オリュンポス十二神「
■ ■
なんだか暑い———それが、カズマがこの地獄に落ちてから最初に抱いた感想であった。
ついさっきまで自分が味わっていた絶対零度の感覚は何処へやら、今となってはそれとは打って変わって非常に暑苦しい感覚に支配されているではないか。
ぶっちゃけ、めぐみんが爆裂魔法を放ったであろう辺りから記憶が一切無い。異様に瞼は重いし、体がとてつもなく痛い。泣き出していないのが不思議なくらいだ。
カズマは非常に打たれ弱いのだ。腕の一本でも斬られてしまえば、それはもう非常に情けなく泣き叫ぶくらいには弱い。なんと言っても、つい最近まで彼はただの学生で、なんなら今だって年齢的には殆ど子供の様なものだから。
そんな彼が冒険者として、それなりに依頼をこなす事が出来たのは、アクアのお陰だと断言しても良いだろう。もちろん、今となってはめぐみんやダクネスといった仲間達も居る訳ではあるのだが。
だが———残念な事に、カズマは死んだ。
冬将軍の最後の抗いであり、それでいて冬将軍から対戦者へ向ける至上の賞賛でもある一撃———『秘伝・凍』。
『無間』による自傷ダメージ以外で自身のHPがゼロになった場合にのみ発動する、最強のカウンター。自身に与えられたダメージ×15のダメージを、魔道具や防具の特性諸々を無視して叩き込む即死の一撃だ。
よりによって爆裂魔法を叩き込んでしまったのは、流石に悪手だろうと言えばそれまでだが、しかしこと彼等に至ってはそんな技を予測する事など不可能だった。
これを悪手だと罵るのは、あまりにも酷というものだろう。よってこれは、不慮の事故であり、抑えられようもない事態だったのだ。
しかし結果として、カズマはアクアを号泣させてしまった訳である。勿論、カズマはそれを知らない。それを知るより先にくたばってしまったからだ。
まぁ、
「んぉ……あれ、何処だ、ここ?」
まるで重石でも吊り下げられているのでは?と疑いたくなってしまう様な瞼を開いて、カズマは寝起きにしては妙に透き通った声を漏らした。
目に映ったのは、まるで見覚えのない豪華なシャンデリアと黒い天井であった。
目が覚めれば実は大豪邸で休んでいた、なんて展開は異世界なら珍しくもなさげだが、しかし残念ながらここは異世界ではなく、どちらかと言えば『異界』である。
「———あ〜、めぇ、さましたぁ〜?」
伸ばし伸ばしで一切やる気が籠らない、ゆるっゆるの声がカズマの耳を撫でた。
ビクリと肩を跳ね上げると、声をあげるのも憚られるくらいの激痛が走った。カズマは既に涙目であった。
目線だけをその声の方へと移すと、其処には何とも個性豊かな少女が地面に伏していた。
見た感じふわふわしたパジャマに身を包み、何やら愛くるしいのかおぞましいのかよく分からんビジュアルのぬいぐるみを枕にしているのか、それに対して突っ伏す様にしながら地面にごめん寝している少女が居た。
「え……こわ。なにしてんの????」
「みはりぃ、だよぉ〜。おうがねぇ〜、みはっとけぇ、ってぇ、いうからぁ〜」
「ごめんなさい、声がゆるゆる過ぎて全然頭入ってこないんです。その喋り方どうにかならない?」
「むりぃ〜」
「無理か……ていうか寝てたら見張りになってなくね?」
「べるはぁ、みはりぃ、してるぅ、よぉ〜」
「あ、そっすか」
カズマは対話を諦めた。もうなんか何言ってもこの子には話が通じなさそうだと理解した。
(開幕早々になんかとても個性溢れる少女と出会ってしまった。え、何処なの此処? だって俺さっきまで雪原に居たよな? なんで目覚めたら豪邸の部屋らしい場所に居んの?)
