100カノ短編集   作:ゾネサー

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恋太郎ファミリーの日常(その2+α)

〜勉強の成果〜

 

「『改めて見渡すと……なんと素晴らしい』『かわい子ちゃんが揃い踏みときたもんだ。おじさん困っちゃうよぉ』」

 

 追加戦士も増え続け現在33人もの彼女が集う中、容姿に自信が無い静は気圧されていた。

 

「お待ちくださいな」

 

「……?」

 

「わたくしはうつく……?」

 

「『恣意』……?」

 

「そうでしょう」

 

「そして私は奇……?」

 

「『陣』……?」

 

「ふっふーん、よ!」

 

「『何なんだお前達は』」

 

 自信に溢れすぎている二人を見て気圧されるだけ馬鹿らしい気がしてきた静であった。

 

〜努努忘れるなかれ〜

 

 作家としていくつもの作品を完成させている夢留に対し、寧夢が相談をしていた。

 

「起きたら靴が完成してて……小人が作ってくれてるんです」

 

「それはとてもメルヘンですね」

 

「でもいつも作ってもらってばかりで……あまり頼りすぎないようにしたいんです」

 

「なるほど……お話は分かりました。そういうことでしたら、こちらを授けましょう」

 

「これは……モンエナ……?」

 

「はい。全ての創作の源です」

 

「夢留さんもこれを飲んで頑張ってるんですね……」

 

「ええ。時に意欲に突き動かされることもあります。……ですが質の良い創作には十分な睡眠が不可欠です」

 

「え……」

 

「それは絵本であれ靴であれ、変わらないんじゃないかと。本当に必要な時だけ、無理をすれば良いのです」

 

(……そっか。そうだよね。どうせ作るのなら、良い物を……)

 

「ありがとうございます。すごく参考になりました」

 

「それは何よりです」

 

 後日夢留がプレゼントされた靴はとても良い出来だったそうな。

 

〜バチクソマジヤバーい〜

 

 休日に集まったあー子とうさちゃんはファンシーショップへと突入していた。

 

「かーいー」

 

「ペアルックしよー!」

 

「エモーい」

 

 最初こそ一個二個と手に取るくらいだったが段々と楽しくなって歯止めが効かなくなってきた。

 

「これだけじゃさみ死ぬ……」

 

「マジわかるぅー」

 

 小物を買い尽くした二人は巨大ぬいぐるみのコーナーに進軍していく。

 

「ギチギチ〜♡」

 

「マジヤバーい」

 

 お互いに気に入ったぬいぐるみを買い上げるとうさちゃんは抱きしめ、あー子は購入した小物でデコレートし始めた。

 

「鬼デコうさちゃー」

 

「あーん可愛い♡♡♡」

 

 うさぎのぬいぐるみを映えるような仕上がりにしてみせ、早速ファミリーのライングループで共有していた。

 

「私もこのぬいのことあー子ちゃんって呼ぼ。あー子ちゃん♡あー子ちゃん♡」

 

「マジヤバーい」

 

 自分の名前を連呼しながらぬいぐるみに顔を沈める友人の姿はここだけのものにしたとか。

 

〜最近暑いし実質今は夏フィールド〜

 

「ニルヴァーナファミリー……ですか?」

 

「はい。最近は愛でる玩具としても人気なんですよ。本来はマフィアバトルラジコン玩具で、勝負に用いるものなんですけど」

 

「そんな……ダメよ。決闘罪じゃない……!」

 

「玩具の世界なのでやりたい放題すわ……!」

 

「ルールを破りたい放題……!?」

 

 シンパシーンを感じた二人は休日に集まって試遊会に赴いていた。

 

「本日は虫取り大会を開催しております。各フィールドに散りばめられた虫の玩具をどれだけゲットできるかの勝負になっております」

 

「ポケ⚪︎ンでしか聞いたことのないイベント……!」

 

「で、できた……! どうかしら?」

 

「ポケ⚪︎ンでしか見たことのない短パン小僧……!」

 

「や、やっぱり変よね。女性なのに男の子なんて……」

 

「あ、いえ! 私もこの前バイオレットで男の子で遊びましたから……!」

 

(恋太郎さんの名前にしたのは内緒ですが……)

 

「良かった……。子供の頃、男の子が集まって木に登って遊んでいたのが本当は羨ましかったの……」

 

「季鞠先生……。今日は思う存分楽しみましょう!」

 

「う、うんっ!」

 

 こうしてサブタイトルのフィールドに飛び込んだ二人は記念に大会に参加することに。しかし……

 

「きゃあ! ずり落ちちゃった……」

 

「すわ〜」

 

 ゲームに不慣れな季鞠はクセの強いラジコン操作に苦戦を強いられていた。

 

「残り10分!」

 

(こうなったらチェーンソーマンになって木を切り倒すしか……! ……!)

