ダウナー女神のアクア様   作:全智一皆

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第二十一話 光を掲げし者

 

■  ■

「聞きたい事があれば、なんでも尋ねるといい。道中でマモンから色々と聞いているのだろう? 息抜き程度に考えてくれ」

「は、はぁ……」

 

 息抜きできるか、とは口には出さなかった。下手したら消し飛ばされるかもしれないのだ、そんな無礼な事言える訳もない。

 とは言え、だ。カズマとしては非常に気掛かりと言うか、集中出来ないというか……

 

「じゃあ、えっと……」

「遠慮するな、さっきも言った様に息抜き程度の認識でいい。大抵のことは答えてやるとも」

「その……ルシファー様はオタクなんすか?」

「ふっ……やはりそれを問われるか。あと、オレの事はルシファーで構わない。そうだな、その問いはYESだ。オレは紛うことなきオタクだ」

 

 いやそんな堂々と言うことではなくないか???

 だが、この部屋を見渡せば嫌でも分かる。何処を見てもフィギュアにプラモにグッズに壁紙にと、もう如何にも現代の究極的境地に至ったガチ勢オタクの部屋のそれである。

 なんかこう、ある種の勿体無さすら感じてきた。だってこんなにも広くて豪勢な部屋なのに、中身がオタク染まりなのはどうなのだろうか? それ魔王としてどうなん? そう気にせざるを得なかった。

 

「地獄に堕ちてから暫く、気紛れで下界を覗いた時にオレはあるアニメと出会い、オタクの道へと走ったのだ。今でもあの感動は忘れられん———我が人生の誇りよ」

「そんなに影響残してんだ……スゲェなアニメ」

「無論、アニメだけではないぞ。小説に漫画、ゲームも揃い踏みだ。日本は本当に娯楽が発展していて、素晴らしい事この上ない……だが、残念な事にオレが好きなアニメは新シーズンが長いこと作られんのだ…」

「あぁ……めっちゃ悲しいやつじゃん…」

「そうであろう!? 四季を超える事に今か今かと待ち遠しい心持ちだが、やはり作られぬのだ! 無論、制作会社の事情もあるのだろう。イラストレーターの方は多方面で活躍しているので、倒産してしまうという可能性は無いだろうが……とは言えアニメ制作にはやはり莫大な資金が不可欠。故にオレは下界に降りてバイト戦士となったのだ」

「ちょっと待ってそれは知らない。なに、どゆこと? アンタって楽園戦争とかいうとんでもない戦争起こした犯人じゃないの? なんで下界降りてバイト戦士になってんの???」

「無論———オレが好きなアニメの新シーズンを作ってもらう為の資金(みつぎもの)集めだ!!!!」

「アンタ本当に魔王かっ!?」

 

 カズマは愕然とした。ついでに拍子抜けもした。

 ついさっきまでも威圧感は何処へ行ったのだ? 目の前には新シーズン制作のためにバイト頑張ってますとかいう爆弾発言ぶっ込んできた男の子しか居ないのだが?

 コレが楽園戦争の主犯…? 俄には信じ難い。そう思わずにはいられないくらい、人が変わっていた。

 

「だが、最近はオレのゲームで次々と推しが追加されたり復刻したりで資金集めも順調にはいかん……どういう訳か次々と無くなっていく」

「課金してるし……ちなみに何のゲームを?」

「開拓者やったりプロキシやったり先生やったりドクターやったりストライカーやったり指揮官やったり提督やったり隊長やったり魔王やったり審神者やったりと色々だが」

「多い多い多いっっっ!!!! どんだけやり込んでんだよっ!? そりゃ金無くなるわ!」

「だが1番やり込んでるのはRUSTとタルコフだな」

「マジでやり込みゲーじゃん!?」

「RUSTはかなりやり込んでいるぞ。日本のレイド鯖の鯖主が個人的に作ったクランランキングで1位を取ったのだ。中々の戦績だろう?」

「それは素直に凄い」

 

