100カノ短編集   作:ゾネサー

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定期的に話題として上がっているようなので、参考にしつつ形にしてみました。


風呂覗きの天秤

 彗流加入の歓迎も兼ねて花園家でお泊まり会が行われていた。

 

「ギチギチ〜♡」

 

 総勢34人もの彼女が一斉にお風呂に入るものだから隣り合って座ることになったが、それでも入り切ってしまうのが金持ちの家たる所以だった。

 

「恋太郎ちゃん。みんな上がったわよ」

 

「ありがとうございます。いただきます」

 

 全員が部屋に戻ってきたことを確認してから、恋太郎が脱衣所へと向かっていく。

 

「……さて。じゃあ行くわよ」

 

「覗きだー! いえー!」

 

「ま、待ちなさいよ! この前は彼女6人だったからノリで行っちゃったけど、いくらなんでもこの人数はまずいでしょ!」

 

「『アニキィ〜。オイラもうこりごりでやんすよぉ〜』」

 

「そ、そうだよ! そんなの……絶対教育上良くないっ!」

 

 当然のように花園親子がみんなを引き連れて覗きに向かおうとしたが、静を庇うように二人が引き止めていた。

 

「なら今回も行きたい人だけにしましょうか」

 

「そんなのアンタら以外いるわけないだろ」

 

「くっ……! アンタに先を越されるのが嫌なだけなんだからねっ!」

 

「唐音先輩!?」

 

 しかしながら以前の実行犯である5人は性懲りも無く参加する運びになった。当然自分と一緒に止めてくれると思っていた唐音の離脱に胡桃は狼狽の表情を浮かべる。

 

(嘘だろ……この家のやけにピンクな空気のせいか!? なら他に止めてくれそうな人は……そうだ!)

 

「せ、先生! あの理事長になんとか言ってやってください! さすがに生徒と教師の関係でこれは……!」

 

「あたしも見たいからやるよ」

 

「倫理って知ってます?」

 

 百八は曇りのない綺麗な瞳をしていた。

 

「オ、オー! アイアムもアメーリカに行くデース!」

 

「アメリカへの熱い風評被害」

 

 続いてナディーもやや照れながらもフリーダムな信条を貫いた。

 

「ダ、ダメよ! そんな覗きなんて……!」

 

「そ、そうですよね!」

 

「ダメ……なんだからっ……!」

 

「ダメなのはこの学校の方だよ!」

 

 さらには季鞠までもが拒否する発言を繰り返しながら参加する列に並んでいった。

 

「ちょっと! お風呂は髪を労る場所なのよ! 邪魔なんて許さないんだから!」

 

「それに裸の付き合いってぇのはその……まだ早いんじゃねぇのかぃ!?」

 

「普通に犯罪ゔーッ!」

 

 中一組は全員が猛反対していた。

 

「なんで大人より最年少の方がまともなんだよ」

 

「大人になるって……悲しいことなのね」

 

「オメーが言うな」

 

(大人があれだけ行っちゃせめて人数で諭さないと……)

 

 すると胡桃は自分と同じ中学生なら反対してくれるだろうと期待して中二組の方に目をやった。

 

「そうですよ皆さん。これだけ大人数で押しかけてしまったら抵抗しようがなくて……!」

 

「そうだ! もっと言ってやれ!」

 

「とってもバイオレンすわ〜!!」

 

「違うそうじゃない」

 

「え、ええと……興味があっても勢いで越えちゃいけないラインがあると思うんです……」

 

「うんうん。そうだよな」

 

「あ……すぅ。……ぐー。ぐーぐー!」

 

「勢いで越えてるじゃねーか」

 

「覗きは良くないこととも言えるし——」

 

「またこのパターンか……」

 

「……その、悪いこととも言えるね」

 

「ここにきて過去一の正論」

 

 中二組は二人が恥ずかしがりながらも割とノリノリで参加し、詩人は恥ずかしすぎてその場で固まっていた。

 

「紅葉はどうすんだよ」

 

「揉めない以上参加してもしょうがないのです」

 

「ブレねえな」

 

「それに以前揉み筋のことでお世話になった時、身体を捻っても覗かないようにしてくれたので、気が乗らないのです」

 

「お、おう。そうか」

 

(意外と律儀なやつ……)

 

 これにて中学生組の意見は出揃い、いよいよ高校生のターンになった。

 

「詩人サンの言う通りだど! 自分がされたら嫌なことはしちゃダメだど……!」

 

「私はむしろされたいというか……。それにこれは良くないことなんかじゃありません。お互いのことを良く知るためのむふふなんです!」

 

「むふふだど……!?」

 

「純粋さゆえの敗北」

 

「待ってください! この事件、名探偵として推理しないわけにはいきません!」

 

「おお! 取り締まってくれるのか!」

 

「今頃恋太郎さんは入浴中……ということは身に付けているパンツは……?」

 

「脱衣所で証拠物件を確保できる可能性100%」

 

「これにて事件は解決しました!」

 

「迷宮入りの間違いだろ」

 

