夜語りの屋敷   作:死して尚、彼女は何を思うのか。

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3話目です〜。



第三夜 封じ場

 

 

俺が大学2年の夏休みに体験した話をする。

あのときのことは、今でも夢か幻だったんじゃないかと疑う瞬間がある。でも、手元にある“アレ”を見るたび、現実だったとしか思えなくなる。

 

話の発端は、友人のユウタのひと言だった。

 

「さ、行こうか。地元で一番ヤバいって噂の心霊スポット」

 

俺とユウタ、ノボル、カズ、アイカの5人で、地元の心霊スポット巡りをすることになった。

地元と言っても、山に囲まれたド田舎で、民家もろくにないような場所。夜になると、電灯ひとつ見えないような真っ暗な山道に入ることになる。

 

目的地は、地元では「封じ場(ふうじば)」と呼ばれている場所。

看板も標識もないが、林道を登っていくと、突然道が広がり、ぽっかりと空いた空間の奥に**三角形の石碑**が立っている。

周囲には古びた木札が何本も打ち込まれていて、「入るな」「戻れ」「封印中」などの文字が風化しかけた墨で書かれていた。

 

空気が明らかに違った。

湿っていて重く、蝉の鳴き声も、風の音も、まるでそこだけ消えてしまっているような沈黙があった。

 

「やべえ、マジで出るやつじゃんこれ」

ノボルがスマホを取り出し、石碑をバシャバシャと撮り始めた。

 

「……変なもん映るなよ」

俺はそう言いながら、石碑には近づかなかった。なんというか、直感的に「触れたら終わる」って感じがしたんだ。

 

その時だった。

ユウタが小声で言った。

 

「……道、あるな」

 

石碑の左側、雑木林の茂みに小さな踏み跡が続いていた。

誰かが通ったような、けれど自然にはできない不自然な形の獣道だった。

 

「ちょっと見てくる」

そう言って、ユウタは石碑の脇に足を踏み入れた。

 

その瞬間、**カチャン**という音がした。

まるで、石の鍵が開いたような――あるいは、**何かを外したような音**だった。

 

石碑の中央にあった小さな割れ目が、少しだけ、ほんのわずかに、広がっていた。

 

「……おい、それ、まずくね?」

 

「なにが?」

 

「それ……封印だったんじゃねえのかよ」

 

空気が変わった。

急に冷たい風が吹き抜けて、俺たちは無言でその場を離れた。

 

けれど、それで終わりではなかった。

 

翌日、ノボルが事故に遭った。ブレーキが効かなくなったと言っていたが、助手席のスマホは石碑の写真を映したまま、画面ごと割れていた。

 

さらに数日後、カズが突然、いなくなった。

部屋には争った跡もなく、ただ、玄関の靴が片方だけ残っていた。

 

アイカは精神的に不安定になり、「夜中に誰かが部屋のカーテンを開ける」と怯え続け、大学を休学した。

 

ユウタは毎晩、同じ夢を見るようになったという。

石碑の亀裂から、何かが這い出してくる夢。真っ黒で、ぬめった皮膚の、ヒトのようでヒトでない何かが――。

 

俺は、何もなかった。

ただし、ある日、ポストに何かが入っていた。

 

「封印中」と書かれた木札。

 

見覚えがあった。あのとき、石碑の前に立てられていた札のうちの一本だった。

墨の文字は、まだ乾いていなかった。

 

それ以来、俺は夜中に絶対窓を開けないし、知らない道には決して踏み込まないようにしている。

ユウタは、連絡がつかなくなった。

最後のLINEには、たった一言、こう書いてあった。

 

「あの音、また聞こえた」

 




最後まで読んでくれてありがとうございます!!

次もお楽しみに!

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