 どうしよう、この魔王様めちゃくちゃ日本に染まり切っている……マモンが日本の娯楽文化に染まったとは言っていたものの、しかしここまでとはカズマも想定していなかった。

 今のところアクアぐらいにしか神格的存在に出会った事がないが、マモンの話を聞く限りではルシファーは神格にも等しい実力を持った存在の筈。それがこうもオタク的というか、人間らしさ全開だと、なんとも気が抜けてくるというものである。

 

「なんというか、意外だな……アクアから楽園戦争の話を聞いた時は、マジでヤバい魔王を予想してたけど……」

「いえ、実際にこの方はヤバいですよ。地獄に堕ちて間もなく、前魔王の座を『座って休みたかった』とかいう巫山戯た理由で奪い取った男ですから」

「なにその強者しか口にできない理由」

「唯一神に叛逆して焼かれたのだ、()とて休みたくもなる。現にその前魔王は、()に負けてこの様に秘書になっているのだ」

「え? ん? あ、じゃあ……」

「申し遅れました。私、現魔王のサタン様の秘書を勤め()()()()()()()、ベルゼブブと申します」

「女じゃん。ベルゼブブって男じゃないの?」

「男だったぞ。だが我に負けたのでな、強制的に隷属契約を結ばせて魂諸々を強制的に変質させた結果だ。かつて王として皆を統べた存在が、今や過去の栄光を永劫味わえず女体となって隷属される様は、実に滑稽だろう?」

(あ、やっぱこの人ちゃんと魔王だ)

 

 先程までの評価が悉く裏返った。やはりこの男はしっかり魔王であった、やってる事があまりにも畜生過ぎる。

 まぁ、相手も元魔王だったので、それだけやっても別に文句がある訳でもないが。カズマにしてみれば無縁も良いところだし。

 

 まぁ、閑話休題。

 

「えー……あ、そうだ。さっきマモンが言ってた事で、気になる事が……」

「なんだ?」

「その……なんか、俺の事をリヴァイアサンのツレとか言ってきたんだけど……」

「それがどうした」

「いや……リヴァイアサンって誰のこと言ってんのかなって…」

「……あぁ、そうだった。確か同志は()()()()()()のだったか。であれば教えられていないのも当然か」

 

 いや、より正確には———()()()()()()()()か。

 ルシファーは暫く考えて、こう切り出した。

 

「答えるのは構わん。だが、その代わりに契約をさせてもらう」

「え、契約? えっ、ちょ、待ってそんなにヤバい話なの???」

「特別危険、という訳ではないが、念には念をだ。なに、別に死ぬ訳ではない。ただ、地獄を出たらこの話を忘れるというだけのものだ。この話は、貴様にとっても同志にとっても良いものではないからな」

「はぁ……なんだってアクアが出てくるのか分かんねぇけど、分かった」

「うむ。そうさな……結論から言えば、マモンの言うリヴァイアサンとは———アクアの事だ」

「は?」

 

 何を言ってるんだ? だってアクアは女神だろ? カズマはこてんと首を傾げた。

 

「疑問に思うのは当然だ。まぁ、かなり複雑な話でな……分かりやすく言うのであれば、()()()()()()()()()()()()()()がアクアなのだ」

「んー……えっと、まずリヴァイアサンってのから説明してほしいんだけど」

「そうだな。ではカズマよ、貴様の知るリヴァイアサンとはなんだ?」

「えーっと、海に住んでる怪物かな? なんかゲームによっては神様だったり悪魔だったりするけど」

「まぁ、そうだろうな。この世界におけるリヴァイアサンとは、つまり『羨望の獣』———憎き我が父、唯一神が創り出したあらゆるものの中で、ただ二つの失敗作。その片割れこそがリヴァイアサンであり、天界・下界・地獄のあらゆる世界において禁忌(タブー)とされている存在の事を指す」

 

