ログ・ホライズン ~高笑いするおーるらうんだーな神祇官~   作:となりのせとろ

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第四十九話 奏儚八枝という名の男の心理

「あはははっははっははあっはっはっははははははは!!」

 

「そこまで笑わなくてもいいでしょ!!?」

「ふふっ…、すまんすまん。ぷふっ、まさかそんな風に勘違いするとは思わなんだ。

 ぷくっ、ひいぃ腹がいたい、ここまで笑ったのは何十年ぶりか」

 

「もとはと言えばアサハナ様の言い回しが悪いんでしょう!」

 

「いや、それでも流石にソッチの方に一番に思考が回るようなことはそうそうなかろうて、せいぜいほかにも選択肢がいくつか上がるくらいじゃろう。

 それが、一番にそういうことが思いつくとは、ふふっ、このエロガキめ。思春期すぎるじゃろ」

 

「やめて!もう俺のライフはゼロだ!」

 

「なんならお主の初めてもらってやろうか?」

「やめてください。お願いします。誰も聞いていないとはいえ女性に童貞暴露されるのは自殺ものすぎます」

 

 本気で頭を下げる奏、その顔は赤面探偵と日頃から顔を赤らめさせているクインの赤面顔にも負けず劣らずの真っ赤っかだ。

 そんな奏を見て流石に話がそれすぎたかこみ上げてくる笑いをなんとか押さえつけてアサハナは本題を話しだした。

 

「これからお主には過去の記憶を洗いざらい見てもらう、楽しかった記憶も辛かった記憶も何もかもじゃ。さっきも言うた通り理由や覚悟は過去からの積み重ね、己にとってなにが大切かとっくりと見直してこい」

 

 アサハナはそう本題を切り出した。出会った当初からアサハナがやっている他人の記憶を覗き見る(能力)。それを応用して奏頭では自身が忘れてしまった気でいる記憶を魂魄の魂、つまりは精神の方に蓄積されている記憶を顧みることをしようというわけだ。

 

「そもそもそういう理由やら決意やら覚悟というものを定めるというのはなかなか難儀なものじゃ。

 それは長年培ってきた経験やら出会いそういうものが混じり合い自然と出来上がるもの、そう確固たる意思をもってこれと指差し選び出せるようなものではない。」

 

「恋愛といっしょじゃな。好きかなぁ~と思って、好きだなぁ~と思って、好きだと断言できるようになる、みたいな感じじゃ」

「アサハナ様が挙げる具体例がわかりやすすぎて尊敬する」

 

「お前さんもいくら儂が魅力的であろうといきなり恋仲になりたいとまでは思わんじゃろ?エロいことはしたくても」

 

「舌の根も乾かぬうちに削りにくるのやめてもらえますっ!?」

 

 やっと収まってきた顔の熱がボンとまた吹き上がってくる。普段から自分がクインにしていることだけあって実に耳に痛い話だった。

 これからはクインに執拗に茶々をいれ続けるのは止めようと心に誓う奏だった。

 

「まあ、儂の例えが主にとってわかりやすいのは当たり前の道理での、これは主の記憶から主にわかりやすい例えを儂が選んでいるからじゃ。

 まあ、それでも?数多ある選択肢からお主にわかりやすーい例えを選んどるわけじゃし?もっと褒めてもええんじゃぞ?」

 

「アサハナ様けっこう酔いが回ってきてるだろ」

 

 半日前に出会ったときのような凛とした神様らしさはどこへやら大きな胸を高らかに張って楽しそうに言うアサハナを見てどこぞの名探偵みたいだと、一人愚痴る奏。

 

「なぁに構わん。むしろこれくらいじゃなければ困るくらいじゃ。魂が持つ記憶の奥底まで潜るわけじゃからな、互いに気心がある程度しれておらんと儂でもちょっと難しい」

 

 存外、酒を交わしたのにもきちんと理由があったらしく、これについては奏は関心せざるおえなかった。伊達に龍神を名乗っているわけではなく能力も頭の回転のよさも大したものだった。

