G×S!夕陽が紡ぐ世界   作:乱A

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第七話「この歌はあの娘の物だから」

 

稟と忠夫の蟠りも解け、四人で遊ぶ様になった数日後、忠夫達は芙蓉家の前に集まっていた。

 

『紅葉母ちゃん、楓は大丈夫?』

『ええ、大丈夫よ』

 

風邪をひいて寝込んでいる楓を見舞いに来た忠夫達だがうつるといけないからと部屋には上げてもらえなかった。

 

『心配だなぁ』

『あの子は元々体が弱いからちょっとした風邪でも寝込んじゃうのよ。もう少し元気になったら会わせてあげるからね』

『うん、わかった』

『おばさん、これ楓ちゃんにあげて。私と稟くんと忠夫くんでおったの』

 

桜が差し出したのは折鶴の束、流石に千羽とはいかずに三十羽ほとだったが。

 

『ありがとう三人共。きっと楓も直ぐに元気になるわ』

『じゃあ僕たち帰ります。楓によろしく』

『楓ちゃーん、早く遊ぼーね!』

『さよなら、紅葉母ちゃん』

『あ、ちょっと待って忠夫君』

 

帰ろうとする三人だが、紅葉は忠夫だけを呼び止める。

 

『ん、何?』

 

振り向いた忠夫に紅葉は腰を下ろして頭を撫でながら語り掛ける。

 

『楓の事、守ってあげてね』

『それは良いけど何?いきなり』

『だって楓は忠夫君のお嫁さんになるでしょ』

『お、お、およめしゃんって…な、にゃにを…』

『あら、嫌なの?だったらお婿さんに来る?』

『お、お、おむこう……』

『あははは、冗談よ。まだ早いものね』

『うう~~』

『おーい忠夫。帰らないのか』

 

紅葉にからかわれ、顔を赤くしている忠夫を稟が呼ぶ。

 

『あらら、邪魔しちゃったわね。忠夫君、またね』

『うん、それとな紅葉母ちゃん』

『なあに?』

『楓はちゃんと俺が守るからな。約束する!』

『え、ええ。お願いね」

 

ニカっと笑いながらそう言う忠夫に紅葉も一瞬驚きながらも笑顔で答える。

 

 

そして折鶴を持って楓の部屋に戻ると…

 

『お母さん!変な事言わないでよ~~』

『あら、聞いてたの。で、どっちが良いの?』

『……およめさん』

 

 

 

第七話

「この歌はあの娘の物だから」

 

 

ある日の放課後、女生徒達が集まって占いや最近人気の香水などの会話に花を咲かせていた。

そしてTVの芸能人や歌手の話になると一人の少女がネリネに一つの願いを頼みかけて来た。

 

「ねえねえ、ネリネちゃん。魔族の友達から聞いたんだけどネリネちゃんの歌って『天使の鐘』って称されるほど凄く綺麗なんだって?」

「え~、そうなんだ、私も聞きたいな。ねえ、歌ってみてくれない」

 

(そういえばあの時公園で聞いた歌はとても綺麗だったな)

 

そんな彼女達の話が耳に入ってきた稟が近くの公園で歌っていたネリネの歌声を思い出しているとネリネは何故か辛そうな顔をしていた。

 

「どうかしたのネリネちゃん?」

「い、いえ何でもないんです。すみませんが歌は歌えません」

「えー、どうして?」

「ごめんなさい、歌は…嫌いなんです」

 

済まなそうにそう言うとネリネは一人で教室を出て行き、その後姿を不思議そうに眺めていた横島に稟が話しかけて来た。

 

「嫌い…か」(本当に嫌っているような顔じゃなかったけどな)

「忠夫、ちょっといいか?」

「ん、何だ稟?」

(ネリネの事で話がある)

(ネリネちゃんの?分かった)

 

稟と横島の二人が教室を出ようとすると、ある意味空気を読んだ空気の読めない馬鹿が自らの死刑執行書にサインをする。

 

「おや、二人で何処に行くんだい?はっ、もしかしてめくるめく禁断の世界に」

 

「「「「「キャーーーーー♪」」」」」

 

「「めくるめく禁断の大霊界に逝けーーー!!」」

「ぐはあっ!!」

 

ガチャアァァンッ

 

二人に殴り飛ばされた樹は窓ガラスをぶち破り外へ飛ばされた。

 

「うわああぁぁぁぁぁ!」

 

ベシャッ

 

「ね、ねえ稟くん。なんか聞こえてはいけない効果音が聞こえた様な気がしたんだけど」

「気のせいだ」

「気にするな」

「まあ、緑葉くんの事だから小一時間もすれば再生するのですよ」

「そ、そうなんだ」

「あはは…」

 

そうして二人が教室を後にすると、

 

(ねえ、どっちが受け?)