「さすがに裸を見るのは恥ずかしい……かな」

 

「…………」

 

「それでも行くと言うのならボクを倒してから行くんだ!」

 

「すわ〜!!」

 

「キッツ……♡」

 

「知ってた」

 

「……覗きはメルヘンではありませんね」

 

「普通そんなことしないわよね」

 

(おお……さすがに活動してる二人は違うな)

 

「ですが興味はあります。行きましょう」

 

「私も奇人だからあえて行くのよ!」

 

「スキャンダルが過ぎる」

 

「なんだこいつら。数は覗きなんて興味ない」

 

「さすがによくないってぇー」

 

「でも恋太郎の1を見るチャンスなのだ」

 

「数覗きに行く!」

 

「マジヤバーい」

 

「揃いも揃って……貴様らは騎士道を踏み外そうと言うのか!」

 

「恋太郎後輩の気持ちを考えたらどうだい!」

 

「二人ともママと一緒にいきまちょうね〜」

 

「きちか、パパのお⚪︎ん⚪︎んみゆー!」

 

「羽々里先輩のお気持ちに従います!」

 

「肩書きだけの最高学年」

 

(恋太郎君の裸……! 恋太郎君の裸……!)

 

「覗きなんて美しくありませんわ。ねえ、愛々さん?」

 

「へっ!? そ、そうですね……! こっそり見るなんて……ひゃああ——」

 

「物理的に不可能でしたわ」

 

「みんな行くのー? 私も行く!」

 

「オー! (ビッグ)(スモール)兼ねる(フィーバー)デース!」

 

「いや大きさじゃなくて多さ……。って、これだけいて参加の方が多いってちょっとヤバくない!?」

 

 高校生組での統計は不参加が5人。参加が12人と圧倒的参加率だった。

 

「みんなお風呂戻るなんて正気じゃないにゃん……」

 

「ただ水が苦手なだけの猫」

 

「大丈夫胡桃ちゃん? 覗きは物理で倒せるよ」

 

「おお! お願いしま——」

 

「ばぶー!」

 

「きゃー! 赤ちゃんは物理で倒せない!」

 

「最強の戦力が無力化された!」

 

「おやおや。みんな随分とやんちゃじゃのう」

 

「や、ヤクさん! こいつらの目を覚ましてください!」

 

「まあまあ。恋太郎もきっと想定してると思うよ」

 

「そ、そうは言っても……」

 

 ここまで表明した32人のうち、18対14で参加側の方が多い現状。胡桃にはどうにも止められそうには感じられなかった。

 

「妹はお姉様の手伝いをします! 何なりと申し付けて下さい!」

 

「……では、お並びになった皆さんを部屋から出させないようにして下さい」

 

「へっ?」

 

 妹の素っ頓狂な声が響いた。当然羽々里に従って覗きの算段をつけるものだと思っていたからだ。

 

「ど、どういうことなの芽衣!」

 

「申し訳ございません……。恋太郎様からのご命令により、お通しできないのです」

 

「なら私も命令を……!」

 

「……っ! ま、待ってくださいお母様! もしここで覗きを手伝うようにお願いしちゃったら……!」

 

「あっ……!」

 

「芽衣ちゃんはどちらかの命令を守れなくなる。けど今恋太郎君はここにいないから命令を取り消せない……!」

 

「恋太郎サンの完璧な作戦だど……!」

 

「申し訳ございません。恋太郎様がお風呂を上がり次第、償わせていただきます」

 

「覗かなくて平気だから自分の命を大切にして!」

 

「そうだよ芽衣さん! みんなそれぞれ自分を大事にした結果の衝突なんだ! 誰も悪くなんかないよ!」

 

「お二人とも……」

 

「だから部屋を出ようとしたみんなの分をまとめて、ボクにキッツい一撃を食らわせるんだ!」

 

 パァァァン!!!

 

「キッツううう……ッ!!♡」

 

「『何なんだお前は』」

 

(さすが恋太郎先輩。これで誰も部屋からは……ん?)

 

 これにて一件落着。そう思われたが嫌な予感がして胡桃は部屋を出て行った。

 

「まさかこの漫画のことだからミスディレクションでお風呂にワープしちゃったとかないよな……!」

 

 胡桃は一人だけ部屋から出ていた愛々が戻ってきていないことに気付いていた。

 

「おおおお化けっ……!?」

 

「えっ……?」

 

 愛々は風呂場の曇りガラスの外まで移動していた。すると以前と同じようにガラスに浮かんだ光景に驚いた恋太郎が慌てて脱衣所まで避難を試みる……と、同時に風呂場の扉に連動して脱衣所の扉も開く完璧な仕掛けが作動してしまう。

 

「フランクフルトー!」

 

「胡桃!?」

 

 こんな時に備えて恋太郎が用意しておいた本物のフランクフルトによりひとまず事態は落ち着いたものの……。

 

「ごごごごめんっ……」

 

「ここここちらこそ……」

 

 胡桃の脳裏にはしっかりと刻まれたのだった。

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