 

「今度こそ……!」

 

「良い感じです! そのままゆっくり……!」

 

 ぎこちないながらにアドバイスを受けながら着実に登り詰めていくと、あと少しで大会が終わろうかという間際。

 

「と、とれた……!」

 

「やりましたね……!」

 

「えへ……」

 

 木のてっぺんに鎮座していた虫を手にし、季鞠は短パン小僧と同じように少年の笑みを湛えていた。

 

「あ。あー子さんから……季鞠先生、こっち向いてください」

 

「え……わっ」

 

 こうしてまた思い出のアルバムに一ページ追加されたのだった。

 

〜最近タピオカ見かけねーんだよってボーボボでも言ってた〜

 

「タピオカチャレンジやりましょう!」

 

「いつのブームよそれ」

 

「だってこの漫画ずっと春ですし……」

 

 お出かけ中に見かけたタピオカを買ったのでタピオカチャレンジをやるようです。

 

「あれあれ〜? 唐音さんはやらないんですかぁ〜?」

 

「おう。その喧嘩いくらだ?」

 

 唐音をからかうのに夢中になりすぎて羽香里が前のめりになった瞬間だった。

 

「あっ。ちょっ……」

 

「ばっ……!」

 

 谷を転がり落ちるタピオカ。すると唐音の反応が間に合い手が伸ばされた。

 

「んっ……」

 

「や、や、やわ⚪︎か戦車もまた流行って欲しいなんて思ってないんだからねー!」

 

 タピオカを飲み終わるまで二人は顔を真っ赤にして目も合わせられなかったとか。

 

〜デッドオアベイビー〜

 

 バイトが終わり屋上へとやってきたタマは迷うことなく羽々里の膝の上で丸くなった。

 

「しかしよくもまあここまで切り替えられるものだな」

 

「あらあら。騎士華たん嫉妬ちてるのかちら? 大丈夫よー。ママのお膝は二つありまちゅからねー」

 

「やっ、やめろ! 甘やかそうとするな……!」

 

「恥じらいを捨てるにゃん……」

 

「……!?」

 

「本能のままに生きる時間があるからこそ普段は我慢が効くんだにゃん」

 

「うっ……! 否定できん……!」

 

「ほらー。こっちおいでー」

 

「ママぁ……♡」

 

 即堕ちだった。

 

「よちよちー」

 

「ばぶー!」

 

「にゃん……」

 

「にゃんにゃん!」

 

「……?」

 

「だー!」

 

「にゃふん……」

 

(ふふっ。赤ちゃんってワンちゃんネコちゃんと家族みたいに過ごすわよね)

 

 首元に抱きつかれ迷惑そうにするタマだったが振り払うことはなく、一緒に丸まって寝た二人の安らかな寝顔を羽々里は穏やかに眺めたのだった。

 

「くっ! 殺せ……!」

 

「まだまだ甘いにゃん……」

 

 やがて正気に戻った騎士華は羞恥心で顔を赤らめたが、タマは何故か誇らし気だった。

 

〜あたしみたいにはなるな〜

 

「雑草ってすげー生命力だよな。あたしも見習わなきゃ」

 

「百八先生にこんな雑用手伝ってもらうなんて申し訳ないど……!」

 

「なーに言ってんだ。いつも分けてもらってるのはこっちなんだから。たまにはさ」

 

(ついこの前も園芸用品を補充してくれてたど……)

 

 いつも手伝っている恋太郎が薬の副作用で倒れたと聞き、百八がその代わりを買って出ていた。普段から校内の草むしりをしているだけあって手際も良く、予定していたより早く終えることができた。

 

「助かったど……! お礼にテントの掃除を……あれっ? 綺麗だどー?」

 

「妹がやってくれたんだ。かたじけないったらないね」

 

「ならおでからはとびっきりの野菜をプレゼントだどー!」

 

「うっひゃー! でっけー!」

 

(入れたら気持ちよさそー♡ …………。や。さすがに堪えろよあたし……!)

 

「おで将来は百八先生みたいになりたいどー!」

 

「あたしみたいにだけはなるなっつってんだろ……! いやマジで……!」

 

「だどー?」

 

 純朴な視線をぶつけられ、それはもう必死に静止する百八だった。

 

〜青春バッテリー〜

 

「おーい! 育サン!」

 

「山女! 農園はいいの?」

 

「百八先生が手伝ってくれたから平気だどー。おでも何か手伝えることがあればなって」

 

「ありがとう! 一人じゃできる練習が限られてさ!」

 

「ボールをトスすればいいどー?」

 

「今日はピッチャーの練習をしたくてさ!」

 

「えっ? 育サンってピッチャーだったど……!? 何故かバットのイメージがあるど……!」

 

「あはは! 素振りも沢山してるからね!」

 

「これが二刀流……! 格好いいどー!」

 

 こうして育がマウンドに登ると投球練習が始められた。

 

「ナイスキャッチ! 投げやすいよ!」

 

「どんなボールも止めて見せるどー!」

 

 褒められて気をよくした山女の返球が強くなってしまい、ミットが強烈な音を鳴らした。

 

「……♡」

 

「あ! ごめんだどー」

 

「いや、もっと強くていいよ! 下半身で生み出した力をもっと上半身に!」

 

 やがて日が暮れると、ボールが見えなくなってしまったため投球練習が終えられた。

 

「お疲れ! 今日はありがとう!」

 