 それは、神に創られた怪物であった。

 人が人以上の行いをせぬ様に。人が神の如くにならぬ様に。人を人として恐れさせる様に。

 そう願い、そう想われ、この世界に生を受けた原初の獣———底知れぬ海を住まいとし、渦を巻き、嵐を起こし、地上のあらゆるを呑み込む巨躯を誇った水竜の姿を象った獣であった。

 だが、いつしか獣は人を羨む様になった。

 水にしか住めない己とは違い、彼等は地上を歩き、走り、跳ねた。

 水の中でしか生きられない己とは違い、彼等は地上で生きながら、水に潜る事も、空を舞う事も、地の中に住処を創る事だって出来た。

 自分には出来ないことが、人間には沢山出来た。自分では叶わない事を、人間は多く叶えていた。

 羨ましい。羨ましい。羨ましい。

 あんな風になりたい。あんな事をしたい。底の無い海の中で、獣は遂にそれだけを願う様になった。

 そう———ただ人を人たらしめる為だけに産み出された筈の怪物が、『羨望』という感情を抱いてしまったのだ。

 それは次第に大きくなっていき、獣はもはや己の在り方をすら捻じ曲げて、人という生物の生き方を欲した。

 だが———神はそれを許さなかった。

 しかし、神が気付いた時には既に遅かった。獣の在り方は既に元の存在から逸脱し、あらゆる時代において『羨望』の象徴として昇華されたその獣は、もはや()()()()()()()()()()()()()

 唯一神によって原初の海、底無き深海に沈められたにも関わらず、その獣は今も生きてあらゆる世界を泳ぎ続けている。

 あらゆる生物の中で、最も人に寄り添い続けた獣であり、最も人に憧れた獣———それこそがリヴァイアサンであり、唯一神ですら止められなかった最凶の獣である、

 

「『羨望』……『嫉妬』と言い換えてもいい。その象徴であるリヴァイアサンは、もはや『羨望』という『概念』、『事象』こそが本体。故に神々ですら手出しが出来ず、神々ですらも逃れられない。一度でも羨望を抱いたなら、その時点でリヴァイアサンの巣穴だ。その魂に、或いは存在に、リヴァイアサンの影が宿る———その中で、同志アクアは最も相性が良かったのだ」

「そっか———アクアは、()()()()だから」

「そうだ。水を司る女神が、神を毛嫌い、人に憧れ、人を羨む———リヴァイアサンにとって、これ以上の条件はない。水の女神アクアを———わざわざ我が子とまで呼んだ」

 

 海の怪物と水の女神。海と水。そのどちらもが、原初にして起源。

 水によって構築される海と、海によって認識される水。切っても離せない関係性に、『人間への強い羨望』というピースがハマった結果、水の女神アクアは羨望の獣に選ばれた。

 故に、ポセイドンはこう言った。

 

『羨望の獣に選ばれた大海の濁り』

 

 神々にとって、禁忌とされる存在に目を付けられた水神を、濁りと言わずして何とする———海神ポセイドンは、そう断言したのだ。

 

「だが誤解はするな。あくまでも選ばれたというだけだ。彼女の神性は紛うことなき本物、その存在は神として確立している。決して七大罪の悪魔という訳ではないし、そうもなり得ない。彼女の羨望は本当の意味で『ただ羨ましい』というだけだ。それこそ、リヴァイアサンが彼女を選んだ理由だろう」

「そっか……それ聞いて安心したわ。アクアが悪魔になんかなっちゃったら、多分アイツ『一緒にいられない』とか言い出すし……()()()()()()()()()()()()()、自分の所為だって言うだろうなぁ、アクア。あれでちょっと面倒臭いところあるし」

「……何を言っているのですこの人間?」

 

 今の話を聞いた上で、出る言葉がそれか?

 リヴァイアサンがどういう存在なのかを聞いた上で———それがあの女神だと知った上で、それ?

