G×S!夕陽が紡ぐ世界   作:乱A

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(`・ω・)本編のストックは後一話……
その後は閑話と番外編だけ。
健康と文才が欲しい。


第十六話「せめて人として、されど人として」

 

――貴女(あなた)のせいでボクは死ぬんだ――

 

体を襲う苦しみに耐えきれずに遂に言ってしまった言葉。

ボクの名前は時雨亜沙。

 

お父さんは人族だけど、お母さんは…あの女性(ひと)は魔族。

それもただの魔族じゃ無い、人為的に魔力を増強させられた実験体で、ボクは受け継いでしまったその強力すぎる魔力に苦しめられている。

 

何故ボクは普通の体に生まれて来なかったんだろう?

何故ボクはこんなに苦しまなければならないんだろう?

何故ボクは……お母さんの………あの魔族(ひと)の娘なんだろう?

 

そんな思いから出て来た言葉だった。

凄く辛そうな、悲しそうな顔で申し訳無さそうに俯いていた。

でもそれが何だって言うの?ボクの方がずっと辛くて苦しいんだ!!

 

ある日、あの女性(ひと)が買い物に出かけている隙に家を抜け出した。

お父さんが『元気になったら皆で旅行に行こう』と買ってくれた服を着て。

 

でもボクは一人ぼっち。

遊ぶ約束をしていた友達が居る訳が無い。

遊んでくれる友達が居る訳でも無い。

ただ、一人ぼっちで歩いていた。

ふと気付くとボクは大きな木がある空き地に来ていた。

 

 

『……何してるんだろ、ボク?』

 

そう呟きながら大きな木を見上げていると後ろから誰かが話しかけて来た。

 

『どうしたの君、迷子?』

『え?』

 

振り向くと其処には額に包帯を巻いて、帽子を被った男の子が居た。

 

『何でボクが迷子だと思ったの?』

『だって何だか後ろ姿が寂しそうだったから』

 

そう言う彼は「浜菊忠夫」と名のった。

だから自分も「時雨亜沙」と自己紹介をした。

 

その後、しばらくいろんな話などをした。

忠夫くんも今は友達が居なくて一人ぼっちらしい、でも何だか一緒に居ると暖かい感じがする。

 

『で、亜沙ちゃんは何で一人で居るの?』

『家に居てもベッドで寝てばかりだからつまらないんだもん』

『亜沙ちゃん、病気なの?』

『病気じゃないよ!お母さんのせいで体が弱いの。そうよ、お母さんのせいで』

『お母…さんの、せい?』

『そうよ、お母さん……、あの人のせいでボクは苦しんでるのよ!あの人の子供なんかに生まれたせいでボクは…"コチンッ"…!?』

 

そう叫んで居たら突然頭を叩かれた。

 

『…痛い、何で?何で叩くの?』

『お母さんの事、そんな風に言っちゃダメだよ』

『何でよ!』

『お母さんがいない子だって、お母さんに会えない子だっているんだよ。それに子供が嫌いなお母さんなんかいない筈だよ。きっと亜沙ちゃんのお母さんだって亜沙ちゃんの事が大好きな筈だよ』

『そんな訳ないよ、あんな酷い事言ったんからお母さんだってボクの事…『あ~ちゃ~ん』…え?』

 

お母さん(あの人)の声がした、悲しそうな、今にも泣き出しそうなそんな声が。

 

『あ~ちゃぁ~~ん、何処にいるの~~』

『あーちゃんって亜沙ちゃんの事?あの人亜沙ちゃんのお母さん?』

『うん……、ボクの…お母さん』

 

何故だろう、あんなに怒ってたのに、あんなに嫌いだと思ってたのに、今はあの声がとても優しくて温かく聞こえる。

 

『ほら、亜沙ちゃんのお母さんは亜沙ちゃんの事が好きじゃないか』

 

『あ~~ちゃ~~ん、あ~~ちゃぁ~~~ん。ぐすっ、どこ~~?』

 

あの人……、お母さんがボクを呼んでる。本当にボクの事を心配してくれてるんだ、あんなに酷い事言ったのに。

 

『ボクってバカだ。お母さんはあんなにボクの事を心配してくれてるのに、ボクの事、こんなに愛してくれてるのに』

『さあ、早く行ってあげて謝りなよ。きっと喜ぶよ』

 

