100カノ短編集   作:ゾネサー

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あまりに次の更新が待てなくて気付いたら書いてしまう。


恋太郎のパンツ盗難事件プチリターンズ

「犯人はこの中にいます!」

 

「アタシ達と読者を置いてけぼりにしすぎよっ!」

 

 ある日の放課後。彗流と小々枝は屋上に呼び出されて早々、容疑者扱いされていた。

 

「昼休みに集まった時、恋太郎さんの水泳パンツがこれ見よがしに置いてありましたよね? あれが無くなっているのです!」

 

「……恋太郎が……持って帰ったんじゃ……」

 

「いえ、屋上には今日の恋太郎さんの匂いはありません! きっとまだおじいちゃん先生のお手伝いが難航しているのでしょう」

 

「ダーリンのパンツが無くなったのは分かったわ。でも昼休みには合わせて三十六人も集まっていたのよ。他にも容疑者はいるでしょっ!」

 

「いえ! ファミリーで、パンツと同じ洗剤のいい匂いを発しているのが、あなた達と季鞠先生と千優先生だけだったのです! あと、先生方は用事を済ませてから来られるそうです」

 

「……他の皆が触らないとは……思えないけど……」

 

「前にも置かれていたことがありましたから。前回の事件で皆もう懲り懲りだったのでしょう」

 

「……そんな頻繁に置かれてるんだ……」

 

「皆……ね。フッ……甘いわね蓮葉!」

 

「むむっ……?」

 

「……え……彗流……?」

 

 メガネをかけ、蝶ネクタイ型ツインテールを手に、小々枝の背後に回り込んだ彗流は自分の推理を語り出した。

 

「蓮葉は同じ匂いをする人物を嗅ぎ分けられるくらいにはそのパンツを嗅いでいた。つまりアナタもお昼休みにパンツに関わっていたのよ!」

 

「ほう……やりますね。いわゆるミステリー物の禁じ手。語り部が実は犯人のパターンと読みましたか。しかしそれはあり得ないですね」

 

「どうしてよっ!」

 

「前回の事件の犯人は何を隠そう私だったからです! 屋上から風に流されてきたパンツが恋太郎さんのものでした!」

 

「……本当(ほんと)に何を隠してるのって……感じだね……」

 

「いくらなんでも同じオチではあまりに見え見えなので、さすがに作者も変えてくるでしょう!」

 

「メタ読みやめなさいよ」

 

「あとついでに私は鼻以外の箇所からはパンツの匂いはしませんでした! 触ってもいません!」

 

「……普通に……持ってないことを確認すれば……いいだけじゃ……」

 

「しかし残念ですよ彗流さん。信じたくありませんでした……」

 

「な、なにがよ」

 

「そうやって誰かに罪を着せようとするのは、ミステリー物の犯人あるあるなのです!」

 

「さっきから根拠がミステリーメタばかりじゃないの!」

 

「根拠はもちろんあります! 言わずもがな匂いです。彗流さん……アナタは特に髪からパンツの匂いがするのです!」

 

「……それは……普通じゃないね……」

 

「うっ……!」

 

 蓮葉だけでなく小々枝からも怪訝な眼差しを向けられ、さしもの彗流もたじろいだ。

 

「……仕方ないわね。認めてあげるわよ」

 

「……そんな……勝手に持っていっちゃダメだよ……」

 

「そこまではしてないわよ! ただヘアゴムが切れちゃって……ダーリンと初めて会った日のことを思い出していたの」

 

「その時もヘアゴムが切れてしまったのですか?」

 

「そうよ。その時ダーリンはアタシにはツインテールが一番だって、服を破って半裸になってまで、アタシに合う布のリボンを作ってくれたのよ」

 

「……恋太郎らしいね……」

 

「だからついパンツをヘアゴム代わりにしてみただけよっ!」

 

「……いきなり論理が飛んだね……」

 

「けど知与があまりに唸るから、ヘアゴムを借りて、パンツは畳んで戻しておいたわよ!」

 

「……そうでしたか。となると犯人はもう限られてきますね」

 

「そうね。残念だわ……小々枝」

 

「……えっ……えっ……アタシ……?」

 

 先程向けていた眼差しが今度は自分に向けられ、小々枝は自分を守るように腕をクロスして震えを抑えようと試みる。

 

「おとなしい人物が実は犯人。ミステリー物の王道ですね」

 

「それはいいから、小々枝はどこから匂うのよ」

 

「言いにくいのですが……下半身(デリケートゾーン)からですね」

 

「……わ……そんな……変なところじゃないよ……」

 

「まさか育みたいにケツバットでも……!?」

 

「それか前回の羽香里さんのようにむふふなことでも……!?」

 

「……し……しないよ……そんな恥ずかしいこと……。……ただ……今日風が強いから寒くて……恋太郎と初めて会った日のことを……思い出して……」

 

「確か豪雪が降り注いだ日に会ったのよね?」

 

「……うん……。……凍えるアタシに……恋太郎は服をほとんど脱いで……半裸になってまで……あっためてくれた……」

 

「ダーリンらしいわね……」

 

「恋太郎さんは服をなんだと思っているのでしょう……」

 

 見ている者の心すら温めるようなほのぼのとした表情をしていた小々枝だったが、目を背けるとまた違った熱を顔に帯びて呟いた。

 

「……ただあの時パンツだけは履いてたから……どれくらいあったかいかなって……確認してみただけ……」

 

「履いたんですか」

 

「……それはさすがに恥ずかしくて……乗せただけだよ……。……ちゃんと畳んで戻したし……」

 

(人目が無かったら履いてたかもだけど……)

 

 人知れず逡巡したことを思い出し、小々枝の真っ白な顔が赤く染められて熱を持っていった。すると次なる人物がタイミング良く姿を現した。

 