 

 純粋に奏と酒が飲み交わしたかったという気持ちも少しはあったのかもしれないが。

 

「それでは、甘く、苦い、儚い海へ、浸ってこい。

 帰ってきたときには少しは変わっておるかもしれんぞ?」

 

 いつのまにか息と息が伝わってしまうような距離まで赤面する間もなくアサハナに近づかれていた奏の意識は、柔らかな感触に包まれた瞬間、大きな水の中へと飛び込み身体が水の中を沈んでいく感覚にとらわれた。

 

「おぅ、早すぎるじゃろっ…受け止め損ねた」

 

 意識が沈み続ける中そんな声が小さくなっていきながらも聞こえた気がした。

 

 ◇◆◇◆

 

 奏儚八枝という一人の人間を一言で語るとすれば、軟弱者という言葉がもっともしっくりとくるのだろう。

 

 恵まれた家庭に生まれ、七つ年の離れた姉がいつも世話を焼き、三つ下のかわいい妹を守ろうとする強い思いも持つことができ、人格者であり実力者でもある祖父に幼少から剣術や武術を教えられ、学生時代もそれなりの進学校で上位に入れるだけの成績を持っていた。友人も心から信頼できる者が数人いたし、特に高校時代には赤道一姫(あかみち いちひめ)という尋常ではない後輩を持つこともできた。

 

 大学に進学することはしなかったが、高校を卒業してからも友人は増えた。むしろ自由な時間が増えたことによりもっと学生時代よりも友人の増えかたは大きかった。

 父に進められて日本の様々な場所を巡るような聖地巡礼のようなこともしたし、バイトと称して赤道一姫の探偵活動に手を貸したりもしていた。時には祖父の知り合いのまさに住む世界が違うといっても過言ではないような人たちの手伝いまがいのこともした。

 

 そして何より、〈エルダーテイル〉に打ち込む時間も増した。

 

 不幸なことなど人並み程度にしか経験したことはない。

 すべてにおいて無限の可能性があったのだと思う。

 そのための手段も実力も身に付けれる環境もあった。

 努力もした。悩みもした。様々な道も模索した。

 われながら実に有意義なものである。

 

 

 

 

 

 

 

 それでも─それだけしても──劣等感(コンプレックス)は消えることはなかったが。

 

 

 奏儚千菜には勝てなかった。

『わたしが兄さんの代わりにしてあげる。わたしが代わりに強くなるから』

 赤道一姫には看破された。

『わたしがあなたのことを好いていても、あなたはわたしのことが嫌いでしょ?』

 

 奏儚百恵には――とどかなかった。

 

『才能のある人間はね、努力という言葉を使わないんだ。

 当たり前にするべきことをいかにも大仰に素晴らしいことだと言葉で着飾るなんて恥ずかしいことだからさ』

 

 自分よりも才能がある人間の行動をまざまざと見せ付けられた。なにひとつとして自分が出来なかったことを平然とやってのける、自分のやる行動の全ての結果を易々と超えていく彼女たちを見て、

 どうしようもない劣等感()は少しずつ、枝から葉を奪っていき花を咲かせる前の蕾すらも蝕んで地へと落とさせた。

 残ったのは無数に枝分かれした不細工な枝(半端に鍛えた技術)だけ。

 

 

 そんなありきたりでなんの捻りもない劣等感(コンプレックス)を悟った俺は、自分の思考を捨てることも向き合うこともできず見苦しくも、ただ無意識に意識して思考を停滞させた。

 今から思えば『奏』という<エルダーテイル>でのひとつの分身の名前すらも、姉や千菜と違って本名ではない理由にはそういったところもあったのかもしれない。彼女らに引け目を感じていたのかもしれない。……いや、さすがにこれは被害妄想が激しすぎる。

 ただ単に臭いものに蓋をしただけなのだ。

 

 