ボクの目から涙がどんどん零れて来る。

気が付いたらボクはお母さんに向かって駆け出していた、両手を広げて、その胸に向かって。

 

『お母さ~~ん』

『あーちゃん?…あ~ちゃ~~ん!』

 

お母さんの胸に飛び込むとお母さんは優しく抱きしめてくれて、頭も撫でてくれた。

 

『よかった、あーちゃんが無事でよかったよ~』

『ごめんなさい、お母さんごめんなさい』

 

お母さんの胸の中で一頻り泣いた後、お礼を言おうと振り向いて見ると何時の間にかあの男の子は居なくなっていた。

姿を捜しながらキョロキョロしているとお母さんが「どうしたの?」と聞いて来た。

 

『黙って出て来たボクの事怒って、お母さんに謝れって言ってくれた男の子が居たの。……お礼、言おうと思ったのに……』

『お友達?』

『ううん、知らない子。また会えるかな?』

『きっと会えるわ。そしたら皆でお菓子食べましょう』

『うん!』

 

そして、亜沙と亜麻の親娘は手を繋ぎ笑顔で家路につき、忠夫はその姿を木陰からそっと眺めていた。

 

それより数日後、三世界平和宣言のその日。

亜沙が再会を願っていた相手。

忠夫は人知れずこの世界から消える事となる……

 

 

 

第十六話「せめて人として、されど人として」

 

 

 

「おまたせー」

 

太陽がさんさんと輝く海水浴場。

水着に着替えた横島はそう叫びながら駆けて来た。

さすがに楓やネリネなどの女性陣と一緒に着替える訳にはいかず、一人別の場所で着替えて来たらしい。

 

「遅いわよヨコシマ」

「仕方ないじゃない。『安全な』着替え場所を探してたんだから」

「ああ、それで…」

 

タマモは何か納得した感じでとある場所に目をやる。

其処には…

 

「はははははは…、皆綺麗だナー、いい眺めだナー」

 

樹は体育座りで女性陣の水着姿を眺めながらぶつぶつと呟いている。

普段ならその目は血走るように爛々と輝き、鼻血も流している筈なのだが、今の彼のその目は空ろで色もくすんでいた。

 

「ど、どうしたんだ樹?」

「ああ、稟さんじゃないですカ。何でも無いですヨ、ただ……」

「ただ?」

「ほっといて下さイ。僕の夏は終ったんデス」

 

そう言うと樹は顔を伏せ、膝を抱えながら声を殺して泣き出した。

 

「忠夫、樹の奴はどうしたんだ?」

「ほっときなさい。私の着替えを覗こうとしてたからちょっと"使えなく"しておいたのよ」

「つ、使えなくって…、まさか」

「そのまさかよ」

 

横島は輝く様な笑顔で空中に指で"不能"と書いた。

 

「まあ、自業自得なのですよ。暫くは静かでいいじゃない」

「それもそうか」

「稟お兄さん、早く早く遊びましょう!」

 

それからは皆で楽しく遊んだ。

昼頃になると相変わらず黒いオーラを噴き出しながら俯いている樹がうっとおしかったので文珠の効果を消しておいた。

まあ、その反動は凄まじいものだったが……

まるで別の時間軸での宇宙一の煩悩の持ち主の様に。

 

「おっっねえっすわぁーーーーーーーーんっ!!」

 

 

 

 

―◇◆◇―

 

「あはは、まったく緑葉君はしょうがないわね~」

「もう少し、封印しとくべきだったかしら?」

「ヨコシマが言う事じゃないでしょう。向こうではヨコシマもあんな感じだったし」

「言わないでよタマモ、けっこうヘコんでるんだから。他人の振り見て我が振り直せとはよく言ったものよね。はぁ~」

 

さすがの横島も、外側から自分と同じ行動を取る樹を見る事でかつての自分が周りからどんな目で見られていたのか自覚した様だ。

 

「あはは…、は…ぐ、ぐぅ!」

 

笑っていた亜沙だが、突然胸を押さえながら苦しそうに蹲る。

 

「亜沙ちゃん!?」

「「亜沙先輩っ!?」」

 

