明日のタマモ編でプロローグは終わり。
明後日の投稿から本編が始まります。
「よし、完成!」
一週間かけてやっと完成した三毛猫のぬいぐるみを抱き抱えてみた。
うん、我ながら中々の抱き心地だ。
「さーてと、何処に飾ろうかな?」
完成したばかりのぬいぐるみの置き場所を探していると、とある場所に目が釘付けになる。
其処には四つのぬいぐるみが並んでいる。
ちっちゃい頃の写真を見ながら作った私と稟くんと楓と……
そして忠夫くん。
猫のぬいぐるみを『私』の隣に置き、忠夫くんのぬいぐるみを抱き上げる。
「今、君は何処に居るのかな?忠夫くん」
そう問い正してみても勿論答えてくれる訳など無い。
私の名前は桜、「八重桜」
仲良し四人組の一人。
今は三人しか居ないけど、何時か再び四人が揃う日が来る。
その日が来るのを待ち望んでいる女の子。
―◇◆◇―
「芙蓉楓」
私の小さい頃からの大事なお友達。
遊んでいても「くすくす」とか「えへへ」とか言う様に小さな声でしか笑わない娘だった。
そんな楓ちゃんが満面の笑顔と大きな声で挨拶して来た時は本当に驚いた。
浜菊忠夫くん、楓ちゃんに笑顔をくれた人。
忠夫くんを見つめる楓ちゃんを見て私は思った。
そうか、楓ちゃんは忠夫くんの事が好きなんだなと。
私には分かる、だって私も稟くんが好きだから。
何時も四人で楽しく遊んでいた、何時も皆で笑いあっていた。
何時までも続くと思い、信じていた時間はある日突然に終わりを迎えた。
稟くんの御両親、そして楓ちゃんのお母さんが事故で亡くなったから。
それから暫くの間、病院に入院していた楓ちゃんのお見舞いに何度か行ったけど全然何の返事もしてはくれなかった。
そしてあの日、楓ちゃんが元気になったと聞いて私は大喜びでお見舞いに行った。
何時もの様に笑ってくれた楓ちゃんを見てああ、きっとまた忠夫くんが助けてくれたんだと思った。
でも…楓ちゃんの口から出て来たのは忠夫くんを責める言葉ばかりで私はそれが信じられなかった。
結論から言えば楓ちゃんを助けてくれたのはやっぱり忠夫くんだった。
でもその代わりに忠夫くんが……。
稟くんがそっと教えてくれた本当の事、優しくて残酷で哀しい嘘。
大好きだった楓ちゃんの笑顔をまた見れた事は本当に嬉しかったけど…、でもね忠夫くん、私は忠夫くんの笑顔も好きだったんだよ。
胸がほんわかして、ぽかぽかして、本当に好きだったんだ。
それから暫く経った三世界平和宣言のあの日。
ある魔族が起こした爆破事件に巻き込まれて私達の前から消え、行方不明のままの忠夫くん。
普通に考えれば生きている筈はないのだろう。
でも、私達の内でそれを信じているのは誰もいない。
楓ちゃんも稟くんも、勿論私だって信じてはいない、忠夫くんはきっと生きていると。
何時かきっと私達の所に帰って来てくれる筈だ。
「早く帰って来てね、忠夫くん。さてと、そろそろかな?」
プルプル、プルプル
思った通り電話がかかって来た、相手はやっぱり稟くんだ。
「はい、桜です」
《桜、俺だ。実は…》
「宿題は自分でやらなきゃ駄目だよ、稟くん」
《ぐっ…そ、そこを何とか》
「あはは、仕方ないなあ、りん太くんは。少しだけだよ」
《助かる。それから夕飯は楓が作ってくれているぞ》
「わあ、楓ちゃんのご飯は久しぶりだな。直ぐに行くよ」
《分かった、待っている。それから桜えもん、恩に着る》
電話を切り忠夫くんの人形を元の場所、楓ちゃんの隣に置くとノートを鞄に入れて部屋を出て行く。
「じゃあ行って来るね、忠夫くん」
本当に待っているから。
《NEXT・タマモ》