100カノ短編集   作:ゾネサー

4 / 17
恋太郎ファミリーの日常(その3)

〜報連相〜

 

 凪乃は羽々里に社会人としての心得を聞いていた。

 

「そうね……。たとえびっくりするくらいの誤発注をかましたとしても、素直に報告・連絡をして相談することかしら」

 

「ヤクさんに見惚れてたことが原因なのまで相談されても困ると思うけどな」

 

「なるほど……負い目があっても報連相を怠らないことが大事だと」

 

「ホウレンソウ!?」

 

「あ」

 

 すると胡桃がくるくるモードに入ってしまった。

 

「芽衣!」

 

「かしこまりました。ご用意はございますか?」

 

「採れたてがあるどー!」

 

「それでは向かいましょう。少々お待ちを」

 

 少しして芽衣がホウレンソウのソテーを持ってくると胡桃は大満足していた。

 

「なるほど……これが報連相の重要性。理解した」

 

「美味しいっ……! 芽衣さんの手料理が毎日食べられるなんて羨ましいっ……!」

 

「私と結婚する?」

 

「しない♡」

 

〜ぐぅかわ〜

 

 寧夢とあー子は数のお着替えを楽しんでいた。

 

「ぐー!」

 

「かーいー」

 

「いや、数がオシャレしたところで別にだろ」

 

「むー」

 

「そんなことないってぇー。たとえばー」

 

 ファッションに興味なさげな数に対し、あー子が髪を巻き出すと寧夢も反対側に手をかけた。

 

「できたー」

 

「ぐー!」

 

「これって……3が……二つも……!?」

 

 すると数の首元に数字が出現していた。

 

「しかも映えそうな3と眠たげな3……! これじゃあ数、3と3の間に挟まる二股女じゃないか……!? どうしよう……選べない……!」

 

「どっちも選んでいいんだよー。恋太郎っちだって三十三股でぇー……あ」

 

「ぐー!」

 

 寧夢が書道で「お揃い!」と書いて見せると、数の顔が見る見るうちに赤くなっていった。

 

「大好きな数字に囲まれてるだけでも幸せなのに、大好きな恋太郎と一緒なんて……!?」

 

「ぐー!」

 

「かーいー」

 

「へへ……よせって……」

 

 数日後デートでこの髪型にしていくと、恋太郎の目はとろけてしまった。

 

〜灰尾凛の憂鬱〜

 

(むぅ……。こんな日に限って寧夢さんに先約が入ってるなんて)

 

 今日は凛が待ちに待ったバイ⚪︎ハザードの新台がゲームセンターに入荷する日だった。

 

(二丁拳銃もいいですが、できれば誰かと共有したい。でもそれと同じくらいすぐにやりたい……!)

 

「すわすわしてきましたわ……!」

 

「日本語になってねーのよ」

 

「そわそわ——とも言えるね」

 

(え!? ムラムラじゃないんですか……?)

 

(詩人さんは無理でしょうし、お二人もどうもお得意ではないご様子……。バイオレンス描写はやはり人を選んでしまう……)

 

「はぁ……。誰かキツくても大丈夫な方がいらっしゃればよかったのですが……」

 

「呼んだかい凛!?」

 

「……!? 育さん……!」

 

 みんながまたケツバットするんだなと流そうとした頃には育はゲームセンターへと引き摺られていった。

 

「バイオレンすわ〜〜!!」

 

「キッツ……♡」

 

 発した感想はケツバットと大差無かった。

 

〜ギネス認定おめでとう〜

 

 姫歌と夢留は美術の授業で有名な絵画の模写をすることになった。

 

「姫歌さんはどちらの絵にするのですか?」

 

「まだどれかは決めてないけど、やっぱり私はギネス世界一の画家、ピカソね!」

 

(タイトルとの関連付けが無理矢理ですね……)

 

「それはとても挑戦的(メルヘン)ですね」

 

「夢留はどうするの?」

 

「私は『最後の晩餐』にしようかと」

 

「専門じゃない授業にしては大変すぎない……?」

 

「これでも絵本作家ですから」

 

「その一言で片付くのは天才ね……」

 

 そう言う姫歌もさらっとピカソの絵の特徴を捉えて模写してみせた。

 

(さすがピカソね! よく分からなくてすごく奇人っぽいわ! ……そうだ!)

