第二話
「あの日、夕暮れの公園で」(後編)
横島の記憶を呼び起こす為に子供の頃に遊んだ公園へとやって来た稟達、さっそく楓と桜は横島に語り出す。
「ここが私達みんなで遊んだ公園…タダくん、やっぱり思い出せない?」
「鬼ごっこしたり、かくれんぼしたり……後…お医者さんゴッコとか。きゃっ♪」
「それは思い出さなくていい…」
そんな二人に稟は何処か遠い眼をしながら呟いた、…何かがあったらしい。
「お、お医者さんゴッコ?……お医者さんゴ………ぐうっ!」
「どうしたのヨコシマ!?」
「忠夫!」
「タダくん!」
「あ、頭が…頭が割れる様に痛い、ぐおおっ!」
「止めろ!思い出すな、思い出しちゃ駄目だぁ!」
「うぐおぉぉ!」
激しい頭痛に苦しむ横島、苦しみの現況であろう記憶を思い出させまいとする稟。
そんな二人を見ながら横目で楓と桜に視線を送るネリネ、シア、タマモ。
「桜さん…」
「カエちゃん…」
「…アンタ達、一体何をしたのよ?」
「「えへへ」」
何とか落ち着きを取り戻した横島は頭の底にある記憶を思い出そうとし、子供達が遊んでいる公園を見回している。
(たしかに見覚えがある様な感じがする。ありふれた公園だけど妙に懐かしい)
そうしていると何処からか子供達を呼ぶ声がした、おそらく迎えに来た母親達なのだろう。
「美紀ーー、そろそろ帰りなさい」
「隆ーー」
「桂子ーー、ご飯よーー」
「「「はーーーーい!!」」」
「私達もああやってお母さん達が迎えに来たよね」
「桜!」
「あっ!ご、ごめんなさい忠夫くん……」
両親の居なかった横島の事を思ってか、稟は桜を責めるが横島は気付いていないのか呆然としてその光景を見ていた。
「…タダくん?」
(そうだ、たしか”皆”と一緒に遊んでいて…誰か呼ぶ声がして……そして…)
母親と一緒に帰って行く子供達が切欠なのか横島に子供の頃の思い出が蘇って来る。
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夕陽に染まる公園で遊ぶ4人の子供達、稟・桜・楓そして忠夫。
彼らには笑顔が浮かび、笑いが途切れなかった。
其処に桜の母の桃子、稟の母の蘭、そして楓の母の紅葉が迎えにやって来た。
『桜ーー、そろそろ帰りなさい』
『稟、あなたもよ』
『楓、帰りましょう』
『『『はーーい』』』
『…じゃあ俺も帰るね』
『あ、忠夫君』
少し寂しそうに笑いながら孤児院に帰ろうとする忠夫を楓の母親の紅葉が呼び止める。
『え、何?』
『今日はウチでご飯食べて行かない?』
『わぁ、お母さん良いの?タダくん、一緒に食べようよ』
『でも、園長先生が待ってるし』
『大丈夫よ、園長先生には私から言っておいてあげるから』
『うん!ありがとう、おばちゃん!』
ピクッ
ふと、”おばちゃん”と呼ばれた紅葉の目がつり上り、彼の肩に置いた手に少し力がこもる。
気のせいかその瞳には何やら怪しい光が見え隠れしている様な。
『も、紅葉?ちょっと落ち着いて』
蘭はそんな紅葉を落ち着かせようと声をかけるが紅葉はその声を投げ捨てた。
『ねえ忠夫君?前から聞こうと思ってたんだけどなんで「おばちゃん」なのかなぁ?』
『え?だって楓の母ちゃんで俺の母ちゃんじゃないし……』
『う~ん、だったら私の事「紅葉母ちゃん」って呼んでみて』
『えっ?で、でも……』
『いいからいいから、さあ早く♪』
『え、え~と。も、紅葉か、かあ……』
『早く、早く♪』
『紅葉…母ちゃん…』
『きゃーーーー♪うれしい!私、息子もほしかったのよ♪』
さすがに照れくさいのか真っ赤になりながらもようやく呼び終えた忠夫を紅葉はそう叫びながらギュッと抱きしめた。
『ねえ稟君。私の事、桃子お母さんって呼んでみない?』
『え?で、でも』
『もーもーこー、稟に変な事させないで!』
『いいじゃない、ケチ!』
相乗りしようとした桃子だが、流石に蘭に止められた。
『さあ、二人共一緒に帰りましょ。今日はシチューだからね』
『わーい、私お母さんのシチュー大好き♪』
『ありがとう、紅葉母ちゃん!』
『はあ~~♪そうだ、忠夫君。私が本当のお母さんになってあげようか?』
『え、え、え、え~。お母さんがタダくんのお母さんになるって事は、私はタダくんのお嫁さんに…』
『じゃ、じゃあ私は稟くんの…』
楓と桜は何を考えたのか耳まで真っ赤にして、頭からは湯気を出していた。
『ぷっ』
『あはははははは♪』
桃子と蘭はそれを見て笑いだした。
『な、なんで笑うの~?』
『ぶーー、お母さんひどいよ~』
『ふふふ。さあ、帰りましょう楓、忠夫君!』
『うん、紅葉母ちゃん!』
笑いながら楓と忠夫に手を差し出す紅葉、そしてその手をつかむ忠夫。
そんな皆を赤い夕陽が染めていた。
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「ヨコシマ?」
