ログ・ホライズン ~高笑いするおーるらうんだーな神祇官~   作:となりのせとろ

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第三話 氷山の一角 

「かー。疲れた…子供の体力ってのはなんであんなに無尽蔵なのかね?」

 

「体力的には私たちの方が絶対に多いはずなのにね~?」

 

 散々暴れまわった後(一時間くらいでこっちの体力が切れた)昼ご飯を食べるためにみんな家に一旦帰っていった。大人二人はふらふらと子供らは元気爆発で。午後からまた遊ぼうと約束をして。

 

「奏兄も千菜姉も情けねぇな~俺たち相手にこんなにやられちまって。この調子だったら俺っちが二人を追い抜くのも近いぜ~」

 

「ありゃ?ぬかすじゃん。私たちに追い付こうなんて百年早いわよ」

 

「ふふーん♪強がりしてもムダたぜ?父ちゃんが俺が十歳になったら稽古つけてくれるんだ。そしたら二人なんてすぐに追い抜いちゃうぜ」

「ジャリボーイ、鍛えてもらう前から自慢してどーすんだ。強くなってからそういうのは言うんだな」

「アデッ」

 

 隣を歩いていたところからトタトタと俺たちの前に走り出て子供特有の自慢顔を見せるガキンチョにデコピンをかましてやる。

 夢は大きくて構わんが実力を身に付けてからでかい口は叩くんだな。

 

「むうー。そのジャリボーイって呼び方止めろよ。ていうかジャリボーイってなんだ」

「俺が一番好きな三バカ小悪党がガキンチョを呼ぶときの呼称だよ」

「こしょう?」

「その調子だったら勉強の方もしないとねー?」

 

 千菜にいれられたチャチャに言い返せなくて、うぐっとつまらせられるガキンチョ。違いないわ。

 

「あっ!そうそう兄さん。シロエさんたち〈パルムの深き場所〉まで行ったって」

 

「へえ。まぁ結構早いペースだな。ことがことだし早いに越したことはないけど」

 

 マリエちゃんたちのギルド〈三日月同盟〉は現在総員25名。ギルドとしては中堅層どいったところだろう。

 〈大災害〉直後この〈三日月同盟〉のメンバーのほとんど(・ ・ ・ ・)は幸いにもアキバの街にいた。

 5大都市を繋ぐ転移装置〈都市間トランスポートゲート〉が原因不明で停止している今、メンバーが5大都市にバラバラに〈大災害〉の被害を受けてギルドそのものが自然消滅してしまったところも少なくない現状ではこれはとても運のいいことだったのだ。

 しかし、ものごとが完璧に進むことなど早々あるわけもなく…

 

 新人プレイヤーのセララという〈森呪遣い〉(ドルイド)の少女が北の最果てススキノに一人取り残されてしまったらしい。

 しかもススキノの治安は悪く〈ブリガンティア〉とかいうネーミングセンスゼロの名前の糞ギルドが大地人を虐げながら支配しているらしく、更についてないことにセララは〈ブリガンティア〉に目をつけられてしまった。

 

 それを見過ごすわけにもいくはずがなくマリエちゃんたちはススキノ遠征をするところを何があったのか、ゲーム時代、俺が所属していた(所属していたというよりなんか勝手に集まってた)レイド攻略集団〈放蕩者の茶会〉(デボーチェリ・ティーパーティー)の参謀だった旧友〈腹黒メガネ〉ことシロエと同じく〈茶会〉出身の〈おぱんつ戦士〉直継、あとシロエの知り合いのアカツキという〈暗殺者〉(アサシン)の娘が救出に行くことになったらしい。

 

 その時は俺も千菜も一緒に行こうかと考えたが、シロエから、

「奏はアキバより治安の悪いススキノでまともに動けるとは思えないし、千菜は派手すぎるから今回の隠密行動には土台向いてないから」

 と丁重にお断りをいれられてしまった。

 参謀の判断はもっともで俺たち兄妹は従う他なかった。

それでも気になる俺たちはマリエちゃんを通じてちょくちょく定時報告を聞いているのだった。

 

「ただいまー」

 

「あらあら、三人ともお帰りなさい。千菜ちゃんと奏君はなんだかお疲れね~?温かいお茶でも飲む?」

 

「あー、いただきます」「私も」

 

 温かいお茶といってもこの世界では素材アイテム以外は全部味がないんだからなんとも言えないんだが味はなくとも効能的なのはあるのでありがたく貰っておく。

 

「はい。どうぞー。もう少ししたらお昼ご飯出すわねー」

 

 現実世界では、祖母も母も料理上手だったからか、この世界での食事にはうんざりする。

 特に美味しい食べ物を求めていろんな店を回っていくのが趣味な程の千菜にはこの生活は俺のそれより何倍もつらいと思うと可哀想になってくる。

 俺の場合は素材アイテムでも結構ガマンできるけど…ただなぁ…肉は、食べたいよな。誰か頑張って味のある料理作ってくんねぇかなぁ。

 

 そんなことを考えていると昼ご飯の準備ができ、おやっさんにおばさん、ガキンチョ、千菜、俺で一つのテーブルを囲んで昼食を食べる。

 おやっさんは食事はなにがあっても家族全員で食べることと決めているそうだ。

 そういうのは、いいと思う。

 みんなで食卓を囲って午前中にあったことを話す。大したことないとりとめのない話題。近所のじいさんがボケ始めたとか、お魚咥えたどら猫追っかけて裸足で駆けてく隣の家のサエザさんとか。

 

 最近ようゴブリンどもが多くて困ってんだよな、おやっさんがポツリと漏らした話題が気になった。

 

「ゴブリンここら辺にも出てくるようになったの?」

 

 たしかアサクサの近くにはゴブリンはエンカウウントすることはなかったはずなんだけどな…?

