尚、ベースとなるのは無印であり『エッセンスプラス』以降の新キャラは一人を除いて出て来ません。
ゴオォォォォ
『う、うう…痛っ!』
黒煙に包まれた闇の中、少年は体を襲う痛みで目を覚ました。
辺りを見回すと目に入るのは真っ黒な煙と所々に見える赤い炎。
『何が…あったの?父ちゃん、か…あちゃん。ゴホゴホッ』
少年は朦朧とする意識の中で両親を呼ぶが、口や鼻から入って来る煙に咽せ、咳き込んでいると誰かが自分の身体を優しく抱きしめている事に気付く。
『た、忠夫……』
『母ちゃん?』
其処に居たのは自分を庇うように抱きしめていた母親。
だが、その体は先程までとは違い、傷だらけで体中から血を流している。
『大丈夫か?ただ…お』
『と、父ちゃん?』
聞こえて来た声の先に目を向けると二人を身を盾にして庇ったのであろう、母親以上にボロボロになっている父親が居た。
数日後、漸く歩ける様になり、病院の屋上から空を眺めていた少年は流れる雲を見上げながら両親の事を思い出す。
何故こんな事になったのか?一体何が起こったのか?
ずっと楽しみにしていた家族旅行、その最中に起きたトンネル内での崩落事故。
両親は自分を庇った時に受けた傷が致命傷になり二人共帰らぬ人となった。
思い浮かぶのは嘗ての優しい笑顔、そして最後の言葉。
『忠夫、誰かを護れるような男になれ』
『忠夫、周りの人を笑顔に出来る様な人になって』
『無理だよ、俺一人じゃ何にも出来ないよ。一人にしないでよ』
『大丈夫だ、お前が誰かを助けたら誰かがお前を助けてくれる』
『それに一人にはならないわ。忠夫が忠夫らしくいれば誰かが傍にいてくれる。お母さん達が居なくなっても…』
『『きっと、大事な誰かに会えるから』』
『そんな誰かより母ちゃん達に会いたいよ』
両親の言葉を思い出しながら空を見上げた彼の頬に一筋の涙が流れた。
第一話
「辿り着いた
キーンコーンカーンコーン
「ふう、終わった終わった」
此処は人間・神族・魔族の三種族が魔法や三世界の歴史などを学ぶ事を目的として光陽町に作られた国立バーベナ学園。
終業のベルが鳴り、鞄を抱えて溜息と共に肩を叩きながら呟いた青年「土見稟」に彼の悪友「緑葉樹」は語りかける。
「稟、何時の間に還暦を迎えていたんだい」
「ほっとけ」
彼等がそんな何時もの会話をしていると近づいて来る少女達がいた。
稟の幼馴染「芙蓉楓」に「八重桜」、共に家で暮らしている少女「プリムラ」。
そして神界と魔界のプリンセスで彼の許婚でもある「リシアンサス」通称「シア」と「ネリネ」仲間内では「リン」と呼ばれている。
そして高校からのクラスメイトの「麻弓=タイム}。
「稟くん、帰りましょう」
「お兄ちゃん、帰ろ」
「稟さま、私もご一緒して宜しいですか?」
「それじゃあ皆で帰ろうよ。桜ちゃんも一緒にどう」
「ごめんね、私今日はちょっと用事があるんだ」
「うーん、残念っス。麻弓ちゃんは?」
「申し訳ない。私にも用事があるのですよ」
「なら仕方ないな。じゃあな樹、また明日な」
そう言ってバーベナ・アイドル軍団と共に教室を出ていく稟をさらりと除外された樹と男共は見つめていた。
「に、憎しみで人が殺せたら……」
「「「「「コクコクッ」」」」」
血の涙を流しながら………
―◇◆◇―
学園からの帰り道、わざわざ遠回りになるような横道に逸れる稟と楓にシアは不思議そうに尋ねた。
「ねえ稟くん、カエちゃん。前から聞こうと思ってたんだけど何で何時も此処で横道に逸れるの?」
そんなシアの疑問に稟は少し困ったような笑みを浮かべながら答える。