(う~ん、土×横も捨てがたいけど)

(え~、横×土だよ)

(む~、悩むっス)

(やはりここはリバシなのですよ)

(あ、それいいね)

(じゃあ両方作るって事でどうですか?)

《異議なし!》

 

 

 

 

 

そして男子生徒は教室の隅で震えていた。

 

「「「「女の子って……」」」」

 

 

 

-◇◆◇-

 

 

教室を後にした稟と横島は屋上で話をしていた。

 

「歌を歌っていた事がある?ネリネちゃんが?」

「ああ、ネリネとシアが転校してくる前の日だったんだが、家の近くの公園で歌っていたんだ。もし歌が嫌いならあんなに綺麗な歌声は出せない筈だ」

「歌自体は好きだけど何か人前で歌えない理由があるって事か」

「おそらくな」

「ネリネちゃんはお前の婚約者なんだろ。理由を聞いて見たらどうだ?」

「…前にもう一度歌を聴きたいと頼んだ事があるんだがはぐらかされて結局歌ってくれなかったんだ。だから俺でもダメだろう」

「そうか…」

 

 

その後、教室に戻るとネリネは既に早退しており、放課後に魔王邸に行って見たものの、体調が悪くなったからと面会を断られ、そして次の日から学園を休む様になった。

 

「叔父様、リンちゃんは?」

「ごめんね、まだ具合が良くならないんだよ」

「お見舞いも駄目なんですか」

「…ごめんね」

 

数日経ってもネリネは皆の前に姿を見せる事は無く、フォーベシィは少し辛そうな目をしながらもやはり会わせられないと謝った。

 

「じゃあ、ネリネによろしく。行ってきます」

「ああ、行ってらっしゃい」

 

 

学園に着くと麻弓達がネリネの事を聞いてきた。

 

「そう、今日も休みなの」

「心配だね」

「ここは一つ俺様が付きっきりで看病を…」

「はいはーい、人界を滅ぼすような危険な発言は控えるように」

 

麻弓はそう言いながら樹をロープで雁字搦めに括りつけ、窓から外へと吊るす。

 

『あの~、麻弓さん。せめて頭を上に…ああ、頭に血がのぼる』

 

そんな呟きを無視して窓を閉めると撫子が授業の為にやって来た。

 

「全員席に付け。よし、欠席のネリネ以外は全員いるな。授業を始めるぞ」

 

(何なんだろうな、ネリネちゃんの事ほっとけない気がする)

 

横島は窓の外を眺めながらそんな事を考えていた。

 

 

 

 

「お、俺様が…何を……した…」

 

 

 

―◇◆◇―

 

「タダくん、帰ろう」

 

放課後、楓に帰ろうと誘われたが横島は軽く笑いながら断る。

 

「ゴメン、ちょっと用事が出来た。楓達は先に帰っててくれ」

「用事ですか?…!分かりました、先に帰ってますね」

 

楓は横島の言う用事の意味に気付いたのか笑顔で送り出し、そして自分達とは逆の方向に歩き出した横島に稟は語りかけた。

 

「忠夫、ネリネを…」

「任せとけ!」

 

横島もそれに応えて親指を立てて歩き出し、ストックしてあった文珠を意識下より取り出して【捜】の文字を刻みこむ。

 

「さてと、何処に居るかな?え~と、あの丘の上の公園か」

 

【捜】の文珠でネリネの居場所を見つけ、丘の上の公園へと進む横島の後をタマモは気付かれない様に付いて行く。

 

「分かってたのよね、ヨコシマがこういう人だって事」

 

 

 

 

 

―◇◆◇―

 

 

「♪~~♪~~♪」

 

パチパチパチパチ

 

「 !? 」

 

ネリネが結界を張った公園で一人歌っていると拍手が聞こえて来て、振り向くと其処には何時の間にか横島が居た。

 

「やっぱり綺麗な歌声だね」

「横島さま…どうして此処に?この場所には人払いの結界を張っていた筈ですが」

「ちょっとした裏技でね」

 

ネリネが使っていた人払いの結界は人の意識に作用する物であり、【捜】の文珠に導かれるままに歩いて来た横島には作用しなかった為、難なく此処に来れたのだ。

 

「何の御用事ですか横島さま。すみませんが私は一人で居たいんです」

「ねえ、ネリネちゃん。何で歌が嫌い何て言う嘘をつくのかな?」

「嘘じゃありません!私は…」

「嫌いだって言うなら何でわざわざこんな結界まで張って歌うんだよ。嫌いなら歌わなければいいだけだろ」

「…貴方には関係ありません」

「友達が苦しんでいるのにほっとけないじゃないか。それともネリネちゃんにとって俺は友達じゃないのかな?」

 

(何故この人は踏み込んで来るのだろう?)