 

 そんなときだった、<エルダーテイル>でカナミと出会ったのは。

 

 

「ねえねえ、そこのキミ!いっしょにレイド挑んでみない?」

 

 最初はこんな人間(バカ)もいるのかと面食らった。

 挑むレイドはさして難易度が高いものではなかったけれどそれでも<エルダーテイル>のハイエンドコンテンツだ、まさか五人で挑むというバカがいるとは思わなかったからだ。しかも寄せ集めの俺を加えてのやっとこさでワンパーティー、攻略なんて夢のまた夢だ。

 しかしそれでも彼女は構わなかったのだ。彼女はレイドのクリアなんてものが目的じゃなかったから。彼女はただその戦場を駆け抜ける途中にある光景を見てみたかっただけ。

 

 こんな人間もいるのかと面食らった。

 そして彼女に対しても興味が沸いた。自分が見ている姉と比べずに見てくれる優しい世界(エルダーテイル)と彼女の見えている世界はどこまで違うのか知りたくなった。

 それからだカナミとよくつるむようになったのは。

 

 彼女にひっぱり回されて、笑い声を聞いていると自然と俺自信も声を大きくして笑っていた。才能の差に対する劣等感(コンプレックス)もその時だけは忘れることができた。

 

 そのうち、カナミの周りにはだんだんと人が集まり始めた。

 おパンツおパンツとうるさい奴や享楽主義のアメコミ好きな奴、腹黒なクセに普段は遠慮ばっかりしてる奴、ハーレムを作ってる奴なんてのもいた。みんなみんな個性の強い連中でそんな奴らもカナミには引っ掻き回されていた。

 楽しかった。人が集まればカナミの目が自分に向かなくなるなんて考えもあったりしたけれどそれでもそれ以上にそこは居心地がよかった。

 

 カナミといっしょにいるためにあの頃はずいぶんと努力していたと思う。立ち止まっていた足もあの時はまた動きだして駆けていた。仲間たちも同じように隣を駆けていたことをあの頃は実感できた。

 

 そんな風にしていたらいつのまにか<高笑い>やら<百鬼祓い>やらけったいな二つ名で呼ばれるようになり、伝説のプレイヤー集団なんて呼ばれるようにもなった。

 そんなことは知ったことじゃなかったし対面をたいして気にするような柄ではなかったのでなにかが変わったということはさしてなかったけれど俺たちは変わらずたくさんのレイドゾーンを駆け回っていた。

 

 

 そんな時だった。祖父が死んだのは。

 

 

 ある日散歩をしていたらたまたま女性がひったくりの被害にあっているところに出くわして、犯人を追い詰めようとしたら不幸にも年端もいかないような男の子がその場に居合わせてしまった。隙をついて犯人から男の子を奪還することに成功したけれど逆上した犯人が襲いかかってきた。男の子をかばった祖父は腹にずっぷりとナイフを刺され内蔵が傷つけられ信じられないほどに血を流し、病院に運ばれて家族と末後の会話をすこしして死んだ。

 あっさりと、死んだ。

 

 

『八枝、お前の努力の果てを見届けることが出来ずにすまない。お前の報われた姿を叶うなら見たかった』

 

 

 それから俺は引き籠った。

 まことに情けない限りではあるのだが俺の一番の理解者は小難しいことばかりを口にする祖父だったから。

 

 

 祖父に言われた言葉は深く心に突き刺さった。俺が今得ていた充足感は嘘だったのか、と。所詮はゲームで得た幻想の偽りの中での幸福感だったのかと。

 

 俺は報われてなどいなかったのか、と。

 

 

 ただもんもんと怠惰に一日を何をするでもない朝起きて飯を食べて機械的に身のこもっていない型を反復するだけの稽古をして朝飯を食べたのか昼飯を食べたのかもわからないような生活を過ごして一日を無駄に過ごす日が何日も続いた。

 