「……子供の頃、この先の空き地で俺達の友達が行方不明になったんだ。だから何時かあそこに帰って来るんじゃないかと思ってさ」
「そうなんだ、何か悪いこと聞いちゃったかな?」
「…いえ、いいんです。言おうとは思っていたんですけど」
「・・・・・・」
そんな話をしている中、プリムラは何やら怪訝な表情で空を見つめていた。
「どうしたんですか、リムちゃん?」
「…何か変、ザワザワする……」
「変って、何が?」
すると何処からか火花が飛び散るような音が聞こえて来たと思うと、突然空の一角で放電が起き、まるで落雷の様に地面へと落ちて行った。
「うわっ!な、何?」
「り、稟くん!あそこって、たしか……」
「ああ、あそこはあいつが…忠夫が消えた空き地だ!」
「…ひょっとして……」
稟がそう叫んだ瞬間、楓は咄嗟に空き地に向かって走り出す。
「楓!」
「カエちゃん、危ないよ!」
「くっ、皆はここにいろ。楓ーー!」
(もしかして、もしかして、もしかして)
楓は危険を顧みず一縷の望みに賭けて走り続けたが、ようやく追いついた稟に腕を掴まれてその足を止める。
「待つんだ!危ないぞ楓」
「で、でも、もしかしたらタダくんが……」
そして其処に神王と魔王が現れた。
おそらく転移魔法を使って来たのだろう。
「おじさん達」
「一体何があったってんだ稟殿?」
「大丈夫かい稟ちゃん、突然強力な魔力を感じたと思ったらこんな事になってるし」
「それが突然の事で俺達にも何が何だか…」
ようやく放電が収まって来ると、小さくなっていく放電の中に人影が見えて来た。
「ん、誰か居るようだよ?」
「ああ、男みてえだな」
「 !! 」
楓はそれを見て愕然とした。
其処には子狐を抱きしめた傷だらけの青年が横たわっていて、ボロボロになっているがその男が身に着けているのは「向こうの世界」で”彼”がいつも着ていたGジャンとGパンにトレードマークの赤いバンダナだったのだから。
「…や、やっぱり…タ、タダくん…タダくんだ」
「何っ!?ほ、本当か楓!」
「タダくーーんっ!」
楓は稟の手を振り払って横島の元へと駆けよる。
「タダくん?」
「彼は稟ちゃん達の知り合いなのかい?」
「ええ、俺達の幼馴染です」
「タダくん!タダくん!タダくん!大丈夫?しっかりして!」
「…う、ううう……」
楓は必死になって横島の名を呼ぶが、傷が痛むのか横島は僅かな呻き声を上げるだけで目を覚まそうとはしなかった。
「楓ちゃん落ち着くんだ。とにかく怪我をしている彼を治療をする為にも僕達が先に家に運こんでおくよ」
「お願いしますおじさん達。俺はシア達に知らせて急いで帰ります」
「おう、こっちは任せときな!」
「楓ちゃんしっかり掴まってなさい、行くよ」
「…忠夫……おっと、こうしちゃいられない」
神王と魔王は楓達を包み込む様に魔力を発動させると共に転移して行き、稟はシア達の元に戻って事情を説明すると家路を急いだ。
《続く》
(`・ω・)と、言う訳で本編始まりました。
この話では桜は稟達と一緒にバーベナに通っているという設定です。
ちなみに、『SHUFFLE!』側の時間軸としてはプリムラが稟達の家族として落ち着き、お兄ちゃん呼びに変わった頃です。
それはそうとこのSHUFFLE!世界での横島の元々の姓、「浜菊」。
花の名前が付くようにと無理やり付けた訳ですが……。
よくよく考えてみると横島の両親は母親が「百合子」父親が「大樹」。
花の名前が付いてる……、何かズルイ。
( ・ω・ )「浜菊」の花言葉は「逆境に立ち向かう」。
横島らしくていいかもネ。