 

「…この歌は私の物じゃないからです」

「ネリネちゃんの歌じゃない?」

 

(何故私はこの話をしようとしてるのだろう?)

 

「この歌は、稟さまへの想いは、そして…この命はあの娘の……リコリスの物だからです」

「 !! …命が?」

 

(…?何故貴方はそんな悲しそうな顔をするのですか?)

 

「リムちゃんが人工生命体の三号体だという話は知っていますね」

「うん」

「二号体は…私のクローンだったんです」

「ネリネ…ちゃんの?」

「はい、私は生まれつき強力な魔力を持っていました。ですが幼い子供にはその強力すぎる魔力は体を蝕む毒の様なもので私の体は絶えず悲鳴を上げていました。そんな時、人界の技術を取り入れた科学者達は私の細胞を使って強化したクローンを作り、人工生命体の研究と並行して私の体の治療の研究を同時にしようとお父様に持ちかけたんです」

「おじさんはその話を」

「受け入れました。そして生まれて来た彼女の名はリコリス。私達はすぐに仲良くなり姉妹同然に過ごし、その後に生まれたリムちゃんも姉として懐いていました」

 

懐かしそうに語るネリネだが一瞬俯き、そして辛そうな表情で空を見上げながら続きを語りだす。

 

「三世界平和宣言のあの日、私もお父様と一緒に参加する筈でしたが私は体調を崩して動ける状態ではなく、私の代わりにリコリスが代役として人界に来たんです。そしてあの娘は出会いました、稟さまに。…魔界に帰って来たリコリスは私に稟さまの事を話してくれて私の名前、nerineの中にrinを見つけてはしゃいでました」

「だから自分の愛称をリンにしたんだ」

「はい、…でもそんなささやかな幸せの時間にも終わりがやって来ました」

 

(そう、終わりの時が…)

 

「私の体はとうとう強すぎる魔力に耐えられなくなり、崩壊を始めたんです。何時死んでもおかしくない状態でしたがリコリスがある提案をしたんです。自分と私との融合を」

「ゆ、融合って…じゃあネリネちゃんは…」

 

コクン

 

(不思議…何で私は稟さまにも話した事がない秘密を話しているのだろう?)

 

「私の命はリコリスの犠牲の上に成り立っているんです。確かにそれしか方法は無かったし、クローンであるリコリスにもあまり寿命が残されていませんでした。でもリコリスとの融合はあの娘から全ての物を奪ってしまった、命も、歌声も…一番大事に、心の中にしまっていた思い出さえも…。ううっ……私は知らなかった…リコリスが、あれ程までに稟さまを好きだった事を…ううう…グスッ」

 

(あの頃の私には何も出来なかった、目を覚ました時には全てが終わっていて、其処にはもうリコリスはいなかった)

 

「そして私はリコリスになろうと思いました。リコリスになって、リコリスの出来なかった事をしようと。でも歌は…楽しそうに歌っていた歌だけは……」

「……でも、それは…間違っているよ。きっとリコリスちゃんは犠牲になったなんて思ってない。リコリスちゃんになろうだなんて…間違っている」

 

横島がそう言うとネリネの顔は無表情になり、そして徐々に怒りが浮かんで来た。

 

(…何を、何を言ってるのだろうこの人は…何も、何も知らないくせに…)

 

「貴方に…貴方なんかに何が解るんですか!知ったような事を言わないでください!」

 

=私は彼を思いっきり睨みつけて思いっきり怒鳴った。生まれて初めての事だった。

でも彼は困ったような顔をしていながら右手を前に出すと、その掌の中には【開】という文字が刻まれていた緑色の珠があった。

その珠を左手にあるブレスレットの丸い窪みにはめ込むと彼の体が光に包まれ、光が収まると其処には…=

 

「よ、横島さま…その姿は…」

 

膝裏まである艶やかな黒髪は風になびき、

 

体は丸みを帯び、その胸も存在を主張し、

 

背中には薄緑色の一対の翼があり、

 

その瞳は高位魔族の証である深紅に染まっていた。

 

 

 

 

『これが今の私の本当の姿』

 

 

《続く》

 

 

《次回予告》

 

この歌声はあの娘の物。

 

この想いもあの娘の物。

 

そしてこの命も……

 

だから、だから私は……

 

それなのに何故貴方は……

 

《NEXT・第八話「二人で奏でる天使の鐘」》

 

リコリス…私は…

 




(`・ω・)横島の女性化、ありきたりなネタだなというツッコミは勘弁してください。
……大好物なんです。
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