100カノ短編集   作:ゾネサー

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恋太郎ファミリーの日常(その5)

〜第一次ツインテール大戦〜

 

「ああ……今日も世界一罪な罪ンテールだわ……」

 

「お待ちなさいな。世界一美しいのは私ですのよ」

 

 屋上で自身の髪に埋もれていた彗流だったが、美ッシイイイという効果音と共に美々美が割り込んできた。

 

「何言ってるのよ! 第一ツインテールですらないじゃない!」

 

「私の美しい髪はたとえどのような髪型をしてもナンバーワンなのですわ!」

 

「がるる……!」

 

「がるるですわ……!」

 

「ど、どうしたんですか二人とも……!?」

 

 二人が睨み合っていると愛々が仲裁にやってきた。

 

「こうなったら愛々に決めてもらおうじゃない!」

 

「望むところですわ!」

 

「え、ええ……?」

 

 こうして美々美もツインテールに整え、決戦が幕を開けた。

 

「ツインテール協定に則って先攻後攻は交代制よ!」

 

「なら私から行きましょう。髪ファサーですわ!」

 

 美々美はふふーんですわと言わんばかりのドヤ顔で髪を掻き上げた。

 

(可愛い……)

 

「まだまだね! 真のツインテラーは嵐を呼ぶのよ!」

 

 彗流の番になると途端に風が吹き荒れ、手を動かすことなく髪を靡かせていた。

 

「ひゃあああ——前髪がっ!」

 

「ちょっと! 見えてないじゃない!」

 

 しかし愛々が前髪を押さえてしまいアピール失敗。美々美がツインテポイントを先取した。

 

「なら触らせてあげるわ! ほら、どう?」

 

「わ……! さらさらして気持ちいい……」

 

「同じ土俵に立って差し上げましょう!」

 

「ひゃあああ——手がっ!」

 

「私の髪がすべすべ過ぎて滑りましたわ」

 

 すかさず彗流もツインテイーブンへと持ち直す激しい展開。その後も一進一退の攻防が続いていき、99対99となっていた。

 

「はぁはぁ……私相手に美しさでここまで食い下がるとは……!」

 

「ふぅふぅ……ツインテでアタシにここまで食らいつくなんて……! これが最後の勝負よ!」

 

「ひゃあああ——鼻がっ!」

 

 最後は同時に二人のアピールが行われた。すると奇遇にも二人が選んだのは嗅覚へのアピールだった。向けられた双剣が愛々の理性を溶かしていく。

 

(彗流さんからはシャンプーの落ち着く匂い……! 美々美先輩からは香水の大人な匂い……!)

 

「どっちのツインテールも魅力的すぎます……!」

 

「引き分け……か。やるじゃない。美々美もツインテリストだったのね」

 

「彗流さんこそ。これからもお互い美を追求して、世界一に相応しい髪でありましょう」

 

 全てを出し尽くした二人はお互いのことを認め合い、ツインテ握手によって戦いの幕は閉じられたのだった。

 

『まずは美々美のツインテールをもっと追求したいわ……』

 

『私もあなたの美しさをもっとこの目に収めたいですわ……』

 

「ひゃあああ——」

 

 そして愛々はミスディレクションでその場を後にした。

 

「なんでですの?」

 

〜ルビ回〜

 

「アイアムは最近イングリッシュをベリーインテリア(すげー勉強)してヘッドグッド(頭が良い)デース」

 

「ふむ……それではちょっとテストしてみましょうか」

 

「この時点で必要なくない?」

 

Are you a fairy tale?(あなたはメルヘンですか?)

 

「アイアムはレフトパンチ(左利き)デース!」

 

「会話のキャッチボールしなさいよ! ホームランにしてるじゃない」

 

「ふむ……Where is your wonderland?(あなたにとっての夢の国はどこですか?)

 

「アメーリカはアイアムにとってダブルカントリーロード(もう一つの故郷)で、フリーダムが(沢山の自由が)ハッピーバースデー(生まれる)ザ・ワールド(世界)デース!」

 

「奇跡的なピッチャーライナー」

 

Fairy tales will save the world.(メルヘンは世界を救います。)Let's believe in fairy tales together(共にメルヘンを信仰しましょう)

 

メルヘンアメーリカデース(メルヘンアメリカです)!」

 

「宗教の勧誘?」

 

「よく分かりました。ナディー先生にとってアメリカは自由の象徴(メルヘン)であり、だからこそ先生自身も希望(メルヘン)に溢れているのですね」

 

「そうデース! アイアムはこれからも大胆(アメーリカ)かつ豪快(アメーリカ)に行くデース!」

 

「メルヘンとアメリカだけで会話すな」

 

「ひひっ……!」

 

「な、何よ」

 