 そしてある早朝部屋の窓が叩き割られいきなり何者かに拉致された、正確には拉致されかけた。

 無茶苦茶な突入法に驚かされて飛び起きたところを謎の二人組に麻袋をかぶせられそうになったので咄嗟に迎撃した。

 拳を打ち込んだ男の方はよくよく見てみるとオフ会で顔を合わせたこともある<茶会>でも仲のいい友人のひとりKRだった。

 

 そしてもうひとりはカナミ(・・・)だった

 

 お前ら何してんだ!叫んだ。

 KRはよほどモロに入ったのか立ち上がることもできずにうずくまっていたままだったが、カナミは「やーくんが最近元気ないみたいだたから突撃!隣の朝ごはんでもしていっしょにごはんでも食べようかとおもって誘いに来たの」なんてにこやかに笑うのだ、呆れて怒る気も失せてしまった。

 そんな風にしていたらいきなり手を掴まれ引っ張られ当初の目的とは形は違うのだろうが誘拐ともいえない形で高笑いとともに割れた窓から部屋を出て連れ出された。

 

 KRは床にうずくまったままだった。

               

 カズ彦の運転するワンボックスカーに押し倒されるような形で乗車して(本気で拉致するつもりだったらしい。カズ彦は二人のお目付役だったのだろう。きちんと侵入方法まで責任もって監督してもらいたかった。)二時間近く車に揺られて運ばれれた。乗せられた最初のうちはカナミに羽交い締めにされる形で動きを封じられていたが、十五分もしないうちに拘束からは解放された。別に俺が抵抗することを諦めたわけじゃない。いくらカナミとはいえ力業を使っていいのであれば女のカナミに長く押さえ込まれるようなもやしではなかったが車酔いの驚異には勝つことは出来なかった。

 抵抗する力も気力も尽き果てグロッキー状態だった。この拉致方法を考えたのは十中八九KRだろうが、アイツ絶対あとでシメると決めたものだ。

 

 連れてこられたのはまだ日も昇りもしない薄暗いだけの海岸の砂浜だった。靴も履いていない裸足のままに砂浜へ連れ出され、カズ彦が運転する車はどこへかと消えていきカナミと二人きりにされた。

 カナミは大きなリュックから大きなおにぎりを取り出して差し出してきた。はっきりいって気持ち悪くてそれどころじゃなかったけれどカナミの屈託のない笑顔に負けて受け取るだけ受け取った。

 「海だよ!海!夜明け前の海なんてオツなものですなー。絶景丸儲け!」そんな風にはしゃぐカナミの姿は純粋にいまを楽しんでいるようで、

 

 

「やーくんはさ、今楽しい?」

 

 

 そんなわけあるはずない。

 口には出さなかったと思う。顔にまで出なかった自信はなかったけれど。

 

 

「わたしはね、今ちょっと楽しくない」

 

「いまさー新しいレイドに挑戦し始めてるところなんだけどさー、やーくんがいないから楽しくない。だから早く出てきてよっ。ばばーんといっきに駆け抜けちゃいたいんだけど、いまちょーど回復役が足りなくてさー、やーくんの力が必要なの!ねっ」

 

 俺はその言葉に返事は返さなかった。

 

「おじいさんのことは残念だったけど、やーくんがくよくよする時間はもうおしまいだよ」

 

 

 なんだよ、それ…

 バカじゃねぇのか、お前っ

 

 ふつふつと言い知れないドロドロとした感情が胃の辺りからせり上がってくるのを感じた。抑えることもできずそのマグマのように熱く、美しいとはお世辞にも言えそうもない感情が決壊する。

 

 いきなりやってきて、窓ガラスぶち破って、外に連れ出したと思ったら、ペラペラとくだらないこと(ゲーム)を話し出して、挙句の果てには自分のわがままを聞けだぁ?悲しむことはもうやめろだぁ?バカじゃないのかっっ!?