もう何がなんだか訳分からん———カズマがそう思うのも、無理はないだろう。
だが、さもありなん。目が覚めたら此処が地獄であるなどと、分かろう筈もないというものだ。
事前に何か説明を受けていたのならまだしも、ついさっきまで戦場に居て、気が付けば一室でのんびりなんて、どんな展開を予想しろという話である。
だが安心してほしい。そんなカズマを、天———居るのは地獄だけれども———は見放していなかった!
「おい———
「ん〜……そのこえはぁ、まもぉ〜?」
「…………一応聞くけどお前なにしてんの?」
「みはりぃ、だよぉ〜」
「寝てるの間違いじゃなくてか?」
「みはりぃ〜」
「あっそ。もう良い、これ以上お前と喋ってると頭がゼリーみたいになっちまう。そのまま黙って寝てろ」
「いえぁ〜」
「サタンの奴は何考えてコイツに見張り任せてんだ…?」
黒い髪に金の瞳、細縁の眼鏡を掛けた如何にもインテリな雰囲気を漂わせる男の登場に、カズマは心の中でガッツポーズを取った。
ようやく話が出来そうな人が来た! でもちょっと待て、今すげぇ聞き覚えのある名前が出てきたんですが? ひょっとしなくても此処って現実じゃない?
「あー、起きてるみてぇだな。気分はどうだ」
「なんかよく分からないっす」
「ハッ、だろうな。目が覚めりゃ縁もゆかりも無い大豪邸の一室ときたもんだ。地獄の沙汰も金次第とは言うが、幾ら払おうが此処はそう拝めたもんじゃない。アンタは運が良いぞ、まぁサタンに目付けられた点で言えば不運極まりないがな」
「聞き間違いじゃなかった……てことは、やっぱり此処って……」
「お察しの通りさ———
(一番当たってほしくなかった予想が当たったァァァァァァァっっっっっっっ!!!!!!!!!!)
カズマだってそれくらいは聞いた事がある。というか、ゲームをしていたら出てこない方が珍しい名前だ。
マモンとベルフェゴール。理性と感情という相反する二つを併せ持つ人類が背負う七つの大罪、その内の強欲と怠惰を象徴とする悪魔である。
底無しの欲で金銀財宝に飽き足らず、知識に権力まで全てを奪おうとした強欲の悪魔、マモン。
究極的な出不精と無気力によって、守るもの全てを投げ捨てて惰眠を貪り続ける怠惰の悪魔、ベルフェゴール。
大物中の大物。出会うまでその名前も知らなかったアクアとは違い、カズマだってその名を知っている悪魔界隈のビッグスターである。
「えー、あの、なんで俺は地獄に堕ちたんでしょうかいや別になんも悪いことしてないっすよ? あ、いやもしかしてクリスのパンツをスティールしたのがダメだったのかっ!? いやアレは事故であって俺の本意ではなかったと言うかなんというか」
「はっはははは!!!!! オマエ、マジかっ!? あの人間擬態系虚乳女神のパンツ掻っ攫ったって!? ハハハハハハ!!!!!! コイツは傑作だ! 数百年は酒の肴に出来そうだぜ!!!!」
「おぉ〜、かずぅ、やるねぇい〜」
どうやら悪魔達は好評だった様だ。いや別に全然よろしくはないのだけれども。
カズマとしては非常に恐怖満々でガチガチである。七つの大罪の悪魔2体に囲まれて、平然としている方が寧ろおかしいというものだろう。そんな事が出来るのはアクシズ教かウィンチェスターの猟犬という上澄みくらいなので、比肩するのも憚られる。
「あー、ひひっ。なぁに、怖がる事はねぇよ人間。何もアンタを取って食おうってんじゃねぇ。アスモデウスは分からねぇけど」
「怖いこと言わないで? 俺ヤダよ童貞を悪魔に奪われるの」
「最悪奪われるのは穴の方かもな?」
「おいマジやめろって!!! 嫌だ掘られたくねぇよ!!!!!」
「かずぅ、はんのぉ、いいねぇ〜」
