は翌日から親友となり、共によく遊ぶようになった。
まあ、傍には剥れた少女が居たようではあるが…
『タダくんのうわきもの』
『…それはちょっと違うんじゃない?』
「…何か懐かしい夢だったな、……ところでタマモ」
「何?」
「俺の布団に入る時には狐の姿になれと言っといた筈だが」
「気にしなーい、気にしなーい♪」
タマモは布団の中で横島に下着姿でじゃれつきながらそう言う。
「いいから早く布団から出て着替えんかい、こんな所を誰かに見られたら……」
だが、非常にも部屋の扉は開かれ、起こしに来た楓が顔を覗かせる。
「タダくん朝ですよ、はやk……」
「ふふーん♪」ゴロゴロ
そこで楓が見たのは布団の中で横島にじゃれつくタマモ(くどい様だが下着姿)であった。
「タ、タダくん…やっぱり……」
「ちゃうんやーー!ワイはロリやないんやーー!!」
「ちゅっ♪」
楓は瞳を潤ませ後ずさり、下着姿の(しつこい!)タマモが頬にキスをすると同時に泣きながら走り出した。
「ふえぇーーーん!タダくんのロリペドーー!!」
「人聞きの悪い事を言うなーー!!」
「言わせときなさいよ♪」
楓を追い掛けようとする横島だがタマモがしがみ付いたままなので動けないでいると廊下から楓が何処かへと電話をかける音が聞こえて来る。
ピポパポ……トゥルルルルル
ガチャリ
『え~~ん、もしもし、麻弓ちゃ~ん』
「待たんかーーーい!!」
「………朝から何だ、このカオスは?」
歯ブラシを咥えながら稟はそっと呟いた。
第六話
「広くて狭い世界」(前編)
横島達が加わって賑やかさをましたSHUFFLE!世界と違い、横島達が消え去った此処GS世界では都庁地下の会議室に横島に関わりを持っているメンバーが集められていた。
「美神さん、何の話があるんでしょう?」
「さあ…ね。良い話だといいんだけど……」
おキヌ~
横島さん達が居なくなって数週間、私達は仕事そっちのけで彼を捜し続けた。
死んだとは誰も考えなかった、きっと何処かで身を隠しているのだと。
そのうち『あ~、死ぬかと思った』と呑気に帰って来る筈だと。
横島さんとタマモちゃんを襲った反デタントの過激派達は神魔の正規軍に捕えられていた。
ハルマゲドンを画策し世界を滅ぼしかけたとして厳しく処罰されるとの事だ。
まあ、それより先に美神さんと私達が彼等を追い詰めたんですけど。
この世界は横島さんが守った世界、愛した女性の命と引き換えに…
あの時の慟哭は今でも忘れる事が出来ない。
この世界は横島さんが守った世界、でも貴方の居ない今では私達にはあまりにも広く、そして狭すぎる世界。
雪之丞・タイガ―・ピート~
「まさか、横島の捜索を打ち切るなんて話じゃないだろうな」
「そんなのワッシは許せないんジャー!」
「僕もそんな話は認めません!」
友人達三人は憤っていた、彼らにとって横島は得難い友人なのだから。
雪之丞は魔に墜ちかけた自分を闇から救ってくれた。
ピートとタイガーは人外の力を持つ自分を唯の友人として受け入れてくれた。
横島からすれば何の事は無い、ただ当たり前の事。
令子・おキヌ~
「もし、そんな事になったら…私……」
「ママがそんな事をするはずないと思うけど、もしそうなら…」
二人にとって横島は掛け替えのない存在。
おキヌには幽霊だった頃からの想い人、楽しい時も悲しい時も彼と共にいた。
暫しの別れの時に流してくれた涙を今も忘れていない。
令子にとって彼はただの丁稚だった。
彼女は覚えてなくとも魂には刻まれている、彼への想いを。
認めたくないだろうが認めざるを得ない、彼を想っている事を。
彼が其処に居る。それが当たり前だった、だが今は……
犬塚シロ~
「拙者は例え一人になってでも先生を探し出して見せるでござる!」
彼女は何処までも諦めない。
シロにとって横島は師匠であり兄、そして意識し始めた恋しい男性。
彼にとっても大事な弟子、そして妹、当たり前だがロリとは認めてない。
冥子・めぐみ・エミ~
「え~そんなの~冥子は嫌なの~」
「私だって嫌です!」
「もしそうならGS協会の上層部全員を呪い尽くしてやるワケ」
彼女達も横島を見捨てる様な事は許せなかった。
冥子はその暴走体質ゆえに避けられている自分を普通に女の子として扱ってくれた。
魔鈴も魔女と疎まれていた自分に自然体で接してくれた。
エミも呪術師で殺し屋でもあった自分を恐れずに居てくれる。
横島からすれば女の子に対して当たり前の事。
愛子~
『横島くん…、こんなの…青春じゃない…』
彼女は人では無く妖怪、それは自分でもよく分かっている。
横島も彼女を妖怪として認識しているし、人とは見ていない。
だが、彼にとって彼女は“愛子という名の九十九神”、ただそれだけである。
妖怪と認識した上で仲間として受け入れている、あくまでも自然体で。
彼女にとってそれは何よりも心地良かった。
小鳩・貧~
「横島さん…何処に居るんですか?」
『小鳩……、小僧のバカタレが…』
誰もが離れて行った、誰も近付いて来なくなった。
当然だろう、誰も貧乏神に取り付かれた者に関わり合いたくなどない。
