ワールドロールファイトリーグ。通称WRFLと呼ばれるそれは世界一強いアクターを決める今世紀最大の大会だ。
世界各国で予選大会が開かれており、予選大会で勝ち上がったアクター1人だけが国の代表となって、世界中から集まった国を背負って立つアクター達が蔓延る本選へと出場できる。
そして本選で見事最後まで勝ち残った者こそ世界最強のアクター───初代WRFLチャンピオンとして、永遠に名を語り継がれる事となる。
アクターならば誰もが夢見る世界最強を決める大会。ならばあの「天才」達は必ず出てくるし間違いなく本選まで出てくるだろう……一部住んでる国が同じ奴らが居るけど、別に出身国の予選大会にしかエントリー出来ないというルールは無いのでそこはどうにかしてくるだろ。
……まぁかく言う俺自身がその手段を取った訳だが。
学生時代に各地を転々としていた影響で色んな国を見て回るのにハマったせいで大人になってからずっと海外に居たからな……別にどこの国の代表になろうが本選に出れるなら何でも良かったし、そもそも出身国にまで戻るのが面倒だったからという事もあって海外の予選大会にそのまま出ることにしたのだ。
で、その結果は───
「これでトドメだ! 相手アクターにダイレクトアタック!!」
「う、うわああああああああ!!」
「決まったー!! このアトランティス大会を優勝し、見事WRFL本選への出場権を手に入れたのは日下部チュウト選手だー!!」
全勝して俺は本選出場へと無事に駒を進める事が出来た。
決して戦ってきたアクターが全員弱かった訳ではない。だが、この大会にはあの謎の電子音が聞こえてくる相手は1人も居なかった。
なら、これからあの「天才」達に勝とうとしてる奴が「天才」じゃない相手に負ける訳にはいかんだろ、という精神でガンガン攻めまくったのが功を奏した結果である。
という訳で俺はWRFLの本選への出場権を手に入れたため、あとは本選に出場するまでの準備期間として色々とデッキを弄ったり新しいカードを求めてカードショップ巡りでもしようかな……そう思っていたのだが。
「チュウト選手! 遠い母国から離れて何故この国の予選大会に出場を!?」
「チュウト選手! WRFLに懸ける意気込みをお願いします!」
「チュウト選手! WRFL本選出場が決まった時のお気持ちをお聞かせください!」
街に出ればどこからともなく現れるマスコミの群れ。どうやら異国の地で国家代表のアクターになったのが良くも悪くも世間の目に止まった事で俺は格好のネタとして毎日誰かしらに付き纏われていた。
正直に言ってしんどいから本当に勘弁してほしい。過去の様々な事件に巻き込まれた時もこうやってマスコミに囲われたりとかはしたけど、その時は他の奴らに任せてササッと逃げていたから何とも無かったが、一人でマスコミの対応をするのがこんなにしんどいとは。
言っても止めようとせず毎日毎日飽きもしないで群がってくるマスコミ。それに便乗する形で声を掛けようとしてくる民衆。ハッキリ言って根は一般人でしかない俺からしたらただただ苦痛でしか無かった。
「はぁぁぁぁぁ……」
心安らげて寛げるのは借りているホテルの部屋だけだ。俺はベッドに身を投げ出し思わずため息を吐くが、思ってたよりもかなり深いため息が出てしまった。
「本選までずっとこれが続くのか……?」
ホテルの天井をボーッと見つめながらここ最近の日々を思い返し、より苦痛に感じた事で疲れきった身体からさらに力が抜けてしまう。
何もやる気が起きない。誰かこの生活から俺を救ってくれ。そんな他人任せな考えが頭に浮かぶが、助けてくれそうな友達は生憎とこの国には居ない。
どうにかして自分の力でこの生活から抜け出すしかない……だがどうやって?