「いえ……呆れた風に言いながら、しっかり理解しているなと思いまして……ひひっ」

 

「はぁ!? 別に……ニュアンスでなんとなく分かるだけなんだからねっ!」

 

「オー……そうなのですか」

 

「あ、いや……」

 

「そ、そんなことないと思いますっ……! だってその……すぅ」

 

「寧夢?」

 

ぐぅぐぅ(普段から皆さんのことをよく見ていますし)ぐーぐー(ツッコミも誰よりも早いですもんね)ぐぅ……(私はまだ完全には分からないから……)ぐー(いつか私もツッコめるようになりたいです)!」

 

「もはやニュアンスすら頼れない」

 

「しかし理解している……ですよね?」

 

「う……そ、そうよっ! 最初は分からなかったけど、過ごすうちに分かるようになってきたのよ!」

 

「唐音ガール……!」

 

「わ、私だけじゃないわよっ! みんな……みんなそうでしょっ!」

 

ぐー(そうですね)!」

 

「ふふ……そうでしたね。私達は恋太郎ファミリー(メルヘン)ですから」

 

トリプルカントリーロード(第三の故郷)デース!」

 

 こうしてアニメ化した際の表現を丸投げしつつ、彼女達はまた一つ絆を深めたのだった。

 

〜絵面の問題〜

 

「ぐすっ……ぐすっ……」

 

「輩先。何があったの?」

 

「先輩ってつけな……。負けちまったんだよこいつに……! 腕相撲で……!」

 

「リスに?」

 

 先は山女のリスに敗北を喫し、あまつさえVサインを掲げられていた。

 

(誰かが守らないとこの生き物は死ぬ)

 

 すると凪乃は思わず先を抱きしめていた。

 

「凪乃後輩っ……!? こんなアタシを慰めてくれるのかい? とんでもない後輩に惨敗しちまったアタシのことを……!」

 

「……このリスは人間相当で既に大人の年齢。気に病む必要はない」

 

「そうだったのかい……!? それはそれは……おみそれしやした。そうだ! 靴……は履いてないか。指でもお舐めしましょうか……へへ……」

 

 自分より先輩だと分かるや否や、先は可能な限りへりくだって手をこまねき出した。

 

「確かに唾液には殺菌作用がある」

 

「何言ってるんだど……!? 先サンの尊厳だって生きてるんだど……!」

 

「リスは効率よく毛繕いするために自分で手足を舐める習慣がある」

 

「自分でやるのと友達にやらせるのとじゃ大違いだど……!?」

 

 先がもっと自分を大切にするようにと山女に注意されている最中、凪乃の脳裏に恋太郎と出会って間もなく指を舐めたことが過ぎった。

 

(3.14159265358979323846——)

 

 今更やけに恥ずかしくなり、顔を赤らめる羽目になる凪乃だった。

 

〜旅は道連れ世は情け〜

 

「見てくれ羽々里! 年代物のいい壺が手に入ったのじゃ……!」

 

「え、ええ! 素敵ですね……!」

 

(どうしよう。よくある偽物だわ……)

 

 意気揚々と壺を理事長室に持ってきたヤクだったが、またしても見分けに失敗していた。

 

「しかし今までが今までじゃからのう。鑑定に出そうか迷っとるんじゃが……」

 

(まずい! 出したら確実にヤクさんを落ち込ませちゃう! かといって反対するのも不自然……! どうしたらいいの……!?)

 

「ここです! ここからヤクさんの匂いがします!」

 

「お邪魔するよ」

 

 羽々里が冷や汗にまみれていると、蓮葉と詩人が颯爽と突入してきた。

 

「二人とも……!? どうしてここに?」

 

「吟遊詩人の頼りは風が運ぶ噂だけだよ」

 

「ヤクさんが大事そうに壺を運んできたと聞いて、名探偵の推理が必要とお見受けしました!」

 

「おお……わざわざ来てくれたのかい? ありがとねえ」

 

(……そうだ!)

 

「折角ですし二人に鑑定を依頼してみるのはどうかしら?」

 

「むむ? しかし壺のことなど分かるかのう?」

 

「分かりません! ですが名探偵として本物か偽物か嗅ぎ分けてみせます!」

 

「大事なのは読み取る力さ。それさえあれば嘘と真実はただの二択だよ」

 

「おお! それじゃあお願いしてもいいかい?」

 

(本当にお願いね二人とも……!)