だが彼は違った、いくら元から貧乏だったとはいえ自分から歩み寄って来た。
貧乏神の呪いを中和させる為ではあったが、彼との結婚式は彼女にとってある意味での本物の儀式であった。
そして何時かは本当に彼の隣に立ちたい、そう想っている。
マリア~
「横島さん・マリア・会いたいです」
彼女はドクター・カオスによって作られたアンドロイド。
だが、その体を動かしているのはOSやプログラムなどではなくメタ・ソウル、本物の心。
嘗てはホレ薬で仮初の恋をしたが、それは何時しか本当の想いへと昇華していた。
―◇◆◇―
「揃った様じゃな」
猿神・聖天大聖に連れられて美神美智恵や小竜姫にヒャクメ、ワルキューレなど神魔の陣営がやって来た。
彼女達もまた横島を想う者達。
小竜姫にとって彼は久しぶりにやって来た修行者の一人だった。
でも今は心を許した唯一人の男性。
ヒャクメは神界の仲間からも心を覗かれるのを恐れられていた。
だが彼はそんな事も関係なかった。
ワルキューレにとって彼は任務遂行の為の障害でしかなく、それゆえに令子から遠ざけようとした。
だが彼は自分の意思で強くなった、戦士であると認めざるを得ない程に。
パピリオにとっては最初はただ面白そうなペットであり、そして敵だった。
だが彼は魔族で敵でもあった姉を愛してくれた、命を賭けて闘ってくれた。
結果、姉は死んでしまったが今でも愛し続けてくれている。
そしてそんな彼をいつの間にか自分も女として彼を愛している。
ぺスパにとって横島は姉を誑かした憎い相手、愛する人の前に立ちふさがった倒すべき敵だった。
だが、姉が命を賭けて愛した男、愛した父の本当の願いを叶えてくれた男。
愛とは違うが気にはかかる。
―◇◆◇―
歩いて来る猿神に雪之丞は食って掛かる。
「てめえ、この猿!横島の捜索を打ち切るってのはどういう事だ!」
「……何の事じゃ?」
「とぼける気か、捜索打ち切りの報告なんだろう!」
「馬鹿モン!その様な真似はワシが許さん!誰がそんな戯言(たわごと)を言ったんじゃ!」
「へ……?」
凍て付くほど冷たい空気が辺りを包み、そして…
「このクソガキッ!!」
バシイィィンッ!!
「がはあっ!!」
令子の神通鞭が雪之丞に襲い掛かる!
「ウフフ、雪之丞サンッタラ~」(●▼●)ニコリ
ピロロロロ~~~♪
「ぎゃあああああ~~~~~~~っ!寄るな触るな近づくな勘九郎!何故服を脱ぐ!? やめろお~~~~~~~っ!!」
「紛らわしい御仁でござるな」
シロの霊波刀が雪之丞の“霊体”に襲い掛かる!
「ぐわあ~~!や、止めてくれ~~~!!」
「みんな~、お願い~」
ギャオオオーーーーーーーーンッ!!
「ぎゃあああ~~~~~~っ!!」
冥子の式神十二神将が雪之丞に襲い掛かる!
「全く、困った方ですね。あ、これは昨日までのツケです」
めぐみの料理店の請求書が雪之丞に襲い掛かる!
「そ、そんな…せめて月末まで!!」
『ちょっと教育が必要ね』
愛子の本体の机から異空間に飲み込もうとする舌が雪之丞に襲い掛かる!
パクンッ!モグモグ……ペッ!!
「……せ、青春万歳…」
「貧ちゃん!」
『任せとき小鳩。今日からアンさんは“さらに”貧乏や』
小鳩に頼まれた貧の神通力で貧乏の呪いが雪之丞に襲い掛かる!
「い、嫌だぁ~~っ!ゆ、諭吉ぃ~~、行かないでくれぇ~~~!!」
「雪之丞さん・お仕置き・です。トル○ード・○ラッシャー」
「そげぶっ!」
マリアのSKLなロケットパンチが雪之丞に襲い掛かる!
そして数十分後、HP1の彼が其処に居た。
「まったく、紛らわしい。で、ホントの所は何なのママ?」
「横島君とタマモちゃんの事だけど、ある程度の事が解って来たわ」
「な、何か解ったんですか?」
横島とタマモが神魔の過激派に襲われ行方不明になってから数週間、彼女達は気が気ではなかった。
神界と魔界も同様で、もしどちらかの勢力が単独で行ったものであればハルマゲドン突入はおそらく間違いはなかったであろう。
表現は悪いが、両陣営が関わっていた為に最悪の事態にならなかったのは不幸中の幸いであった。
そしてヒャクメが説明を始める。
「横島さんが襲われた場所を調べていたら時空震の痕跡があったのね~」
「時空震って事は未来か過去に居るって事?」
「どうもそうじゃ無いみたいなのよ」
「??」
不思議がっている令子達に猿神が説明を付け加える。
「時空震のベクトルが過去にも未来にも向かっておらんのじゃよ。どうやら二人は何処かの平行世界に飛ばされたらしいんじゃ」
「「「へ、平行世界ーー!?」」」
呆然としている皆の中で令子が問いかけた。
「ちょっと待ってよママ、いくら何でも平行世界っていうのは考え過ぎじゃない?」
「私も最初はそう思ったけどそう考えざるを得ない事実があったのよ」
「何それ?」
「…入って来てください」
美智恵がそう言うと扉を開けて一組の夫婦が入って来た。
「!!」
「よ、横島さんのご両親…」
《続く》
(`・ω・)わざわざ説明する必要ないと思うけどエミの場合は弟感覚です。
ピートは逃げられません。
「そんなぁ!」