「うん全然嬉しくないね? 玩具にされてるだけだよね俺???」
やはり悪魔、人を揶揄うのが趣味なのだろうか? カズマ的には全く面白くない。恐怖10割の人間にこれを楽しめとか無理難題にも程がある。
そもそも、悪魔の言うことを鵜呑みにしろというのが無茶だろう。人を誑かして騙して貪って贄にしてポイ捨てするのが悪魔のやり口だ。絶対に。カズマはそう信じて止まなかった。
事前にアクアから悪魔についてもっと詳しく聞いておけば良かったと、もう叶わないそれを後悔しつつも、しかし警戒は怠らなかった。
そんなカズマを見かねたのか、マモンはマジだってと笑う。
「アンタに危害は加えねぇよ、契約書を書いたって良い。なにせアンタはサタンの客だ。俺らがなんか仕出かしたもんなら、間違いなくサタンにぶち殺される」
「おうはねぇ、おこるとねぇ、すっごくぅ、こわいよぉ〜。だからぁ、かずぅ、にぃ、いたずらぁ、しないよぉ〜」
「まずそれが分からないんだけど……つまり、なに? 俺はそのサタン…様?に地獄に呼び出されたってこと?」
「まぁ、そうなるな。アイツが人間と関わる様になったのは慣れたつもりだったが、まさか地獄に呼ぶとは俺も思わなかった。余程の客人かと思えば、まさか———
ふと、引っ掛かる言葉が出てきた。
「え、リヴァイアサン? 俺の知り合いに悪魔は居ないけど……」
「あ? おいおい、何言ってんだ。他ならぬアンタが連れて来たんだろ、
「…?」
カズマは寝ながらに首を傾げ、マモンはマジかよコイツ……と呆れ果てていた。
「…………え、マジで分からねぇの? 流石に鈍感過ぎるぜ。ベルフェゴール並じゃねぇか」
「いぇ〜」
「褒めてねぇぞ。アスモデウスに使われてんのに眠り続ける様な惰性は褒めじゃねぇぞ」
「だってぇ、まりょくぅ、ほきゅうにぃ、ちょうどぉ、いいからぁ〜」
「はぁ……まぁ良いわ。そこらも含めて、サタンからお話があんだろうよ。目覚めたんなら起きろ、サタンの所まで案内してやる」
「え、いや俺体動かないんですけど……」
「あー……そういやアンタ、肩から腰に掛けてぶった切られて死んだんだっけか。ったく、仕方ねぇな。これだから人間は脆いんだ、面倒臭ぇ」
「ちょっと待て知らない情報出てきたよっ!? 死んだのは薄々分かってたけどそんな死に方してんの俺!?」
「おら黙ってろ、治療してやる。あー、なんだったか……そうそう、《セイクリッド・ハイネス・ヒーリング》」
———それは、悪魔から決して出ない筈の単語と、扱えない筈の魔法だった。
カズマとて、それには覚えがある。なんせその魔法は、つい先程———冬将軍との戦闘中に、アクアが使っていた回復魔法だったのだから。
「これで動けるだろ? 早く行くぞ」
「えっ、ちょ!」
「べっどぉ、あいたぁ〜。じゃあねぇ、かずぅ〜」
「あ、はい。また…また? まぁ、うん。また今度」
「うぃ〜」
急かされる様に立ち上がり、軽くベルフェゴールに会釈をしながら、カズマはマモンの後を追った。
◆
部屋を出てみると、やはりその内装も豪勢だ。見た目は人間の豪邸と何ら変わりはないが、地獄なのもあってか、やはり何処か禍々しさの様なものを感じざるを得ないが。
「あのー……さっきのは」
「信仰系の回復魔法だ。アンタなら知ってるだろ?」
「いや、それはそうなんだけど……なんで使えるのかなって。だって、マモン…さんは悪魔なんだろ?」
「あー、さん付けすんな。慣れん。まぁ、そうだな。アンタ、悪魔についてどれくらい知ってる?」
「これといって特には……」
「どうせ暇だしな、軽く説明してやる。この世界…つっても地獄は共通なんだが、悪魔ってのはこの地獄で生まれる。だが、俺達の様な存在———神々や他の悪魔からは『七大罪の悪魔』と呼ばれる悪魔は、生粋の悪魔じゃねぇんだ」