 

 お前がなにを知ってるんだよっ

 お前になにがわかるんだよっ

 

 

 

 

「わかんないよ」

 

 カナミは俺の剣幕にも気圧されることなく顔色ひとつ変えずに笑顔のままにそう答えた。

 

「だからやーくんがなにしたいのかを教えて?

 さっきわたしが話したみたいに。そしたらわたしもやーくんのしたいこと手伝うから

 なんでもおはなし聞かせてよ。わたしやーくんのためならがんばっちゃうからさ。どどーんと頼ってよ。

泣きたかったらいくらでもいっしょにいて胸貸してあげるし、気分を紛らわしたかったら、カズくんの運転する車で一日中ドライブしようよ!遊びたくなったら<エルダーテイル>で冒険しよう!

 だから、最後はわたしのお願いも聞いてね?」

 

 

 ()()()()()()()()()()()

 

 

 そう言ってカナミは首をコテンと折り俺の顔を覗き込むようにしてにこやかに優しくはにかんだ。

 狙いすましたかのように海岸線の向こう側から駆け上がり始めた太陽の光はまぶしくて、心の中にあったぽっかりと空いていた空白のなかのくらやみを照らしてくれるようで、

 

 このとき俺は心の底から報われて、引き返せないと思う程にカナミに惚れたんだと思う。

 

 

 ◇◆◇◆

 

 

 目が覚めた

 視界はまだはっきりとしないし頭の中はぐちゃぐちゃと掘り起こされた記憶の濁流で濁っている。手足を動かすことは容易くとも頭がそれに指示をとばすのが億劫でしょうがない感じだ。ザントリーフで死んで復活したときの感覚に近い。

庭先にふわりと浮かび揺れる狐火からの青白い光淡いですらまぶしくてしょうがない。目を開けているのも気だるく感じてしまう。

 

「む、目が覚めたようじゃな。

 どうじゃ?気分の方は。自分の根源、るーつとやらを覗き直してみてなにか思うところはあったかの?」

 

 

 俺の頭に膝を貸すアサハナ様が覗き込むようにして俺の顔を見る。顔の横からあたる淡い光のせいもあってかその整った顔に浮かぶ表情は妖艶で見つめ続けたくなるような色気を感じてしまう

 

 

「最高に最悪だよ、それでも思うところはあった」

 

 綺麗な輝く思い出じゃ、俺は立ち直っちゃいけないんだ。カナミとの思い出で立ち直るようなことをしちゃダメなんだ。アイツに頼るのはもうやめだ。

 

「わかったよ。俺は答えを知ってるやつを知ってる…、たぶんだけど」

 

「そうか、それは重畳。それと気づいておるか?そなた泣いておるぞ?」

 

「あぁ、ホントだ。泣いたのは随分久しぶりだ」

 

 いつ以来だろうか、じいさんが死んでから泣いたことはなかったんじゃないだろうか?だとしたら本当に随分と涙を溜めこんでいたものだ。なんでこんなに涙が止まらないのかわかんないけど、、胸が苦しくてしょうがないのかはわからないけど、それも今はそんなに悪くない。

 

「今はもうすこしはゆっくり寝とれ、儂の膝に寝取られ蕩れ。夜はもうすぐ明ける。そして日が昇る」

 

 アサハナ様の両手が目を覆ったせいで視界から光を遮られて真っ暗になった。着物からはふんわりと桜酒の透き通るような香りは、甘くて酔わせられるようで、冷たくて心地よかった。

 

『ボクの納得のできる答えを見つけてきなさい。お前が立ち上がるまで、何度だって僕はお前を殺そう。

 ……それが、ボクにできる唯一の贖罪だ』

 

 あの夜の約束

『贖罪』という言葉がなにを意味しているのかはわからない。

 俺をこんなふうにした勝手な罪悪感か、はたまた自身の人生においての唯一にして最大であろう失敗に対しての自らへの誅伐のつもりか。その両方か。

 

 確かな答えはいまだはっきりとは得られていない。

 

 





 
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