「おでもフォームを教えてもらって楽しかっただどー。それにしても三刀流だったなんてびっくりしたど……!」

 

 マウンドの山女に育が駆け寄っていくとお互いに充実した時間を味わうように笑い合ったのだった。

 

〜ただしシャブはのぞく〜

 

「ここは……?」

 

「あっ! 目を覚ましたのだ……。良かったのだ……」

 

 恋太郎が目を覚ますと、そこは薬膳家だった。

 

「そっか。俺倒れちゃったんですね」

 

「ごめんなのだ! まさか一日疲れを感じなくなる薬の効き目が切れたら纏めて疲れに襲われる副作用があったなんて……」

 

「楠莉先輩が飲んでなくて本当に良かった……」

 

「何言ってるのだ! 楠莉だけが飲めば良かったのだ!」

 

「そんなことになったら俺今以上に倒れちゃいますよ」

 

「……確かに」

 

「恋太郎や。あったかいお茶を淹れたから飲むといいよ」

 

「ありがとうございます」

 

「楠莉も少し休みなさい。付きっきりだったから疲れてるだろう」

 

「大丈夫なのだ。楠莉には一日疲れを感じなくなる薬があるのだ」

 

「いや絶対飲んじゃダメですよ!?」

 

「そうだったのだ……。本当に疲れちゃってるのだ。少し休むのだ」

 

 ヤクに連れられて楠莉が自分の部屋へと戻っていくと、代わりに父が入ってきた。

 

「お義父さん……!」

 

「てめーにお義父さんと呼ばれる筋合いはねーのさ! ……そんなことより大事な話があるのさ」

 

「……なんでしょうか」

 

「俺達の楠莉は天才だが、不老不死の薬の副作用で精神も八歳になってるから、そういった薬の副作用についてどうしてもルーズになってしまうのさ」

 

「はい。分かっているつもりです」

 

「俺達は代々薬開発が趣味の家系だから、そういった副作用も覚悟の上なのさ。だがお前はそういう事情じゃない。中には未成年が服用することで生涯影響が出るようなものもあるのさ」

 

「まさしく楠莉先輩自身のように……ですね」

 

「ああ。それに前に3話続けてぶっ倒れた後、タチの悪い風邪にかかったことあったろ。あれも免疫力が下がったから起こったのさ」

 

「そうかもしれません。ですが俺は気にしていませんよ」

 

「だから言ってんのさ。……おめーさんが覚悟できてるっつーのは分かってんのさ。だがそれは楠莉一人と付き合っている場合の話なのさ。もし今後本格的な影響が出たら……分かんだろ?」

 

「……俺実はファミリーといる時、薬とは関係のないところで一度生涯影響が出るような姿になってしまったことがあるんです」

 

「薬と関係なくそんなことになったのさ……?」

 

 楠莉の父はちょっとファミリーに所属させてていいのか不安になった。

 

「それでも全員姿が変わっても愛してくれると……言ってくれたんです。だからこれは俺だけの覚悟じゃありません。その上で俺も楠莉先輩が重く受け止めてしまうことのないよう、最大限の努力をするつもりです」

 

「……分かってたつもりだったが、どうやらつもりだけだったみたいなのさ。楠莉のこと、よろしく頼んだのさ」

 

「はい……! お義父さん!」

 

「お義父さんと呼ぶんじゃねーのさ! まだ33股は……33股!? 15人の時より倍以上に増えてるじゃねーのさ! とにかく! ファミリーのことは認めてねーからなコラ」

 

「時間をかけて分かってもらいます……!」

 

「ち……」

 

 そして恋太郎は少しふらつきながらもマシになった身体で楠莉の部屋を訪れた。

 

「おや。やっぱり来たのう」

 

「楠莉先輩は大丈夫ですか?」

 

「安心せえ。寝たらまた元気に飛び上がるじゃろうて。疲れてたから精神的にも落ち込んでたのじゃろうよ」

 

「そうですか……」

 

「ほれ。恋太郎も頭を撫でてやるとよい」

 

「はい!」

 

 優しくゆっくり頭を撫でられていると険しかった楠莉の表情も穏やかなものへと変わっていった。そして時は流れ——

 

「んん……恋太郎? な、何してるのだ。休まなきゃなのだ」

 

「俺は大丈夫です。彼女と同じ空間に居続けたので治りました」

 

「すげー! お婆ちゃんの言った通りなのだ!」

 

「ほっほっほ。看病を頑張ったのは楠莉じゃろう? ほれ、年寄りは退散するとするかのう」

 

「あ……ヤクさんも色々とありがとうございます……!」

 

「わしへの褒美はまた今度貰うとするよ」

 

 何もかも見透かされているような妖艶な笑みにドキッとしているうちに部屋には二人が残された。

 

「恋太郎……本当にごめんなのだ」

 

「違いますよ。俺がかけて欲しい言葉は、そうじゃありません」

 

「うん……。また一緒にお薬作ろうなのだ!」

 

「はい!」

 

 そして寝ている体勢から伸ばされた腕に吸い込まれるようにして、二人は唇を重ね合ったのだった。

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