 

「ね、二人の絵SNSに上げてもいい?」

 

「構いませんよ」

 

 しかし目論見通りにはいかずピカソにならって姫歌が天才、友人が奇才と称されることになった。

 

「夢留……! 次は負けないわ……!」

 

「なんと希望(メルヘン)に満ち溢れた眼差し……!」

 

〜切り札〜

 

 二年生組で集まって楽しんでいたババ抜きもいよいよ佳境を迎えていた。

 

「ちょ、ちょっと! 唐音さんが揃えちゃったら……」

 

「ドンマイ!!」

 

 ツンデレを存分に発揮し唐音の手に残されたままだったジョーカーが羽香里に押し付けられる。

 

「名探偵の名にかけてなんとしても推理してみせます!」

 

「私だってファミリーの名参謀として負けるわけにはいきません……!」

 

「こ、これは……!」

 

 すると羽香里は二枚のうち一枚をこれ見よがしに上にずらした。

 

「なんというトリック……!」

 

「めちゃくちゃ古典的なやつだけどな」

 

(蓮葉さんは近いカードを手に取るクセがあります。上にずらす勢いでさりげなく近付ける……これぞ完璧な作戦です!)

 

「惜しかったですね羽香里さん……!」

 

「なっ……!?」

 

 しかし目論見をかわされ、下を取られて揃えられてしまった。

 

「どうして分かったんですか……!?」

 

「私の類い稀なる観察眼からくる名推理……あとジョーカーに唐音さんの匂いがついてました!」

 

「ずっっる」

 

「まあそう言うなって。……迷参謀」

 

「くうっ……! 唐音さんが匂うせいで……」

 

「人を臭いみたいに言うな!」

 

〜騎士道とカポエイラ〜

 

「何? 私に剣道を習いたいだと?」

 

「うん。他の世界のこと知っておくことが大事って言われててさ。でもあまり未知すぎると物理じゃ倒せないから怖いし……」

 

「ふむ。分かるようで分からんがいいだろう」

 

 約束を取り付けたエイラは講義を終えるとその足で剣道部を訪れた。

 

「そこ! 一振り一振りに集中するんだ!」

 

(久しぶりに見たな……バブバブとかしてない騎士華ちゃん)

 

「よし。そうだ。やればできるじゃないか」

 

(教えるの楽しいんだろうな。先輩……というよりお姉ちゃん気質なんだね)

 

「……ああ、すまない。つい指導に熱が入ってしまってな」

 

「いいんだよ全然。むしろいいなあ……なんて思ったり」

 

「……? どういう意味だ?」

 

「私が道場でカポエイラを教えることになったら、こんな感じになのかなって」

 

「そうか。……しかし私は剣の道に進かは定かではない」

 

「えっ。そうなんだ?」

 

「あー子がファミリーに来た際、将来の夢を問われた。意外と言ってはなんだが、なりたい自分を持っている者がほとんどだった。ふ……そろそろ進路を決めないといけない身だというのにな」

 

(迷ってるんだ。焦ってるんだね。痛いほど……分かるよ)

 

「そ、そんな私だって決まってないし。それに……」

 

「それに?」

 

 エイラの脳裏には芽衣に伝えられたことが過っていた。

 

「迷うってことはそれだけ考えてるってことだしさ。悪いことじゃないと思うんだ。きっと遅くないんだよ。今はまだ私達……知らないことだらけだから」

 

「……! ふふっ。そうかもしれないな。よし! なら今日は存分に指導させてもらうぞ」

 

「望む所!」

 

〜勃発! ヤクさん争奪戦〜

 

「ばぁば……♡」

 

「おやおや」

 

「楠莉のお婆ちゃんなのだー!」

 

「ヤクさんはお話いっぱい聞いてくれるし、私のお婆ちゃんだよ!」

 

「いいやタマのにゃん……」

 

 ヤクの二つしかない膝があっという間に大渋滞になってしまった。

 

「お腹の中……?」

 

「ギチギチ〜♡」

 

「おやすみにゃん……」

 

「とっちゃ嫌なのだー!」

 

「ま、まあまあ。それだけヤクさんが愛されてる証ですよ」

 

「楠莉のことが好きな気持ちは変わらんよ。それじゃダメかのう」

 

「うう……楠莉もお婆ちゃん大好きなのだー!」

 

(わしの孫可愛すぎん?)