「はぁ……ダメだぁ、なんも思い浮かばねぇ〜」
疲れきった頭では何も良いアイデアは思い浮かばない。詰んだなこりゃ、と心のどこかで諦めかけている自分を誤魔化すべく、俺は気分転換として近くのリモコンを操作して部屋に備え付けられているテレビの電源をつけた。
【怪盗パルン! 今日こそ捕まえてやるぞ!】
【へへ、捕まえれるもんなら捕まえてみな刑事さん!】
この時間帯はどうやらアニメの放送をしているらしい。カートゥーンチックな描き方で刑事のキャラと怪盗のキャラが街中で追いかけっこをしている。
初めて見る作品だが、似たような感じの作品は他の国でも見た事はある。全世界とまではいかないかもしれないが、考えてる事は皆大体同じなのかもしれないな。
【くそっ! パルンのやつめ、どこへ行きおった!?】
ぼんやりと見ていると場面は進む。街中を逃げていた怪盗は人気の少ない裏路地の曲がり角を曲がった所で姿を消し、怪盗の姿を見失った刑事のキャラはキョロキョロと辺りを見回していると、白い髭を蓄えた見るからにヨボヨボなお爺さんが現れた。
【おや、こんな所でどうされましたか? 何か落し物でもされたので?】
【あぁいえ、そういう訳ではないです! 人を探していたのですが見失ったようでして……ご老人、ここでついさっき走る若い男を見かけたりしておりませんか?】
【あぁ、それでしたらあちらの方に走って行きましたぞ】
【本当ですか!? ありがとうございます!!】
お爺さんが指を差した方向に刑事が走り去っていき、完全に姿が消えるとそのお爺さんはニヤリと笑みを浮かべる。
【ふっ、俺の変装を見抜けないとはまだまだ甘いね刑事さん♪】
お爺さんは着ていた服に手を掛け、勢いよく脱ぎ捨てるとそこにはお爺さんの姿は無く先程まで逃げていた怪盗の姿があった。
「あ〜よくあるな〜こういうの」
怪盗系が出る系の作品は大体がこういう変装したりとかのシーンがあるよな〜と思いながらのんびりアニメを見ていたが……ふと脳裏に閃が走る。
「そうじゃん、変装すりゃいいじゃん」
アニメを見ていたから思いついたそのアイディア。後から考えても単純過ぎやしないか、と若干思いはしたがこの時の俺は疲れで正常な思考回路をしてなかった。
「おぉ、天才か俺!? きたなコレ!」
謎のハイテンションなまま俺は変装するために使えそうな道具が何か無いか部屋の中や持っていた荷物の中からガサゴソと探した結果───
「これは……どうだ?」
鏡に映るのはサングラスを掛け、スーツの上からファーフード付きのロングコートを羽織った新しい俺の姿。
変装にしてはかなり雑でしか無いが、ひとまず普段の俺よりかは少しは印象が変わっているだろう。
「あ〜でも微妙か……」
見た目はそれこそ変化はつけれたが、ここ最近はマスコミのせいで俺の顔や名前は割りと世間にバレてしまっている。見た目だけ少し変えても恐らく変装の効果は薄いだろう。
もっと何か良い方法が無いか悩んでいると、不意に先程見たアニメの内容が浮かんできた。
「あ〜そうか、言動も変えればいけるか?」
さっき見たアニメでは怪盗はお爺さんの格好になり、完全にお爺さんの言動や仕草をしていた。
それと同じように、俺も普段とは似ても似つかないような言動をすれば案外別人ということで押し通せたり出来るのではないだろうか?
「普段の俺じゃないキャラ……無口系とかか?」
自分で言うのもなんだが、普段の俺は割りとお喋りな方だ。コミュニケーション能力はちゃんとあると自負しているが、そんな普段の自分からかけ離れたキャラというと真っ先に浮かんだのは出会ったばかりの頃のユウト君みたいな無口系キャラだ。
返事は必要最低限、無駄な会話はせず簡単な意思表示をする時は首を縦か横に振るだけ。だけどロールファイトをする時は誰よりも熱く気炎を燃やし雄弁に瞳で語る。
……今思ってもユウト君とよくこれであの頃は意思疎通を問題無く取れていたものである。
「よし、じゃあ試してみるか」
ユウト君をイメージしてキャラを作り、俺は変装したままホテルを出た。
「あ、チュウト選、手……?」
「え、あれ……?」
「違う人……いや、ん?」
案の定ホテルの前で待っていたマスコミは近寄ってくるも俺の変装した姿に困惑している様子だった。
ここで反応しては意味が無いので俺はマスコミに一瞥も向けず立ち去ろうとする。
「あ、すみません! チュウト選手でお間違いないでしょうか!?」
それでもなお慌てて駆け寄ってきた1人のマスコミに対し、俺は首を横に振る。
「……人違いだ」
「いや、でも……でしたら、貴方はいったい誰ですか……?」
完全に困惑しきった様子のマスコミに俺は変装が上手くいってる事を内心で喜んでいたが、何者なのか聞かれた事で思わず返答に困り固まってしまう。
せっかく変装の効果が出ているのに、ここで馬鹿正直にチュウトと名乗る訳にはいかない。
「俺は……」
見た目は如何にも落ち着いた感じで、されど頭の中ではいつになく思考を高速回転させてどうするか考える。
「俺は、リアルだ」
そうして咄嗟に出てきたのは適当な偽名。完全にその場限りの誤魔化しでしかないため、俺は足早にマスコミを振り切ってその場を立ち去った。
……めっちゃ恥ずかしかったけどちゃんと変装の効果出てたから使えるなコレ。
◆◆◆
【RF8】チュートリアルお兄さん【ラスボス?】
1:名無しのアクター ID:IRiM92p10
みんなPV見た?
2:名無しのアクター ID:RLkTR8VmR
見たけどアレ本当にチュートリアルお兄さんか?
明らかに雰囲気別人だろ
3:名無しのアクター ID:4YgKdZ/JZ
いや、間違いなくチュートリアルお兄さんだ
髪型とか服装とか違うけど、チラッとPVで映った時に右耳に黒子があったから間違いない
4:名無しのアクター ID:ovyGNF02U
>>3キッショ……
5:名無しのアクター ID:JjFn8NJBk
>>3なんでそんな事知ってんだよ
6:名無しのアクター ID:VRpiVTDCm
>>3変態か?