 しかも、俺から会いに行く? それはつまり、なんだ。この男はあの女神が七大罪の悪魔として地獄に堕ちたら、わざわざ死んで会いに来ると???

 

「ふむ。恐怖はないと?」

()()()()()()()()だってアクアだぜ? アイツはちょっと面倒臭い所あるけど、優しいし、可愛い女の子だよ。俺はアイツに異世界楽しい!って思って欲しいし、出来る限り笑っててほしいんだよ。()()()()()()()()()()

「……くくっ。我が同志の不幸は凄まじいと思っていたが、これはとんでもない運に恵まれたものだ。貴様と出会えたこと、同志にとってまさに至上の幸運であろうよ」

「いや、流石にそれは大袈裟じゃ……」

「であれば、こうしては居られんな。ベルゼブブ、しばらく留守を頼む。我はカズマを地上へと連れ戻す。その後も用事があるのでな」

 

 ———なんとしても、この男を我が同志の元へと帰してやらねばならん。あとコミケにも行かねば。

 

 

 

 

「アッッッッツぃんですけどォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 地獄と言うくらいだから予想はしていたが、しかしあまりの暑さにカズマは凄まじい勢いで叫ばずにはいられなかった。

 もはや体が溶けていないのが寧ろ不思議で仕方ないくらいには暑い。というかここまで来たら暑いと言うよりは熱い。なんだこの地獄みたいな温度は。地獄でした、そうでした。

 

「地獄は悪魔の巣窟なのだ、人間にとって熱いのは当然だろう。地上に戻るまでの辛抱だ、耐えろ」

「耐えろったってキツイんですがっ!? というか、地上に戻る方法ってなに!?」

「正確には、地獄から死者の間を経由して現世に戻る———という事だ。転移魔法を使えれば楽だったが、魔力を消費するとあのゴミ顔に感知されかねん。歩いて行くぞ」

「マジかよ……飛べたりしないの?」

「出来んことはないが……飛びたいのか? おそらく9割の確率で肉片になるが」

「うっす歩きます」

 

 忘れるな、この男はルシファーである。

 天使の力と悪魔の力を十全に調整し、循環させ、全力を出せばオリュンポス十二神全員を相手にしても勝利を掴み取る事が出来る規格外の存在なのだ。

 彼がちょいと力を込めるだけで、大抵の存在は粉々になる。人間とて例外ではないのだ。

 

「人間に合わせるのは難しくてな……」

「よくそれで日本でアルバイトしてるよな……バイトの時はどうしてんの? やっぱアクアみたいに出力下がるの?」

「いや、悪魔は地上に出ても出力は大して下がらん。あれは天界の規則によるもので、悪魔は無関係だからな」

 

 神が下界に降りた時、その出力が大幅に下がるのは天界でそういう規則があるからだ。

 天界に住まう神であればそこに例外はなく、ゼウスやオーディンといった主神であろうと、下界に降りた以上はその力が大幅に制限される。

 対して、悪魔にはそれがない。分かりやすいのはバニルやマクスウェルといった悪魔だろう。

 

「オレの場合は……そうさな、『絶』の状態を保っている様なものだと思えばいい」

「だいぶ神経削りながらゲームしてるんだな……」

「慣れれば楽だぞ。まぁ……TRPGで片ロスした上でグッドエンド進んだ時は台パンで家を壊しかけたがな」

「何してんのって言おうとしたけどすごい切実な理由だった……」

「なにもグッドエンドではなかったのだ…オレはハッピーエンドを目指したのにも関わらず、片ロスしてしまったのだ…!!! 死亡率が高めだとKPから説明はされていたが、あの流れで相方PCが死ぬなど思わなかった……!!!!!」

「ちなみに何やったの?」

「『無垢の神』」

「めっちゃ難易度高ぇ……てかその状態でグッドエンド進んだの普通にスゲェ」

 

 バイト仲間の提案でTRPGをやってみたら見事にハマり、仲間内で卓を囲んでから暫く経った日にプレイしたそのシナリオで、ルシファーは絶望した。

 あぁ、片ロスとはなんと悲しいのか。しかもその上でグッドエンドに進むなぞ、やはり神はクソである。ダイスの女神なぞ滅んでしまえ。呪われてあれ! 呪われてあれ!