突然の事にカレハや忠夫達は亜沙に駆け寄る。

シアが咄嗟に癒しの魔法を使おうとするが亜沙はそれを拒む。

 

「や、止めてシアちゃん。だい…大丈夫だから…」

「で、でもそんなに苦しそうなのに」

「お願い!…すぐに…収まるから」

 

余りにも拒絶するので魔法による治療は出来ず、横島達はただ見守る事しか出来ないでいた。

幸いにもすぐに治まった様だが横島は怪訝な表情で亜沙を見つめる。

彼は感じ取っていた、苦しむ亜沙が押さえ込んでいた強力な魔力の波動を…。

 

そして夕食後、男に戻った横島は亜沙を一人砂浜へと呼び出した。

其処までして魔法を拒む理由を聞き出す為に。

 

 

―◇◆◇―

 

「な~に忠夫ちゃん?もしかして愛のこ・く・は・く?や~~だ、ボク困っちゃうな♪」

「……真面目な話なんです。ちゃんと答えて下さい」

 

横島は亜沙の目を見ながらそう言うが、亜沙はその目から逃げる様に目を逸らす。

 

「何を聞こうとしてるかは何となく分かるけど…、その事には触れないでほしいな。ボクは大丈夫だから」

「あんな今にも破裂しそうな魔力を無理やり押さえ込んでおいて何が大丈夫なんですか?}

「 !! 」

「今更ごまかしは聞きませんよ。答えて下さい、何故ですか?」

 

亜沙はそれでもなんとかごまかそうとするが、自分を見つめる横島の目を見ると諦めたかの様に溜息を吐くと静かに語り出した。

 

「ボクのお母さんはね、人間じゃないんだ。魔族なの」

「亜麻さんが?」

「うん。それもただの魔族じゃない…、人為的に魔力を引き上げられた……、人工生命体の、一号体」

 

 

――お母さんは親のいない、天涯孤独の少女だった。問題だったのはその体に秘められた常人を上回る魔力。

  其処に目をつけられた科学者達に捕まり、実験動物としての扱いを受け、その魔力を日々増大させられていった。

  ある日、実験の最中にお母さんの魔力は暴走を始め、研究所を跡形も無く消し去った。

  でもお母さんは不幸中の幸いにも次元を飛び越えて人間界へとやって来て、そんなお母さんを助けたのがボクのお父さん。

  そして二人は何時しか愛し合うようになり、ボクが生まれた。

  ……お母さんの巨大な魔力を受け継いで。

 

 

「後は解るよね、小さな子供にそんな巨大な魔力に耐えられるわけが無い。ボクはその魔力に体を苛(さいな)まされ、何時も苦しんでいた。そしてその憤りをすべてお母さんにぶつけていた。そして遂に言っちゃったんだ、貴女(あなた)のせいでボクは死ぬんだって」

 

 

――あの時のお母さんの顔は今でも忘れられない、とても悲しそうな顔を。

  あの後出会った男の子のおかげで仲直りは出来たけど、それでもボクの罪が消える訳じゃない。

  だからボクは誓ったんだ、お母さんは魔族じゃない、人間だって。

  そう、ボクも人間だ。人間は魔法を使えない、だからボクは魔法を使わない。

 

――どれだけ苦しくても、人間で居る為に……

 

 

「分かってくれるよね、ボクは人間でなくちゃいけないの。お母さんの為にも。だから…」

 

そう言いながら横島を見た亜沙の顔は驚きの余り一瞬固まった。

自分を怒りの篭った瞳で睨み付ける横島の表情に。

 

「ふ…ざけ、るな…」

「ただ…お、ちゃん?」

「ふざけるなーーっ!」

 

 

頬を叩く音が辺りに響いた。

 

 

《続く》

 

次回予告

 

人である為にと、母の為にと魔法を拒む亜沙。

嘗て犯した罪に脅え、苦しみに耐え、死をも受け入れ様とするその覚悟は彼の怒りの導火線に火を点けた。

 

《NEXT・第十七話「涙の先に」》

 

そうか、忠夫ちゃんだったんだ。

 

 




(`・ω・)この話で横島のセクハラが少ないのはごらんの通り樹という反面教師が居たからと言う事で。
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