 

 こうして二人の調査が始められた。まずは蓮葉が愛用の虫眼鏡を取り出すと壺を隅から隅まで確認していく。

 

「なんと! 傷一つ見当たりません!」

 

「厳重に保管されてきた——とも言えるね」

 

「よほど大事にされてきたんですね! 表面が光り輝いてます!」

 

「見るものを惹きつける魅力があると言っていいだろうね」

 

「そうじゃろう! 綺麗じゃろう! わしもこの輝きが気に入ったんじゃ!」

 

(年代物なのに風化が見られない時点で……)

 

 その後も蓮葉の指摘を詩人が肯定していき、やがて調査が完了した。

 

「ずばり本物ですね! なんと言っても本物っぽいです!」

 

「それこそが本物の本物足る所以なんだろうね」

 

「二人が断言してくれて胸を撫で下ろせたよ。これが本物じゃないわけないよのう!」

 

(良かった……のかしら?)

 

 特に科学的な根拠もなくパッションで肯定する二人にヤクは大層納得していた。そんな光景を見て羽々里が戸惑っていると、詩人が不意に振り向いて片目をつぶった。

 

(ウィンクぎゃわっ!! ……じゃなくて! まさかヤクさんの壺利きのことを知っていて……!?)

 

「すっかり堪能しちゃいました! いつか名探偵事務所を設立した暁には、こんな壺を飾りたいです!」

 

(蓮葉ちゃんは素みたいね……)

 

「その時はわしも一緒に選んでいいかのう?」

 

「是非お願いします!」

 

「そ、それは……」

 

「それは是非ともボクらも旅の仲間に加えて欲しいね。羽々里もそう思うだろう?」

 

「え……ええ! みんなで選びましょう!」

 

(詩人ちゃんってものすごく空気の読める子なのかも……)

 

 その場の口先だけで相手を思いやる詩人の切実な対応に羽々里は思わず感心するのだった。

 

「えへへ……将来の楽しみが増えちゃいました!」

 

「わしも老い先長いからのう。こうして誰かと共に行動できることが心強いし、何より楽しいよ」

 

「つまりボクらは人生という長い旅路を渡る吟遊詩人——とも言えるね」

 

「言えるかしら……?」

 

〜ギチギチの子〜

 

「珠さーん。ギチギチの子今日も来たよー」

 

「ありがとうございます……」

 

 タマのアルバイト先が休憩時間になった瞬間にうさちゃんが乗り込んできた。

 

「会いたかったよぉ……!」

 

「毎日会ってるにゃん……」

 

 感動の再会さながらのテンションで抱きつき怒涛の勢いで話すうさちゃんに対し、されるがまま相槌を打つタマ。するとふと我に帰ったうさちゃんが慌てて離れた。

 

「私ずっとタマさんのこと独占してるけど……そのせいで他の人が話しにくくなったりしてないかな?」

 

「……その方がいいにゃん」

 

「えっ?」

 

「タマが働くの嫌になったのはグループに所属して話したり、一緒に何かをしなくちゃいけないのが、どうしても苦手だったからにゃん……」

 

「そ、そんな……! 嫌だった……なんて……!」

 

「うさ!? 何を勘違いしてるにゃん。戻ってくるにゃん」

 

「へっ?」

 

 うさちゃんがうさぎ形態になってしおれると、猫パンチをかまされて人の形を取り戻した。

 

「だって私もタマさんも恋太郎ファミリーに所属して……」

 

「家族と過ごすのにそんなプレッシャーはないにゃん。その証拠に相槌も気を抜いてて割とテキトーにゃん」

 

「そうだったんですか!? でも嫌じゃ……ないんですね?」

 

「むしろ好きにゃん……」

 

「良かったぁ……!」

 

「そうやって抱っこしてくれるのも落ち着くにゃん……」

 

「でも……すごいですね。それなのにまた働こうってなるなんて……偉いと思います」

 

「……! うさ……大好きだにゃん」

 

 再び抱きつくうさちゃんに対し、タマも応じるように抱きつき返したのだった。

 

「ギチギチ〜ッ!♡」

 

 ギチギチの子は今日もギチギチして帰っていった。

 

〜100カノのジャンル〜

 

【思いもよらぬ再会だった。膠着する二人だったが、内心では飛び上がる思いだった。】

 

(うっひょー。これこれ)

 

 休日に妹が自室で読書にふけっていると、集中を乱すようにドアのノック音が聞こえてきた。

 

(いいところなのにー……)

 

「はーい?」

 

「芽衣です。今よろしいでしょうか?」

 

「おんぎゃーっ!?」

 

「妹!? 入りますよ」

 

 芽衣が部屋に踏み込むと空中から落ちてくる妹をすかさずキャッチしていた。

 

「あ、ありがとうございますお姉様……!」

 

「なにゆえ空中に……?」

 

「嬉しすぎて飛び上がってしまいました……物理的に」

 

「まあ……まるで恋太郎様のようですね」

 

 しかし恋太郎のようにはいかず、天井にぶつけた頭は痛いので治療してもらってから本題に入った。

 