「生粋の悪魔じゃない……地獄で生まれてないって事か?」
「そうだ。七大罪の悪魔は、かつて天使だった者、神だった者が七つの大罪に順応した悪行に染まり堕天して地獄に堕ち、悪魔になった存在を指すんだよ」
悪魔は基本的に、地獄で生れ落ちる。
誰かと誰かの間から、という訳でもなく、とにかく突如として『そういう名前と在り方を持った存在』として、地獄に悪魔として誕生する。
悪魔は人間の悪感情を好み、それを餌として生き長らえる。それさえあれば食事の必要などなく、また寿命も存在せず、さらには上位の悪魔ともなれば自分の命にストック———所謂『残機』と呼ばれる特殊なストックを持つ事から、基本的には不死身の存在として知られる。
それらの悪魔を生粋、或いは純粋とするのならば、七大罪の悪魔は『異質』と呼ぶに他ならない。
彼等は元は天使、或いは神だった。しかし七つの大罪に対応する何らかの悪事を犯してしまい、その神性を穢した結果、地獄へと堕天して悪魔と成り果てた。
そういった存在を総称して、『七大罪の悪魔』と呼ぶのだ。
「つっても、完全に悪魔化した訳でもなくてな。俺らは天使・神と悪魔の中間を維持してる様な状態だ。だから天使や神の時の力もほんの少しだけ扱える。さっきのも、俺が元は天使だった時の名残でな」
「へぇ……じゃあ、さっきのベルフェゴールも?」
「アイツは元神だ。あとはベルゼブブもな」
一説によれば、ベルフェゴールは古代モアブの神『バアル・ぺオル』であるとされ、慈雨と豊穣の主神とされている。
それに並ぶ様に、蝿の王であり暴食の魔王として知られるベルゼブブもまた、かつては『バアル・ゼブル』と呼ばれる神であり、気高き主とされていた。
マモンも、天使時代は博識多才な天使として名を知られ、かつてはラファエルと競い合える程の知見を備えた知者であった。
「俺達の中だと、ベルゼブブが古参って事になるな」
「じゃあ、サタン様もルシファーの時の力が使えるって事か…」
「あー……アイツは例外と言うか、なんつーか……。そうだな、俺やベルフェゴールが天使2割、悪魔8割だとしよう。だがサタンの奴は天使10割、悪魔10割だ」
「ん??? どゆこと? 堕天して悪魔になってるんじゃないのか?」
「アイツなぁ……唯一神の光に焼かれて堕天した癖に、天使の力を半分しか失ってねぇんだよ。地獄で一から鍛え直して、半分しかない天使の力を十全に、尚且つ悪魔の力も完璧に使いこなしてる。分かるか? 要は魔王の力と天使の力の両方を完全にコントロールして、常にベストコンディションを保ち続けてんだよ」
「なにそれこっっっわ」
「だろ?」
7日で世界を創造したとされる唯一神。その怒りの光に身と魂を焼かれ、堕天した———にも関わらず、しかしルシファーはその力を半分しか失わなかった。
これがどれだけ異常か、分かるだろうか? 唯一神だ、唯一神。7日で世界を創造し、
それが怒って放った光を受けたにも関わらず———失ったのは力の半分程度で、しかも五体の欠損すらも無い。
その上で、地獄で自らを鍛え直し、天使の力と悪魔の力を完全に掌握している———ルシファーという存在が、何故『天界と魔界のイレギュラー』と呼ばれているのか……その理由は、まさにここにあった。
「しかもそれに『傲慢』と『憤怒』の二大罪の併せ持ちときた。七大罪の悪魔自体は別に珍しくねぇし、前身だって何人も居た。けどな、どんなに歴史を遡っても、二つの大罪を一身に背負ってるのはアイツだけ。天使と悪魔、そして大罪の力。その全てを完璧に使いこなすのがサタン———ルシファーだ」
たった二つ、されど二つ。