「タダくん!どうしたの?」
「忠夫?」
「忠夫くん?」
横島は夕焼けに染まる公園を見つめながら、何時の間にか涙を流し、そんな彼を心配そうに話し掛ける稟達。
「も、紅葉…」
「!!!」
「紅葉母ちゃん……」
そして横島の口から零れたのは楓の母、紅葉の名であった。
「お、思い出したのか!!」
「本当?忠夫くん!」
「…タ、タダくん?」
楓は横島を見つめながら涙を流している。
思い出した、自分達の事を思い出してくれた、その事を信じて。
振り返った横島は楓を見つめ、彼女の名を呼ぶ。
「楓…、だったんだな」
「タ、タダ…くん」
「…ごめんな、楓」
「う、ううう、グスッ…な、何で、何でタダくんが謝るの?謝るのは…うう、うう、謝るのは、グスッグスッ…私が、私が…うええええ~~」
「楓?」
「うわあぁ~~~~んっ!」
横島は泣きじゃくりながら抱きついて来た楓を戸惑いつつも優しく抱き止める。
「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」
「楓?何で楓が謝るんだよ、紅葉かあ…紅葉さんは俺のせいで……」
「忠夫、楓は気付いてるんだよ。本当の事に」
「稟…そっか…」
稟の言葉にある程度の事を察した横島はしがみついて泣いている楓をそっと抱きしめて頭を撫でてやる。
「むっ!…まあ、とりあえず良かったわね、ヨコシマ」
「まあな。気にするな楓、俺がそうしたかっただけなんだ。その事で楓が苦しむと俺が苦しい。だからこれで終わりにしよう、笑ってくれ」
「うん、うん、うん」
楓は横島の腕の中で頻りに頷き、そんな二人を見つめている稟に桜は話し掛ける。
「よかったね、稟くん」
「ああ、ようやく元通りだ」
(ほんとに良かった、これで私も気兼ねなく稟くんにアタック出来るよ)
今までは楓の事を気遣って稟への告白をしないでいた桜(もっとも、周り(稟以外)にはバレバレではあったが)は優しげに見つめるが、未だ抱き合ったままの二人を見つめるタマモの眼は険しくなって来た。
「ところでヨコシマ…」
「なんだタマモ?」
「何時までそれをやってるつもり?」
「何を?」
「だ・か・ら、何時までその娘を抱きしめてるのかって聞いてるのよ!」
「え?……あっ!」
「ふにゃ~~~あ♪」
横島の胸の中に抱きしめられたまま頭を撫でられている楓は何時の間にか猫のように丸くなっていた
「は、ははは、ははははは……」
「レア?ミディアム?ウエルダン?」
「堪忍やーーー!成り行きなんやーーー!あったかくて柔らかかったんやーーー!」
「や、やだ、タダくんったら」
「ウエルダンけってーーーい!!」
嫉妬に燃えたタマモの狐火が横島に襲いかかる!
「
「ぎょええーーーーーーっ!」
そんな横島達をシア達は笑顔で見つめている。
「あはは、面白い人っスねーー」
「ええ、賑やかになりそうですね」
「あの人、優しそう」
「うん、なんといっても稟くんの友達だもん」
「それに楓さんの今の笑顔。あんな嬉しそうな笑顔初めて見ました」
「じゃあ、私達も行こう」
「うん」
「はい、行きましょう」
シア達は笑いながら横島達の所へと駆けて行く。
だが、ユーストマとフォーベシイは横島の事を複雑そうな表情を浮かべて見つめている。
(ところで神ちゃん、気づいてるかい?)
(おう、うまく隠しちゃいるが忠夫殿のあの魔力、今まで感じた事の無い波動だぜ)
(しかも、ヘタをするとプリムラをも上回っているかもしれないよ。もし、彼等にバレでもしたら)
(ああ、何とかあの馬鹿共から守ってやらねえとな)
(稟ちゃんや楓ちゃんの大事な友達だからね)
生まれ育った世界へと帰って来た横島。
彼はこれからどのような物語を紡いでいくのか?
それはまだ誰にもわからない。
「あっ、そうだ言い忘れてた。タダくん!」
「な、何じゃ、楓?」
タマモの狐火で焦がされ、アフロヘアーになった横島に楓は満面の笑みでこう叫ぶ。
「お帰りなさい、タダくん!!」
《続く》
次回予告
記憶を取り戻し、楓達の事を思い出した横島。
GS世界の事を思いつつもこの世界で生きて行く決意を固める。
そして物語の舞台は更なる場所へ。
《NEXT・第三話「いざ、初登校」
おっはろーー!あれ、君は?
オマケ
「そう言えば俺も忘れてた。稟」
「何だ、ただ……お?」
名前を呼ばれた稟が横島を見るとその体は固まり、そして徐々に震えだす。
何故ならばその視線の先には何時の間にか先ほどの藁人形と五寸釘、そして金槌が握られていたのだから。
「不幸になあーーーーーれぇーーーーーーーーー!」
カアァーーーーーーーーンッ!
「ぐわぁっ!」
(`・ω・)こうして横島の記憶は蘇りました。
あれ、横島の前世って高島じゃなかったか?と、思われるでしょうがその辺の事情は後の話で明らかになります。
旧版、リメイク版を読んで知っている方は内緒の方向でお願いします。