 

「よしよし。ところで恋太郎はわしを奪い合ってくれないのかい?」

 

「えっ」

 

「寂しいのう。愛してくれないのかのう」

 

「俺も大好きですっ!!」

 

 ヤクはくすりくすりと笑いながら全員を甘やかしたのだった。

 

〜このペアは組ませちゃやべーのだ by楠莉〜

 

「ふおお……! ワンピースは実在したのです!」

 

「オー……! エキサイティン……!」

 

「こ、こら! 揉まない!」

 

「そーそー。揉むならあたひのにしときらー?」

 

「揉ませない! あと飲まない!」

 

 学校の屋上で繰り広げられているとは思えない光景に季鞠は狼狽していた。

 

「すいません。やっぱりその……乱れてますよね」

 

「知与さん……」

 

「けどあれでいて分別はついているというか……公の場では抑えているので、多めに見てあげて下さい」

 

「でも……」

 

「おや? 季鞠先生肩が凝っているご様子。これは見逃せません」

 

「え? あ……気持ち良い」

 

 先程までのセクハラとは違って真摯なマッサージを受けた季鞠は肩だけでなく心も軽くなったような気がしていた。

 

「そうよね……。ファミリーの中でなら、少しくらいハメを外す時間があっても良いかも」

 

「ふふっ」

 

「それではお礼に登らせていただきます」

 

「んっ……。ダメよ。そんなことしちゃ……ダメ、なんだから……っ」

 

「ゔーっ!」

 

「オー。久しぶりに知与ロリータ発射(スペースシャトル)したデース」

 

〜どこでもミスディレクション最終章〜

 

「くそぉ……! 新たに身に付けた分身の術でもダメか……!」

 

「出直し遊ばせ」

 

 美々美と愛々は正門で懲りずに素顔を狙ってきた雉根田をミスディレクションビューティーフローで撃退していた。

 

「観察結果その99。対象の視点が定かでなくてもミスディレクションは有効」

 

「凪乃さん!? 何を柱の影から覗いてらっしゃるの……!?」

 

 すると凪乃が首をちょこんと覗かせていた。

 

「あ……ミスディレクションを移動手段として確立するために観察してるんです」

 

「な、なるほど……?」

 

「美杉美々美。あなたのビューティーフローでサポートして欲しい」

 

「それは構いませんが……肝心のミスディレクションができませんと」

 

「揉ミスディレクションを試してもらいたい」

 

「そ、それってつまり……ひゃああ——」

 

 愛々はログアウトした。

 

「な、なにもそんな方法でなくても……」

 

「揉ミスディレクションは能動的に発動できるから効率的」

 

「うう……そんな……そんなこと……」

 

 美々美は自分の方が消えてしまうのではないかと思うほど顔を赤らめていた。

 

(な、凪乃さんは真剣なのですわ! 無碍に扱うわけには……)

 

「……分かりましたわ。で、では……参ります」

 

 とうとう意を決し、恐る恐る手が伸ばされた。——その刹那。

 

「呼ばれて飛び出て紅葉なのです」

 

「きゃあ!?」

 

 紅葉が滑空して降りてきた。

 

「も、も、紅葉さん!? どうして上から……!?」

 

「ロケットで吹き飛ばされたのです。そんなことより揉むのはお任せなのです」

 

「えっ、あっ、ビューティーフローですわ!」

 

 しかし凪乃が消えることはなかった。

 

「観察結果その100。ミスディレクションは華暮愛々にしか不可能。これ以上の追求は無意義。……茂見紅葉、もう大丈夫」

 

「お構いなく」

 

 結局満足するまで揉ませてあげる凪乃。そんな光景を見ながら美々美は揉まずにすんだ安心感より大きな感情が渦巻いていた。

 

(な、なにを残念がっているのですかわたくしは……!)

 

 感極まって美々美が走り出すと、新聞配達の時とは比べ物にならない程速く消えていた。

 

「観察結果その1。感情は動力源に変換可能」

 

 そしてまた凪乃の新たな観察が始まった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。