地獄広しと言えども、たった一つの身体に二つの大罪の焼印を持つのは
傲慢によって唯一神に反逆し、憤怒によって虎視眈々と次なる叛逆を目論む魔王。オリュンポス十二神ですら、敵対の選択に対して逡巡をせざるを得ない———神々にすら、敵対意思に躊躇を持たせるイレギュラー。
それが魔王サタン———堕天の王、ルシファー。
「だから誰もアイツに逆らいやしねぇんだ、勝てねぇからな。まぁ、アンタはそんな奴にお呼ばれしたって訳だ」
「急に怖くなってきたんですが……」
「はっ、心配すんな。アイツは日本の娯楽文化に染まってから人間大好きだからな。案外、ウマが合うかもしれねぇぜ?」
「だと良いんだけど……」
どちらにせよ、呼び出したのがその魔王様だと言うのならば、話を聞かないことには始まらないだろう。
自分がどうなるのかは分からないが———もしも、もしも叶うのならば、自分は今すぐにでも生き返りたい。生きて、帰りたいのだ。
みんなが待っている。アクアが待っているあの世界に———早く帰らなければ、ならないんだ。
暫く歩いた。いったいどれだけの時間が経過したのだろうか? 体感的には、もう小一時間くらいは歩いた様な感覚だ。
地獄という人間には不慣れな場所の所為か、若干の精神的ストレスも合わさって、カズマは徐々にではあるものの、確実に疲弊しつつあった。
ほんの少し、視界が朧気になった———そんな時。
「おら、着いたぞ」
マモンの言葉が、それを打ち消した。
豪華と言うには些か装飾が足りないが、しかし明らかにこれまで見てきた部屋のそれとは訳が違う雰囲気を醸し出すその扉に、カズマはごくりと深く唾を呑んだ。
「おいサタン、客人を連れて来たぜ」
『———赦す。入れ』
「相変わらず上から目線で腹立つぜ……じゃ、後はアンタで頑張りな」
「……うす」
ドアノブに手を掛け、奥へと押す。自分がそう思っているのか、はたまた本当にそうなのかは定かではないが、まるで巨石を押しているかの様な、そんな重圧感があった。
開かれた扉の先で、出迎えたのは———
「———よく来てくれた、
黒に近い紫髪に銀のハイライトが入った、金と銀のオッドアイ、そして萎れた3枚の左翼が特徴的な青年だった。
ふつり、と意識が途切れ掛けた。その顔を、姿を、気を目にしたその瞬間、この身を潰しかねない何かが迫ってきたのだ。
「誘拐紛いの事をしてすまなかったな。何分、
「 ———」
「お言葉ですが、サタン様。魔力を収めになった方がよろしいかと」
「……すまん。あの
「う———う、す」
上手く声が紡げない。喉を強制的に締め付けられているかの様だった。
だが、それも少しずつ解けていき、気が付けば呼吸も先程よりは幾らか楽になったいた。とは言えども、カズマの心の臓は未だ鳴り止まず、眼前の魔王に対する恐怖に似た緊張は拭えなかった。
「ふぅ……緊張させてしまったか。これでは我が同志———アクアに顔が立たんな……何も伝えずに地獄に転移させた所為で、ああも泣かせてしまった訳だからな。事が済んだら地上に顔を出しに行くか……ゴッドブロー程度で許してくれれば良いのだが」
「あ、あの……」
「すまん、こちらの話だ。そうだな……緊張させてしまった詫びだ。本題に入る前に、自己紹介とやらをするとしよう———改めて」
「
・七大罪の悪魔
七つの大罪に該当する罪を背負った地獄の悪魔。従来の悪魔とは訳が違い、地獄で産まれたものではなく、元は天使や神だった者が堕天し、悪魔と化した者たちを総称して七大罪の悪魔と呼ばれる。その経歴から地獄の公爵には数えられず、代わりに『魔界』と呼ばれる特別な領地を持ち、其処を支配している。
また、地獄の公爵が何らかの特殊能力を持つように、七大罪の悪魔はその罪に対応する権能と『