「し、失礼しました……。それで……珍しいですね。お姉様が妹の部屋を訪ねてくるなんて」

 

「妹が迷惑じゃなければ休日の過ごし方を教えてもらおうかと」

 

「過ごし方……ですか? 友達と遊びに行くか、趣味の読書をするくらいですが……。お姉様は今までどうしてたんですか?」

 

「気を張らないと仕事をしてしまうので、ずっと気を張っていました」

 

「ちゃんと休んでください……!?」

 

「ええ。お話ししたら羽々様にもそのようにご命令いただいたので、どうしたものかと」

 

「恐らく命令じゃなくて懇願ですけどね……。それなら何か読みますか?」

 

「いいのですか? でしたら最近メルヘンに興味が出てきましたので、そのジャンルのものはございますか?」

 

「メルヘンは妹の得意分野です! お任せください! ちなみに最近読まれたご本は……?」

 

「『幸福な王子』様でございます」

 

「…………」

 

(やっべえ……。思ったよりメルヘンの路線が違う……)

 

 するとページの角が捲られ、夢留が読者へと解説しに出てきた。

 

『妹さんの言うメルヘンは正確に表現するとファンタジーですね。中世ヨーロッパを中心とした現実的な世界の延長線上にあるため、現実ではあり得ないような空想上の出来事がベースのメルヘンとは区別されています』

 

 そして一礼してからページを閉じていった。

 

「何かおすすめの本はございますか?」

 

(て言うか妹の持ってる本お姉様に見せられない禁断の関係とか多いし……選択肢間違えた!? 誰よ! 上のページで得意とかお任せとか言ってるキャラ! こ、こうなったら人気作の力で……!)

 

「王子……ではないですが姫と騎士のお話なら、王冠恋物語(サークレットラブストーリー)なんかはどうでしょう!」

 

「静様がご愛読されている書物でございますね」

 

「そうです! これなら……。……! あっ! そうだ! 静さんと言えば……!」

 

「……?」

 

「読み終わったのでお返ししようと思ってて……よいしょ! これ静さんが執筆した本なんですよ!」

 

「まあ……ご自分の手で本を作られるなんて。素晴らしい胆力でございます……!」

 

「今度感想を伝えにいくので、お姉様もまずはこちらから読んでご一緒に!」

 

「ありがとうございます。是非共に参りましょう」

 

(よっしゃあ! パーフェクトコミュニケーション!)

 

「妹!?」

 

 妹は喜びのあまり再び飛び上がってキャッチされ、100カノがファンタジーなのかメルヘンなのか読者に区別しにくくさせたのだった。

 

〜それは紛れもなくヤツさ〜

 

「酒うめー」

 

「これが日常になってるのまずいか? ……あ」

 

 いつものように百八が屋上で酒を飲んでいると桃の甘い香りが胡桃の鼻腔をくすぐった。必然的に胡桃がくるくるモードに入った。

 

「う、打ち切りの大ピンチだ……!」

 

「おー? 一杯やるかー?」

 

「ダメでーす」

 

「出版業界の大いなる存在もお出ましに」

 

「恋太郎! ボクがこいつを押さえつけているうちに飲ませるんだ!」

 

「いやさすがに飲ませない方向でいこう!?」

 

「いーじゃん。あたひの若い頃なんかはお試しで飲ませたりしたもんよ〜?」

 

「時代が異なるのでダメでーす」

 

「そうよ……未成年が飲んじゃダメ、なんだからっ……!」

 

「本当にダメですからね!?」

 

「あ……恋太郎先輩っ……! やば……もう……我慢できないっ……!」

 

「……!? えろっ」

 

「そ、そうだ胡桃キスしよう! キスは甘美だから上書きできるはず!」

 

「は? あたしは今桃のお酒が飲みてーんだよ」

 

「久しぶりの不機嫌直撃っ……!」

 

「こんな時山女さんや芽衣さんがいてくれたら……」

 

 ※他のみんなはたまたま予定や都合が合わなかったよ。

 

「いやこんな時こそ力を合わせよう! 今こそ知与ちゃんに教えてもらった家事スキルを活かす時……! 頼むみんな! 時間を稼いでくれ!」

 

「よーし! ならボクの()ならどうだ!」

 

「論外に決まってんだろボケ」

 

「キッツううう……ッ!!♡」

 

「チャンスタイム到来! じゃないんですよ」

 

 こうして胡桃の不機嫌の矛先を彼女達が受け止める間に、恋太郎は日本酒を煮切ってアルコールを飛ばすと、料理酒として扱いフルコースを用意して帰ってきた。

 

「おいっしー!♡」

 

「オーケーでーす」

 

 こうしてヤツを撃退し事なきを得たのだった。

 

「好き!! 結婚して!!」

 

「する!!」

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