100カノ短編集   作:ゾネサー

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恋太郎ファミリーの日常(その4)

〜類は友を呼ぶ〜

 

 彗流が34人目の彼女としてファミリーに加入したばかりの頃、数は不機嫌になっていた。

 

(恋太郎とお揃いじゃなくなった……)

 

 それは3を象った髪に挟まれる幸福感を以てしても拭えなかった。

 

「ちょ、ちょっとアナタ顔色が悪いわよ。ツインテール足りてないんじゃない?」

 

「なんだそれ。数はそんなもの興味ない」

 

「はあ!? 世界一のツインテールを前にして何とも思わないわけ!?」

 

「わぁ……! 自信ありげな2と自信満々な2だね!」

 

「何言ってるか分かんないけど、見惚れてるのね! ……ま、まあアタシほどじゃないけど、アナタもよく似合ってるじゃない」

 

「そ、そうか? へへ……」

 

 お互い何言ってるんだこいつと思いながらも不思議と気が合う二人だった。

 

〜詩人のマジックショー〜

 

「さあお嬢様。お好きなカードを1枚どうぞ」

 

「『へへ……折角の上物だ』。『俺はこの』"赤いカード"『を選ぶぜ』」

 

「全て赤——とも言えるね」

 

 静が選んだカードを姫歌と一緒に確認すると見えないように伏せられた。

 

「——視えた。君が手にしたのはハートのエースさ」

 

「『予言は本物だったのか……!』」

 

「これで君は奪ったわけだ。僕のハートを……一ケ」

 

「『貴方と私は結ばれてはならぬ宿命……!』」

 

「さすがね詩人!」

 

「…………」

 

 胡桃は見え見えの合図に気付いていたが静の夢を壊さぬようツッコミを堪えていた。

 

「ふっふっふ……。詩人さん。私の目は誤魔化せませんよ!」

 

「ちょ、ちょっと待っ——」

 

「ずばり! 詩人さんは透視していたんです!」

 

「推理小説でやったら怒られるやつ」

 

「ふ……さすがだね蓮葉。僕の左目に封印された邪眼に気付くなんて——ね」

 

「急にステレオタイプの厨二に」

 

「ちなみに弟子である私も右目にあるのよ!」

 

「特殊能力のバーゲンセールか」

 

「"物語終盤"『ではよくあることじゃよ』」

 

〜名状し難い感情〜

 

 凪乃と育、静と凛の身体が薬によって入れ替わってしまった。

 

「こんな大事があらすじで済まされるのだからこの漫画はどうかしている」

 

「『違ぇねえや』」

 

「今だ凛! 僕の無防備なお尻にキッツい一撃を食らわせるんだ!」

 

「すわ〜!」

 

「キッ……。……あんまりキツくないや」

 

「『すまねぇな坊主』」

 

「…………」

 

「『相棒?』」

 

「……これがキツいという感情……?」

 

「"凪乃さん"?」

 

 早まっていく鼓動に理解が追いつかない凪乃だった。

 

〜第二の育誕生〜

 

「ってことが昨日あってね」

 

「そうだったんですね……。ちょっと怖いけど、眠くなくなるなら興味あります……」

 

「うーん。しばらく作るの禁止されちゃったんだってさ」

 

「ああ……」

 

(寧夢、残念そうだな……よし!)

 

「ついてきて!」

 

「えっ? えっ?」

 

 育は寧夢を本気修行寺に連れてきた。

 

「また貴様か」

 

 そして始まる修行。まずは地獄の雑巾掛け——。

 

「眠くなる暇がない……!」

 

 雑念で叩かれる坐禅——。

 

「痛さで目が覚める……!」

 

 量が極端に抑えられた精進料理——。

 

「お腹一杯になって眠くなったりしない……!」

 

 最後に修行を締めくくる滝行——。

 

「冷たくて痛くて……ああ……!」

 

 修行の完遂と同時に、寧夢は悟りを開いた——。

 

「キツイって……いいですね……!」

 

「でしょ!? また来ようね!」

 

「二度と来るな」

 

〜世紀の大決戦〜

 

「おぅ先。今日は負けねぇでい」

 

「先輩って呼びな! そういうことならアタイも容赦しねぇ! 負けた方は……帰りの駄菓子奢りだ!」

 

「乗った!」

 

 こうして負けられない戦いの火蓋が切られた。

 

「ちぃ。一本残っちまった」

 

 種目はボウリング。先攻の祭李は惜しくもスペアを逃してしまう。

 

「アタイはこれでいく!」

 

(子供用のボールでい)

 

 先がボールを持ち上げるのに苦労しているとレーンに変化が訪れた。

 

(子供用のガター防止のネットでい)

 

「おりゃああ!」

 

 そして決着の瞬間が訪れた。

 

「ぐすっ……ぐすっ……」

 

(圧勝しちまった……)

 

「ぐす……。裏番長に二言はない! 好きなものを頼みな!」

 

「お、おう……」

 

 なんか悪い気がしたので抑え目にした祭李だった。

 

〜この中だと妹が一番まともですね!〜

 

 妹の推している作品が映画化されたので、胡桃と知与を誘って見に来ていた。

 

「とりあえずここからここまで」

 

「映画館でそんな注文するの初めて聞きましたよ」

 

「普通は聞くこと自体ありませんけどね……」

 

「いやだって! こんな匂い我慢できないって!」

 

「気持ちは分かりますが……」

 

「お待たせしました。ポップコーン全種です」

 

「ユーチューバーの企画?」

 

 下準備を済ませた三人が席に着くとちょうど映画の予告が流れていた。

 

『兄妹同士でお付き合いって……どうかしてるわ!』

 

「ゔっ……!」

 

(ふっふっふ。安心してください知与さん。その垣根を乗り越えていくのが最高なんだから!)