 

「正直、今でも忘れられんシナリオだ。継続するつもりで作ったPCだったが、アレはもう3人で一緒の『家族』だ……継続なぞ出来る訳もない」

「マジで日本を謳歌してる……はぁ。アクアもアンタくらい楽しんでくれればなぁ」

「今でも十分楽しんでいるだろう、我が同志は。少なくともオレの知っている頃の同志と比べれば、今は実に感情豊かだぞ。貴様が居なければ、同志もああはならなかったろう」

「そう……なのかな。だったら嬉しいけど」

「貴様のお陰で同志は変わっている。同じ人間好きの好として、喜ばしい限りだ。だからこそ、貴様は早く帰らなければならん。オレも1発か2発は殴られる覚悟をしておこう……正直、あの泣き顔はかなり堪えた。愚妹(ミカエル)が泣こうがこうはならなかったというのに……」

「さらりと酷いこと言うねアンタね? 血を分けた妹だよね一応?」

 

 ルシファーにしてみれば、それがなんだと言うのだという話である。

 血を分けていようがいなかろうが、袂を分けた事に変わりはない。あの守護の大天使は神に縛られる事を選び、その上で己と戦ったのだ。

 とは言え、その結果がPTSDと権能の機能停止とはさしものルシファーも予想だにしていなかった。まさかそれ程までに重く捉えている等と、誰が思おうか。

 それ程までに、重く捉えるのなら———そうまでなるほどに、ルシファーに対して入れ込んでいたのなら。

 何故———共に来ることではなく、戦う事を選んだのか。戦う事を選んだのに、こうなると分かっていたのに、そんな無様を晒すのか。

 だから愚妹だ。どこまでも愚かで、それ故に見捨てる気にすらならない———そういう天使なのだ、ルシファーにとってのミカエルとは。

 

 閑話休題(それはともかく)

 

「あー……これいつ頃着くんだ?」

「まだ中間くらいだ。今の所、他の悪魔から妨害を受けていないだけマシだろう」

「キツイなぁ……俺はいつからダンテになったのやら」

「道先案内人がオレで良かったな。誰と代わる事なく、地上まで無事に案内してやるぞ」

「あのルシファーが護衛兼道先案内人なら、俺の幸運もスゲェ所まで行ってるみたいだな……普段はあんま発揮しないけど」

「同志の不運は筋金入り故な。大目に見てやれ。アレは天井確定なのにピックアップが機能せずすり抜ける程の不運持ちなのだ」

「もうそれ不運とか通り越して呪いじゃね?」

「違いない———止まれ」

「うぉっ」

 

 手で動きを制され、ふと足を止める。

 ———その場の空気が一変した。つい先程までの穏やかな会話は完全に消し去られ、ルシファーは萎れた3枚の翼を大きく広げ、カズマを守る様に羽ばたかせる。

 視界が塞がれたカズマには、眼前に居るのが何者であるのは分からない———否、分かってはいけない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は、目にするだけで正気をガリガリと削っていく冒涜的な代物であった。

 

「———やぁぁぁぁぁぁぁっと見付けましたわぁ、ルシファーちゃん☆ マジでくっそ面倒な仕掛けしやがってよォ、ニャルちゃん思わず悪態ついちまうぜ」

「ハッ、かなりの時間を掛けた様だな。そんなザマでは外なる神の程度も知れるというものだ。やはり貴様は何処までも揶揄うばかりが能の駄神らしい、実に滑稽だな」

「いやぁん、ルシファーちん厳しいー! そんなボロクソに言われちゃあ(わたくし)だって泣いちまいますわよ! まぁそもそも顔が無いんだけどもねっ!? ■■■■■■■■!!!!!!!」