7:名無しのアクター ID:NKnt4pcLs
>>4
>>5
>>6
チュートリアルお兄さんガチ勢なら知ってて当然の知識だろ
8:名無しのアクター ID:y2+B1gCry
>>7そんな知識知らねぇよ
9:名無しのアクター ID:JS2MB4fk5
まぁでも見た目はほぼチュートリアルお兄さんだよね
10:名無しのアクター ID:4nxgog8Ii
これで何の関係もないただの新キャラでしたとかだったらどうするんだよ
11:名無しのアクター ID:DQ0DmbziF
そん時は新しい沼が出来るかもしれんだけや
12:名無しのアクター ID:f8f8FeKqM
やったねたえちゃん! 新しい推しが増えるよ!
13:名無しのアクター ID:MYwfMJvzw
>>12おいバカやめろ
14:名無しのアクター ID:InJEaMmX7
>>12やめたれや
15:名無しのアクター ID:Yni9ldWvJ
まぁでも実際どうなんだろうね?
チュートリアルお兄さんあの感じ的にラスボス枠なのかな?
16:名無しのアクター ID:Vn/oIiOls
その可能性はあると思う
今までずっと仲間で居たからなぁ
17:名無しのアクター ID:XvlVg8Xs+
最初に仲間になるのにストーリーでは影が薄いって事をネタにされてきた恨みか……
18:名無しのアクター ID:BmGV2I+Ms
チュートリアルお兄さん「よくも散々コケにしてくれたな……殺してやるぞプレイヤー」
19:名無しのアクター ID:Y9HkKBFjz
>>18チュートリアルお兄さんが闇堕ちしたかもって事で一部のファンが発狂してたからやめたれ
20:名無しのアクター ID:6U+s33D47
でもラスボスになったチュートリアルお兄さんのファンアートも良かったから……
21:名無しのアクター ID:JhITBfdnq
とりあえず今は続報を待つしかねぇ〜
22:名無しのアクター ID:VkDTEl5fm
というか仮にチュートリアルお兄さんがラスボスやるとして、ストーリーどんな風になるんやろ
23:名無しのアクター ID:4TCpTzGXJ
最後の決勝戦の相手としてとか? PV見た感じだとこれまでの7作品の主人公の中から1人を選んでストーリー進めるっぽかったけど
24:名無しのアクター ID:uKuC8rd8q
みんなは誰選ぶ? 俺はユウト
25:名無しのアクター ID:Be5rGtYQ2
>>24ヒカリ一択だろjk
26:名無しのアクター ID:rhVdMlbp9
>>24ハルトきゅんに決まってんだよなぁ
27:名無しのアクター ID:mqVsTOxIJ
>>24モニカたそしか勝たん
28:名無しのアクター ID:7U1VA5XrM
おい、ここはチュートリアルお兄さんを語る場だぞ
主人公ズの事を語るなら別のスレ行け
29:名無しのアクター ID:/YUdqimkS
>>28いやだってチュートリアルお兄さんの情報ほぼ一瞬だけやったし……
30:名無しのアクター ID:JOm42K/6M
せめて一言とか喋ってくれると思ったらまさかの無言だったからなぁ
31:名無しのアクター ID:X4YJT4ZVB
運営さーん! 続報いつですかー!?
32:名無しのアクター ID:Qjzq3Z4m8
早く情報をくれないとオタク達は飢え死にマース!
33:名無しのアクター ID:Rnd6rWZLI
>>31
>>32
そんなお前達のために運営様が公式サイトで餌をくれたぞ
34:名無しのアクター ID:JT2oW/wm/
おぉ、新作に登場するキャラの一覧表出たのか
35:名無しのアクター ID:uj4+QZFQ6
どれどれ……ってあれ?
36:名無しのアクター ID:iHl7rLNQX
うそ、チュートリアルお兄さんじゃない……?
37:名無しのアクター ID:3u9FzRDXv
マジ? 完全に新キャラ?
38:名無しのアクター ID:np7wapo53
リアルis誰?
39:名無しのアクター ID:56SbLA9EE
おいガチ勢、チュートリアルお兄さんじゃないっぽいぞ
40:名無しのアクター ID:tZY1O+1DC
>>40ば、ばかな!? 俺の目に間違いは無いはず……
41:名無しのアクター ID:2gHjHxwpx
え、じゃあなに? チュートリアルお兄さんは出ないの?
42:名無しのアクター ID:p0Ind62Ep
いや、それはさすがに……
43:名無しのアクター ID:RpTQ3vZns
ちくしょう余計訳分からん事になってきたぜ!!
皆様お気に入り登録および評価、感想の投稿もして頂きありがとうございます。
1発ネタの短編で書いたつもりがまさかここまで反響を得るとは夢にも思っていませんでした。
筆者としては短篇で書いて終わりのつもりでしたが、ありがたいことに次話を希望される声を幾つか頂けましたので短編から連載に致します。
それに伴って申し訳ないのですが、仕事やプライベートでの用事の兼ね合いもあるため毎話1万文字近くは書く余裕が無いので、1話ごとの文字数を5000文字ぐらいを目処にして書いていこうと思います。
何卒ご理解とご容赦の程よろしくお願い致します。