 

 程なくして本編が始まると次第に物語に引き込まれていった。

 

『いただくよ。君の唇も、何もかも』

 

(……恋太郎さん)

 

 知与が主人公を自分と重ね合わせていると、ポップコーンを食べ終えた胡桃がくるくるモードに入ってしまった。

 

(え? 胡桃さん……すごいこっち見てる!?)

 

(妹は食べ物じゃない! 妹は食べ物じゃないんだ……!)

 

(うっひゃあ……! 顔がいい……! いただかれちゃう……!)

 

「はひ……はひ……」

 

 三人とも映画を楽しんだが、見終わった後ちょっと気まずかった。

 

〜全力という名の無謀〜

 

「うう……羽香里サンには申し訳ないことしちゃったど」

 

「仕方ないよ。火は物理では倒せないから……」

 

 羽香里主導で花火をする企画が進められていたが、火に耐性がない二人は断っていた。

 

「でも……」

 

「うーん。それじゃあこうしよう! 今日私達は全力で楽しむ! それでいいみやげ話を持って帰ろうよ!」

 

「エイラさん……。……うん。分かったど!」

 

「いいお返事!」

 

 そして二人は以前エイラが芽衣と来たサウナを訪れていた。

 

「本気サウナに本気水風呂……! これだど!」

 

「あっ! それはダ——」

 

「だどーっ!?」

 

「山女ちゃーん……! た……立ったまま死んでる……!?」

 

「おでだって生きてるんだど……!」

 

「よ、良かったあ……。死んじゃったら物理で倒せないもんね」

 

「おでのこと倒すつもりなんだど?」

 

 とりあえずいいみやげ話にはなった。

 

〜春に花火する日があってもいいじゃないか公園〜

 

「花火……でございますか?」

 

「はい! みんなで集まってやろうと思って」

 

「かしこまりました」

 

「命令じゃないですよ」

 

「すぐに技師様の資格を取得して参ります」

 

「手持ち花火と言わなかったばかりに」

 

 羽々里と二人がかりで押さえ込み、集合場所へと連れて行く。

 

「べ、別に誘われたから来たわけじゃないんだからねっ!」

 

「なにそれ怖い」

 

「……あれ? 妹はどうしたのよ」

 

「来たがっておりましたが、映画の約束と被ってしまいまして」

 

「血の涙を流してたわ」

 

「そこまで!? ま、まあまた機会はあるだろうから……」

 

「……そう、ですよね。火もダメな方もいますし、全員の予定も中々合わないですよね……」

 

「ん……?」

 

「そういえばばーちゃんも『今日は一人で行っておいで』って言ってたのだ」

 

「それは恐らく……」

 

「『この世には知らなくていいことも転がってるってもんだぜ』」

 

 事前に下準備を進めていた恋太郎とも合流し、各々が花火を楽しんでいた。

 

「線香花火は一度に長く楽しめるから効率的」

 

「怖いくらい微動だにしない」

 

「『……返事がねえ』。"ただの"『屍のようだ』」

 

「芽衣。火分けてくれる?」

 

「かしこまりました」

 

「きゃっ。キスしちゃった」

 

「かはっ」

 

「花火同士でも!?」

 

「ふふ……」

 

 微笑ましい光景にまさしく微笑を浮かべる羽香里。しかしその笑みはどこか寂しげだった。

 

「……山女ちゃんのこと?」

 

「恋太郎さん……。ええ。そのことも含めて」

 

 消えてしまった花火がバケツの底へと沈んでいく。そこには二度とつかない花火が溜まっていた。

 

「私……ぜいたくになってきたんでしょうか。今でも皆さんで集まるのは楽しいんです。でも……以前と違ってこれでも全員じゃない。全員集まって何かする機会はどうしても減っていく一方なのかなって……」

 

「羽香里……」

 

 今でも放課後など屋上でみんなで集まる機会は少なくなかった。だが恋太郎は羽香里の目が今に向いているわけではなく、だからこそ過去が過るのだと感じていた。

 

「もし俺達が卒業しても——」

 

「……!」

 

「離れ離れなんかにはさせない。俺が絶対に繋いでみせる」

 

 このままずっと同じ形ではいられない。それはファミリーみんなでの幸せを望む羽香里にとっては大きな不安としてのしかかっていた。そんな彼女の手に新たな花火が渡されると、恋太郎の花火によって煌々と燃え出した。

 

「もう……ずるいです」

 

「……!」

 

 そんな灯りに照らされながら羽香里は恋太郎と唇を重ねていた。

 

「ちょ、ちょっと! なに抜け掛けしてんのよ!」

 

「うわっ! 唐音さんいたんですか」

 

「心配してくれてたんだよね」

 

「はあ!? 別に心配でこっそり様子を覗いてたわけじゃないんだからねっ!」

 

「逆にそこまでいくと素直じゃないですか? ……ふふっ。でも、ありがとうございます。二人とも」

 

 恋太郎に任せきりにはすまいと実行した今回の企画が見落としや予定の重なりの多さで少なからず落ち込んでいた羽香里だったが、ファミリーなんだからなんでも一人でやろうとせず相談すればいいんだと思えるようになっていた。

 

「じゃあ唐音もこっちおいで」

 

「ど、どうしてそうなるのよ!?」

 

「いいんですかぁ〜? もっと抜け掛けしちゃいますよ?」

 

「立ち直るの早すぎでしょ! あーもう!」

 

 そして三人の唇が重なり合った。

 

「この漫画二話パロディ好きだな!!」

 

 夜空に流れた一縷の流れ星はきっと彼らが呼んだUFOなのだろう。

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