「貴様のそのボキャブラリーの少ない貧相ここに極まるジョークにはウンザリだ。疾く去ね、ゴミ顔。そして永劫その姿を見せるな」

「んー、ルシファーくんがその子を置いて行ってくれたらそうするけど、どっすか?」

 

「そうか……では———死ね」

 

 轟ッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 ———魔力が爆ぜた。

 肉体を撫でた暴風が四肢を切り刻み、外なる神の五体はその魔力熱に耐えられず呆気なく焼き焦がされて塵と化す。

 だが、そうまで成って尚も———外なる神。まるでそれがなんて事など無い様に、

 

「アッチィんですよねぇ!? クトゥグアに焼かれ慣れてるとは言えども(われ)だって痛いんだが!?!?」

 

 塵のままに、当たり前の如く言葉を発する。

 ルシファーはあからさまに顔を歪め、大きく舌を打った。

 

「死に損ないが……カズマ、暫く目を閉じて待っていろ」

「あ、はい。……え、俺待機? 大丈夫? 他の悪魔か目の前の誰かにやられたりしない?」

「愚問だな———我はルシファーだぞ? 同志の想い人を護る事なぞ造作もないわ。良いから待っていろ、数分で終わらせる」

「ヤダこの魔王様かっこいい……」

 

 自身から切り離した魔力でカズマを覆い尽くした頃には、既にニャルラトホテプは五体を再生させていた。

 外なる神としてアザ=トースに産み落とされた存在の一柱にして、出力だけで言えばアザ=トースに並ぶとすらされている外なる神のメッセンジャー———ニャルラトホテプは、自らの化身を数多と同時に顕現させ、人間の脳では翻訳も不可能な言語でケタケタと嗤う。

 

「舐められてますなぁ? (あたい)と戦いながらカズマくんも護るとかぁ、本部以蔵ですかアンタ? ■■■■■!!!!! つーか忘れないでくださいまし? (ぼく)これでも出力だけならお父様と同等よ? 普段から舐めプばっかしてるルシファーくんちゃんにはちと荷が重いってもんでしょ?」

「———()()()()()()()()()()()?」

「ひょ?」

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 禍々しい悪魔の翼にありながら、まさしく烈日と揶揄するに相応しい万照を以てして、ルシファーは邪神との距離を消し去った。

 ふっ、と。

 軽く空を切り裂く黒金の大剣と黒紫の太刀をニャルラトホテプが目視したのは———それが、自らの五体を寸断して数秒が経過した頃であった。

 『罪宝(ざいほう)』。

 それは七大罪の悪魔が持つ、その罪に対応した特殊効果を持った武器。ルシファーが持つそれは、『傲慢』と『憤怒』の罪宝———『傲り荒む極天の黎明(サタナエル)』である。

 

「……おいおい、おまっ、()()? いつもの慢心は?」

「慢心せずして何が王か、とでも言いたげだな。巫山戯るなよ、虫けらが———何故この我が、貴様を相手に()()()()()()()()()()()()()()() 図々しいにも程があるぞ」

「———ニャルちゃん流石にコレは計算外なんだがっ!? 慢心すると思って余裕ぶっこいてたんですがっ!?」

 

「傲りはとうに捨てた。貴様なぞに手を煩わせ、時間を掛けている様では———我が好きなアニメのイラストレーターが参加しているコミケの参加に遅れてしまうだろうがッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」

「本気出す理由まさかのそっちィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?!?」

 

 珍しく邪神がツッコんだ。だが、ルシファーはそんな事はお構い無しである。

 

「傲慢の堕つる明星(サタナエル)、憤怒の騰る殞落(ルシファー)、全権解放。我が相棒の言葉を借りるとするならば……そうさな。ニャルラトホテプ———貴様に壊滅をくれてやる」




カズマは たのもしい味方(魔王)を 手に入れた !
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