 

「ああ、最近よくここら辺をうろちょろしてんだよ。なんとか追っ払おうとかするんだけど、あの…なんだ…なんか頭に頭蓋骨乗せてる奴がよ、魔法撃ってきやがるもんだからなかなか押し返せなくてな」

 

「ゴブリン・シャーマンね」

 

 こんなところにゴブリン・シャーマンまで連れたゴブリンどもが出てきてる?

 千菜も不思議に思ったのか首を傾げて眉を八の字にしてうーんと唸っている。

 困ったもんだ、と両手を挙げて冗談めかしていうおやっさん。

 

「おやっさん、明日でも俺たちが出張ってゴブリン退治でもしてくるよ」

「ほんとうか!すまんな。助かる」

 

 おやっさんは本当に悩みの種だったのだろう俺たちが様子を見に行くといってシワのよっていた眉間が緩み安心したようにする。

 さて、ゴブリン・シャーマンなんてここらじゃ見ないやつらが出てきてるなんて何が起きてるんだろうね?

 

 

           ◆

 

 

「セエエェヤッ!!」

 

 

 掛け声と共に朱の焔が花弁が散るが如くゴブリンたちを焼き尽くし振るわれた薙刀の斬撃が無慈悲にゴブリンの小さな体を消し飛ばす。

 千菜のメイン職〈武士〉の攻撃力は全十二職中高位に当たるがある理由で千菜のそれは武士を越えるどころか全十二職中最高の物理攻撃力を誇る〈暗殺者〉(アサシン)を凌駕している。

 それのせいでなかなかにスリリングな戦闘を繰り広げているのだが、そこは〈神祇官〉(カンナギ)の俺がカバーできる。

 何度見ても美しいと思ってしまう。

 

 蒲公英のように軽く、桜のように舞、薔薇のように情熱的に、向日葵のように派手に、椿のようにあっさりと散らす。

 

 これまでに驚嘆するような戦い方は何度もあれど、美しいと見蕩れてしまうのは千菜のそれだけだ。きっと後にも先にもこれっきりだろう。突き詰めた剣は芸術性も伴う。

 

「兄さん!敵増援アリ!」

 

「了解。敵増援確認。数は…六。半分は足止めする。残りは消しておく。補助は継続」

「了解」

 

 すぐさま後ろに下がり、増援で来たゴブリン六体のうち前方に出ているニ体を手早く詠唱し終えた〈剣呪の呪印〉で空虚から表れた無数の剣を飛ばし切り刻む。少し後ろを走っていた残りの四体を怯ませるたところに近づき一体に斬りつけ頭から一刀両断する。三体。

 我に帰った残りのゴブリンたちは一斉に飛びかかってくるが…

 

「伏せてっ!!」

 

 片手と足を大きく開いて方膝を地面につけ、上半身を落とすように伏せる。

 頭上を身を焼き刻むような熱量を持った地獄の業火が通過する。飛び上がっていたゴブリンたちはなすすべもなく斬り飛ばされるしかないのだった。

 

「お前!あぶねぇだろっ!掠りでもしたら俺の頭が消し飛ぶだろうが!」

 

「そんなに馬鹿力じゃないわよ。せいぜい上半身が丸焦げになるぐらいじゃない?」

 

「範囲が広がってる分なお悪いわ」

 

「あと禿げ上がる」

「お前最低だな!!」

 

 実の兄をハゲの驚異にさらす実の妹。どんな関係の兄妹だ。

 

「兄さんだったら絶対に私がどう動くかわかってると思って…ごめんなさい」

 

しょんぼりと俯いて謝ってくる千菜。むぅ、こんなの怒れるわけがないじゃないか。つくづく俺もシスコンだ。

 

「ああっ、もういいよ。一休み入れようぜ?ちょっとさっきは数が多かったし」

「うん!」

 

 千菜は安心したようにニコニコと笑って後ろを小走りでついてくる。

 戦闘があった場所から少し離れたところに小さいが開けた場所があったのでそこで一休み入れることにした。

 

「〈聖域結界〉」

 

 サブ職業〈陰陽師〉の特技〈聖域結界〉を発動して一帯に簡易的なゾーンを発生させる。

 この〈聖域結界〉とにかく便利なのだ。

 使用可能な時間に制限や本来のアキバの街なんかで購入出来るゾーンに比べれば劣ってしまうが、個人がゾーンを発生させることが出来るので十二分に役に立つ。

 ゾーンというのは一種の仕切りなのだ。あちらとこちらは干渉し会うことのできない。

 戦闘中にはメニュー操作では発動出来ないから活用出来ないが、こういった小休憩をとるとき奇襲を警戒することなく安心して休めるのはモンスターの闊歩するこの世界では圧倒的なアドバンテージになるのだった。

 

「にしても本当に多いな。ゴブ」

 

「うん、アサクサの回りってゴブリンのエンカウント率はほぼ皆無だったよね。それが連戦でゴブリン。

所詮ゴブリンだから大したことはないけど大地人のアサクサのみんなが相手取る分にはちょっと数が多すぎるよ」

 

 ゴブリン・シャーマンもいるみたいだし、と千菜も水筒の水を口に含みながら同意する。

 ほい、と放られた水筒を受けとり水を飲む。千菜の武器の特性もあってか喉が乾く乾く。

 

 二十分ほど小休憩を取った後、俺たちはまた探索を再開し途中何度かゴブリンの小隊と出くわすもなんなく蹴散らして進んだところで俺たちは驚くべきものを発見することになった。

 作りはお世辞にも上手いとは言えないが高い木の城壁で囲われた大量のゴブリンがいるゴブリンの集落を発見したのだった。

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