「……お待たせしました。何か話があるとか」

 

「季鞠先生……あなたが犯人だったのですね」

 

「恋人とはいえ、パンツを取っちゃうのはさすがにまずいわよ……?」

 

「ええっ!? そんな……っ。ダメよ……っ。先生が生徒のパンツを取っちゃうなんて……絶対……っ。ダメなんだから……っ」

 

「……それだと……むしろ満更でもないみたいだね……」

 

「真面目そうな人間が実は裏では……これもミステリーあるあるですね!」

 

 ルールを破る快感に支配されて赤面してもじもじする様は動機を証明するには十分だった。三人に疑いの目を向けられ、ハッとした季鞠は咳払いして仕切り直す。

 

「と、とにかく! 私じゃありませんから!」

 

「しかし……季鞠先生は胸の辺りからパンツの匂いが……」

 

「……季鞠先生……いくらなんでもそれはっ……」

 

「な、何を想像してるんですか! その……今日は恋太郎君がいなかったから寂しくて、彼と会った時のことを思い出していたんです」

 

「確かお二人は生徒指導室でお会いになったとか」

 

「ええ。複数股を解消するように伝えました。彼は言い訳はせず、真正面からそのことの理解を得ようとしてきましたが」

 

(なんだか皆の出会いを振り返る場みたいになってきたわね)

 

「その時は理解できませんでしたが……今なら分かります。ルールから逸脱してはいますが、その中にも幸せはあるのだと。それで……その……」

 

 生徒指導の先生らしい誠実な顔つきもここまでで、季鞠は口を右手で覆うようにしながら目を逸らして、色っぽい声で告げた。

 

「私が嫌がらないのを確認して抱き合ったことを思い出して……ついパンツを抱きしめてしまっただけ……なんだから……っ」

 

「パンツより生徒指導室での行いの方がビックリですね!」

 

「パンツも大概だけどね……」

 

(アタシも抱きしめておけば良かったかも……)

 

「ちゃ、ちゃんとパンツは畳んで戻しておきましたから……。問題ないはずです!」

 

「問題にはしないけど、問題ではあるわよ?」

 

「あらあら〜。お揃いでどうしたんですかぁ〜?」

 

 こうして容疑者も残り一人となったところで、これまたタイミング良く千優が屋上へとやってきた。

 

「優しくて人畜無害な人間が実は犯人のパターンだったのですね!」

 

「ダーリンのパンツをどこにやったのよ!」

 

「……わ……待って……もしかしたらまた風で飛んだ可能性も……あるかなって……」

 

「あ〜。実はそうなんですよ〜」

 

「……!? ダ、ダメですよ……っ。そんなことしちゃ……っ。ダメなんですからねっ……!」

 

「……? 今日は風さんが強かったので、飛ばされたりしちゃう前に折り畳んで恋太郎君に渡しておいたんですよ〜」

 

「………」

 

 沈黙が屋上を支配し、風が吹き去る音が良く響き渡った。痛いくらいの視線が蓮葉に突き刺さる中、幸いにも千優がマイペースに説明を続けていく。

 

「初めて会った時、恋太郎君は自分のことよりも私を思いやってくれました〜。今日も先生のお手伝いをしていると聞いたので、少しでも恋太郎君のお力になれればと思って〜」

 

「……結局事件なんて起きてないじゃない!」

 

「語り部による叙述トリックだったというわけですね!」

 

「今回もまたアンタが原因じゃないの! 少しは反省しなさいよっ!」

 

 蓮葉が食虫植物のように彗流のツインテールに捉えられているさなか、小々枝は少し引っかかることがあった。

 

(触った人は全員折り畳んだはずだけど……千優先生が改めて畳む必要があったのはなんでだろう? 何かあったのかな)

 

 そして何の気なしに問いかけてみた。

 

「……あの……パンツを回収した時に……何かありました……?」

 

「え〜とですね〜」

 

「……ひゃっ……?」

 

 すると千優が笑顔を浮かべながら、ビキビキと血管が浮き出て怒りマークで満たされていき、小々枝は背筋が凍る思いを抱いていた。

 

「……や……やっぱりいいです……」

 

「そうですか〜? それは良かったです〜」

 

(千優先生が何をしたにしろ、ちゃんと返したならそれでいいよね。うん!)

 

 深くは追求できずに引き下がると、千優はほっと胸を撫で下ろしていた。

 

(さすがにあのことは生徒さんには伝えられませんね〜)

 

 そしてその時の出来事が脳裏に過った。

 

「げげげーっ! 男子のパンツじゃーっ! 絶対に拾うぞえー! わしのもんじゃあああ!」

 

「……教頭先生〜? 一体何をしてらっしゃるんですか〜?」

 

「ひいっ……!?」

 

 授業時間中に、ふと風で飛ばされたらいけないと思いやってきた先で見つけたのは、男子の落とし物を拾い漁る教頭の姿だった。

 

(まったく……。先生が生徒さんの持ち物を押収しようとするなんて〜。絶対に許せません〜)

 

 千優は生徒を安心させる立場の者がやろうとした行いに説教をしたことを思い出し、より怒りを増幅させて小々枝を震えさせていったのだった。

 

(一体……恋太郎のパンツでどんなことをしたんだろう)

 

 そして誤解が解けるまで、小々枝は千優がやったことを色々と妄想し、身体を熱らせる羽目になったのだった。




パンツをきっかけに2025年からの振り返りをしよう!という趣旨でした。

小々枝ちゃんは本格的に加入してキャラの方向性がハッキリしてきたら、さらっと原作の方に寄せると思います。期間限定小々枝ちゃん。髪色なんかも色んなパターン見れるの今のうち、みたいなもの。
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